2020/08/12(水) - 12:00
2年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたピナレロの新型「PRINCE」シリーズを、インプレッションとともに徹底解説。DOGMA F12のテクノロジーを多く引き継ぎ、性能とデザインをブラッシュアップ。ケーブルのフル内装化も実現し最新世代らしいルックスにも磨きをかけたピュアレーシングバイクに迫る。
それまでのGANシリーズに取って代わり、2018年に登場した第5世代モデルからセカンドグレードの座に返り咲いたピナレロの「PRINCE(プリンス)」。特集記事1編目でもお伝えした通り、長きに渡ってロードラインアップを支えるピナレロバイクの一角として多くのライダーに愛されてきたモデルであり、現在はDOGMAシリーズに次ぐレーシングバイクという位置付けで展開されている。
2014年にデビューした第4世代以降、その時代のDOGMAを踏襲し性能を洗練させてきたPRINCEだが、今回も最新世代のDOGMA F12から多くのテクノロジーを継承している。フラッグシップと瓜二つで所有欲を掻き立てるデザインと、エアロ性能をさらに向上させたピュアレーサーらしい優れた走行性能を獲得するフルモデルチェンジを遂げている。
完全新設計された新型PRINCEで最も注目すべき点は、シフトとブレーキのケーブルフル内装システムが投入されたこと。DOGMA F12の開発によって誕生したTiCR(トータル・インテグレーテッド・ケーブル・ルーティング)と呼ばれるシステムを採用しており、コックピット周りのケーブルが外部に一切露出しないスマートなルックスを実現した。
このTiCRでは上側ヘッドベアリングをフォークコラムよりも大口径な1.5インチサイズとし、ハンドル&ステム内を通したケーブル類を、専用スペーサーによってコラム側面からフレーム内へ引き込むことでフル内装化を実現。すっきりとしたシルエットと共にハンドル周りの空気抵抗低減を叶えている。
DOGMA F12ではステム一体型のインテグレーテッドハンドルが純正オプションとして用意されていたが、新型PRINCEに合わせて内装システムに対応した新しいMOSTのハンドル/ステムも開発された。ハンドルとステムが別体式のため、スマートなコックピットながらフィッテングの自由度は犠牲にしていない。PRINCE完成車にはアルミモデルがアセンブルされるが、カスタム用のカーボンモデルも展開される。また、別売りでノーマルステムアダプターも用意されるため、内装対応でないハンドル/ステムも装着可能だ。
あらゆるライダーにジャストフィットなサイズ選択ができるようジオメトリーも刷新されており、スタックとリーチを調整することで前作よりも適応サイズの隙間をなくしている。プロ向けに作られたDOGMA F12と比較すると僅かにヘッドが長くリーチが短いという違いはあるものの、純然たるレーシングジオメトリーに設計されており、十分にアグレッシブなポジションを取ることができる。さらには、従来「EZ-fit」として展開されていたスモールサイズも通常ラインアップに追加。最小サイズが43からという小柄なライダーでも選びやすいサイズ展開へとアップデートされている。
フレームの細かな造形を見ていけば、ボリュームあるヘッド周りやトップチューブのベンド形状などにDOGMA F12の面影が色濃く残っていることが分かる。一方で、フロントフォークやシートステーの形状はPRINCE専用にリファインされており、金型を流用せずイチから作り上げている点にピナレロのこだわりが窺える。ダウンチューブもわずかに細身になっているほか、チェーンステーもよりマイルドな剛性感になるようカーボン積層を変更しているという。
空力性能を向上させるためにボトル取り付け部を凹ませたConcaveダウンチューブや、フォークエンドに設けられたフィン状の突起が整流効果を生み出すフォークフラップ、DI2ジャンクションなどをスマートに配置できるE-Linkシステム、ディスクブレーキに最適化された左右非対称設計など、ピナレロ独自のテクノロジーを余すことなく投入。ユーザビリティも考慮しシートポストのクランプ方式はFSC(フロントシートクランプ)を採用している。レーシングモデルらしく最大タイヤクリアランスは28Cの設定だ。
フレーム素材にT900 3Kカーボンを採用し他社ハイエンドに負けずとも劣らない性能を見せる「PRINCE FX」と、T700 UDカーボンを使用しハイクラスな走りとマイルドな乗り心地を両立させた「PRINCE」の2グレード展開。
いずれもディスクブレーキモデルがメインだが、ユーザーの幅広いニーズに応えたいとの想いからPRINCEのみリムブレーキモデルも用意している。チームイネオスが使い続けているDOGMA F12のリムブレーキモデルと同様に、キャリパー周辺の剛性を高めタイヤクリアランスも確保できるようダイレクトマウント方式を採用。ディスクバージョンと同じくTiCRも投入されており、フロントブレーキのケーブル以外はキレイに内装されるよう組み上げられる。
今回はPRINCE FX DISKとPRINCE DISKのシマノ機械式ULTEGRA完成車をテストバイクに用意。ピナレロバイクに造詣の深い小西裕介さん(なるしまフレンド)と永井孝樹さん(ポジティーボ)の2名がインプレッションした。
小西裕介(なるしまフレンド)
長年実業団登録選手として活躍し、国内トップレベルのレーサーとしてホビーレースで数多くの優勝経験を持つ。レース歴は20年以上に及び走れるスタッフとして信頼を集めながらも、メカニックの知識も豊富で走りからメカまで幅広いアドバイスをお客さんに提供する。歴代のDOGMAシリーズを乗り継ぎ、現在はDOGMA F12を愛車として駆る。
なるしまフレンドWEBサイト
永井孝樹(ポジティーボ)
世田谷区等々力に店舗を構える「ポジティーボ」の店主。タカムラ製作所でフレーム製作に携わりながら実業団選手として走り、全国規模の大会で多数の入賞経験を持つ。1998~2003年までイタリアのプロチームで専属メカニックを務め、ピナレロを駆るファッサボルトロのUCI世界チームランキング首位にも貢献。最近はJ SPORTSでのロードレース解説者としても活躍している。愛車はDOGMA F10だ。
ポジティーボWEBサイト
小西:PRINCE、PRINCE FXとカーボングレードが上がるごとによりレーシーなイメージが強くなりますね。といっても、全体的な乗り味の方向性はDOGMA F12を含めても大きくは変わりません。上のグレードになるほどパワーをかけた時の反応性の速さや加速感の鋭さが増す印象で、PRINCE FXに至ってはセカンドグレードと言えど他社ハイエンドと遜色ないレベルの性能を秘めていると感じました。
永井:ゆったり流して走っている時は、PRINCEもPRINCE FXもそこまで大差ない走りを見せてくれます。ただ、ドンッと踏み込むような大パワーで入力した時に両者の違いが顕著に出てくる。PRINCE FXの方がやっぱり入力に対して素早く反応してくれますね。コーナーの立ち上がりやスピードの加減速が多くなるレースシーンだとPRINCE FXの方が適していると言えるでしょう。
小西:今回試乗した2台のテストバイクはパーツアセンブルも同じで、純粋にフレームの差を感じることが出来ました。どちらも乗り心地は良いのですが、路面からの振動はコツコツと伝わってくる印象です。レースに出る人であれば逆にロードインフォメーションが掴みやすいと感じるでしょうし、乗っていて嫌な突き上げもなく快適性は十分だと思います。
永井:いやホントに、形状が同じなのにT700とT900というカーボンの質だけでこんなに違うんだと驚きました。基本的に両者とも剛性は不足なく確保されていて、BB周りもしっかりしている印象です。下位グレードだからと言ってPRINCEがヤワなこともありません。一方で、パワー伝達性や推進力で差があるためPRINCE FXの方が走りが軽く感じるのでしょう。さすがにFXはピュアレーサーという雰囲気がビシビシ伝わってきますね。
小西:DOGMA F12と比べても走りが劇的に変わるかと言われたらそうは感じません。PRINCEもPRINCE FXも良く出来たバイクだと思いますよ。ただ、DOGMA F12の方がより上質な乗り味で、剛性はあるのに足当たりはソフトなイメージなんです。PRINCEシリーズの方が角が残った荒々しさのような硬さを感じるため、足への反発感は逆にDOGMAよりもある印象です。
また、今回新たにケーブルフル内装となったことでハンドル周りの空気の抜け感が抜群に良くなりましたね。空気抵抗削減のためにはケーブル1本でも馬鹿にならないなと改めて感じた部分です。機械式シフトでも完全内装されていますが、ケーブルの引きが重かったりハンドリングに影響があったりするようなネガティブは全くありませんでした。もちろん、この構造なら電動変速で組むことをオススメしたいですが、しっかり調整してあげれば機械式で全然問題ないと思います。
永井:新しいコックピットシステムに対応させるためにヘッドもボリュームが増していて、見た目にも安心感が大きくなりましたね。いかにも剛性感が高そうなルックスなので、下りで思い切り倒し込んでいける精神的な信頼感がありますし、もちろん前ブレーキをハードにかけてもフロント周りはビクともしないので非常にコントローラブルでもあります。
さらに着目したいのがヘッドチューブの造形ですね。トップチューブが延長しているかのような段差があるデザインによって、ボリュームがありながら野暮ったさを感じさせないメリハリのあるルックスに仕上がっていると思います。フレームの全体像もそうですが、パッと見てピナレロだと分かるようなイタリアンデザインのセンスを感じさせる点にグッときますね。
小西:ケーブルがステムの中を通ってしまっているので、ハンドル/ステムのパーツ変更や定期メンテナンスという部分ではどうしても手間がかかりますね。事前にフィッティングを行うなどしてポジションを合わせてからパーツを組み付けていくことをオススメします。今作はハンドル/ステムが別体式なのでポジションも合わせやすいですし、後々のカスタムとしてDOGMA F12用のステム一体型ハンドルに換装してもカッコよく決まると思いますよ。
永井:総じて満足感の高い2モデルでしたが、よりハイスピードな走りを求めたりレース出場を考えていたりするならPRINCE FXを選びたいですね。FXの方が出せるパフォーマンスの幅も広いですから、さらに強くなって自分のものにしてやろうという乗りこなしていく楽しさもあると思います。
一方で、ハイエンドモデルの硬さや機敏な動きが必要ない人であれば、逆にPRINCEの方がストレスなくライドを楽しめることでしょう。ホビーレベルに寄り添った扱いやすさは大きな魅力だと思います。もしくはPRINCEでバイクの価格を抑えて、その分ホイールなどをグレードアップするのも良いでしょう。ただ、少しでも上のモデルが気になるならFXを選ぶべきです。この2モデルの間には明確な走りの違いがありますから。
小西:DOGMAシリーズは性能も価格も一級品、他社バイクと比較してもやはりプレミアムな位置付けですし、レースバイクとして使うのならPRINCE FXをDURA-ACEとか上級グレードコンポやカーボンホイールで組み上げるのも全然アリだと思います。それだけの価値があるバイクだと断言できますね。
PRINCEシリーズの全ての完成車で、予算に応じて好みのホイールをセレクトできるWUP(ホイールアップグレードプログラム)を利用可能だ。カンパニョーロ、フルクラム、デダ・エレメンティの各種ホイールが選択肢として用意され、完成車購入時から高性能なホイールで乗り出すことができる。基本パッケージのホイールからお得にアップグレードすることができる特別プログラムをぜひ活用してみては。
WUP(ホイールアップグレードプログラム)の詳細はこちら
ディスクブレーキモデルをメインに据えた第6世代PRINCE
それまでのGANシリーズに取って代わり、2018年に登場した第5世代モデルからセカンドグレードの座に返り咲いたピナレロの「PRINCE(プリンス)」。特集記事1編目でもお伝えした通り、長きに渡ってロードラインアップを支えるピナレロバイクの一角として多くのライダーに愛されてきたモデルであり、現在はDOGMAシリーズに次ぐレーシングバイクという位置付けで展開されている。
2014年にデビューした第4世代以降、その時代のDOGMAを踏襲し性能を洗練させてきたPRINCEだが、今回も最新世代のDOGMA F12から多くのテクノロジーを継承している。フラッグシップと瓜二つで所有欲を掻き立てるデザインと、エアロ性能をさらに向上させたピュアレーサーらしい優れた走行性能を獲得するフルモデルチェンジを遂げている。
完全新設計された新型PRINCEで最も注目すべき点は、シフトとブレーキのケーブルフル内装システムが投入されたこと。DOGMA F12の開発によって誕生したTiCR(トータル・インテグレーテッド・ケーブル・ルーティング)と呼ばれるシステムを採用しており、コックピット周りのケーブルが外部に一切露出しないスマートなルックスを実現した。
このTiCRでは上側ヘッドベアリングをフォークコラムよりも大口径な1.5インチサイズとし、ハンドル&ステム内を通したケーブル類を、専用スペーサーによってコラム側面からフレーム内へ引き込むことでフル内装化を実現。すっきりとしたシルエットと共にハンドル周りの空気抵抗低減を叶えている。
DOGMA F12ではステム一体型のインテグレーテッドハンドルが純正オプションとして用意されていたが、新型PRINCEに合わせて内装システムに対応した新しいMOSTのハンドル/ステムも開発された。ハンドルとステムが別体式のため、スマートなコックピットながらフィッテングの自由度は犠牲にしていない。PRINCE完成車にはアルミモデルがアセンブルされるが、カスタム用のカーボンモデルも展開される。また、別売りでノーマルステムアダプターも用意されるため、内装対応でないハンドル/ステムも装着可能だ。
あらゆるライダーにジャストフィットなサイズ選択ができるようジオメトリーも刷新されており、スタックとリーチを調整することで前作よりも適応サイズの隙間をなくしている。プロ向けに作られたDOGMA F12と比較すると僅かにヘッドが長くリーチが短いという違いはあるものの、純然たるレーシングジオメトリーに設計されており、十分にアグレッシブなポジションを取ることができる。さらには、従来「EZ-fit」として展開されていたスモールサイズも通常ラインアップに追加。最小サイズが43からという小柄なライダーでも選びやすいサイズ展開へとアップデートされている。
フレームの細かな造形を見ていけば、ボリュームあるヘッド周りやトップチューブのベンド形状などにDOGMA F12の面影が色濃く残っていることが分かる。一方で、フロントフォークやシートステーの形状はPRINCE専用にリファインされており、金型を流用せずイチから作り上げている点にピナレロのこだわりが窺える。ダウンチューブもわずかに細身になっているほか、チェーンステーもよりマイルドな剛性感になるようカーボン積層を変更しているという。
空力性能を向上させるためにボトル取り付け部を凹ませたConcaveダウンチューブや、フォークエンドに設けられたフィン状の突起が整流効果を生み出すフォークフラップ、DI2ジャンクションなどをスマートに配置できるE-Linkシステム、ディスクブレーキに最適化された左右非対称設計など、ピナレロ独自のテクノロジーを余すことなく投入。ユーザビリティも考慮しシートポストのクランプ方式はFSC(フロントシートクランプ)を採用している。レーシングモデルらしく最大タイヤクリアランスは28Cの設定だ。
フレーム素材にT900 3Kカーボンを採用し他社ハイエンドに負けずとも劣らない性能を見せる「PRINCE FX」と、T700 UDカーボンを使用しハイクラスな走りとマイルドな乗り心地を両立させた「PRINCE」の2グレード展開。
いずれもディスクブレーキモデルがメインだが、ユーザーの幅広いニーズに応えたいとの想いからPRINCEのみリムブレーキモデルも用意している。チームイネオスが使い続けているDOGMA F12のリムブレーキモデルと同様に、キャリパー周辺の剛性を高めタイヤクリアランスも確保できるようダイレクトマウント方式を採用。ディスクバージョンと同じくTiCRも投入されており、フロントブレーキのケーブル以外はキレイに内装されるよう組み上げられる。
今回はPRINCE FX DISKとPRINCE DISKのシマノ機械式ULTEGRA完成車をテストバイクに用意。ピナレロバイクに造詣の深い小西裕介さん(なるしまフレンド)と永井孝樹さん(ポジティーボ)の2名がインプレッションした。
インプレッションライダーのプロフィール
小西裕介(なるしまフレンド)
長年実業団登録選手として活躍し、国内トップレベルのレーサーとしてホビーレースで数多くの優勝経験を持つ。レース歴は20年以上に及び走れるスタッフとして信頼を集めながらも、メカニックの知識も豊富で走りからメカまで幅広いアドバイスをお客さんに提供する。歴代のDOGMAシリーズを乗り継ぎ、現在はDOGMA F12を愛車として駆る。
なるしまフレンドWEBサイト
永井孝樹(ポジティーボ)
世田谷区等々力に店舗を構える「ポジティーボ」の店主。タカムラ製作所でフレーム製作に携わりながら実業団選手として走り、全国規模の大会で多数の入賞経験を持つ。1998~2003年までイタリアのプロチームで専属メカニックを務め、ピナレロを駆るファッサボルトロのUCI世界チームランキング首位にも貢献。最近はJ SPORTSでのロードレース解説者としても活躍している。愛車はDOGMA F10だ。
ポジティーボWEBサイト
PRINCE FX&PRINCEインプレッション
他社ハイエンドバイクと勝負できる優れたパフォーマンスが魅力
小西:PRINCE、PRINCE FXとカーボングレードが上がるごとによりレーシーなイメージが強くなりますね。といっても、全体的な乗り味の方向性はDOGMA F12を含めても大きくは変わりません。上のグレードになるほどパワーをかけた時の反応性の速さや加速感の鋭さが増す印象で、PRINCE FXに至ってはセカンドグレードと言えど他社ハイエンドと遜色ないレベルの性能を秘めていると感じました。
永井:ゆったり流して走っている時は、PRINCEもPRINCE FXもそこまで大差ない走りを見せてくれます。ただ、ドンッと踏み込むような大パワーで入力した時に両者の違いが顕著に出てくる。PRINCE FXの方がやっぱり入力に対して素早く反応してくれますね。コーナーの立ち上がりやスピードの加減速が多くなるレースシーンだとPRINCE FXの方が適していると言えるでしょう。
小西:今回試乗した2台のテストバイクはパーツアセンブルも同じで、純粋にフレームの差を感じることが出来ました。どちらも乗り心地は良いのですが、路面からの振動はコツコツと伝わってくる印象です。レースに出る人であれば逆にロードインフォメーションが掴みやすいと感じるでしょうし、乗っていて嫌な突き上げもなく快適性は十分だと思います。
永井:いやホントに、形状が同じなのにT700とT900というカーボンの質だけでこんなに違うんだと驚きました。基本的に両者とも剛性は不足なく確保されていて、BB周りもしっかりしている印象です。下位グレードだからと言ってPRINCEがヤワなこともありません。一方で、パワー伝達性や推進力で差があるためPRINCE FXの方が走りが軽く感じるのでしょう。さすがにFXはピュアレーサーという雰囲気がビシビシ伝わってきますね。
小西:DOGMA F12と比べても走りが劇的に変わるかと言われたらそうは感じません。PRINCEもPRINCE FXも良く出来たバイクだと思いますよ。ただ、DOGMA F12の方がより上質な乗り味で、剛性はあるのに足当たりはソフトなイメージなんです。PRINCEシリーズの方が角が残った荒々しさのような硬さを感じるため、足への反発感は逆にDOGMAよりもある印象です。
また、今回新たにケーブルフル内装となったことでハンドル周りの空気の抜け感が抜群に良くなりましたね。空気抵抗削減のためにはケーブル1本でも馬鹿にならないなと改めて感じた部分です。機械式シフトでも完全内装されていますが、ケーブルの引きが重かったりハンドリングに影響があったりするようなネガティブは全くありませんでした。もちろん、この構造なら電動変速で組むことをオススメしたいですが、しっかり調整してあげれば機械式で全然問題ないと思います。
永井:新しいコックピットシステムに対応させるためにヘッドもボリュームが増していて、見た目にも安心感が大きくなりましたね。いかにも剛性感が高そうなルックスなので、下りで思い切り倒し込んでいける精神的な信頼感がありますし、もちろん前ブレーキをハードにかけてもフロント周りはビクともしないので非常にコントローラブルでもあります。
さらに着目したいのがヘッドチューブの造形ですね。トップチューブが延長しているかのような段差があるデザインによって、ボリュームがありながら野暮ったさを感じさせないメリハリのあるルックスに仕上がっていると思います。フレームの全体像もそうですが、パッと見てピナレロだと分かるようなイタリアンデザインのセンスを感じさせる点にグッときますね。
小西:ケーブルがステムの中を通ってしまっているので、ハンドル/ステムのパーツ変更や定期メンテナンスという部分ではどうしても手間がかかりますね。事前にフィッティングを行うなどしてポジションを合わせてからパーツを組み付けていくことをオススメします。今作はハンドル/ステムが別体式なのでポジションも合わせやすいですし、後々のカスタムとしてDOGMA F12用のステム一体型ハンドルに換装してもカッコよく決まると思いますよ。
永井:総じて満足感の高い2モデルでしたが、よりハイスピードな走りを求めたりレース出場を考えていたりするならPRINCE FXを選びたいですね。FXの方が出せるパフォーマンスの幅も広いですから、さらに強くなって自分のものにしてやろうという乗りこなしていく楽しさもあると思います。
一方で、ハイエンドモデルの硬さや機敏な動きが必要ない人であれば、逆にPRINCEの方がストレスなくライドを楽しめることでしょう。ホビーレベルに寄り添った扱いやすさは大きな魅力だと思います。もしくはPRINCEでバイクの価格を抑えて、その分ホイールなどをグレードアップするのも良いでしょう。ただ、少しでも上のモデルが気になるならFXを選ぶべきです。この2モデルの間には明確な走りの違いがありますから。
小西:DOGMAシリーズは性能も価格も一級品、他社バイクと比較してもやはりプレミアムな位置付けですし、レースバイクとして使うのならPRINCE FXをDURA-ACEとか上級グレードコンポやカーボンホイールで組み上げるのも全然アリだと思います。それだけの価値があるバイクだと断言できますね。
WUP(ホイールアップグレードプログラム)に対応
PRINCEシリーズの全ての完成車で、予算に応じて好みのホイールをセレクトできるWUP(ホイールアップグレードプログラム)を利用可能だ。カンパニョーロ、フルクラム、デダ・エレメンティの各種ホイールが選択肢として用意され、完成車購入時から高性能なホイールで乗り出すことができる。基本パッケージのホイールからお得にアップグレードすることができる特別プログラムをぜひ活用してみては。
WUP(ホイールアップグレードプログラム)の詳細はこちら
提供:ピナレロジャパン 制作:シクロワイアード編集部 ウェア協力:DOTOUT