2010/05/02(日) - 17:16
ベストハンドリングバイクを目指して
FCC=フィッシャーコントロールコラムとは?
—まず、CRONUSのハイライトとなっているFCC(フィッシャーコントロールコラム)と呼ばれるシステムについて教えてください。フィッシャー氏(以下GF): FCCとは、おもにフロントフォーク周りの剛性を上げるシステムなんだ。これにはいくつもの新機構を取り入れている。まずステアリングコラムを大口径化することで剛性を上げている。ここまでは今ハイエンドのロードバイクの主流になっている設計と同じなんだ。
でも、それ以上を求めると、違うアプローチが必要になったんだ。従来の方法ではその目標を達成できないことはわかっていた。そこで従来の考え方の壁をぶち破り、できたのがフィッシャーコントロールコラムだ。
ロードバイクのコーナリング性能をスポイルする原因がどこにあるのかを、徹底的に洗い直したんだ。
まず、どの部分にフォーカスすべきかを見極められるよう、走行中のコンポーネントを分割するために、フロントエンドの偏心テストから開始した。その結果、問題の部分について体系的にひとつずつ取り組むことができた。
フロント周りの剛性向上がコーナリング性能向上のカギ
GF: 新しいフォークを開発している段階で、まずハブを独自のものを設計することにした。既製品の規格に縛られることはないって気づいたんだ。ハブフランジ(スポークを取り付ける位置幅)を通常より広く設計したうえに、ハブ軸のフォークエンドに当たる面ができるだけ大きくなるようにナットの径を25mmにしたんだ。そしてハブのフランジに角度をつけて、スポークにかかる無理な力を軽減しながらホイール剛性を上げているんだ。これがボントレガーと共同開発したFCCハブだ。
ハブとフォークエンドの面積が大きいと、当然ながら固定力が増す。接合部の強度は大幅に増したよ。
まるでトラックレーサーに使われているようなラージフランジのハブは、スポークに無理な力をかけずにテンションを高められ、横剛性も向上する。当然スポークはフランジの外から通してある。これらの総合的な剛性アップにより、シャープでコントロールしやすいバイクになっているんだ。
—そういえばフィッシャーのMTBでも同様の手法をとっているものがありますね。極太のフロントハブを最初に導入したのもあなたでした。その後、シマノなどコンポメーカーが追従しました。初期のマウンテンバイクの強度を上げるためにヘッドパーツ部分を巨大にした「フィッシャーサイズ」を考案したのもあなたでした。
GF: その通り! 行き着くところ、MTB的発想が必要なんだ。フロントフォーク周りの剛性向上はバイクコントロールにおけるキモだ。ステアリングが強固なほどバイクは扱い易いものになるんだ。それは誰にとってもメリットが有ることなんだ。
快適性を犠牲にせず「走って楽しい」を実現
—なぜそこまで剛性アップを求めるのですか? 剛性が上がりすぎてかえって不快になることはないのですか?GF: いや、快適性を左右する縦剛性には影響がないんだ。乗り心地の良さはスポークホイールならではのものだ。しかし横剛性はスゴイぜ! ハブ軸のよじれは完全に抑え込まれている。コーナリングではガンガン突っ込めて、グイグイ曲がれる・走れる。コイツで走るクリテリウムなんか最高だよ。
—そうですね。まさにそう感じました。走って楽しい。フィッシャーさん、あなたは楽しさを追求するんですね!
GF: そう、分かってくれたか! でも、これは理屈なんかじゃない。乗れば誰でも楽しさを感じることができるよ。見た目が他と違うからって変テコなバイクとは思わないでくれよ。もともとハブがあのサイズって誰が決めたんだ? 求める性能があるなら、最適なように設計すればいいんだよ。
—まさにあなたは自由な発想人ですね。今後のロードバイクがあなたのバイクに追従していくかもしれません。ハンドリング性能をアップさせるために、ヘッド、フォーク、そしてホイールまで専用設計してしまったのがFCCということですね。
GF: 他ブランドを含む2010モデルのベストインクラスのフォークとホイールに比べても、27%もの剛性向上を達成しているんだ。自信を持って「ベストハンドリングバイク」と言えるよ。
トレックとの技術供与が生きる
—BB90というシステムも搭載されていますね。これは何を求めてのことですか?GF: BB90は、ただ単純にBB幅を広げただけではないんだ。ダウンチューブ、シートチューブ、チェーンステーもオーバーサイズ化することで、それらが集約されるBB(ボトムブラケット)を大口径化した。単にBB周りだけでなく、フレーム全体の剛性アップにもつながっているんだ。
—なるほど。総合的な性能を求めての規格の変更ということですね。ところでこのBB方式はトレックのマドンに採用されている方式と外観上よく似ているような気がします。やはりトレックとの技術供与はあるのですか?
GF: その通り! ゲイリーフィッシャーはトレックグループの一員だ。トレックからラブコールがあった際、自分の好きにバイクを開発させてもらうことを条件にオファーに応じた。カーボンフレームの技術に関してはトレックは誰もが認める通り世界最高だ。トレックと技術とアイデアを共有しあうことはこのうえないメリットだ。
—なるほど。ツール・ド・フランスで勝ち続けてきたバイクの技術的背景も備えていると言うことですね。
いよいよ次ページは自転車ジャーナリスト仲沢隆とゲイリー・フィッシャー氏のコラボレートによる CRONUS ULTIMATE インプレッション!
提供:トレックジャパン 企画/制作:シクロワイアード