2021/05/19(水) - 12:33
ハイエンドモデルRC9に注ぎ込まれたテクノロジーのDNAを受け継ぐミドルグレード、RC3。幅広いレベルのユーザーにマッチする仕上がりと評判のシューズを、ショップスタッフのインプレッションとともに検証してみたい。
数多くのプロ選手が愛用するハイエンドシューズS-PHYRE RC9を頂点に、ユーザーのレベルや用途に応じた製品展開がされているシマノの「RC」シリーズ。その中でRC3は比較的リーズナブルなミドルグレードに位置付けられるモデルだ。上位モデルの開発で培われたテクノロジーの多くを引き継ぐことで、シューズとしてのクオリティと求めやすい価格の両立を実現している。
そんなRC3最大の特徴は、BOAダイヤルをシューズ中央に配置した全く新しいクロージャーシステムを採用した点。一般的にくるぶしに近い上部に配置されることが多いBOAダイヤルを中央に配置することで、上下均等に締め上げるレースルーティングを可能にすると同時に、足あたりの良さとスマートなルックスも生み出している。
アッパーは、左右のパネルが足先を包み込むシマノ独自のサラウンドラップ構造を採用。オーバーラップを減らすタンレス構造が快適な履き心地を演出するほか、細かく空けられたホールやつま先部分のメッシュ素材が通気性を確保している。
RC9を始めとする上位モデルに由来するシームレスミッドソールは、インソール下のラスティングボード(ミッドソール)とアウトソールのパーツと機能を統合したもの。足型を形作るミッドソールがアウトソールとしての機能も果たすことで、軽量化と一体感のある履き心地を実現するだけでなく、スタックハイトが低くなり、よりダイレクトなペダリングフィールにも貢献している。
アウトソールに採用されるのは、ソール剛性指数で12段階中6のグラスファイバーコンポジットナイロンソール。軽量かつ硬すぎず柔らかすぎない適度な剛性をもつ設定で、ビンディングデビューの人から硬すぎるソールを苦手とするベテランライダーまで幅広い人にマッチするはずだ。
RC3を試してみて、とてもコスパが良いシューズだと思いました。14,000円(税抜)という価格で考えた時に、性能とのバランスが非常に良いと感じます。重量を調べてみると上位モデルとほとんど変わりがないことに気付きました。実際に持ってみても本当に軽いと感じます。軽いということは、どんな人にとってもメリットがあることだと思います。
込み入ったテクノロジーの話は使ってみないと分からないものですが、軽さは誰が手にとっても「軽い」と分かる部分だと思います。その点で、1万円台のシューズとしては、とてもメリットがあると思います。この軽さを実現できている理由は僕には分かりませんが、一番の感動ポイントですね。
また、最近は多くのメーカーがダイヤル式クロージャーを採用していますが、RC3はBOAダイヤルひとつで細かく調節できるので、フィッティング部分でのメリットになると思います。ラッピング(包み方)が特殊ですが、土踏まずの部分から全体を締めるということを意図しているのかな、と感じました。
もともと、シマノシューズはヒールのカップの形状がどのモデルも収まりがいいなと思っていました。大抵の方がシューズの幅の部分でフィッティングをしていると思うのですが、僕らがお客様にフィッティングする時に一番重視するのは、踵から足首付近の斜めのラインがフィットすることです。
つま先立ちした時に踵が脱げてこない形状がとても良くて、シマノシューズはヒールカップの形状が深くて脱げにくくなっている分、今回のRC3のような特殊なレースルーティングも可能になったのではないかと感じています。踵の形状がそもそも合う・合わないはありますが、フィットするならダイヤルをキツく締め付けて踵から脱げないようにする必要がないのはすごく良い点だと思います。
シマノシューズは日本人の足に合うとよく言われますが、それは幅ではなくてつま先部分のアールの形状が合いやすいのだと思います。他のメーカーのシューズは尖った形が多いですが、シマノシューズはつま先のアールが緩いのでフィッティングがしやすい。
RC3には幅広のワイドタイプも用意されていますが、ナロー(ノーマル)を履いてみて「自分はワイドだと思っていたけど、ナローでも履ける」という人は多いですし、僕自身もかなり幅広な足ですがナローも履けてしまいます。幅のことを気にされる方は多いと思いますが、まずはワイドではなくナローを履いてみて、それでも合わないという人はワイドを選択するのが良いでしょう。
今日はこの取材の前に65kmほどカーボンソールのモデルを履いて走ってきましたが、それと比較するとナイロンソールはやはり優しい印象を受けます。実際、手にとって力をかけるとしなりますし、カーボンソールではビクともしません。
アウトソールの剛性についてどちらを選べば良いのかわかりにくいところはあると思いますし、実際に相談もされます。僕がお客様にソール剛性についてどちらが良いかを聞かれた時には「絨毯の上を一日歩いた時とコンクリートの上を一日歩いた時で、ふくらはぎの疲れ方が違いませんか?」とご説明しています。お客様にその感覚を理解していただけるようにお伝えしています。
ビンディングシューズとしての役目はソールの素材に関わらず果たしていますので、剛性感の違いを感覚的に理解していただいたうえで、ご自身に合うソールを選んでいただくのが良いと思います。分からないまま無理をして高いカーボンソールのシューズを履いてキツい思いをする必要はないですし、ロングライドに適したナイロンソールでなおかつ軽いRC3は良い選択肢だと思います。
アッパーに広く施されたリフレクト(再帰反射)プリントも良いですね。安全に走るというのが一番大切なことなので、動いているところが目立つのはとても重要です。RC3の反射素材は見た目も派手すぎないのも好印象です。気が付いたら安全なシューズを履いていたという感じで、さり気なく安全性に寄与したデザインになっているのが良いですね。
独自のサラウンドラップ構造も、違和感なく履けて好印象でした。僕が普段履いているシューズはこのモデルよりも価格的には高いものですが、それと比較して何か良くないところがあるとは感じませんでした。ベロがない造りなので履きやすいですし、締めればきちんと締まってくれるし、形状や内側の素材なども含めてしっかり研究されたのだろうな、と。
敢えてマイナスを挙げるとすれば、クロージャーの部分締めができない点でしょうか。この一本締めのタイプは一本で全体を均等に締めることができることが一番のメリットですし、それでバッチリとフィットすれば問題ないと思います。しかし、走っているうちに痛みが発生して、その部分だけ緩めたいとなると、一本締めの場合はできません。また、このモデルはBOAダイヤルを解放する時には一気に解放するしかありません。
ただ、これは上位モデルとの差別化の部分だと思いますし、そもそもRC3はそういった機能を必要としない人向けに作られたモデルなのだと思います。そういった機能が欲しい、無くては困るという人は上位モデルを選択した方が良いと思います。購入する時にはしっかりとフィッティングしたいですね。
初めてスポーツバイクに乗るというお客様によく言われるのが「初心者向きの物はありますか?」というフレーズです。確かに価格の安いものは初心者の方のことを考えて作られているとは思うのですが、個人的には趣味の世界なので「合えばいいじゃない」「好きならいいじゃない」という感覚の方が大切なのではないかと思うのです。
そういった意味でこのRC3は、デザイン性や機能性などすべてを含めて初心者の方にもおすすめできるモデルだと思いますし、逆に玄人が粗探ししても不満な点はそれほど出てこない万人受けするモデルだと思います。
上位グレードのテクノロジーを受け継いだミドルグレードシューズ RC3
数多くのプロ選手が愛用するハイエンドシューズS-PHYRE RC9を頂点に、ユーザーのレベルや用途に応じた製品展開がされているシマノの「RC」シリーズ。その中でRC3は比較的リーズナブルなミドルグレードに位置付けられるモデルだ。上位モデルの開発で培われたテクノロジーの多くを引き継ぐことで、シューズとしてのクオリティと求めやすい価格の両立を実現している。
そんなRC3最大の特徴は、BOAダイヤルをシューズ中央に配置した全く新しいクロージャーシステムを採用した点。一般的にくるぶしに近い上部に配置されることが多いBOAダイヤルを中央に配置することで、上下均等に締め上げるレースルーティングを可能にすると同時に、足あたりの良さとスマートなルックスも生み出している。
アッパーは、左右のパネルが足先を包み込むシマノ独自のサラウンドラップ構造を採用。オーバーラップを減らすタンレス構造が快適な履き心地を演出するほか、細かく空けられたホールやつま先部分のメッシュ素材が通気性を確保している。
RC9を始めとする上位モデルに由来するシームレスミッドソールは、インソール下のラスティングボード(ミッドソール)とアウトソールのパーツと機能を統合したもの。足型を形作るミッドソールがアウトソールとしての機能も果たすことで、軽量化と一体感のある履き心地を実現するだけでなく、スタックハイトが低くなり、よりダイレクトなペダリングフィールにも貢献している。
アウトソールに採用されるのは、ソール剛性指数で12段階中6のグラスファイバーコンポジットナイロンソール。軽量かつ硬すぎず柔らかすぎない適度な剛性をもつ設定で、ビンディングデビューの人から硬すぎるソールを苦手とするベテランライダーまで幅広い人にマッチするはずだ。
シマノ RC3 スペック
インプレッション by 奥平総帆(ワイズロード横浜)
「万人受けする履き心地とオールラウンドさ」とPOPを作りたくなるシューズです
RC3を試してみて、とてもコスパが良いシューズだと思いました。14,000円(税抜)という価格で考えた時に、性能とのバランスが非常に良いと感じます。重量を調べてみると上位モデルとほとんど変わりがないことに気付きました。実際に持ってみても本当に軽いと感じます。軽いということは、どんな人にとってもメリットがあることだと思います。
込み入ったテクノロジーの話は使ってみないと分からないものですが、軽さは誰が手にとっても「軽い」と分かる部分だと思います。その点で、1万円台のシューズとしては、とてもメリットがあると思います。この軽さを実現できている理由は僕には分かりませんが、一番の感動ポイントですね。
また、最近は多くのメーカーがダイヤル式クロージャーを採用していますが、RC3はBOAダイヤルひとつで細かく調節できるので、フィッティング部分でのメリットになると思います。ラッピング(包み方)が特殊ですが、土踏まずの部分から全体を締めるということを意図しているのかな、と感じました。
もともと、シマノシューズはヒールのカップの形状がどのモデルも収まりがいいなと思っていました。大抵の方がシューズの幅の部分でフィッティングをしていると思うのですが、僕らがお客様にフィッティングする時に一番重視するのは、踵から足首付近の斜めのラインがフィットすることです。
つま先立ちした時に踵が脱げてこない形状がとても良くて、シマノシューズはヒールカップの形状が深くて脱げにくくなっている分、今回のRC3のような特殊なレースルーティングも可能になったのではないかと感じています。踵の形状がそもそも合う・合わないはありますが、フィットするならダイヤルをキツく締め付けて踵から脱げないようにする必要がないのはすごく良い点だと思います。
シマノシューズは日本人の足に合うとよく言われますが、それは幅ではなくてつま先部分のアールの形状が合いやすいのだと思います。他のメーカーのシューズは尖った形が多いですが、シマノシューズはつま先のアールが緩いのでフィッティングがしやすい。
RC3には幅広のワイドタイプも用意されていますが、ナロー(ノーマル)を履いてみて「自分はワイドだと思っていたけど、ナローでも履ける」という人は多いですし、僕自身もかなり幅広な足ですがナローも履けてしまいます。幅のことを気にされる方は多いと思いますが、まずはワイドではなくナローを履いてみて、それでも合わないという人はワイドを選択するのが良いでしょう。
今日はこの取材の前に65kmほどカーボンソールのモデルを履いて走ってきましたが、それと比較するとナイロンソールはやはり優しい印象を受けます。実際、手にとって力をかけるとしなりますし、カーボンソールではビクともしません。
アウトソールの剛性についてどちらを選べば良いのかわかりにくいところはあると思いますし、実際に相談もされます。僕がお客様にソール剛性についてどちらが良いかを聞かれた時には「絨毯の上を一日歩いた時とコンクリートの上を一日歩いた時で、ふくらはぎの疲れ方が違いませんか?」とご説明しています。お客様にその感覚を理解していただけるようにお伝えしています。
ビンディングシューズとしての役目はソールの素材に関わらず果たしていますので、剛性感の違いを感覚的に理解していただいたうえで、ご自身に合うソールを選んでいただくのが良いと思います。分からないまま無理をして高いカーボンソールのシューズを履いてキツい思いをする必要はないですし、ロングライドに適したナイロンソールでなおかつ軽いRC3は良い選択肢だと思います。
アッパーに広く施されたリフレクト(再帰反射)プリントも良いですね。安全に走るというのが一番大切なことなので、動いているところが目立つのはとても重要です。RC3の反射素材は見た目も派手すぎないのも好印象です。気が付いたら安全なシューズを履いていたという感じで、さり気なく安全性に寄与したデザインになっているのが良いですね。
独自のサラウンドラップ構造も、違和感なく履けて好印象でした。僕が普段履いているシューズはこのモデルよりも価格的には高いものですが、それと比較して何か良くないところがあるとは感じませんでした。ベロがない造りなので履きやすいですし、締めればきちんと締まってくれるし、形状や内側の素材なども含めてしっかり研究されたのだろうな、と。
敢えてマイナスを挙げるとすれば、クロージャーの部分締めができない点でしょうか。この一本締めのタイプは一本で全体を均等に締めることができることが一番のメリットですし、それでバッチリとフィットすれば問題ないと思います。しかし、走っているうちに痛みが発生して、その部分だけ緩めたいとなると、一本締めの場合はできません。また、このモデルはBOAダイヤルを解放する時には一気に解放するしかありません。
ただ、これは上位モデルとの差別化の部分だと思いますし、そもそもRC3はそういった機能を必要としない人向けに作られたモデルなのだと思います。そういった機能が欲しい、無くては困るという人は上位モデルを選択した方が良いと思います。購入する時にはしっかりとフィッティングしたいですね。
初めてスポーツバイクに乗るというお客様によく言われるのが「初心者向きの物はありますか?」というフレーズです。確かに価格の安いものは初心者の方のことを考えて作られているとは思うのですが、個人的には趣味の世界なので「合えばいいじゃない」「好きならいいじゃない」という感覚の方が大切なのではないかと思うのです。
そういった意味でこのRC3は、デザイン性や機能性などすべてを含めて初心者の方にもおすすめできるモデルだと思いますし、逆に玄人が粗探ししても不満な点はそれほど出てこない万人受けするモデルだと思います。
インプレライダープロフィール
奥平総帆(ワイズロード横浜)
ワイズロード横浜の店長。元MTBダウンヒルのメカニックとして、5シーズンにわたってプロライダーのサポートを担当。チポッリーニ輸入担当、元バイシクルライン輸入担当、元アンタレスバイク開発担当。映画・ドラマ「弱虫ペダル」ロードバイク監修や自転車専門雑誌でも多数掲載されるなど、多岐にわたって活躍している。
ワイズロード横浜の店長。元MTBダウンヒルのメカニックとして、5シーズンにわたってプロライダーのサポートを担当。チポッリーニ輸入担当、元バイシクルライン輸入担当、元アンタレスバイク開発担当。映画・ドラマ「弱虫ペダル」ロードバイク監修や自転車専門雑誌でも多数掲載されるなど、多岐にわたって活躍している。
RC3 シューズエクスペリエンスコーナーを設置
シマノは全国のプロショップにRC3を試着できる「シューズエクスペリエンスコーナー」を設置。36から48までのワイドモデルを含めた全26サイズを店頭で試すことができ、フィッティングを確認してから購入することが可能となっている。シマノシューズエクスペリエンスコーナー設置協力店
店名 | 郵便番号 | 住所 | 電話番号 |
---|---|---|---|
SATO-CYCLE | 963-0206 | 福島県郡山市中野2丁目2番地 | 024-962-4364 |
サイクルワークス Fin's | 940-1161 | 新潟県長岡市左近2-53 | 0258-33-8823 |
ワイズロード渋谷本館 | 150-0043 | 東京都渋谷区道玄坂2-10-7 新大宗ビル1号館 | 03-5728-3539 |
ワイズロード東大和店 | 207-0033 | 東京都東大和市芋窪5-1137-1 | 042-516-9455 |
YOU CAN 八王子 | 192-0046 | 東京都八王子市明神町4-26-8リバーサイドビル101 | 042-660-5307 |
ワイズロード横浜店 | 231-0001 | 神奈川県横浜市中区新港2-2-1横浜ワールドポーターズ6階 | 045-263-6342 |
バイシクルセオ ららぽーと店 | 273-0012 | 千葉県船橋市浜町2-1-1ららぽーと北館1階 | 047-437-2829 |
カミハギサイクル小牧本店 | 485-0059 | 愛知県小牧市小木東1-25 | 0568-73-8311 |
BECK ON | 541-0053 | 大阪府大阪市中央区本町4-4-24 | 06-6120-3939 |
ワイズロード京都店 | 604-8041 | 京都府京都市中京区裏寺町595 グランレジェイド京都河原町1F | 075-254-7827 |
バルバワークス トヤマストア | 939-2705 | 富山県富山市婦中町宮ヶ島184-1 | 076-466-1396 |
ストラーダバイシクルズ 草津本店 | 525-0059 | 滋賀県草津市野路8-5-29 | 077-566-8300 |
Bicycle store RIDE WORKS | 659-0068 | 兵庫県芦屋市業平町6-11-101 | 0797-25-2511 |
BICYCLE PRO SHOP なかやま | 700-0831 | 岡山県岡山市北区京橋町8-3 | 086-222-5262 |
Cycle Science Komatsushima Store | 773-0014 | 徳島県小松島市江田町字敷地前101-22 | 088-677-5666 |
提供:シマノセールス 文:小森信道 写真:綾野真