2019/08/21(水) - 18:00
我々ホビーサイクリストにとって最も身近なタイヤ形式はクリンチャーだ。パナレーサーのRACE EVO4特集の最終回では、もっともポピュラーな形式であり、様々な種類があるクリンチャーモデルをピックアップ。トレーニングで使い込んでいる宇都宮ブリッツェンの阿部嵩之、小野寺玲の2名によるインプレッションをお届けしよう。
パナレーサーのRACE EVO(クリンチャー)にはオールラウンドの「A」、高耐久性の「D」、クラシカルの「C」という3種類のタイプが揃えられている。第3世代では「A」「D」「L」「C」という4種類であったが、第4世代では上述した3種類。軽量の「L」シリーズは最新の「GILLAR」に統合された。GILLARの登場以降、選び分けが難しくなった軽量クリンチャーがGILLARの一本に絞られることで、ユーザーとしても理解しやすいラインアップとなっている。
第4世代のクリンチャーではコンパウンドのアップデートに加え断面形状をブラッシュアップ。従来型の断面形状は、やや急峻な山型とされていたのに対し、新型ではなだらかな山型に変更されている。これにより旋回中のコントロール可能範囲を広げた。詳しくはVol.1を参照して欲しい。
各モデルの構造は全く異なり、そこでタイヤの性格付けを行っている。RACE Aは最も幅広いシチュエーションに対応するための万能性を身につけたモデル。ベースとなるケーシングは、AX-Alpha Cordという超極細コードを使用したケーシングで耐パンク性に優れたProTite Shieldを挟み込んだ。その上にZSG Advanced COMPOUNDのトレッドを配置する。
RACE Aの構造と似ているのはRACE Cだ。ProTiteの幅をトレッド下のみとすることで、軽量性と柔軟性を獲得。RACE Aはサイドウォールまで耐パンクベルトで覆っているため、パンクに強く作られている。RACE Cではあえてトレッド下のみとすることで、快適性向上を目指しているのだ。
この2種類とRACE Dはケーシングからして異なるものを採用している。RACE Dは耐パンクプライを2層構造とする3D(ダブルディップド・デュロ)というケーシングを使用。この2層の内1層をProTite(トレッド下のみ)とすることで、リム打ちと突き刺しどちらにも強いタイヤを作り上げている。
このように作り方、性格が違うパナレーサーのレース用クリンチャータイヤ。宇都宮ブリッツェンの選手たちは練習の際はこれを使用しているという。慣れ親しんでいるクリンチャーに対して、どのようなコメントを話してくれるのだろうか。それではインプレッションに移ろう。
― 宇都宮ブリッツェンの選手たちは練習でRACEシリーズのクリンチャーを使用していると伺いました。お二人は普段どのタイプを使用していますか。
小野寺:今おっしゃられたように、僕らはクリンチャーを練習で使うため、僕は耐久性、ロングライフを重視して作られたRACE Dを好んで使用しています。
阿部:僕はRACE Cを選んでいます。RACE CはGILLARや他のRACEシリーズにはないサイドのカラーリングが良いんですよ。クラシカルな見た目がお気に入りということと、真円の断面形状という点が好みなので、RACE Cで練習しています。
― それぞれのタイヤタイプでどのような特長がありますか。
小野寺:RACE AとDでは性格が似ていて、グリップ力の性能に関しては、2つの間に差があるとはほとんど感じられません。Aの方が重量面、走行感どちらから見ても気持ち軽いかなと感じられる程度です。踏み出しの軽さ、登坂している時のダンシングの振りの軽さはAの方が好印象があるので、僕がレースで使用する場合はRACE Aを選びます。
RACE Dは重量やしなやかさといった性能ではなく、耐パンクの性能を高めているため、安心感が強いです。ロングライフであり、グリップ力も高い。レースシーンでの使用より、過酷な練習環境において真価を発揮してくれるタイヤだと思います。だからこそ、普段からこのタイヤを使用しているんですけどね。
三上:選手たちが練習で使用したタイヤは回収して研究素材としているのですが、「良く壊れなかったな」と思うほど使い込んでくれているんですよ。
小野寺:どうしても長く使ってしまうんですよね(笑)。最後の最後まで使い込んだとしてもパンクを気にせずトレーニングできるという点からも、RACE Dを高く評価しています。前後で摩耗の仕方が変わってくるので一概には言えませんが、メーカーが想定する以上の距離を乗れてしまっていると思います。僕はトレーニングでしか使わないので大丈夫ですが、レースで使うならばメーカーの推奨ボーダーラインを目安としたほうが良いです。
三上:メーカーが想定するところは約3,000kmです。性能試験はこの想定を超えた距離まで行っていますが、性能が発揮できるのは3,000km程度だと思っていただきたいですね。ただ、使い方次第では小野寺さんのように長く使うことはできると思います。
― RACE Cについてはいかがでしょうか。
阿部:RACE Cは先程も言ったルックス面、そしてセンターがダイヤ目のトレッドを考えると他のタイプより使える幅が広いタイヤだと思います。断面がラウンド形状で、一般的なタイヤと同じ形状となっているため、他のメーカーから移行しやすいのがこのRACE Cかな。
走行性能でいうと、26Cと若干太めの割には想像以上に軽さを感じられます。見た目、走りが良い。RACE Cはお気に入りのタイヤです。ただ僕はトレーニングでは攻めないため、タイヤのグリップ力についてはそこまで求めていないので、ズバリ良いと言い切れる自信は弱いのですが、雨の日に怖い思いをしたことも無いですし、グリップ力もしっかりと出ていると思いますよ。誰が使っても良い、万人受けするタイヤだと思います。
小野寺:僕もRACE Cの見た目が好みだったので使用したこともあります。アベタカさんが言う軽さの他に、AとDと比較すると全体的にしなやかに作り上げられているように感じます。レースシーンで使用できるかどうかの観点で考えてみても、RACE Cはどのタイプのタイヤより下りのコーナーを最も攻めることが出来ました。それほどの差は感じられていますね。
― メーカーとしての開発やラインアップする意図は選手の意見どおりでしょうか。
三上:そうですね。お二人がおっしゃられたように、Dは荒れ地を走るシチュエーションやハードなトレーニングに勤しむ方がパンクを気にせず乗れるタイヤであり、Aはオーソドックスに使えるタイヤ、Cはクラシカルな見た目のレースタイヤという珍しい存在です。それぞれに性格があるので、ユーザーの方にはご自身にマッチしたものを使用して頂けると嬉しいですね。
あと、付け加えるとRACE CのCは「Classic」の頭文字であることは多くの方に知られている話かと思いますが、実は「Control(コントロール)」という意味も含ませているんですよ。今回も引き続きミックストレッド、唯一のラウンド断面形状を採用し、バイク操作を行いやすいという性能に重点を置いて開発を進めました。私達が意図しているところをお二人にズバリ言っていただきました。
― チューブラー編でも大絶賛されていましたが、クリンチャーで使用するチューブはR-AIR一択でしょうか。
小野寺:それはもちろんです。他のメーカーからチューブをR-AIRに乗り換えるだけでも走行性能は良くなると思いますよ。
阿部:ラテックスは扱いにくいことを考えると、ブチルにもかかわらず軽くしなやかなR-AIRを使わない手はないと思います。毎日空気を入れる必要がありませんし、実際にエアが抜けていることは感じられない。数日に一度空気を入れてみた時に初めてエアが多少抜けていたことを実感するほどです。練習で毎日乗る僕としては非常に助かっています。
小野寺:実は僕がR-AIRを使い始めたのは高校生の時で、宇都宮ブリッツェンの選手に"R-AIRは良いぞ"と猛プッシュされたことを覚えています。高校生だった僕には少々値が張るチューブでしたが、その性能の良さは当時から知るところです。そんな製品をこのチームで使用させてもらっているのは幸せだなと感じています。
― EVO3からEVO4にモデルチェンジしたことでフィーリングが変わった点などはありますか。
阿部:今回のモデルチェンジで最も変わったのはタイヤの断面形状ですよね。ラインアップされるタイヤ幅が広くなっていっていることも影響していますが、トレッドの山がなだらかになったことで、従来型よりもタイヤの挙動が安定しています。従来型は現行と比較するとパタパタするような感じがあったと思います。
小野寺:アベタカさんと同意見です。特にコーナーが連続するシチュエーションでバイクを左右に切り返す時にコントロールしやすさが現れていますね。初めてタイヤを選ぶ方や、次のタイヤ何にしようか悩んでいる方はパナレーサーを選んでおけば間違いないでしょう。そこにチューブの完成形であるR-AIRを使用すればクリンチャータイヤは完璧です!
阿部:従来型の場合は「変なクセがあるんでしょう?」と敬遠してしまうこともあったかと思いますが、新型はその性格を感じずに使うことが出来ます。食わず嫌いではありませんが、一回使ってみたらどうでしょう?と勧めやすくなったタイヤに進化していますね。
― ありがとうございました。
パナレーサーの最も身近なレースタイヤに迫る
パナレーサーのRACE EVO(クリンチャー)にはオールラウンドの「A」、高耐久性の「D」、クラシカルの「C」という3種類のタイプが揃えられている。第3世代では「A」「D」「L」「C」という4種類であったが、第4世代では上述した3種類。軽量の「L」シリーズは最新の「GILLAR」に統合された。GILLARの登場以降、選び分けが難しくなった軽量クリンチャーがGILLARの一本に絞られることで、ユーザーとしても理解しやすいラインアップとなっている。
第4世代のクリンチャーではコンパウンドのアップデートに加え断面形状をブラッシュアップ。従来型の断面形状は、やや急峻な山型とされていたのに対し、新型ではなだらかな山型に変更されている。これにより旋回中のコントロール可能範囲を広げた。詳しくはVol.1を参照して欲しい。
各モデルの構造は全く異なり、そこでタイヤの性格付けを行っている。RACE Aは最も幅広いシチュエーションに対応するための万能性を身につけたモデル。ベースとなるケーシングは、AX-Alpha Cordという超極細コードを使用したケーシングで耐パンク性に優れたProTite Shieldを挟み込んだ。その上にZSG Advanced COMPOUNDのトレッドを配置する。
RACE Aの構造と似ているのはRACE Cだ。ProTiteの幅をトレッド下のみとすることで、軽量性と柔軟性を獲得。RACE Aはサイドウォールまで耐パンクベルトで覆っているため、パンクに強く作られている。RACE Cではあえてトレッド下のみとすることで、快適性向上を目指しているのだ。
この2種類とRACE Dはケーシングからして異なるものを採用している。RACE Dは耐パンクプライを2層構造とする3D(ダブルディップド・デュロ)というケーシングを使用。この2層の内1層をProTite(トレッド下のみ)とすることで、リム打ちと突き刺しどちらにも強いタイヤを作り上げている。
このように作り方、性格が違うパナレーサーのレース用クリンチャータイヤ。宇都宮ブリッツェンの選手たちは練習の際はこれを使用しているという。慣れ親しんでいるクリンチャーに対して、どのようなコメントを話してくれるのだろうか。それではインプレッションに移ろう。
練習でヘビーユーズするクリンチャー評 ブリッツェン阿部、小野寺はどう語るのか?
― 宇都宮ブリッツェンの選手たちは練習でRACEシリーズのクリンチャーを使用していると伺いました。お二人は普段どのタイプを使用していますか。
小野寺:今おっしゃられたように、僕らはクリンチャーを練習で使うため、僕は耐久性、ロングライフを重視して作られたRACE Dを好んで使用しています。
阿部:僕はRACE Cを選んでいます。RACE CはGILLARや他のRACEシリーズにはないサイドのカラーリングが良いんですよ。クラシカルな見た目がお気に入りということと、真円の断面形状という点が好みなので、RACE Cで練習しています。
― それぞれのタイヤタイプでどのような特長がありますか。
小野寺:RACE AとDでは性格が似ていて、グリップ力の性能に関しては、2つの間に差があるとはほとんど感じられません。Aの方が重量面、走行感どちらから見ても気持ち軽いかなと感じられる程度です。踏み出しの軽さ、登坂している時のダンシングの振りの軽さはAの方が好印象があるので、僕がレースで使用する場合はRACE Aを選びます。
RACE Dは重量やしなやかさといった性能ではなく、耐パンクの性能を高めているため、安心感が強いです。ロングライフであり、グリップ力も高い。レースシーンでの使用より、過酷な練習環境において真価を発揮してくれるタイヤだと思います。だからこそ、普段からこのタイヤを使用しているんですけどね。
三上:選手たちが練習で使用したタイヤは回収して研究素材としているのですが、「良く壊れなかったな」と思うほど使い込んでくれているんですよ。
小野寺:どうしても長く使ってしまうんですよね(笑)。最後の最後まで使い込んだとしてもパンクを気にせずトレーニングできるという点からも、RACE Dを高く評価しています。前後で摩耗の仕方が変わってくるので一概には言えませんが、メーカーが想定する以上の距離を乗れてしまっていると思います。僕はトレーニングでしか使わないので大丈夫ですが、レースで使うならばメーカーの推奨ボーダーラインを目安としたほうが良いです。
三上:メーカーが想定するところは約3,000kmです。性能試験はこの想定を超えた距離まで行っていますが、性能が発揮できるのは3,000km程度だと思っていただきたいですね。ただ、使い方次第では小野寺さんのように長く使うことはできると思います。
― RACE Cについてはいかがでしょうか。
阿部:RACE Cは先程も言ったルックス面、そしてセンターがダイヤ目のトレッドを考えると他のタイプより使える幅が広いタイヤだと思います。断面がラウンド形状で、一般的なタイヤと同じ形状となっているため、他のメーカーから移行しやすいのがこのRACE Cかな。
走行性能でいうと、26Cと若干太めの割には想像以上に軽さを感じられます。見た目、走りが良い。RACE Cはお気に入りのタイヤです。ただ僕はトレーニングでは攻めないため、タイヤのグリップ力についてはそこまで求めていないので、ズバリ良いと言い切れる自信は弱いのですが、雨の日に怖い思いをしたことも無いですし、グリップ力もしっかりと出ていると思いますよ。誰が使っても良い、万人受けするタイヤだと思います。
小野寺:僕もRACE Cの見た目が好みだったので使用したこともあります。アベタカさんが言う軽さの他に、AとDと比較すると全体的にしなやかに作り上げられているように感じます。レースシーンで使用できるかどうかの観点で考えてみても、RACE Cはどのタイプのタイヤより下りのコーナーを最も攻めることが出来ました。それほどの差は感じられていますね。
― メーカーとしての開発やラインアップする意図は選手の意見どおりでしょうか。
三上:そうですね。お二人がおっしゃられたように、Dは荒れ地を走るシチュエーションやハードなトレーニングに勤しむ方がパンクを気にせず乗れるタイヤであり、Aはオーソドックスに使えるタイヤ、Cはクラシカルな見た目のレースタイヤという珍しい存在です。それぞれに性格があるので、ユーザーの方にはご自身にマッチしたものを使用して頂けると嬉しいですね。
あと、付け加えるとRACE CのCは「Classic」の頭文字であることは多くの方に知られている話かと思いますが、実は「Control(コントロール)」という意味も含ませているんですよ。今回も引き続きミックストレッド、唯一のラウンド断面形状を採用し、バイク操作を行いやすいという性能に重点を置いて開発を進めました。私達が意図しているところをお二人にズバリ言っていただきました。
― チューブラー編でも大絶賛されていましたが、クリンチャーで使用するチューブはR-AIR一択でしょうか。
小野寺:それはもちろんです。他のメーカーからチューブをR-AIRに乗り換えるだけでも走行性能は良くなると思いますよ。
阿部:ラテックスは扱いにくいことを考えると、ブチルにもかかわらず軽くしなやかなR-AIRを使わない手はないと思います。毎日空気を入れる必要がありませんし、実際にエアが抜けていることは感じられない。数日に一度空気を入れてみた時に初めてエアが多少抜けていたことを実感するほどです。練習で毎日乗る僕としては非常に助かっています。
小野寺:実は僕がR-AIRを使い始めたのは高校生の時で、宇都宮ブリッツェンの選手に"R-AIRは良いぞ"と猛プッシュされたことを覚えています。高校生だった僕には少々値が張るチューブでしたが、その性能の良さは当時から知るところです。そんな製品をこのチームで使用させてもらっているのは幸せだなと感じています。
― EVO3からEVO4にモデルチェンジしたことでフィーリングが変わった点などはありますか。
阿部:今回のモデルチェンジで最も変わったのはタイヤの断面形状ですよね。ラインアップされるタイヤ幅が広くなっていっていることも影響していますが、トレッドの山がなだらかになったことで、従来型よりもタイヤの挙動が安定しています。従来型は現行と比較するとパタパタするような感じがあったと思います。
小野寺:アベタカさんと同意見です。特にコーナーが連続するシチュエーションでバイクを左右に切り返す時にコントロールしやすさが現れていますね。初めてタイヤを選ぶ方や、次のタイヤ何にしようか悩んでいる方はパナレーサーを選んでおけば間違いないでしょう。そこにチューブの完成形であるR-AIRを使用すればクリンチャータイヤは完璧です!
阿部:従来型の場合は「変なクセがあるんでしょう?」と敬遠してしまうこともあったかと思いますが、新型はその性格を感じずに使うことが出来ます。食わず嫌いではありませんが、一回使ってみたらどうでしょう?と勧めやすくなったタイヤに進化していますね。
― ありがとうございました。
パナレーサー RACE EVO4 クリンチャーラインアップ
RACE A EVO4 | 700×23C 200g | 黒/黒、黒/青、黒/赤 | 5,400円(税抜) |
700×25C 230g | 黒/黒、黒/青、黒/赤 | 5,400円(税抜) | |
700×28C 240g | 黒/黒 | 5,400円(税抜) | |
RACE D EVO4 | 700×23C 220g | 黒/黒、黒/茶 | 6,000円(税抜) |
700×25C 240g | 黒/黒、黒/茶 | 6,000円(税抜) | |
700×28C 260g | 黒/黒、黒/茶 | 6,000円(税抜) | |
RACE C EVO4 | 700×23C 200g | 黒/スキン | 5,400円(税抜) |
700×26C 220g | 黒/スキン | 5,400円(税抜) | |
700×28C 230g | 黒/スキン | 5,400円(税抜) |
提供:パナレーサー 取材協力:宇都宮ブリッツェン 制作:シクロワイアード編集部