2019/10/08(火) - 17:47
スイスの高機能サイクルウェアブランド・アソスの2019-2020シーズンの秋冬モデルが発表された。新製品の投入もあるが、一番大きく変わったのはシーズンごとに最適なアイテムを用意するアソスレイヤリングシステム(ALS)の抜本的な変化だ。新製品のチェックの前に、ALSが従来と比べてどのように変わったのか、アソスのブランドヒストリーもひもときながら詳しく見ていこう。
アソス2019-2020シーズンの秋冬モデルから、アソスの着こなしのキモであるALSが再構築された (c)ダイアテック
アソスが高機能サイクリングウェアの代名詞とされるのは、優れた先見性と独創性、それをサイクリングウェアに落とし込む高い技術力を兼ね備え、長年トップランナーとして君臨し続けているからだ。
今では各社が当たり前のように使っているサイクリングウェアに関する“常識”の多くも、アソスが初めて実現したものが多い。例えば、薄くて軽く、伸縮性に富んだポリウレタン弾性繊維の一種・ライクラを1970年代後半に世界で初めてサイクルウェアに採用したのはアソスだ。そのきっかけは、アソスの創業者であるトニー・マイヤーが自転車のエアロダイナミクスを追求する中で、ウェアの素材によって空気抵抗が大きく変わることに気付いたことだった。
アソスは素材に加え、ウェアの形状やデザインでも独創性を発揮し、現在のサイクルウェアの礎を築いた。1970年代後半には肩ひもの付いたビブショーツやエアロワンピースを世界で初めて制作。1988年には、部分的に密度の異なる素材を使い、伸縮性やクッション製に富む世界初のサイクリングショーツ用のエラスティックパッドを開発している。
アソス エキップRS S9 (c)ダイアテック
アソスは自らを「サイクリングショーツのブランド」と標榜している。それだけにサイクリングショーツには強いこだわりを持っていて、ショーツの履き心地の要となるパッドは代を重ねるごとに進化し、業界のベンチマークとして君臨し続けている。
中でも2014年に登場したS7ショーツでは、パッドの全周を縫い付けずにペダリング時にパッドをずれにくくする独創的なテクノロジーが採用された。2018年には進化版S9ショーツが登場したのは記憶に新しい。
しかしながら、アソスはサイクリングショーツだけでなく、高い防寒性能と通気性を兼ね備えた冬用ウェアや、冬物と夏物の端境期でウェア選びに悩む春・秋物のラインナップの豊富さと機能性の高さにも定評がある。
アソスのウェアは修理プログラムが用意されていて、多くの場合は無料で対応してくれる (c)ダイアテック
さらにアソスのウェアには修理プログラムも用意されている。対象製品はアクセサリー類(アームウォーマーやレッグウォーマー、グローブなど)以外のショーツやジャージ、ジャケットなどで、多くの場合は無償で対応してくれる。高機能なだけでなく、長く使える点もアソスの魅力だ。条件等はダイアテックのアソスブランドサイトを参照してほしい。
四季のあらゆるシーンをカバーするさまざまなウェアをラインアップ (c)ダイアテック
ウェアにはクライマレンジが記載されており、その日のコーディネートをウェアを見ながら選ぶことができる (c)ダイアテック
長袖ジャージとベストを組み合わせれば、様々な気温に対応することができる (c)ダイアテック
アソスは四季のあらゆるシーンをカバーするさまざまなウェアをラインナップしている。そのひとつひとつ各アイテムが高機能であるのはもちろん、数々のアイテムを効果的に着こなすためのレイヤリングシステムALS(アソス・レイヤリング・システム)を構築しているのも特徴だ。
ウェアのバリエーションの豊富さは、あらゆるシーンで快適に着こなせるコーディネートを実現しやすくする一方、ユーザーサイドから見れば「いつ使えるのか分かりにくい」「何を組み合わせたらいいのか悩む」と言うことにもなりかねない。アソスが提案するALSは、シーズンごとのコーディネートの基本であり、どのアイテムがどの季節向けかを明確にする。
ALSのクライマレンジはあくまでコーデのベースを示すお手本のようなもの。ベストなどのアイテムを活用することで「少し肌寒い」などの体感温度の個人差にも対応できる (c)ダイアテック
ショーツとジャージという夏向けのアイテムを基本に、暑くも寒くもない時期に重宝する薄手の長袖ジャージやニッカーをベースにした春・秋向けのアイテム、防風ジャケットやタイツなど冬向けのアイテム、さらに防寒性能と保温性能を高めてより厳しい寒さに対応する厳寒期向けのアイテムというように、季節ごとにアイテムを提案するのがALSの基本的考え方だ。ジャージやショーツ、タイツ、ジャケットなどの基本アイテムだけでなく、ベースレイヤーやソックス、グローブなどのアクセサリーも季節ごとに用意されている。
端境期にはウインドブレーカーやベストなどを重ね着することで、温度変化だけでなくちょっとした温度調整も可能になる。もちろん運動強度によって体感温度も変わるし、個人の暑さ寒さの感じ方が異なるので、そのあたりの調整にもこうしたアイテムは役に立つ。
シューズカバーやグローブなどのアクセサリーもクライマレンジごとに用意されている。画像はスプリング&フォールのブーティ(シューズカバー) (c)ダイアテック
重ね着=レイヤリングの仕方をラインナップ全体でシステマチックに提案できていることこそ、アソスというブランドの特徴であり、魅力と言える。
3つにまとめられたクライマレンジ。それぞれにテーマカラーが設定され、ひと目でカテゴリーを把握できるようになった (c)assos
2019-2020秋冬モデルでは、ALSのクライマレンジ(期分け)が「ウインター」「スプリング&フォール」「サマー」の3つに絞られた。昨シーズンまでは冬物が通常の「アーリーウインター」と厳寒期向けの「ウインター」の2つに分かれていたため、期分けは4つだったことを考えると、ラインナップがシンプル化されることでより分かりやすくなったと言えるのではないだろうか。
新しいクライマレンジでは、その季節を象徴するカラーがあしらわれるのも特徴だ。例えばウインターは青色、スプリング&フォールは黄色という具合だ。黒をベースにしたアイテムが多いアソスでは、このALSのテーマカラーをベースにどのシーズンのアイテムかがすぐに分かるようになっている。
新しくなったALSはウインター、プリング&フォール、サマーの3つとなり、よりシンプルになった (c)ダイアテック
クライマレンジ3のウインターのイメージカラーはスカイブルーだ (c)ダイアテック
冬物が高性能化されてクライマレンジは3つになったが、厳寒期向けに最高の防寒性能を搭載した“ウルトラズ”というシリーズも用意される。クライマレンジ3のウインターモデルの一部という位置づけだ (c)ダイアテック
「アソスのウインタージャケットは、これまでのアーリーウインター対応のものでも優れた防風性能と保温性能を両立し、高い防寒性能を実現しています。よほどの寒冷地でない限り「アーリーウインターでも十分」という方も多かったはずで、厳寒期に対応するこれまでのウインター向けモデルではオーバースペックだという人もいらっしゃったはずです。つまりウェアの高性能化がALSを変えたと言っても過言ではありません」
ジャケットの高性能化がクライマレンジをシンプルにさせた (c)ダイアテック
ミレGTウルトラズウインタージャケットはフェイスマスクを搭載するなどジャケットが進化を遂げている (c)ダイアテック
厳冬期に対応するウルトラズシリーズが登場する (c)ダイアテック
とはいえ、寒冷地で走る人もいるだろうし、寒さを感じやすい人もいるだろう。そんなサイクリストへの対応も忘れていない。
アソス2019-2020シーズンのウインターモデルには、ジャケットやソックス、シューズカバーに「ウルトラズ」という厳寒期に対応するモデルも用意される。一方で、タイツやインナーウェアはウインターの1種類のみとなる。インナーウェアが1種類になったのは、ジャケットの高性能化が大きく、タイツが1種類なのもそれだけで幅広い温度帯をカバーできるという自信の表れだろう。
次回からはアソス2020モデルのSPRING/FALL、WINTER、ULTRAZのアイテムをプレビューする。
アソスは高機能だけでなく長く使えるのも魅力
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今では各社が当たり前のように使っているサイクリングウェアに関する“常識”の多くも、アソスが初めて実現したものが多い。例えば、薄くて軽く、伸縮性に富んだポリウレタン弾性繊維の一種・ライクラを1970年代後半に世界で初めてサイクルウェアに採用したのはアソスだ。そのきっかけは、アソスの創業者であるトニー・マイヤーが自転車のエアロダイナミクスを追求する中で、ウェアの素材によって空気抵抗が大きく変わることに気付いたことだった。
アソスは素材に加え、ウェアの形状やデザインでも独創性を発揮し、現在のサイクルウェアの礎を築いた。1970年代後半には肩ひもの付いたビブショーツやエアロワンピースを世界で初めて制作。1988年には、部分的に密度の異なる素材を使い、伸縮性やクッション製に富む世界初のサイクリングショーツ用のエラスティックパッドを開発している。
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アソスは自らを「サイクリングショーツのブランド」と標榜している。それだけにサイクリングショーツには強いこだわりを持っていて、ショーツの履き心地の要となるパッドは代を重ねるごとに進化し、業界のベンチマークとして君臨し続けている。
中でも2014年に登場したS7ショーツでは、パッドの全周を縫い付けずにペダリング時にパッドをずれにくくする独創的なテクノロジーが採用された。2018年には進化版S9ショーツが登場したのは記憶に新しい。
しかしながら、アソスはサイクリングショーツだけでなく、高い防寒性能と通気性を兼ね備えた冬用ウェアや、冬物と夏物の端境期でウェア選びに悩む春・秋物のラインナップの豊富さと機能性の高さにも定評がある。
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高機能ウェアの最適な着こなしを提案するALS
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ウェアのバリエーションの豊富さは、あらゆるシーンで快適に着こなせるコーディネートを実現しやすくする一方、ユーザーサイドから見れば「いつ使えるのか分かりにくい」「何を組み合わせたらいいのか悩む」と言うことにもなりかねない。アソスが提案するALSは、シーズンごとのコーディネートの基本であり、どのアイテムがどの季節向けかを明確にする。
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端境期にはウインドブレーカーやベストなどを重ね着することで、温度変化だけでなくちょっとした温度調整も可能になる。もちろん運動強度によって体感温度も変わるし、個人の暑さ寒さの感じ方が異なるので、そのあたりの調整にもこうしたアイテムは役に立つ。
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重ね着=レイヤリングの仕方をラインナップ全体でシステマチックに提案できていることこそ、アソスというブランドの特徴であり、魅力と言える。
ALSの期分けが4つから3つになり、よりシンプルに
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2019-2020秋冬モデルでは、ALSのクライマレンジ(期分け)が「ウインター」「スプリング&フォール」「サマー」の3つに絞られた。昨シーズンまでは冬物が通常の「アーリーウインター」と厳寒期向けの「ウインター」の2つに分かれていたため、期分けは4つだったことを考えると、ラインナップがシンプル化されることでより分かりやすくなったと言えるのではないだろうか。
新しいクライマレンジでは、その季節を象徴するカラーがあしらわれるのも特徴だ。例えばウインターは青色、スプリング&フォールは黄色という具合だ。黒をベースにしたアイテムが多いアソスでは、このALSのテーマカラーをベースにどのシーズンのアイテムかがすぐに分かるようになっている。
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ALSの変化はジャケットをはじめとする“冬物”の高性能化が背景に
ウインターとアーリーウインターがひとつになった背景には、ジャケットを始め、冬物の高性能化がある、とアソスの日本代理店・ダイアテックの関係者は話す。「アソスのウインタージャケットは、これまでのアーリーウインター対応のものでも優れた防風性能と保温性能を両立し、高い防寒性能を実現しています。よほどの寒冷地でない限り「アーリーウインターでも十分」という方も多かったはずで、厳寒期に対応するこれまでのウインター向けモデルではオーバースペックだという人もいらっしゃったはずです。つまりウェアの高性能化がALSを変えたと言っても過言ではありません」
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とはいえ、寒冷地で走る人もいるだろうし、寒さを感じやすい人もいるだろう。そんなサイクリストへの対応も忘れていない。
アソス2019-2020シーズンのウインターモデルには、ジャケットやソックス、シューズカバーに「ウルトラズ」という厳寒期に対応するモデルも用意される。一方で、タイツやインナーウェアはウインターの1種類のみとなる。インナーウェアが1種類になったのは、ジャケットの高性能化が大きく、タイツが1種類なのもそれだけで幅広い温度帯をカバーできるという自信の表れだろう。
次回からはアソス2020モデルのSPRING/FALL、WINTER、ULTRAZのアイテムをプレビューする。
提供:ダイアテック テキスト:浅野真則