2021/02/03(水) - 17:16
3Tがグラベルマーケットに送り込んだ気鋭のエアロレーサー、EXPLORO RACE MAXをフィーチャー。グラベルでのインプレッションを含め、全2編に渡って徹底検証していく。
急速に拡大するグラベルバイクマーケット。バイクパッキングをはじめとしたツーリングユースから、グラインデューロやアンバウンドグラベル(旧ダーティカンザ)といったグラベルレースでの勝利を命題に掲げるバイクまで、「グラベルバイク」という単語でひとくくりにできないほどの多様性と広がりを見せてきた。
その中でも、レーシング志向のグラベルバイクという分野にいち早く着手したのがイタリアの3Tだ。ハンドルやステムといったパーツからスタートした老舗イタリアンブランドが、2016年にブランド初となるフレームとして発表した"EXPLORO"は、それまでアドベンチャーバイクとしての側面が強調されてきたグラベルバイクに、エアロダイナミクスという視点をもたらす革命的な一台だった。
EXPLORO発表の翌年、3Tは300kmという超長距離のグラベルチャレンジ「ジェロボーム」を主催。グラベルレースという分野をハード/ソフト両面から支え続け、アメリカのアンバウンドグラベルに対するヨーロッパ屈指のグラベルレースイベントとして、その存在を確固たるものとしてきた。
そんな3Tが、EXPLOROシリーズに4年ぶりとなる新モデルを投入したのは2020年夏のこと。"EXPLORO RACE MAX"と名付けられた新型は、初代EXPLOROの発表から急速に普及と深化が進んだグラベルバイクのトレンドを反映し、更なるエアロダイナミクス向上とタイヤクリアランスの拡大によって、よりタフなシーンに対応するグラベルレーサーとしてアップデートされている。
「ロードバイクのルックスと、ロードバイクのような走り、そしてグラベルを滑らかにいなすこと」。これがEXPLORO RACE MAXのキーワードだ。ベースモデルとなったEXPLORO自体、サイドビューだけではエアロロードと区別がつかないほど空力に心血を注いだ一台だった。開発を指揮したジェラルド・ブルーメン氏は、エアロロードの祖ともいえるサーヴェロの創始者の一人であり、グラベルバイクを多数手がけるオープンサイクルの創業者でもある。
空力性能とバランスの取れた剛性感を両立するために採用した、3T独自の「SQAERO(スクエアロ)」チュービングや専用エアロポストなど、エアロダイナミクスの向上のためのデザインは受け継ぎつつ、EXPLORO RACE MAXには更なる空気抵抗削減を追求した設計が与えられた。
最も大きな差異となるのは、シートチューブの造形だろう。前作では直線的だったシートチューブがリアタイヤを覆うような形状となると同時に、シートクランプ部がよりスマートな造形に。全体的に細身のチューブとなることで、エアロダイナミクスだけでなく路面追従性の向上も期待できるデザインとされている。
ダウンチューブの形状もアップデートされている。タイヤに最接近するダウンチューブ上部の空気抜けを改善するため、ヘッドチューブ側を細くするアウトバテッド形状に。また、フォーククラウンを最大限薄くすることでタイヤとフレームの間隔を近づけ、乱流の発生を抑制している。
タイヤクリアランスを確保するために用いられているドロップドチェーンステーが、ドライブサイドだけではなく両側に用いられることになったのも大きな変更点。左右で同様の形状とすることで剛性バランスを整えつつ、バーチカルコンプライアンスの向上も期待できる設計だ。
レースユースを主眼に置いているEXPLORO RACE MAXだが、過酷かつ長距離に及ぶグラベルレースを走りきるためには各種ストレージを装着できる拡張性も重要なファクターだ。トップチューブ上部にはボルトオン式のストレージを装着可能、ボトルケージ台座もシートチューブとダウンチューブの表と裏、計3か所に設置されている。また、リアフェンダーマウントも用意されており、悪天候時にも泥はねによる体力消耗を抑えられる。
エアロダイナミクスという点でグラベルレーサーの先頭をひた走り、更に差をつけることに成功したEXPLORO RACE MAXだが、バイクとしてのキャパシティを定義するタイヤクリアランスにおいても、アドバンテージを作り出した。
既存モデルでは54mmまでだったタイヤクリアランスを61mmまで拡大。2.1インチタイヤを越えるワイドタイヤを装着可能とし、MTBに迫るエアボリュームを獲得。荒れた路面でのグリップと快適性を飛躍的に向上させ、活躍の場を更に広げることになった。3Tによればエアロダイナミクスという観点では、35〜42mm幅のタイヤがベストとのことで、コースの難易度やテクニックによって選び分けるといいだろう(リンクはこちら)。
なお、3TはEXPLORO RACE MAXに対し、700cホイールを装備した完成車を「EXPLORO RACE」、そして27.5インチホイールを装備した完成車を「EXPLORO MAX」と呼び区別している(フレームは共通)。どちらも完成車パッケージとフレームセットが用意されており、MAXの完成車はスラムEAGLE(電動無線コンポーネント)システムを組み込むなど、マスプロブランドの完成車として非常に贅沢なチョイスだ
過酷なグラベルレースを最速で走り抜けるため、4年の時を経てブラッシュアップされたEXPLORO RACE MAX。他人と競うレースはもちろん、自分の限界に挑むようなアドベンチャーライドでも心強い味方になるだろう一台だ。
次章では、EXPLORO RACE MAXを、従来モデルのEXPLOROと乗り比べた上でインプレッションを紹介する。旅ではなく、文字通りレースを走るためのグラベルバイクの走りたるや如何に。
グラベルレースを制す、エアロダイナミクス
急速に拡大するグラベルバイクマーケット。バイクパッキングをはじめとしたツーリングユースから、グラインデューロやアンバウンドグラベル(旧ダーティカンザ)といったグラベルレースでの勝利を命題に掲げるバイクまで、「グラベルバイク」という単語でひとくくりにできないほどの多様性と広がりを見せてきた。
その中でも、レーシング志向のグラベルバイクという分野にいち早く着手したのがイタリアの3Tだ。ハンドルやステムといったパーツからスタートした老舗イタリアンブランドが、2016年にブランド初となるフレームとして発表した"EXPLORO"は、それまでアドベンチャーバイクとしての側面が強調されてきたグラベルバイクに、エアロダイナミクスという視点をもたらす革命的な一台だった。
EXPLORO発表の翌年、3Tは300kmという超長距離のグラベルチャレンジ「ジェロボーム」を主催。グラベルレースという分野をハード/ソフト両面から支え続け、アメリカのアンバウンドグラベルに対するヨーロッパ屈指のグラベルレースイベントとして、その存在を確固たるものとしてきた。
そんな3Tが、EXPLOROシリーズに4年ぶりとなる新モデルを投入したのは2020年夏のこと。"EXPLORO RACE MAX"と名付けられた新型は、初代EXPLOROの発表から急速に普及と深化が進んだグラベルバイクのトレンドを反映し、更なるエアロダイナミクス向上とタイヤクリアランスの拡大によって、よりタフなシーンに対応するグラベルレーサーとしてアップデートされている。
ロードバイクの走り、グラベルバイクのしなやかさ
「ロードバイクのルックスと、ロードバイクのような走り、そしてグラベルを滑らかにいなすこと」。これがEXPLORO RACE MAXのキーワードだ。ベースモデルとなったEXPLORO自体、サイドビューだけではエアロロードと区別がつかないほど空力に心血を注いだ一台だった。開発を指揮したジェラルド・ブルーメン氏は、エアロロードの祖ともいえるサーヴェロの創始者の一人であり、グラベルバイクを多数手がけるオープンサイクルの創業者でもある。
空力性能とバランスの取れた剛性感を両立するために採用した、3T独自の「SQAERO(スクエアロ)」チュービングや専用エアロポストなど、エアロダイナミクスの向上のためのデザインは受け継ぎつつ、EXPLORO RACE MAXには更なる空気抵抗削減を追求した設計が与えられた。
最も大きな差異となるのは、シートチューブの造形だろう。前作では直線的だったシートチューブがリアタイヤを覆うような形状となると同時に、シートクランプ部がよりスマートな造形に。全体的に細身のチューブとなることで、エアロダイナミクスだけでなく路面追従性の向上も期待できるデザインとされている。
ダウンチューブの形状もアップデートされている。タイヤに最接近するダウンチューブ上部の空気抜けを改善するため、ヘッドチューブ側を細くするアウトバテッド形状に。また、フォーククラウンを最大限薄くすることでタイヤとフレームの間隔を近づけ、乱流の発生を抑制している。
タイヤクリアランスを確保するために用いられているドロップドチェーンステーが、ドライブサイドだけではなく両側に用いられることになったのも大きな変更点。左右で同様の形状とすることで剛性バランスを整えつつ、バーチカルコンプライアンスの向上も期待できる設計だ。
レースユースを主眼に置いているEXPLORO RACE MAXだが、過酷かつ長距離に及ぶグラベルレースを走りきるためには各種ストレージを装着できる拡張性も重要なファクターだ。トップチューブ上部にはボルトオン式のストレージを装着可能、ボトルケージ台座もシートチューブとダウンチューブの表と裏、計3か所に設置されている。また、リアフェンダーマウントも用意されており、悪天候時にも泥はねによる体力消耗を抑えられる。
700cの「RACE」、27.5インチの「MAX」
エアロダイナミクスという点でグラベルレーサーの先頭をひた走り、更に差をつけることに成功したEXPLORO RACE MAXだが、バイクとしてのキャパシティを定義するタイヤクリアランスにおいても、アドバンテージを作り出した。
既存モデルでは54mmまでだったタイヤクリアランスを61mmまで拡大。2.1インチタイヤを越えるワイドタイヤを装着可能とし、MTBに迫るエアボリュームを獲得。荒れた路面でのグリップと快適性を飛躍的に向上させ、活躍の場を更に広げることになった。3Tによればエアロダイナミクスという観点では、35〜42mm幅のタイヤがベストとのことで、コースの難易度やテクニックによって選び分けるといいだろう(リンクはこちら)。
なお、3TはEXPLORO RACE MAXに対し、700cホイールを装備した完成車を「EXPLORO RACE」、そして27.5インチホイールを装備した完成車を「EXPLORO MAX」と呼び区別している(フレームは共通)。どちらも完成車パッケージとフレームセットが用意されており、MAXの完成車はスラムEAGLE(電動無線コンポーネント)システムを組み込むなど、マスプロブランドの完成車として非常に贅沢なチョイスだ
過酷なグラベルレースを最速で走り抜けるため、4年の時を経てブラッシュアップされたEXPLORO RACE MAX。他人と競うレースはもちろん、自分の限界に挑むようなアドベンチャーライドでも心強い味方になるだろう一台だ。
3T EXPLORO RACE販売ラインナップ
3T EXPLORO RACE FORCE AXS 2x12s 完成車
フレーム | 3T EXPLORO RACEMAX |
ステム | 3T APTO |
ハンドル | 3T AEROFLUX |
シフター/ブレーキ | SRAM FORCE AXS 2x12s 46-33t/10-36t |
タイヤ | Schwalbe G one 700c |
ホイールセット | Fulcrum Racing 7 700c |
価格 | 680,000円(税抜) |
3T EXPLORO RACE GRX 1x11s 完成車
フレーム | 3T EXPLORO RACEMAX |
ステム | 3T APTO |
ハンドル | 3T SUPERERGO PRO |
シフター/ブレーキ | SHIMANO GRX 1x11s 40t/11-42t |
タイヤ | Schwalbe G one 700c |
ホイールセット | WTB SERRA 700c |
価格 | 480,000円(税抜) |
3T EXPLORO MAX EAGLE AXS 1x12s 完成車
フレーム | 3T EXPLORO RACEMAX |
ステム | 3T APTO |
ハンドル | 3T AEROGHIAIA |
シフター/ブレーキ | SRAM FORCE EAGLE AXS 2x12s 42t/11-50t |
タイヤ | Vittoria Barzo |
ホイールセット | Fulcrum Racing 7 650b |
価格 | 680,000円(税抜) |
3T EXPLORO RACEMAX フレームセット
フレーム | 3T EXPLORO RACEMAX |
付属品 | シートポスト、ヘッドパーツ |
価格 | 380,000円(税抜) |
3T EXPLORO PRO 完成車
ハンドル・ステム | イーストン EA50 |
シフター/ブレーキ | SRAM RIVAL1 |
タイヤ | WTB RIDDLER |
ホイールセット | WTB SERRA |
価格 | 390,000円(税抜) |
次章では、EXPLORO RACE MAXを、従来モデルのEXPLOROと乗り比べた上でインプレッションを紹介する。旅ではなく、文字通りレースを走るためのグラベルバイクの走りたるや如何に。
提供:あさひ 制作:シクロワイアード編集部