2019/11/29(金) - 10:36
プレゼンテーションを受けた我々ジャーナリスト一同は、真新しいRoSコレクションを身にまとって1日半のライドに出かけることとなった。オーストリア・イタリア国境にまたがる超級山岳「ティンメルスヨッホ(標高2509m)」を超える行程で感じた、新作ウェアのインプレッションとは?
RoSコレクションのプレゼンテーションの場に選ばれたのは、オーストリア南チロル地方の、イタリアと国境を隔てる街ゾルデン。アルペンスキーに詳しい方であればFISワールドカップが開催される場所として聞き覚えがあるかもしれない。昨年ロード世界選手権が開催されたインスブルックは隣町で、周囲を取り囲むのは標高2800m級のアルプスの山々。つまり、ひとたびライドに出かければ必然的に険しいアップダウンが待っている。
標高1300mオーバーのゾルデン。9月半ばであっても朝晩は0℃近くまで冷え込む一方、最高気温は20℃以上にも達する。山岳地帯であることはすなわち天気も変わりやすく、Rain or Shine(全天候)を掲げるRoSコレクションのテストにはうってつけだ。カステリ本社から250km離れた場所でプレゼンを開いた理由はここにある。
結果的に2日間雨が降ることはなかったものの、寒暖差の激しい天候の中で、あるいは22kmもの登坂区間や、95km/hにも達したダウンヒルで「全天候対応」たる理由を感じるには十分だった。RoSコレクションは「Gabba=レインジャージ」というイメージを覆す汎用性の高いプロテクションジャージだ。
当日はGabbaもしくはPERFETTO RoS LONG SLEEVEを着るにはやや暑すぎたため、夏用のメッシュベースレイヤーの上に、中厚手の裏起毛素材を使ったMID WEIGHT SS JERSEYを着用し、PERFETTO RoS LIGHTのベスト版「PERFETTO RoS VEST」の重ね着が推奨された。肝心の2アイテムは帰国後に雨中ライドで着用を行なった。
ボトムは同じくRoSコレクションに属し、膝上まで裾が伸びた裏起毛ショーツの「NANO FLEX PRO 2 OMLOOP」(伸びやかで柔らかい履き心地に感動した)。腕にはカステリ自慢のNANO FLEX+アームウォーマーを被せると、春先のクラシックレースを走るプロ選手と同じコーディネイトが完成する。プロトタイプや決戦用カスタムオーダージャージを除き、プロ選手と全く同じアイテムを揃えられる点は、カステリが持つ利点の一つだ。
同じ生地を使うGabbaとPERFETTO RoS LONG SLEEVEの2アイテム。発表会当日に試したPERFETTO RoS LIGHTシリーズ、そしてNANO FLEX PRO 2 OMLOOPショーツ。これら全てのRoSコレクションの基本アイテムに袖(あるいは脚)を通して驚くのが、ハードなプロテクション性能を感じさせない柔らかい着心地だ。
以前にも他社のGabbaと同コンセプトのジャージを試したことがあるが、生地が硬く、脱ぎ着や乗車姿勢でない時に窮屈な思いをしたことを思い出す。さすがにメリノ系ジャージほどの柔らかさは無いが、普通に立って歩いている時ですら、背筋が縮こまる感覚がほとんど無い。
GabbaとPERFETTO RoS LONG SLEEVEの前側に使われる素材「GORE-TEX INFINIUM 205 WARM」は2方向ストレッチだが、ジャージをよく見ると横方向に伸びるように配置され、シワでストレスを感じやすい脇〜袖下部分には、全方向に伸びるフリース素材が使われていたりと作りが細かい。止水シールの圧着や裏側の縫い目も丁寧だ。
発表会当日には、先述したコーディネイトで標高2509mのティンメルスヨッホを目指すライドが行われた。緩やかに高度を増す谷沿いを集団走行でスピーディーにこなし、およそ22kmの登坂区間が始まると、各々のペースで頂上を目指す。
今回のテストライドには、世界選手権を控えたジャンニ・モスコン(イタリア、チームイネオス)がゲスト参加していた(が、コンディションを整えるため、結果的には集団を破壊するだけ破壊して遥か彼方先に消えてしまうことに)。一度後方に戻った彼と走りながら言葉を交わしたが、新しいGabbaとPERFETTOシリーズには非常に満足しており、以前よりも使用頻度が増えたと言う。
ベストのジッパーを開け放ち、這々の体で頂上のカフェにたどり着いた後は、コーヒータイムを挟んで一気にもと来たルートを駆け下りる。スピードメーターが95km/hを指したダウンヒルではプロ使用率が高いIDRO 2 JACKETを重ね着したが、頂上で5℃だったこの下りでも、結果的にMID WEIGHT SS JERSEYとPERFETTO RoS VESTだけで十分な暖かさ。ウェア自体の伸縮性が高いため、トップチューブ上で身体を丸めるDHポジションを取っても変な突っ張りを感じることはなかった。
肝心のGabbaとPERFETTO RoS LONG SLEEVEの雨天性能は帰国後に試したが、供給外チームの選手が〜というストーリーに表現されるように、まさに文句の付けようのないものだった。特にGORE-TEX INFINIUM 205 WARMを使う前側は「100%ウォータープルーフ」とのうたい文句通り、どんなに土砂降りだろうが水を通さない。しかもそれでいて、他社の類似製品を着た際に感じた、雨ガッパを着ているような蒸れ感をほとんど感じないのだ。
雨を不快に感じることなく、むしろ楽しみながら、薄着で走れるGabbaとPERFETTO RoS LONG SLEEVEのポテンシャルは偉大だ。私自身先代Gabbaを試した経験はないが、ここはモスコンの「耐候性は確実に上がっている」という言葉を信じたい。身の回りにも初代Gabbaを使い続けているユーザーがいるが、耐久性に一日の長があるのもカステリの優れどころだ。
トッププロなら各種製品を着比べることができるが、懐具合に限りがある一般サイクリストならそうもいかない。もし私が新型のRoSコレクション(Gabba RoS、PERFETTO RoS LONG SLEEVE、PERFETTO RoS LIGHT、PERFETTO RoS VEST)の中で一つだけオススメするとしたら、Gabba RoSを選ぶだろう。半袖だから多少暑くても乗り切れるし、寒いコンディションではアームウォーマーを付けることでPERFETTO RoS LONG SLEEVEの代わりにもなってくれる。レインウェアとしてはもちろん、インナーウェアの組み合わせ次第で厳冬期前の耐寒ウェアとして使えることを踏まえれば、2.6万円(税抜)というプライスは非常に良心的だと言えるだろう。
<今回のプレスミーティングをまとめた公式ムービー>
もうどんな天候であっても、Gabba、もしくはPERFETTOが一枚あれば心配ない。今回のモデルチェンジによって、RoSコレクションの地位はさらなる不動のものとなりそうだ。
次の最終話では、カステリのブランドマネージャーを務めるスティーブ・スミス氏へのインタビューを紹介する。チームイネオスとの関わりや、カステリブランドについても聞いた。
気温5℃から20℃まで。オーストリア国境の超級山岳を目指したテストライド
RoSコレクションのプレゼンテーションの場に選ばれたのは、オーストリア南チロル地方の、イタリアと国境を隔てる街ゾルデン。アルペンスキーに詳しい方であればFISワールドカップが開催される場所として聞き覚えがあるかもしれない。昨年ロード世界選手権が開催されたインスブルックは隣町で、周囲を取り囲むのは標高2800m級のアルプスの山々。つまり、ひとたびライドに出かければ必然的に険しいアップダウンが待っている。
標高1300mオーバーのゾルデン。9月半ばであっても朝晩は0℃近くまで冷え込む一方、最高気温は20℃以上にも達する。山岳地帯であることはすなわち天気も変わりやすく、Rain or Shine(全天候)を掲げるRoSコレクションのテストにはうってつけだ。カステリ本社から250km離れた場所でプレゼンを開いた理由はここにある。
結果的に2日間雨が降ることはなかったものの、寒暖差の激しい天候の中で、あるいは22kmもの登坂区間や、95km/hにも達したダウンヒルで「全天候対応」たる理由を感じるには十分だった。RoSコレクションは「Gabba=レインジャージ」というイメージを覆す汎用性の高いプロテクションジャージだ。
当日はGabbaもしくはPERFETTO RoS LONG SLEEVEを着るにはやや暑すぎたため、夏用のメッシュベースレイヤーの上に、中厚手の裏起毛素材を使ったMID WEIGHT SS JERSEYを着用し、PERFETTO RoS LIGHTのベスト版「PERFETTO RoS VEST」の重ね着が推奨された。肝心の2アイテムは帰国後に雨中ライドで着用を行なった。
ボトムは同じくRoSコレクションに属し、膝上まで裾が伸びた裏起毛ショーツの「NANO FLEX PRO 2 OMLOOP」(伸びやかで柔らかい履き心地に感動した)。腕にはカステリ自慢のNANO FLEX+アームウォーマーを被せると、春先のクラシックレースを走るプロ選手と同じコーディネイトが完成する。プロトタイプや決戦用カスタムオーダージャージを除き、プロ選手と全く同じアイテムを揃えられる点は、カステリが持つ利点の一つだ。
同じ生地を使うGabbaとPERFETTO RoS LONG SLEEVEの2アイテム。発表会当日に試したPERFETTO RoS LIGHTシリーズ、そしてNANO FLEX PRO 2 OMLOOPショーツ。これら全てのRoSコレクションの基本アイテムに袖(あるいは脚)を通して驚くのが、ハードなプロテクション性能を感じさせない柔らかい着心地だ。
以前にも他社のGabbaと同コンセプトのジャージを試したことがあるが、生地が硬く、脱ぎ着や乗車姿勢でない時に窮屈な思いをしたことを思い出す。さすがにメリノ系ジャージほどの柔らかさは無いが、普通に立って歩いている時ですら、背筋が縮こまる感覚がほとんど無い。
GabbaとPERFETTO RoS LONG SLEEVEの前側に使われる素材「GORE-TEX INFINIUM 205 WARM」は2方向ストレッチだが、ジャージをよく見ると横方向に伸びるように配置され、シワでストレスを感じやすい脇〜袖下部分には、全方向に伸びるフリース素材が使われていたりと作りが細かい。止水シールの圧着や裏側の縫い目も丁寧だ。
発表会当日には、先述したコーディネイトで標高2509mのティンメルスヨッホを目指すライドが行われた。緩やかに高度を増す谷沿いを集団走行でスピーディーにこなし、およそ22kmの登坂区間が始まると、各々のペースで頂上を目指す。
今回のテストライドには、世界選手権を控えたジャンニ・モスコン(イタリア、チームイネオス)がゲスト参加していた(が、コンディションを整えるため、結果的には集団を破壊するだけ破壊して遥か彼方先に消えてしまうことに)。一度後方に戻った彼と走りながら言葉を交わしたが、新しいGabbaとPERFETTOシリーズには非常に満足しており、以前よりも使用頻度が増えたと言う。
ベストのジッパーを開け放ち、這々の体で頂上のカフェにたどり着いた後は、コーヒータイムを挟んで一気にもと来たルートを駆け下りる。スピードメーターが95km/hを指したダウンヒルではプロ使用率が高いIDRO 2 JACKETを重ね着したが、頂上で5℃だったこの下りでも、結果的にMID WEIGHT SS JERSEYとPERFETTO RoS VESTだけで十分な暖かさ。ウェア自体の伸縮性が高いため、トップチューブ上で身体を丸めるDHポジションを取っても変な突っ張りを感じることはなかった。
肝心のGabbaとPERFETTO RoS LONG SLEEVEの雨天性能は帰国後に試したが、供給外チームの選手が〜というストーリーに表現されるように、まさに文句の付けようのないものだった。特にGORE-TEX INFINIUM 205 WARMを使う前側は「100%ウォータープルーフ」とのうたい文句通り、どんなに土砂降りだろうが水を通さない。しかもそれでいて、他社の類似製品を着た際に感じた、雨ガッパを着ているような蒸れ感をほとんど感じないのだ。
雨を不快に感じることなく、むしろ楽しみながら、薄着で走れるGabbaとPERFETTO RoS LONG SLEEVEのポテンシャルは偉大だ。私自身先代Gabbaを試した経験はないが、ここはモスコンの「耐候性は確実に上がっている」という言葉を信じたい。身の回りにも初代Gabbaを使い続けているユーザーがいるが、耐久性に一日の長があるのもカステリの優れどころだ。
トッププロなら各種製品を着比べることができるが、懐具合に限りがある一般サイクリストならそうもいかない。もし私が新型のRoSコレクション(Gabba RoS、PERFETTO RoS LONG SLEEVE、PERFETTO RoS LIGHT、PERFETTO RoS VEST)の中で一つだけオススメするとしたら、Gabba RoSを選ぶだろう。半袖だから多少暑くても乗り切れるし、寒いコンディションではアームウォーマーを付けることでPERFETTO RoS LONG SLEEVEの代わりにもなってくれる。レインウェアとしてはもちろん、インナーウェアの組み合わせ次第で厳冬期前の耐寒ウェアとして使えることを踏まえれば、2.6万円(税抜)というプライスは非常に良心的だと言えるだろう。
<今回のプレスミーティングをまとめた公式ムービー>
もうどんな天候であっても、Gabba、もしくはPERFETTOが一枚あれば心配ない。今回のモデルチェンジによって、RoSコレクションの地位はさらなる不動のものとなりそうだ。
次の最終話では、カステリのブランドマネージャーを務めるスティーブ・スミス氏へのインタビューを紹介する。チームイネオスとの関わりや、カステリブランドについても聞いた。
text:So.Isobe 提供:インターマックス