2020/08/05(水) - 18:00
ピナレロの2021モデルでフルモデルチェンジした「PRINCE」シリーズと、7年ぶりにラインアップ復活を果たした「PARIS」の2車種を、インプレッションを交えてフィーチャーしていく。本編では、ピナレロのレーシングブランドとしての地位を確固たるものとした2つの名車の歴史を振り返る。
2010年に立ち上がったチームスカイ(現チームイネオス)を創設時からサポートし、ここ10年の間でツール・ド・フランスの総合優勝は7回、まさにツール常勝バイクブランドの名を欲しいままにしてきたピナレロ。歴史あるイタリアンブランドではあるが、初めてツール総合優勝を挙げたのは1988年と比較的最近のこと。そこから一気にレースシーンで注目を浴びる存在へと成長を遂げる。
当時から数々の強豪チームをサポートし、バネスト、テレコム、ファッサボルトロ、ケースデパーニュ…その名を聞けば自然とピナレロのバイクが思い浮かぶ往年のファンも少なくないはず。ツール5連覇(1991~1995年)という輝かしい戦績を残すミゲル・インドゥラインを始め、ヤン・ウルリッヒやオスカル・ペレイロなど、マイヨジョーヌ獲得者の名前を遡ればいかにピナレロが素晴らしい成績を挙げてきたかが分かるというもの。
今でこそ「DOGMA」シリーズが絶対的なフラッグシップとして君臨しているが、当時のレース最前線で活躍してきたバイクこそ、ピナレロが誇る名車「PRINCE(プリンス)」と「PARIS(パリ)」である。アルミフレーム全盛期にこの2台が幾多の勝利を収めたことで、レーシングブランドとしての地位を確固たるものにしたと言っても過言ではない。ブランドの礎を築いた伝統あるモデルが如何にして進化を遂げてきたのか、まずはその歴史を紐解いていきたい。
DOGMAを含む3つのシリーズで最初に誕生したのがPARISである。インドゥラインの走りを支えた当時のフラッグシップ、ケラルライトを参考にしたレーシングアルミバイクとして1994年にリリース。そのモデル名はツール・ド・フランスの終着地であるフランスのパリから取ったものであり、まさにマイヨジョーヌ獲得を使命としたバイクとして開発されたことが分かる。
レースシーンとしてもちょうどスチールからアルミへと切り替わっていくタイミングにあり、硬く剛性に優れた7000番アルミニウム合金と、当時では最先端とも言える大口径パイプを用いたPARISは瞬く間に勝利を量産。ウルリッヒの1997年ツール総合優勝もこのPARISによって成し遂げられた。
その後、振動吸収性と快適性を向上させるべく世界初のアルミ+カーボンバックフレームとして1998年にPRINCEが登場。現代では当たり前となったインテグラルヘッド採用バイクの元祖でもあり、ヘッドチューブの大径化による剛性強化も大きなアドバンテージに。またも時代の最先端をいったピナレロは、他社を寄せ付けない破竹の勢いで勝利を重ねることとなる。
1990年代後半のレースシーンを席巻したPARISとPRINCEは世界中で絶大な人気を誇り、市場では1年近い納期待ちになるなどロードレースファン憧れのバイクとしてピナレロのブランド力向上にも大きく貢献。今日に続くトップブランドの原点を作ったのは、まさしくPARISとPRINCEに他ならないという訳だ。
マイナーチェンジ版のPRINCE LSを挟みつつ、2002年にはピナレロを象徴するONDAフォークを初投入した「PRINCE SL」へと進化。美しい曲線を描く独自のフォークは、カーボンバックとともに振動吸収性を飛躍的に高め選手たちのさらなるパフォーマンス向上を実現した。このPRINCE SLのテクノロジーをベースとし、満を持して2003年に初代DOGMAがデビュー。メインフレームにマグネシウムを採用した唯一無二のバイクとして大きな注目を集めるとともに、ファッサボルトロの活躍によりDOGMAの名は広く浸透していくこととなる。
一旦カタログから姿を消したPARISも、ONDAフォーク+カーボンバックへアップデートされた「PARIS FP」でラインアップに復活。ハイドロフォーミングアルミチューブによる有機的なフォルムでも話題を呼んだモデルだ。
さらには、ピナレロのレーシングモデルとして初めてフルカーボンフレームを採用した「PARIS FP CARBON」を2006年にリリース。アレハンドロ・バルベルデ(当時ケースデパーニュ)のUCIプロツアー個人総合優勝にも貢献し、それまでの金属フレームだけでなくカーボンバイクにおける開発力も証明するセンセーショナルな1台となった。
まだまだピナレロの進化は止まらない。2008年には現在に至るまでタッグを組むカーボンファイバーのリーディングカンパニー、東レから独占供給された50HM1Kカーボンを使用し最高の性能を追求した「PRINCE CARBON」を生み出す。バルベルデが駆ったスペイン王者カラーのPRINCE CARBONを思い浮かべるファンもいることだろう。バルベルデはPRINCE CARBONとともに2006年に続く2度目のUCIプロツアーリーダーを獲得、ピナレロのカーボンバイクイメージを世に定着させた年となった。
フルカーボンのDOGMA60.1がフラッグシップとして2009年に登場すると、翌年にはそのDNAを受け継いだPARISが登場。この時からプロチームへの供給バイクはDOGMAシリーズに統一され、PARISはレースバイクの選択肢を増やすセカンドグレードという位置付けに変わった。
一方で、DOGMA特有の左右非対称フォルムを採用し、レーシングバイクとしての性能をブラッシュアップさせたPARISは、アマチュアレーサーから高い信頼を獲得するパフォーマンスモデルとして一線級の性能を堅持。ピナレロのラインアップを下支えする重要な存在として多くの愛用者を生んだ。
さらに進化したフラッグシップDOGMA65.1が誕生すると、そのテクノロジーを落とし込んだPRINCEがPARISと入れ替わりでラインアップに復活。その後一度はセカンドグレードの座をGANシリーズに譲ったものの、2018年にはDOGMA F10を踏襲したピュアレーシングモデルとして再び主要ラインアップにカムバック。そして今回、DOGMA F12から多くを受け継いだ第6世代に当たる新型PRINCEへとフルモデルチェンジ。時代に即してディスクブレーキモデルをメインに据えた最新型へと進化を遂げている。
また、2014モデルを最後にラインアップから姿を消していたPARISが7年ぶりに復活を果たしたことも大きなトピックだ。振り返ればPRINCEとPARISが揃って展開されていたのは2008年が最後のこと。最新のテクノロジーを数多く取り入れたピナレロ伝統のピュアレーサーという従来のPARISのイメージとは異なり、今回はややエンデュランス寄りのライドを楽しむエアロロードとして新登場している。
各バイクの詳細解説とインプレッションは次編からお伝えしていく。
※ペダルは別売
※ペダルは別売
※ペダルは別売
※ペダルは別売
ピナレロの伝統的な2つのバイク PRINCE&PARIS その歴史
2010年に立ち上がったチームスカイ(現チームイネオス)を創設時からサポートし、ここ10年の間でツール・ド・フランスの総合優勝は7回、まさにツール常勝バイクブランドの名を欲しいままにしてきたピナレロ。歴史あるイタリアンブランドではあるが、初めてツール総合優勝を挙げたのは1988年と比較的最近のこと。そこから一気にレースシーンで注目を浴びる存在へと成長を遂げる。
当時から数々の強豪チームをサポートし、バネスト、テレコム、ファッサボルトロ、ケースデパーニュ…その名を聞けば自然とピナレロのバイクが思い浮かぶ往年のファンも少なくないはず。ツール5連覇(1991~1995年)という輝かしい戦績を残すミゲル・インドゥラインを始め、ヤン・ウルリッヒやオスカル・ペレイロなど、マイヨジョーヌ獲得者の名前を遡ればいかにピナレロが素晴らしい成績を挙げてきたかが分かるというもの。
今でこそ「DOGMA」シリーズが絶対的なフラッグシップとして君臨しているが、当時のレース最前線で活躍してきたバイクこそ、ピナレロが誇る名車「PRINCE(プリンス)」と「PARIS(パリ)」である。アルミフレーム全盛期にこの2台が幾多の勝利を収めたことで、レーシングブランドとしての地位を確固たるものにしたと言っても過言ではない。ブランドの礎を築いた伝統あるモデルが如何にして進化を遂げてきたのか、まずはその歴史を紐解いていきたい。
ピナレロを世界屈指のトップブランドに押し上げた"名車"
DOGMAを含む3つのシリーズで最初に誕生したのがPARISである。インドゥラインの走りを支えた当時のフラッグシップ、ケラルライトを参考にしたレーシングアルミバイクとして1994年にリリース。そのモデル名はツール・ド・フランスの終着地であるフランスのパリから取ったものであり、まさにマイヨジョーヌ獲得を使命としたバイクとして開発されたことが分かる。
レースシーンとしてもちょうどスチールからアルミへと切り替わっていくタイミングにあり、硬く剛性に優れた7000番アルミニウム合金と、当時では最先端とも言える大口径パイプを用いたPARISは瞬く間に勝利を量産。ウルリッヒの1997年ツール総合優勝もこのPARISによって成し遂げられた。
その後、振動吸収性と快適性を向上させるべく世界初のアルミ+カーボンバックフレームとして1998年にPRINCEが登場。現代では当たり前となったインテグラルヘッド採用バイクの元祖でもあり、ヘッドチューブの大径化による剛性強化も大きなアドバンテージに。またも時代の最先端をいったピナレロは、他社を寄せ付けない破竹の勢いで勝利を重ねることとなる。
1990年代後半のレースシーンを席巻したPARISとPRINCEは世界中で絶大な人気を誇り、市場では1年近い納期待ちになるなどロードレースファン憧れのバイクとしてピナレロのブランド力向上にも大きく貢献。今日に続くトップブランドの原点を作ったのは、まさしくPARISとPRINCEに他ならないという訳だ。
ONDAフォークの投入とフルカーボン化でさらに進化
マイナーチェンジ版のPRINCE LSを挟みつつ、2002年にはピナレロを象徴するONDAフォークを初投入した「PRINCE SL」へと進化。美しい曲線を描く独自のフォークは、カーボンバックとともに振動吸収性を飛躍的に高め選手たちのさらなるパフォーマンス向上を実現した。このPRINCE SLのテクノロジーをベースとし、満を持して2003年に初代DOGMAがデビュー。メインフレームにマグネシウムを採用した唯一無二のバイクとして大きな注目を集めるとともに、ファッサボルトロの活躍によりDOGMAの名は広く浸透していくこととなる。
一旦カタログから姿を消したPARISも、ONDAフォーク+カーボンバックへアップデートされた「PARIS FP」でラインアップに復活。ハイドロフォーミングアルミチューブによる有機的なフォルムでも話題を呼んだモデルだ。
さらには、ピナレロのレーシングモデルとして初めてフルカーボンフレームを採用した「PARIS FP CARBON」を2006年にリリース。アレハンドロ・バルベルデ(当時ケースデパーニュ)のUCIプロツアー個人総合優勝にも貢献し、それまでの金属フレームだけでなくカーボンバイクにおける開発力も証明するセンセーショナルな1台となった。
まだまだピナレロの進化は止まらない。2008年には現在に至るまでタッグを組むカーボンファイバーのリーディングカンパニー、東レから独占供給された50HM1Kカーボンを使用し最高の性能を追求した「PRINCE CARBON」を生み出す。バルベルデが駆ったスペイン王者カラーのPRINCE CARBONを思い浮かべるファンもいることだろう。バルベルデはPRINCE CARBONとともに2006年に続く2度目のUCIプロツアーリーダーを獲得、ピナレロのカーボンバイクイメージを世に定着させた年となった。
DOGMAの形を引き継ぐピュアレーサーとしてラインアップの主要モデルに
フルカーボンのDOGMA60.1がフラッグシップとして2009年に登場すると、翌年にはそのDNAを受け継いだPARISが登場。この時からプロチームへの供給バイクはDOGMAシリーズに統一され、PARISはレースバイクの選択肢を増やすセカンドグレードという位置付けに変わった。
一方で、DOGMA特有の左右非対称フォルムを採用し、レーシングバイクとしての性能をブラッシュアップさせたPARISは、アマチュアレーサーから高い信頼を獲得するパフォーマンスモデルとして一線級の性能を堅持。ピナレロのラインアップを下支えする重要な存在として多くの愛用者を生んだ。
さらに進化したフラッグシップDOGMA65.1が誕生すると、そのテクノロジーを落とし込んだPRINCEがPARISと入れ替わりでラインアップに復活。その後一度はセカンドグレードの座をGANシリーズに譲ったものの、2018年にはDOGMA F10を踏襲したピュアレーシングモデルとして再び主要ラインアップにカムバック。そして今回、DOGMA F12から多くを受け継いだ第6世代に当たる新型PRINCEへとフルモデルチェンジ。時代に即してディスクブレーキモデルをメインに据えた最新型へと進化を遂げている。
また、2014モデルを最後にラインアップから姿を消していたPARISが7年ぶりに復活を果たしたことも大きなトピックだ。振り返ればPRINCEとPARISが揃って展開されていたのは2008年が最後のこと。最新のテクノロジーを数多く取り入れたピナレロ伝統のピュアレーサーという従来のPARISのイメージとは異なり、今回はややエンデュランス寄りのライドを楽しむエアロロードとして新登場している。
各バイクの詳細解説とインプレッションは次編からお伝えしていく。
ピナレロ2021 PRINCE&PARISラインアップ
PRINCE FX DISK
フレーム素材 | HighStrength Carbon T900 3K |
フォーク | ONDA with ForkFlap T900 ディスク |
ボトムブラケット | イタリアン |
サイズ | 43, 46, 49, 51.5, 53, 54.5, 56, 58 |
カラー | A232/RED, A231/BOB, A237/GRAY STEEL |
税抜価格 | フレームセット 469,000円 シマノULTEGRA Di2 11S 完成車 689,000円 シマノULTEGRA 11S 完成車 589,000円 |
PRINCE DISK
フレーム素材 | HighStrength Carbon T700 UD |
フォーク | ONDA with ForkFlap T700 ディスク |
ボトムブラケット | イタリアン |
サイズ | 43, 46, 49, 51.5, 53, 54.5, 56, 58 |
カラー | A211/BOB, A212/RED, A213/BLUE STEEL, A215/BOB PINK |
税抜価格 | フレームセット 369,000円 カンパニョーロ CHORUS 12S 完成車 639,000円 シマノULTEGRA 11S 完成車 489,000円 シマノ105 11S 完成車 439,000円 |
PRINCE (リムブレーキモデル)
フレーム素材 | HighStrength Carbon T700 UD |
フォーク | ONDA with ForkFlap T700 |
ボトムブラケット | イタリアン |
サイズ | 43, 46, 49, 51.5, 53, 54.5, 56, 58 |
カラー | A202/RED |
税抜価格 | シマノ105 11S 完成車 389,000円 |
PARIS DISK
フレーム素材 | HighStrength Carbon T600 UD |
フォーク | ONDA with ForkFlap T600 ディスク |
ボトムブラケット | イタリアン |
サイズ | 43, 46, 49, 51.5, 53, 54.5, 56, 58 |
カラー | A102/BLUE STEEL, A105/RED, A106/GRAY STEEL |
税抜価格 | シマノ105 Mix 11S 完成車 339,000円 |
提供:ピナレロジャパン 制作:シクロワイアード編集部