現代ロードバイクの礎を築いたジャイアントのフラッグシップロード「TCR」がフルモデルチェンジ。圧倒的な登り性能はそのままに、重量剛性比や空力強化を遂げ刷新された。1997年にデビューした初代TCRからの系譜を振り返りつつ、第9世代TCRの概要をお伝えしていく。
 重量剛性比と空力性能を強化し生まれ変わった新型TCR photo:So.Isobe
重量剛性比と空力性能を強化し生まれ変わった新型TCR photo:So.Isobe
エアロモデルのPROPEL、エンデュランスモデルのDEFYを脇に従えるジャイアントのロードモデルの大黒柱、TCRの第9世代がベールを脱いだ。現代ロードバイクの手本となった初代を筆頭に、まずは歴代モデルと戦績を振り返りつつTCRを紐解いていきたい。
MTBフレームに着想を得たマイク・バロウズ(イギリス)が監修した初代TCRは、従来のロードバイクに比べ軽量かつ優れた剛性を実現するとともに、リア三角のコンパクト化も推し進めることで高い動力伝達と効率性を獲得。当時は他ブランドと比べてあまりにも優位だとして物議を醸すほどだったという。
しばらくの検討時間を経て最終的にUCIはこれを認可。スペインの強豪「チームONCE」によって1998年のツール・ド・フランスで実戦投入されると、ローラン・ジャラベールらの活躍によりコンパクトロードの優れた性能を証明してみせたのだ。
 スローピングフレーム採用の初代TCRを駆ったチームONCE (c)CorVos
スローピングフレーム採用の初代TCRを駆ったチームONCE (c)CorVos ISP仕様のTCRはTモバイルによってレース投入され幾多の勝利に貢献した (c)CorVos
ISP仕様のTCRはTモバイルによってレース投入され幾多の勝利に貢献した (c)CorVos
 現行モデルに通ずる多数のテクノロジーを採用した3世代前のTCR ADVANCED SL photo:Kei Tsuji
現行モデルに通ずる多数のテクノロジーを採用した3世代前のTCR ADVANCED SL photo:Kei Tsuji
スローピングフレームの走りとなったTCRは、その後2002年にフルカーボンモデルが開発され、エリック・ツァベルなど強豪選手を擁した「Tモバイル」のツール・ド・フランス3年連続チーム総合優勝(2004~2006年)に貢献。2005年には軽量化と快適性向上のために、現行モデルにも通づるインテグレーテッドシートポスト(ISP)を初搭載した。
2008年登場の第5世代では「MEGADRIVE」「OVERDRIVE」「POWERCORE」といった現在のジャイアントバイクには欠かせないテクノロジーが導入され、TCR ADVANCED SLを駆ったマーク・カヴェンディッシュ(当時コロンビア・ハイロード)がその年のツール・ド・フランスでステージ4勝。翌年のジロ・デ・イタリアではデニス・メンショフ(当時ラボバンク)が個人総合優勝を飾るなど、多くのビッグレースで輝かしい戦績を残した。
 トム・デュムラン(当時サンウェブ)の2017年ジロ・デ・イタリア制覇は記憶にも新しい photo:Kei Tsuji / TDWsport
トム・デュムラン(当時サンウェブ)の2017年ジロ・デ・イタリア制覇は記憶にも新しい photo:Kei Tsuji / TDWsport
 軽さを好みTCR ADVANCED SLを愛用したトム・デュムラン photo:Kei Tsuji / TDWsport
軽さを好みTCR ADVANCED SLを愛用したトム・デュムラン photo:Kei Tsuji / TDWsport サンウェブの活躍を支えた先代TCR ADVANCED SL photo:Makoto.AYANO
サンウェブの活躍を支えた先代TCR ADVANCED SL photo:Makoto.AYANO
2012年に登場した第6世代では超大径ステアリングコラム「OVERDRIVE 2」を投入し、フロント剛性とコントロール性の向上を果たすと、次なる第7世代では更なるシェイプアップを図り、重量剛性比と快適性の強化を実現。TCRをメインバイクにグランツールを戦ったサンウェブのトム・デュムランによる2017年ジロ・デ・イタリア総合優勝、同年のツール・ド・フランスでマイケル・マシューズがポイント賞+ワレン・バルギルが山岳賞を獲得したことも記憶に新しい。
そして、2016年にはTCR史上初となるディスクブレーキモデル(第8世代)が登場し、そこから4年を経た2020年、第9世代となる新型TCRがデビューを飾る。軽量化や剛性強化といった車体の性能向上はもちろんながら、本作はホイール、タイヤ、ハンドルバー、サドルなどの全要素が同時開発されていることが大きな特徴だ。
 グレッグ・ファンアーヴェルマートは昨年のロード世界選手権ですでに新型TCRを投入していた (c)CorVos
グレッグ・ファンアーヴェルマートは昨年のロード世界選手権ですでに新型TCRを投入していた (c)CorVos
 正式発表はなかったものの今シーズンからCCCチーム全員が新型TCRをレースに投入 (c)CorVos
正式発表はなかったものの今シーズンからCCCチーム全員が新型TCRをレースに投入 (c)CorVos
新型TCRは2019年8月序盤からチームへと供給されており、エースのグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー)は昨年のロード世界選手権で新型TCRのディスクブレーキ版を投入。今作は当初予定されていた東京オリンピックに合わせるべく、普段よりも入念なチームでの試用期間を経てデビューにこぎつけている。
 レッドとブルーの美しいカラーリングが特徴的なTCR ADVANCED SL 1 DISC KOM photo:So.Isobe
レッドとブルーの美しいカラーリングが特徴的なTCR ADVANCED SL 1 DISC KOM photo:So.Isobe
 ボトルを装着した際にエアロ効果が最大化するようダウンチューブ形状を改良 photo:So.Isobe
ボトルを装着した際にエアロ効果が最大化するようダウンチューブ形状を改良 photo:So.Isobe ディスクブレーキモデルは最大32mmのワイドなタイヤクリアランスを確保 photo:So.Isobe
ディスクブレーキモデルは最大32mmのワイドなタイヤクリアランスを確保 photo:So.Isobe
TCRが代々掲げてきたコンセプト「TOTAL RACE BIKE」は今回のモデルチェンジでも変わらない。しかしその中において"ベスト・クライミングバイク"として開発された先代モデルに対し、今回は"トータル(完全なる)レースバイク"として開発したという微妙な変化がある。プロライダーのパワーを受け止める剛性、厳しい山岳ステージでアドバンテージとなる軽量性、数ワットのパワー削減に貢献する空力性能、意図する通りに操れるコントロール性。ホイールやハンドルなど含むトータル設計は、これら全てを兼ね備えるための開発努力だという。
まず特筆されるのは、歴代のTCRが重視してきた”重量剛性比”をさらに強化したことだろう。軽さと硬さが生み出す効率的な推進力を得るべく、新素材の投入と今まで以上に無駄のないカーボンレイアップを施すことで、素材量を削減しつつも剛性を高めるという相反する要素を兼ね備えた(詳細テクノロジーは次頁にて紹介)。
 リア三角はコンパクト化されず先代のデザインを引き継いだ形状に photo:So.Isobe
リア三角はコンパクト化されず先代のデザインを引き継いだ形状に photo:So.Isobe 軽量化と快適性向上に寄与するISP。TCRが代々引き継いできたアイコニックなテクノロジーだ photo:So.Isobe
軽量化と快適性向上に寄与するISP。TCRが代々引き継いできたアイコニックなテクノロジーだ photo:So.Isobe エアロのために左右対称形状を採用したフロントフォーク photo:So.Isobe
エアロのために左右対称形状を採用したフロントフォーク photo:So.Isobe
トップグレードのADVANCED SL DISCはフレーム単体が765g(Mサイズ/ペイント込み)、フォークが330g(コラム未カット)で、フォークや小物を含むフレームセット比較では先代から140gも軽量化している。と同時に剛性の強化も実現しており、スペシャライズドのS-WORKS TARMAC DISCや、トレックのEMONDA SLR DISCと比較して20%前後も高い重量剛性比”118”という数値を叩き出している。
加えて、新型TCRで注力されたのがエアロダイナミクスの強化だ。先代から大きな変更がないようにも見えるフレーム形状だが、全てのチューブをイチから設計し直しており、実走環境を模した風洞実験とCFD解析を経て重量や剛性はそのままに空力性能が最大化するようデザインされている。
 シートポストの高さ調整がしやすいセカンドグレードのTCR ADVANCED PRO 1 DISC photo:So.Isobe
シートポストの高さ調整がしやすいセカンドグレードのTCR ADVANCED PRO 1 DISC photo:So.Isobe
 機械式シフトに対応したワイヤー取り込み口をダウンチューブに備える photo:So.Isobe
機械式シフトに対応したワイヤー取り込み口をダウンチューブに備える photo:So.Isobe ADVANCED PROグレードはシートポストを自由に上げ下げできる仕様 photo:So.Isobe
ADVANCED PROグレードはシートポストを自由に上げ下げできる仕様 photo:So.Isobe
具体的には従来ティアドロップ形状を採用していた箇所をカムテール形状に変更することで、今まで以上に広い範囲のヨー角においてエアロ性能を向上させている。ヘッドやフォーク、シートチューブ、シートポストの後端がカットされたデザインにアップデートされているのが見て分かるはず。200Wで40kmの距離を走行した際、先代に比べ34秒のタイム短縮を叶える空力性能を獲得した。
先代で秀逸だったハンドリング性能の維持も重要な要素の一つ。非常に細身なフロントフォークを採用しているにも関わらずねじれ剛性は約35%も増しており、ジャイアント独自のOVERDRIVE 2と相まってステアリングの安定感に寄与している。加えて、ディスクブレーキモデルはタイヤクリアランスが最大32mm幅まで対応。ワイドタイヤが路面をしっかりと捉え、思った通りのラインを描けるコントロール性を獲得している。
 多様なポジションでの快適性を追求した新作ショートノーズサドル「FLEET SLR」 photo:So.Isobe
多様なポジションでの快適性を追求した新作ショートノーズサドル「FLEET SLR」 photo:So.Isobe ドロップ部、上ハンドルともにエアロ形状を採用した新しい「CONTACT SLR」ハンドルバー photo:So.Isobe
ドロップ部、上ハンドルともにエアロ形状を採用した新しい「CONTACT SLR」ハンドルバー photo:So.Isobe
 CADEXホイールのテクノロジーを落とし込み性能を向上させた「SLR1 42」 photo:So.Isobe
CADEXホイールのテクノロジーを落とし込み性能を向上させた「SLR1 42」 photo:So.Isobe
フレームと合わせて各種コンポーネントも新作をアセンブル。CADEX(カデックス)のテクノロジーを落とし込んだ42mmハイトの「SLR1 42」ホイール、ドロップ部分とバートップのエアロ性能を高めた「CONTACT SLR」ハンドルバー、快適性とパワー伝達性に優れた「FLEET」ショートノーズサドルを搭載し、トータルでの走行性能アップを図っている。
既存ラインアップと同様に、カーボングレード順にADVANCED SL、ADVANCED PRO、ADVANCEDという3モデルで展開。いずれもディスクブレーキ/リムブレーキ仕様の両タイプが用意されている。ADVANCED SLの最上級完成車フレームのみ超軽量ペイントが施されているほか、近年ジャイアントが力を注ぐカメレオンペイントなどにも注目だ。
詳細なテクノロジー解説&開発者インタビューは次頁にて行いたい。
 TCR ADVANCED SL 0 DISC (c)ジャイアント
TCR ADVANCED SL 0 DISC (c)ジャイアント TCR ADVANCED SL 1 DISC KOM (c)ジャイアント
TCR ADVANCED SL 1 DISC KOM (c)ジャイアント
 TCR ADVANCED SL DISC FRAME SET (c)ジャイアント
TCR ADVANCED SL DISC FRAME SET (c)ジャイアント TCR ADVANCED SL FRAME SET (c)ジャイアント
TCR ADVANCED SL FRAME SET (c)ジャイアント
 TCR ADVANCED PRO 0 DISC (c)ジャイアント
TCR ADVANCED PRO 0 DISC (c)ジャイアント
 TCR ADVANCED PRO 1 DISC (c)ジャイアント
TCR ADVANCED PRO 1 DISC (c)ジャイアント TCR ADVANCED PRO TEAM DISC (c)ジャイアント
TCR ADVANCED PRO TEAM DISC (c)ジャイアント
 TCR ADVANCED PRO 1 (c)ジャイアント
TCR ADVANCED PRO 1 (c)ジャイアント
 TCR ADVANCED 2 DISC SE (c)ジャイアント
TCR ADVANCED 2 DISC SE (c)ジャイアント TCR ADVANCED 2 DISC SE (c)ジャイアント
TCR ADVANCED 2 DISC SE (c)ジャイアント
 TCR ADVANCED 1 KOM (c)ジャイアント
TCR ADVANCED 1 KOM (c)ジャイアント
 TCR ADVANCED 2 KOM (c)ジャイアント
TCR ADVANCED 2 KOM (c)ジャイアント TCR ADVANCED 2 KOM (c)ジャイアント
TCR ADVANCED 2 KOM (c)ジャイアント
      
      
  
            軽量性、剛性、空力性を強化した第9世代TCRがデビュー
 重量剛性比と空力性能を強化し生まれ変わった新型TCR photo:So.Isobe
重量剛性比と空力性能を強化し生まれ変わった新型TCR photo:So.IsobeエアロモデルのPROPEL、エンデュランスモデルのDEFYを脇に従えるジャイアントのロードモデルの大黒柱、TCRの第9世代がベールを脱いだ。現代ロードバイクの手本となった初代を筆頭に、まずは歴代モデルと戦績を振り返りつつTCRを紐解いていきたい。
スローピングフレームを採用した”トータルコンパクトロード=TCR”
1997年に登場した初代から一貫してジャイアントのフラッグシップを担ってきたレーシングロードバイクの「TCR」。”トータルコンパクトロード”のモデル名を冠したTCRは、ホリゾンタルフレームが一般的だった当時には革新的なスローピングフレームを採用して注目を集めた。MTBフレームに着想を得たマイク・バロウズ(イギリス)が監修した初代TCRは、従来のロードバイクに比べ軽量かつ優れた剛性を実現するとともに、リア三角のコンパクト化も推し進めることで高い動力伝達と効率性を獲得。当時は他ブランドと比べてあまりにも優位だとして物議を醸すほどだったという。
しばらくの検討時間を経て最終的にUCIはこれを認可。スペインの強豪「チームONCE」によって1998年のツール・ド・フランスで実戦投入されると、ローラン・ジャラベールらの活躍によりコンパクトロードの優れた性能を証明してみせたのだ。
 スローピングフレーム採用の初代TCRを駆ったチームONCE (c)CorVos
スローピングフレーム採用の初代TCRを駆ったチームONCE (c)CorVos ISP仕様のTCRはTモバイルによってレース投入され幾多の勝利に貢献した (c)CorVos
ISP仕様のTCRはTモバイルによってレース投入され幾多の勝利に貢献した (c)CorVos 現行モデルに通ずる多数のテクノロジーを採用した3世代前のTCR ADVANCED SL photo:Kei Tsuji
現行モデルに通ずる多数のテクノロジーを採用した3世代前のTCR ADVANCED SL photo:Kei Tsujiスローピングフレームの走りとなったTCRは、その後2002年にフルカーボンモデルが開発され、エリック・ツァベルなど強豪選手を擁した「Tモバイル」のツール・ド・フランス3年連続チーム総合優勝(2004~2006年)に貢献。2005年には軽量化と快適性向上のために、現行モデルにも通づるインテグレーテッドシートポスト(ISP)を初搭載した。
2008年登場の第5世代では「MEGADRIVE」「OVERDRIVE」「POWERCORE」といった現在のジャイアントバイクには欠かせないテクノロジーが導入され、TCR ADVANCED SLを駆ったマーク・カヴェンディッシュ(当時コロンビア・ハイロード)がその年のツール・ド・フランスでステージ4勝。翌年のジロ・デ・イタリアではデニス・メンショフ(当時ラボバンク)が個人総合優勝を飾るなど、多くのビッグレースで輝かしい戦績を残した。
 トム・デュムラン(当時サンウェブ)の2017年ジロ・デ・イタリア制覇は記憶にも新しい photo:Kei Tsuji / TDWsport
トム・デュムラン(当時サンウェブ)の2017年ジロ・デ・イタリア制覇は記憶にも新しい photo:Kei Tsuji / TDWsport 軽さを好みTCR ADVANCED SLを愛用したトム・デュムラン photo:Kei Tsuji / TDWsport
軽さを好みTCR ADVANCED SLを愛用したトム・デュムラン photo:Kei Tsuji / TDWsport サンウェブの活躍を支えた先代TCR ADVANCED SL photo:Makoto.AYANO
サンウェブの活躍を支えた先代TCR ADVANCED SL photo:Makoto.AYANO2012年に登場した第6世代では超大径ステアリングコラム「OVERDRIVE 2」を投入し、フロント剛性とコントロール性の向上を果たすと、次なる第7世代では更なるシェイプアップを図り、重量剛性比と快適性の強化を実現。TCRをメインバイクにグランツールを戦ったサンウェブのトム・デュムランによる2017年ジロ・デ・イタリア総合優勝、同年のツール・ド・フランスでマイケル・マシューズがポイント賞+ワレン・バルギルが山岳賞を獲得したことも記憶に新しい。
そして、2016年にはTCR史上初となるディスクブレーキモデル(第8世代)が登場し、そこから4年を経た2020年、第9世代となる新型TCRがデビューを飾る。軽量化や剛性強化といった車体の性能向上はもちろんながら、本作はホイール、タイヤ、ハンドルバー、サドルなどの全要素が同時開発されていることが大きな特徴だ。
 グレッグ・ファンアーヴェルマートは昨年のロード世界選手権ですでに新型TCRを投入していた (c)CorVos
グレッグ・ファンアーヴェルマートは昨年のロード世界選手権ですでに新型TCRを投入していた (c)CorVos 正式発表はなかったものの今シーズンからCCCチーム全員が新型TCRをレースに投入 (c)CorVos
正式発表はなかったものの今シーズンからCCCチーム全員が新型TCRをレースに投入 (c)CorVos新型TCRは2019年8月序盤からチームへと供給されており、エースのグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー)は昨年のロード世界選手権で新型TCRのディスクブレーキ版を投入。今作は当初予定されていた東京オリンピックに合わせるべく、普段よりも入念なチームでの試用期間を経てデビューにこぎつけている。
トータルレースバイクとして磨きをかけた第9世代TCR
 レッドとブルーの美しいカラーリングが特徴的なTCR ADVANCED SL 1 DISC KOM photo:So.Isobe
レッドとブルーの美しいカラーリングが特徴的なTCR ADVANCED SL 1 DISC KOM photo:So.Isobe ボトルを装着した際にエアロ効果が最大化するようダウンチューブ形状を改良 photo:So.Isobe
ボトルを装着した際にエアロ効果が最大化するようダウンチューブ形状を改良 photo:So.Isobe ディスクブレーキモデルは最大32mmのワイドなタイヤクリアランスを確保 photo:So.Isobe
ディスクブレーキモデルは最大32mmのワイドなタイヤクリアランスを確保 photo:So.IsobeTCRが代々掲げてきたコンセプト「TOTAL RACE BIKE」は今回のモデルチェンジでも変わらない。しかしその中において"ベスト・クライミングバイク"として開発された先代モデルに対し、今回は"トータル(完全なる)レースバイク"として開発したという微妙な変化がある。プロライダーのパワーを受け止める剛性、厳しい山岳ステージでアドバンテージとなる軽量性、数ワットのパワー削減に貢献する空力性能、意図する通りに操れるコントロール性。ホイールやハンドルなど含むトータル設計は、これら全てを兼ね備えるための開発努力だという。
まず特筆されるのは、歴代のTCRが重視してきた”重量剛性比”をさらに強化したことだろう。軽さと硬さが生み出す効率的な推進力を得るべく、新素材の投入と今まで以上に無駄のないカーボンレイアップを施すことで、素材量を削減しつつも剛性を高めるという相反する要素を兼ね備えた(詳細テクノロジーは次頁にて紹介)。
 リア三角はコンパクト化されず先代のデザインを引き継いだ形状に photo:So.Isobe
リア三角はコンパクト化されず先代のデザインを引き継いだ形状に photo:So.Isobe 軽量化と快適性向上に寄与するISP。TCRが代々引き継いできたアイコニックなテクノロジーだ photo:So.Isobe
軽量化と快適性向上に寄与するISP。TCRが代々引き継いできたアイコニックなテクノロジーだ photo:So.Isobe エアロのために左右対称形状を採用したフロントフォーク photo:So.Isobe
エアロのために左右対称形状を採用したフロントフォーク photo:So.IsobeトップグレードのADVANCED SL DISCはフレーム単体が765g(Mサイズ/ペイント込み)、フォークが330g(コラム未カット)で、フォークや小物を含むフレームセット比較では先代から140gも軽量化している。と同時に剛性の強化も実現しており、スペシャライズドのS-WORKS TARMAC DISCや、トレックのEMONDA SLR DISCと比較して20%前後も高い重量剛性比”118”という数値を叩き出している。
加えて、新型TCRで注力されたのがエアロダイナミクスの強化だ。先代から大きな変更がないようにも見えるフレーム形状だが、全てのチューブをイチから設計し直しており、実走環境を模した風洞実験とCFD解析を経て重量や剛性はそのままに空力性能が最大化するようデザインされている。
 シートポストの高さ調整がしやすいセカンドグレードのTCR ADVANCED PRO 1 DISC photo:So.Isobe
シートポストの高さ調整がしやすいセカンドグレードのTCR ADVANCED PRO 1 DISC photo:So.Isobe 機械式シフトに対応したワイヤー取り込み口をダウンチューブに備える photo:So.Isobe
機械式シフトに対応したワイヤー取り込み口をダウンチューブに備える photo:So.Isobe ADVANCED PROグレードはシートポストを自由に上げ下げできる仕様 photo:So.Isobe
ADVANCED PROグレードはシートポストを自由に上げ下げできる仕様 photo:So.Isobe具体的には従来ティアドロップ形状を採用していた箇所をカムテール形状に変更することで、今まで以上に広い範囲のヨー角においてエアロ性能を向上させている。ヘッドやフォーク、シートチューブ、シートポストの後端がカットされたデザインにアップデートされているのが見て分かるはず。200Wで40kmの距離を走行した際、先代に比べ34秒のタイム短縮を叶える空力性能を獲得した。
先代で秀逸だったハンドリング性能の維持も重要な要素の一つ。非常に細身なフロントフォークを採用しているにも関わらずねじれ剛性は約35%も増しており、ジャイアント独自のOVERDRIVE 2と相まってステアリングの安定感に寄与している。加えて、ディスクブレーキモデルはタイヤクリアランスが最大32mm幅まで対応。ワイドタイヤが路面をしっかりと捉え、思った通りのラインを描けるコントロール性を獲得している。
 多様なポジションでの快適性を追求した新作ショートノーズサドル「FLEET SLR」 photo:So.Isobe
多様なポジションでの快適性を追求した新作ショートノーズサドル「FLEET SLR」 photo:So.Isobe ドロップ部、上ハンドルともにエアロ形状を採用した新しい「CONTACT SLR」ハンドルバー photo:So.Isobe
ドロップ部、上ハンドルともにエアロ形状を採用した新しい「CONTACT SLR」ハンドルバー photo:So.Isobe CADEXホイールのテクノロジーを落とし込み性能を向上させた「SLR1 42」 photo:So.Isobe
CADEXホイールのテクノロジーを落とし込み性能を向上させた「SLR1 42」 photo:So.Isobeフレームと合わせて各種コンポーネントも新作をアセンブル。CADEX(カデックス)のテクノロジーを落とし込んだ42mmハイトの「SLR1 42」ホイール、ドロップ部分とバートップのエアロ性能を高めた「CONTACT SLR」ハンドルバー、快適性とパワー伝達性に優れた「FLEET」ショートノーズサドルを搭載し、トータルでの走行性能アップを図っている。
既存ラインアップと同様に、カーボングレード順にADVANCED SL、ADVANCED PRO、ADVANCEDという3モデルで展開。いずれもディスクブレーキ/リムブレーキ仕様の両タイプが用意されている。ADVANCED SLの最上級完成車フレームのみ超軽量ペイントが施されているほか、近年ジャイアントが力を注ぐカメレオンペイントなどにも注目だ。
詳細なテクノロジー解説&開発者インタビューは次頁にて行いたい。
ジャイアント 新型TCRラインアップ
TCR ADVANCED SL
 TCR ADVANCED SL 0 DISC (c)ジャイアント
TCR ADVANCED SL 0 DISC (c)ジャイアント TCR ADVANCED SL 1 DISC KOM (c)ジャイアント
TCR ADVANCED SL 1 DISC KOM (c)ジャイアント TCR ADVANCED SL DISC FRAME SET (c)ジャイアント
TCR ADVANCED SL DISC FRAME SET (c)ジャイアント TCR ADVANCED SL FRAME SET (c)ジャイアント
TCR ADVANCED SL FRAME SET (c)ジャイアント| モデル | コンポーネント | 税抜価格 | 
| ADVANCED SL 0 DISC | SRAM RED eTap AXS | 1,200,000円 | 
| ADVANCED SL 1 DISC KOM | SHIMANO ULTEGRA Di2 | 740,000円 | 
| ADVANCED SL DISC FRAME SET | - | 360,000円 | 
| ADVANCED SL FRAME SET | - | 330,000円 | 
TCR ADVANCED PRO
 TCR ADVANCED PRO 0 DISC (c)ジャイアント
TCR ADVANCED PRO 0 DISC (c)ジャイアント TCR ADVANCED PRO 1 DISC (c)ジャイアント
TCR ADVANCED PRO 1 DISC (c)ジャイアント TCR ADVANCED PRO TEAM DISC (c)ジャイアント
TCR ADVANCED PRO TEAM DISC (c)ジャイアント TCR ADVANCED PRO 1 (c)ジャイアント
TCR ADVANCED PRO 1 (c)ジャイアント| モデル | コンポーネント | 税抜価格 | 
| ADVANCED PRO 0 DISC | SHIMANO ULTEGRA Di2 | 620,000円 | 
| ADVANCED PRO 1 DISC | SHIMANO ULTEGRA | 450,000円 | 
| ADVANCED PRO TEAM DISC | SHIMANO ULTEGRA | 450,000円 | 
| ADVANCED PRO 1 | SHIMANO ULTEGRA | 400,000円 | 
TCR ADVANCED
 TCR ADVANCED 2 DISC SE (c)ジャイアント
TCR ADVANCED 2 DISC SE (c)ジャイアント TCR ADVANCED 2 DISC SE (c)ジャイアント
TCR ADVANCED 2 DISC SE (c)ジャイアント TCR ADVANCED 1 KOM (c)ジャイアント
TCR ADVANCED 1 KOM (c)ジャイアント TCR ADVANCED 2 KOM (c)ジャイアント
TCR ADVANCED 2 KOM (c)ジャイアント TCR ADVANCED 2 KOM (c)ジャイアント
TCR ADVANCED 2 KOM (c)ジャイアント| モデル | コンポーネント | 税抜価格 | 
| ADVANCED 2 DISC SE | SHIMANO 105 | 265,000円 | 
| ADVANCED 1 KOM | SHIMANO ULTEGRA | 260,000円 | 
| ADVANCED 2 KOM | SHIMANO 105 | 210,000円 | 
提供:ジャイアント・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部
      
   
 
 
 
 
 
 
