2020/10/02(金) - 10:17
「オフのコーナーを攻めてる時と、竿を振ってアタリが来た時の感覚って、どこか似てるような気がするんです。うまく説明できないけど、無心になれるというか、なんと言うか」。
通称「忍野エリア」として知られる桂川で、ヒロさんの持つフライロッドが激しく暴れた時、私はふと、以前友人から聞いたセリフを思い出していた。いい大人が全員大はしゃぎして、掛かったニジマスを丁寧にたぐり寄せて、記念撮影とリリースを済ませたらもう一度大はしゃぎ。もしかしたら、こうやって童心に帰れるのも、自転車と釣りの共通点なのかも、と私は思った。
キャノンデールのグラベルバイク「Topstone」シリーズと共に、全国各地を駆け巡る連載の第二弾のテーマは「グラベルライドxフライフィッシング」。グラベルロードならではの機動力と積載力を武器に山中湖〜河口湖周辺に点在するフィッシングスポットを巡り、天然物の魚たちを釣り上げるという贅沢な釣行だ。
「今度出るアルミフレームのTopstoneがスゴく良い色なんです。レインボートラウトって名前の通り、ニジマスみたいに紫と黄色のグラデーションで。ニジマス色の自転車に乗ってニジマス釣りに行くって、めちゃくちゃ面白くないですか?」ことの発端はといえば、前回八ヶ岳周辺を走っていた時にキャノンデールのカズこと山本和弘さんが発した一言だった。
なにも気取ってなくて良い。一つのジョークにお金と時間をつぎ込んで、現実のものにしてしまうのは大人ならではの遊びだ。
八ヶ岳ロケのコースを引いてくれたRapha Japanの窪田博英(ヒロ)さんの紹介でRCC(Rapha Cycling Club)メンバー屈指のフライフィッシャー山崎さんと繋がり、そこからトントン拍子にロケ場所と日取りまでまとまった。目指すは河口湖周辺の、日本屈指の釣りスポット。こうして8月下旬の空も白む前の早朝に、スポット付近の道の駅に集まったのであった。
「忍野(おしの)って、おそらく日本で唯一、本場ヨーロッパに似た風景の中で釣りを楽しめる場所なんです」と、今回の案内役である山崎さんが教えてくれた。聞けば、ヨーロッパのフライフィッシングが渾々と湧き水が流れる平坦な川で行われるのに対し、急峻な山ばかりの日本は渓流を舞台とすることがほとんど。だから錘を使わずロッドを大きく振るフライフィッシングを楽しむには相当の技術が要る一方、河口湖から流れる水と、忍野八海の清涼な湧き水が混ざって流れる桂川の平らな"忍野エリア"は、魚にとっても、そして釣り人にとっても条件が整った場所だという。
Topstoneに乗った一団が、"朝マヅメ"を目指してクルージング。コンパクトに折りためるパックロッドをフロントバッグにくくりつけ、入渓の必需品と言えるウェーダー(防水ブーツ)やフライボックスはトップチューブバッグへ。つい数年前だったらかさばる荷物はリアキャリアや、あるいはバックパックに詰めなければならなかったけれど、こうして使ってみれば、バイクパッキング文化の偉大さにふと気づく。荷物の多くなりがちなバイクxフィッシングでの有効性、そしてTopstoneの拡張性はピカイチだった。
山崎さんの釣り仲間であるC&Fデザインの佐々木さんと合流し、贅沢にもプライベートロッジでフライフィッシングの手ほどきを受ける。手練れな方々の糸は綺麗なループを描いているけれど、いざロッドを振ってみると、錘を使わないキャスティングは非常に難易度高し。一方で運動神経の塊のごときカズさんは、佐々木さんが驚くほどあっと言う間にモノにしてしまう。上手い人ほどフォームが美しいのは、オフロードライディングもキャスティングも一緒ということなのだ。
まるで管理釣り場のごとき魚影の濃さに驚いたものの、人気地ゆえに何度も釣り上げられ、学習した魚たちのスレっぷりもこれまた全国トップクラスということで、口もとドンピシャにフライを投げても完全スルー。ヒロさんが初釣果を挙げたのは、魚と対峙すること1時間を経過した頃だった。
「フライって、他の釣りと違ってロッドと魚の間には錘とかルアーが無いので、純粋に魚とのやりとりが楽しめるんです」と、忍野の環境に惚れ込んだ佐々木さんが教えてくれた。なるほど、神経を研ぎ澄ませていくと、魚がフライを突っついたり、あるいは放したりする様子がダイレクトに伝わってくる。けれど当然、頭だってもの凄く疲れる。海釣りののどかなイメージとは違って、フライフィッシングは人と魚の真剣勝負。このあたりはやはり、路面と真剣勝負するオフロードライドと共通するものがあった。
ビギナーズラックと言うべきか?ヒロさんとカズさんには大きめのアタリ。よっしゃとばかりにニジマスカラーのTopstoneと撮影をしてみたけれど、正午の太陽光ゆえ、きちんとニジマスカラーにならなかった(曇り空や、朝夕の斜陽だったらそう見える)のはご愛嬌。自転車ならではの機動力を活かして桂川上流の柳原うどんへと移動し、柔らかなダシが効いた名物の吉田うどんをすすり込む。午前中めいっぱい魚たちと対峙した身体には焼肉定食(小うどん付き)がベストチョイスだった。
お腹を満たした後は、近くのスポットで軽く魚の様子を伺うようにキャスティングを楽しみ、ゆっくりとTopstoneにまたがって進路を北西に取る。普段はカーボングラベルロードでフライフィッシングxライドを楽しむ山崎さんも、「アルミなのにスッと走るし、嫌な硬さが無いから荷物を載せても身体に優しい感じがしますね」と、アルミTopstoneの実力にご満悦のご様子。キャノンデールのディーラー展示会でお馴染みの富士急ハイランドを横目に、河口湖北側に連なる山に分け入っていく。目指すは源流域に潜むイワナだ。
今まで楽しそうにTopstoneにまたがっていた山崎さんの表情がふと真剣になり、渓流をまたぐ橋の上からスポットを見極め、準備を整えてまるで忍者のように沢へと降りていく。警戒心の強いイワナだけに、その真剣具合はニジマスの時とは比ぶべくもない。だがしかし、さすがは経験豊富なフライフィッシャー山崎さん。素人目には魚がいるかどうかすらも判断できない流れへ美しくフライを投じるやいなや、電光石火のランディング。日の落ちかけた渓流に、釣り上げたイワナを手にした山崎さんの笑顔が光ったのだった。
ここ数年のグラベルバイクとバイクパッキングカルチャーの進化ぶりは、例えば釣りやキャンプなど、従来なら自転車が単なる移動手段となっていたジャンルと組み合わせてもなお、"走る喜び"を提供してくれるほどまで成熟をみせている。
ハイになってグラベルを攻めるだけではなく、今回のように一つアクティビティを組み合わせるだけで、週末遊びの可能性はぐんと広がってくれる。例えコーヒーセットを携行するだけでも、コンパクトなカメラを携えるだけでも良い。今だからこそ可能になった、自転車プラスアルファの組み合わせは、良い大人にこそ勧めたい贅沢な遊びだ。
ニジマスカラーのTopstoneでニジマスを釣りに行くというテーマ。それゆえ選択肢はアルミTopstoneに限られていたけれど、Lefty搭載カーボンTopstoneに乗っている自分からしても、アルミモデルのしっとりとした走りには感動を覚えた。脚にガツンとこない、CAAD13にも通ずるキャノンデール独特のアルミテイストに、積載力十二分の拡張性。アンダー20万円と侮るなかれ、Topstone2は、ゆったりとした大人のグラベル遊びに寄り添ってくれる素敵な一台だ。
Topstone 2詳細
通称「忍野エリア」として知られる桂川で、ヒロさんの持つフライロッドが激しく暴れた時、私はふと、以前友人から聞いたセリフを思い出していた。いい大人が全員大はしゃぎして、掛かったニジマスを丁寧にたぐり寄せて、記念撮影とリリースを済ませたらもう一度大はしゃぎ。もしかしたら、こうやって童心に帰れるのも、自転車と釣りの共通点なのかも、と私は思った。
ニジマス色のTopstoneでニジマスを釣りに行く
キャノンデールのグラベルバイク「Topstone」シリーズと共に、全国各地を駆け巡る連載の第二弾のテーマは「グラベルライドxフライフィッシング」。グラベルロードならではの機動力と積載力を武器に山中湖〜河口湖周辺に点在するフィッシングスポットを巡り、天然物の魚たちを釣り上げるという贅沢な釣行だ。
「今度出るアルミフレームのTopstoneがスゴく良い色なんです。レインボートラウトって名前の通り、ニジマスみたいに紫と黄色のグラデーションで。ニジマス色の自転車に乗ってニジマス釣りに行くって、めちゃくちゃ面白くないですか?」ことの発端はといえば、前回八ヶ岳周辺を走っていた時にキャノンデールのカズこと山本和弘さんが発した一言だった。
なにも気取ってなくて良い。一つのジョークにお金と時間をつぎ込んで、現実のものにしてしまうのは大人ならではの遊びだ。
八ヶ岳ロケのコースを引いてくれたRapha Japanの窪田博英(ヒロ)さんの紹介でRCC(Rapha Cycling Club)メンバー屈指のフライフィッシャー山崎さんと繋がり、そこからトントン拍子にロケ場所と日取りまでまとまった。目指すは河口湖周辺の、日本屈指の釣りスポット。こうして8月下旬の空も白む前の早朝に、スポット付近の道の駅に集まったのであった。
「忍野(おしの)って、おそらく日本で唯一、本場ヨーロッパに似た風景の中で釣りを楽しめる場所なんです」と、今回の案内役である山崎さんが教えてくれた。聞けば、ヨーロッパのフライフィッシングが渾々と湧き水が流れる平坦な川で行われるのに対し、急峻な山ばかりの日本は渓流を舞台とすることがほとんど。だから錘を使わずロッドを大きく振るフライフィッシングを楽しむには相当の技術が要る一方、河口湖から流れる水と、忍野八海の清涼な湧き水が混ざって流れる桂川の平らな"忍野エリア"は、魚にとっても、そして釣り人にとっても条件が整った場所だという。
Topstoneに乗った一団が、"朝マヅメ"を目指してクルージング。コンパクトに折りためるパックロッドをフロントバッグにくくりつけ、入渓の必需品と言えるウェーダー(防水ブーツ)やフライボックスはトップチューブバッグへ。つい数年前だったらかさばる荷物はリアキャリアや、あるいはバックパックに詰めなければならなかったけれど、こうして使ってみれば、バイクパッキング文化の偉大さにふと気づく。荷物の多くなりがちなバイクxフィッシングでの有効性、そしてTopstoneの拡張性はピカイチだった。
山崎さんの釣り仲間であるC&Fデザインの佐々木さんと合流し、贅沢にもプライベートロッジでフライフィッシングの手ほどきを受ける。手練れな方々の糸は綺麗なループを描いているけれど、いざロッドを振ってみると、錘を使わないキャスティングは非常に難易度高し。一方で運動神経の塊のごときカズさんは、佐々木さんが驚くほどあっと言う間にモノにしてしまう。上手い人ほどフォームが美しいのは、オフロードライディングもキャスティングも一緒ということなのだ。
まるで管理釣り場のごとき魚影の濃さに驚いたものの、人気地ゆえに何度も釣り上げられ、学習した魚たちのスレっぷりもこれまた全国トップクラスということで、口もとドンピシャにフライを投げても完全スルー。ヒロさんが初釣果を挙げたのは、魚と対峙すること1時間を経過した頃だった。
「フライって、他の釣りと違ってロッドと魚の間には錘とかルアーが無いので、純粋に魚とのやりとりが楽しめるんです」と、忍野の環境に惚れ込んだ佐々木さんが教えてくれた。なるほど、神経を研ぎ澄ませていくと、魚がフライを突っついたり、あるいは放したりする様子がダイレクトに伝わってくる。けれど当然、頭だってもの凄く疲れる。海釣りののどかなイメージとは違って、フライフィッシングは人と魚の真剣勝負。このあたりはやはり、路面と真剣勝負するオフロードライドと共通するものがあった。
ビギナーズラックと言うべきか?ヒロさんとカズさんには大きめのアタリ。よっしゃとばかりにニジマスカラーのTopstoneと撮影をしてみたけれど、正午の太陽光ゆえ、きちんとニジマスカラーにならなかった(曇り空や、朝夕の斜陽だったらそう見える)のはご愛嬌。自転車ならではの機動力を活かして桂川上流の柳原うどんへと移動し、柔らかなダシが効いた名物の吉田うどんをすすり込む。午前中めいっぱい魚たちと対峙した身体には焼肉定食(小うどん付き)がベストチョイスだった。
お腹を満たした後は、近くのスポットで軽く魚の様子を伺うようにキャスティングを楽しみ、ゆっくりとTopstoneにまたがって進路を北西に取る。普段はカーボングラベルロードでフライフィッシングxライドを楽しむ山崎さんも、「アルミなのにスッと走るし、嫌な硬さが無いから荷物を載せても身体に優しい感じがしますね」と、アルミTopstoneの実力にご満悦のご様子。キャノンデールのディーラー展示会でお馴染みの富士急ハイランドを横目に、河口湖北側に連なる山に分け入っていく。目指すは源流域に潜むイワナだ。
今まで楽しそうにTopstoneにまたがっていた山崎さんの表情がふと真剣になり、渓流をまたぐ橋の上からスポットを見極め、準備を整えてまるで忍者のように沢へと降りていく。警戒心の強いイワナだけに、その真剣具合はニジマスの時とは比ぶべくもない。だがしかし、さすがは経験豊富なフライフィッシャー山崎さん。素人目には魚がいるかどうかすらも判断できない流れへ美しくフライを投じるやいなや、電光石火のランディング。日の落ちかけた渓流に、釣り上げたイワナを手にした山崎さんの笑顔が光ったのだった。
ここ数年のグラベルバイクとバイクパッキングカルチャーの進化ぶりは、例えば釣りやキャンプなど、従来なら自転車が単なる移動手段となっていたジャンルと組み合わせてもなお、"走る喜び"を提供してくれるほどまで成熟をみせている。
ハイになってグラベルを攻めるだけではなく、今回のように一つアクティビティを組み合わせるだけで、週末遊びの可能性はぐんと広がってくれる。例えコーヒーセットを携行するだけでも、コンパクトなカメラを携えるだけでも良い。今だからこそ可能になった、自転車プラスアルファの組み合わせは、良い大人にこそ勧めたい贅沢な遊びだ。
使用バイク:Topstone 2
ニジマスカラーのTopstoneでニジマスを釣りに行くというテーマ。それゆえ選択肢はアルミTopstoneに限られていたけれど、Lefty搭載カーボンTopstoneに乗っている自分からしても、アルミモデルのしっとりとした走りには感動を覚えた。脚にガツンとこない、CAAD13にも通ずるキャノンデール独特のアルミテイストに、積載力十二分の拡張性。アンダー20万円と侮るなかれ、Topstone2は、ゆったりとした大人のグラベル遊びに寄り添ってくれる素敵な一台だ。
Topstone 2詳細
提供:キャノンデール・ジャパン text&photo:So.Isobe