2021/07/16(金) - 17:07
フカヤがリリースしたチェーンメンテナンス剤「デ・ラ・トレイル」を徹底的に掘り下げる特集記事をお届けしよう。製品企画の発端となった湯町さんとフカヤアンバサダーの落合さんによるクロストークで、製品の詳細に迫る。
創業110周年を迎えた名古屋の総合代理店のフカヤ。様々なオリジナル製品もプロデュースしており、2021年は特にグラベル製品にフォーカスし、ダボスのD-604という自転車を筆頭に多彩なアイテムを展開している。そんなフカヤが次に放ったのは、グラベル向けというコンセプトを打ち出したオイルのデ・ラ・トレイルだった。
デ・ラ・トレイルの基本は、ベースオイルにカーボンナノチューブ(CNT)を配合した潤滑剤ということ。オイルによる潤滑性だけではなく、微細なCNTがベアリングのような効果を発揮し、非常に優れた低摩擦抵抗を実現していることが特徴だ。
公的機関による摩擦係数の実験結果は以下の通り。一般的な潤滑剤と比較すると40%も摺動抵抗が小さく、潤滑剤として優れた性能を実現していることがわかるはずだ。
洗浄剤?ルブリカント?コーティング剤? 一つで全てを担うオールインワン・オイル
創業110周年を迎えた名古屋の総合代理店のフカヤ。様々なオリジナル製品もプロデュースしており、2021年は特にグラベル製品にフォーカスし、ダボスのD-604という自転車を筆頭に多彩なアイテムを展開している。そんなフカヤが次に放ったのは、グラベル向けというコンセプトを打ち出したオイルのデ・ラ・トレイルだった。
デ・ラ・トレイルの基本は、ベースオイルにカーボンナノチューブ(CNT)を配合した潤滑剤ということ。オイルによる潤滑性だけではなく、微細なCNTがベアリングのような効果を発揮し、非常に優れた低摩擦抵抗を実現していることが特徴だ。
公的機関による摩擦係数の実験結果は以下の通り。一般的な潤滑剤と比較すると40%も摺動抵抗が小さく、潤滑剤として優れた性能を実現していることがわかるはずだ。
潤滑剤 | CNT入り潤滑剤 | 黒鉛粉末 | 一般潤滑剤 | シリコン系潤滑剤 | モリブデン系潤滑剤 | 特殊潤滑剤 |
摩擦係数 | 0.057 | 0.189 | 0.138 | 0.142 | 0.141 | 0.111 |
そして非常に優れた浸透性もデ・ラ・トレイルの特徴だ。その浸透力とオイルがオイルを溶かすという性質の相乗効果によって、デ・ラ・トレイルは油洗のための洗浄剤としても活躍してくれる製品となる。
つまりデ・ラ・トレイルでチェーンを洗うことによって、金属表面にはオイルとCNTが残るため潤滑性能をそのまま発揮してくれるということだ。オールインワンでメンテナンスを行える性能は、チェーン清掃&注油作業の煩わしさから解放してくれるだろう。
落合友樹(Team Rueda Nagoya)
地元名古屋でTeam Rueda Nagoyaを興し、仲間たちとロード、CX、グラベル、MTBと自転車をエンジョイするフカヤのアンバサダー。シクロクロスではC1で戦うレーサーだが、大事にしているのは趣味として楽しむこと。その輪を広げるように様々なゲストと自転車など趣味全般のトークを繰り広げるポッドキャスト番組「Radio Rueda」もホストしている。
Twitter:@occi_tristar
ポッドキャスト:RadioRueda
湯町義宏(株式会社ヌマタ)
デ・ラ・トレイルの企画をスタートさせた担当者。学生の頃はキャンプ車で四国などでキャンプツーリングを楽しみ、一旦休止期間を挟みつつも5年ほど前からサドルの上に戻ってきたサイクリスト。現在はグラベルロードに乗り房総を満喫している。
湯町:まずはこのオイルが何物かを説明しますね。オイル自体を生産しているのは姫路のメーカーであるジェイマックスで、その販売代理店として我々ヌマタがいます。ジェイマックスはCNTを配合した潤滑剤を展開しており、それを自転車に向けて用途開発を行ったのがデ・ラ・トレイルというわけです。
落合:そうなんですね。CNTが配合された潤滑剤は、どのような役割があり、デ・ラ・トレイル以外にどのようなものがあるんでしょうか。
湯町:ジェイマックスのCNT配合の潤滑剤には、工場や家庭で使われる一般的なスプレーオイルタイプや、エンジンオイルにCNTを配合する自動車用添加剤、あるいはアルコールにCNTを配合するオイルレスの潤滑剤があります。これは、アルコールが揮発した後にCNTだけが金属表面にのこることで、油分を用いずに潤滑することができます。CNTは新しい素材なので、今後も色々な分野への展開が期待されています。
落合:そこから何故自転車用にアレンジしようと思ったのでしょうか。
湯町:そもそもは私がジェイマックスのオイルを自転車に使ってみたことが出発点です。自宅のドアやシャッターのギギーッという音を消すために使っていたんですけど、自転車に転用してみたところ、チェーンが無くなったかのようなスムーズな感触を得られたんです。メーカーとその理由を検討しつつ、自転車用にモディファイをしてみようと発想が生まれたんです。その後、フカヤの社員さんに使ってみてもらったら、シクロクロスに最適ということとなり本格的に製品化への動きが始まりました。
落合:そうなんですね。スムーズな感触を得られた理由って突き止められたんですか。
湯町:オイルに含まれるCNTという微細なカーボンが、液体ベアリングのような働きをしているからという答えになりました。金属表面を覆うCNTが摺動に合わせてコロコロと転がることで、フリクションが低減しているということですね。
落合:CNTを水溶液化するのは難しいという文献も読みました。
湯町:CNT自体を配合したオイルは他にも製品化されているのですが、ジェイマックスの製品は均一に分散する特許技術を活用していることが特徴です。CNTは均一に分散されていないと特性が発揮されないので、ジェイマックスのプロダクトはその点が強みなんです。自転車用に配合を変更したのが、デ・ラ・トレイルというわけです。
落合:変更点を具体的に教えていただいてもいいですか。
湯町:オイルとCNTの配合比率や、オイルの粘度をチューニングしています。デ・ラ・トレイルには添加剤や水置換剤の有無を聞かれることが多いんですけど、それらは採用していません。水置換性を求めるということはオイルの性能を妥協することになるので、我々はそれをしませんでした。
それでは水に対してはどのように対処するのか、というのが課題になります。デ・ラ・トレイルには非常に優れた浸透性が備わっていて、回転させることでチェーンのリンクとピンの間に残った水分をオイルの浸透性で押し出していくと考えています。奥まで入りこんだオイルはもちろん潤滑の効果も発揮しますし、チェーンで最も重要なリンクとピンの間にオイルを供給し続けられます。
浸透性が高い製品はたくさんありますが、乾きが早いものであったり、潤滑剤としての性能に満足できないものがあったりします。デ・ラ・トレイルでは潤滑剤としての性能も求めつつ、金属表面にCNTがコーティングとして残ることでの防錆効果も期待できます。
落合:潤滑剤というとフリクション性や耐久性が気になります。
湯町:CNT配合のオイルは一般的な潤滑剤と比較して40%の摩擦係数が低減しています。ここでいう潤滑剤は我々が名前を知っているような有名製品と思っていただいて良いです。
デ・ラ・トレイルを製品化するにあたり、監修いただいているのが成田加津利さん(カツリーズサイクル)なんですけど、200kmは保つと仰っていただいています。他の方からのフィードバックを参考にしても200〜250kmで一つの性能低下ポイントを迎えます。
デ・ラ・トレイルの場合は、ここのポイントで油膜が乾くという時点であり、その後は金属表面に残ったCNTが効果を維持し続け、摩擦低減の効果は最高地点とゼロの中間ほどの性能が残るという評価となっています。
落合:劣化曲線としてグラフを描くのであれば、塗布直後から200kmの地点まではグラフの傾きは大きく、油が乾いたら曲線はなだらかな傾きとなるということですね。雨などの状況下ではいかがでしょうか。
湯町:非常に浸透性に優れサラサラとしたオイルということもあり、雨や乾燥に関しては粘度の高いものと比較すると性能低下は早めです。その地点の目安が200kmほどですね。その後金属表面にCNTが残り潤滑性を維持します。
落合:CNTの効果が切れる目安はありますか。
湯町:先般言われているのは600km程度ほどですが、その前後でCNTの効果が切れたかどうかの確認をするのは難しいです。一般的にはそれほど乗り込む前にメンテナンスを再び行うかと思いますし、デ・ラ・トレイルでは洗浄からオイルアップまでワンアクションで簡単なので気軽にメンテナンス作業を行ってもらいたいです。
落合:多くのサイクリストの場合、1週間で100km以上乗ることは多くないと思いますので、月に250km乗るとしても月イチのメンテナンスでいけてしまうのかな。ついでにキットがあるので、手軽に作業ができるし、一般的な方であれば、そのメンテ頻度で性能はキープできるという話なんですね。
デ・ラ・トレイルは名前からも伝わってきますが、フォーカスしているジャンルがグラベルやオフロードだと思いますが、そういったシチュエーションで活躍する性能はあるのでしょうか。
湯町:デ・ラ・トレイルの企画が立ち上げる理由となったのが、シクロクロスのレース現場でメンテナンスしやすいというのがありました。他にもオイルが常に汚れをチェーンリンクの奥から排出してくれる性能もダスティなオフロードサイクリングに適しています。
藤原(CW編集部):デ・ラ・トレイルの特徴である洗浄性能まで話が及んだところで、チャプター1はここまでとしたいです。チャプター2では洗浄にまつわるお話と、実際にデ・ラ・トレイルを使ってみた印象はどうなの?というところをお聞かせいただければと思います。
特集の2ページ目もどうぞ御覧ください。
つまりデ・ラ・トレイルでチェーンを洗うことによって、金属表面にはオイルとCNTが残るため潤滑性能をそのまま発揮してくれるということだ。オールインワンでメンテナンスを行える性能は、チェーン清掃&注油作業の煩わしさから解放してくれるだろう。
デ・ラ・トレイル クロストーク
ここからはデ・ラ・トレイルを製品化に導いた湯町さんと、ロードやシクロクロス、MTBなど自転車をまんべんなく楽しんでいるフカヤアンバサダーの落合さんによるクロストークをお届けしよう。落合友樹さん(フカヤアンバサダー)×湯町さん(製品企画)
落合友樹(Team Rueda Nagoya)
地元名古屋でTeam Rueda Nagoyaを興し、仲間たちとロード、CX、グラベル、MTBと自転車をエンジョイするフカヤのアンバサダー。シクロクロスではC1で戦うレーサーだが、大事にしているのは趣味として楽しむこと。その輪を広げるように様々なゲストと自転車など趣味全般のトークを繰り広げるポッドキャスト番組「Radio Rueda」もホストしている。
Twitter:@occi_tristar
ポッドキャスト:RadioRueda
湯町義宏(株式会社ヌマタ)
デ・ラ・トレイルの企画をスタートさせた担当者。学生の頃はキャンプ車で四国などでキャンプツーリングを楽しみ、一旦休止期間を挟みつつも5年ほど前からサドルの上に戻ってきたサイクリスト。現在はグラベルロードに乗り房総を満喫している。
デ・ラ・トレイルは特許技術を使った潤滑剤
湯町:まずはこのオイルが何物かを説明しますね。オイル自体を生産しているのは姫路のメーカーであるジェイマックスで、その販売代理店として我々ヌマタがいます。ジェイマックスはCNTを配合した潤滑剤を展開しており、それを自転車に向けて用途開発を行ったのがデ・ラ・トレイルというわけです。
落合:そうなんですね。CNTが配合された潤滑剤は、どのような役割があり、デ・ラ・トレイル以外にどのようなものがあるんでしょうか。
湯町:ジェイマックスのCNT配合の潤滑剤には、工場や家庭で使われる一般的なスプレーオイルタイプや、エンジンオイルにCNTを配合する自動車用添加剤、あるいはアルコールにCNTを配合するオイルレスの潤滑剤があります。これは、アルコールが揮発した後にCNTだけが金属表面にのこることで、油分を用いずに潤滑することができます。CNTは新しい素材なので、今後も色々な分野への展開が期待されています。
落合:そこから何故自転車用にアレンジしようと思ったのでしょうか。
湯町:そもそもは私がジェイマックスのオイルを自転車に使ってみたことが出発点です。自宅のドアやシャッターのギギーッという音を消すために使っていたんですけど、自転車に転用してみたところ、チェーンが無くなったかのようなスムーズな感触を得られたんです。メーカーとその理由を検討しつつ、自転車用にモディファイをしてみようと発想が生まれたんです。その後、フカヤの社員さんに使ってみてもらったら、シクロクロスに最適ということとなり本格的に製品化への動きが始まりました。
落合:そうなんですね。スムーズな感触を得られた理由って突き止められたんですか。
湯町:オイルに含まれるCNTという微細なカーボンが、液体ベアリングのような働きをしているからという答えになりました。金属表面を覆うCNTが摺動に合わせてコロコロと転がることで、フリクションが低減しているということですね。
落合:CNTを水溶液化するのは難しいという文献も読みました。
湯町:CNT自体を配合したオイルは他にも製品化されているのですが、ジェイマックスの製品は均一に分散する特許技術を活用していることが特徴です。CNTは均一に分散されていないと特性が発揮されないので、ジェイマックスのプロダクトはその点が強みなんです。自転車用に配合を変更したのが、デ・ラ・トレイルというわけです。
CNT配合の自転車用潤滑剤とは
落合:変更点を具体的に教えていただいてもいいですか。
湯町:オイルとCNTの配合比率や、オイルの粘度をチューニングしています。デ・ラ・トレイルには添加剤や水置換剤の有無を聞かれることが多いんですけど、それらは採用していません。水置換性を求めるということはオイルの性能を妥協することになるので、我々はそれをしませんでした。
それでは水に対してはどのように対処するのか、というのが課題になります。デ・ラ・トレイルには非常に優れた浸透性が備わっていて、回転させることでチェーンのリンクとピンの間に残った水分をオイルの浸透性で押し出していくと考えています。奥まで入りこんだオイルはもちろん潤滑の効果も発揮しますし、チェーンで最も重要なリンクとピンの間にオイルを供給し続けられます。
浸透性が高い製品はたくさんありますが、乾きが早いものであったり、潤滑剤としての性能に満足できないものがあったりします。デ・ラ・トレイルでは潤滑剤としての性能も求めつつ、金属表面にCNTがコーティングとして残ることでの防錆効果も期待できます。
落合:潤滑剤というとフリクション性や耐久性が気になります。
湯町:CNT配合のオイルは一般的な潤滑剤と比較して40%の摩擦係数が低減しています。ここでいう潤滑剤は我々が名前を知っているような有名製品と思っていただいて良いです。
デ・ラ・トレイルを製品化するにあたり、監修いただいているのが成田加津利さん(カツリーズサイクル)なんですけど、200kmは保つと仰っていただいています。他の方からのフィードバックを参考にしても200〜250kmで一つの性能低下ポイントを迎えます。
デ・ラ・トレイルの場合は、ここのポイントで油膜が乾くという時点であり、その後は金属表面に残ったCNTが効果を維持し続け、摩擦低減の効果は最高地点とゼロの中間ほどの性能が残るという評価となっています。
落合:劣化曲線としてグラフを描くのであれば、塗布直後から200kmの地点まではグラフの傾きは大きく、油が乾いたら曲線はなだらかな傾きとなるということですね。雨などの状況下ではいかがでしょうか。
湯町:非常に浸透性に優れサラサラとしたオイルということもあり、雨や乾燥に関しては粘度の高いものと比較すると性能低下は早めです。その地点の目安が200kmほどですね。その後金属表面にCNTが残り潤滑性を維持します。
落合:CNTの効果が切れる目安はありますか。
湯町:先般言われているのは600km程度ほどですが、その前後でCNTの効果が切れたかどうかの確認をするのは難しいです。一般的にはそれほど乗り込む前にメンテナンスを再び行うかと思いますし、デ・ラ・トレイルでは洗浄からオイルアップまでワンアクションで簡単なので気軽にメンテナンス作業を行ってもらいたいです。
落合:多くのサイクリストの場合、1週間で100km以上乗ることは多くないと思いますので、月に250km乗るとしても月イチのメンテナンスでいけてしまうのかな。ついでにキットがあるので、手軽に作業ができるし、一般的な方であれば、そのメンテ頻度で性能はキープできるという話なんですね。
デ・ラ・トレイルは名前からも伝わってきますが、フォーカスしているジャンルがグラベルやオフロードだと思いますが、そういったシチュエーションで活躍する性能はあるのでしょうか。
湯町:デ・ラ・トレイルの企画が立ち上げる理由となったのが、シクロクロスのレース現場でメンテナンスしやすいというのがありました。他にもオイルが常に汚れをチェーンリンクの奥から排出してくれる性能もダスティなオフロードサイクリングに適しています。
藤原(CW編集部):デ・ラ・トレイルの特徴である洗浄性能まで話が及んだところで、チャプター1はここまでとしたいです。チャプター2では洗浄にまつわるお話と、実際にデ・ラ・トレイルを使ってみた印象はどうなの?というところをお聞かせいただければと思います。
特集の2ページ目もどうぞ御覧ください。
デ・ラ・トレイル ラインアップ
提供:フカヤ、ヌマタ 制作:シクロワイアード編集部 撮影協力:ワイズロード東大和