2019/08/09(金) - 12:18
第4世代に進化したパナレーサーのロードレース用タイヤ「RACE EVO」シリーズ。今回の特集ではチューブラー、チューブレスレディ、クリンチャーそれぞれのタイヤタイプにわけて徹底インプレを行ってきた。本ページではチューブレスレディにフォーカスを当て、パナレーサーの三上さんによる解説と宇都宮ブリッツェン阿部嵩之と小野寺玲によるインプレッションをお届けしよう。
今回のRACE EVOのモデルチェンジでチューブレスは第2世代へと進化を果たしている。前作はタイヤ単体で完結するチューブレス仕様であったが、今作はシーラントと組み合わせることが前提のチューブレスレディ仕様だ。パナレーサーではチューブレスレディのことをTLC(チューブレス・コンバーチブル)と呼んでおり、タイヤに入るレターもその三文字で表されている。
「"チューブレス"はタイヤのみで気密性を確保する必要があり、それを実現しようとするとタイヤの着脱が難しくなることや、重量面でのデメリットが否めません。"チューブレスレディ"は、シーラントを使用することでそれらのデメリットを小さくすることができるため、新型ではシーラントも同時に開発を進めていたこともあり、タイヤのタイプを変える選択を取りました」と三上さんは言う。
"チューブレス"と"チューブレスレディ"はチューブを使用しない点では同じ構造だが、パナレーサーは今回のモデルチェンジに際しイチから開発を再び行う。三上さんは「空気の保持層は旧モデルの場合は内側に配していたのですが、内シールの場合はビードまでシールで覆う必要があり、着脱や重量面の問題に影響してしまうんです。新型では外シールとし、ビード周りの設計も煮詰めることで、先ほど言ったようなデメリット解消を図りました」と三上さんは言う。
使用しているコンパウンドはもちろん他のRACE EVO4と同様のZSG Advanced Compound。軽量クリンチャーGILLARに使用されたコンパウンドに改良を加えたものであり、重量面でのメリットは大きいはずだ。また、シーラントでパンクでのエア漏れを防ぐことが前提にあり、ベルトでパンクを防ぐ必要性が少ないため、ProTiteもクリンチャーより幅が細いものを採用。
このような細かい部分でのダイエットを徹底的に行うことで、25Cで210g、28Cで240gというクリンチャーに匹敵する、世界最軽量(※パナレーサー調べ)の重量を実現している。三上さんによるとパナレーサー製のシーラントを30~60mLほど入れることで、空気保持とパンク時の対応が可能となるという。チューブレスタイヤとして運用することを考えてもRACE A EVO4 TLCの重量面でのデメリットは生じなくなっている。チューブレスのウィークポイントであった重量をクリアするこのタイヤは、新たな選択肢としてレース志向のサイクリストにとっても有力な候補となってくるはずだ。
さて、チューブレスではホイールとの嵌合の相性が切っても切れない関係である。世の中にはハンドポンプだけでもビードを上げられるものが存在する一方、タイヤとリムの相性が良くなければエアコンプレッサーを使ってもビードを上げるのに苦労するものも存在していることも事実だ。
「ビード上げにはリムの溝が重要になってくるんですが、その部分の設計がメーカーによって異なるのは当たり前です。さらに年式やモデルによっても細かく違いがあるため、メーカーが同じでもリムによって嵌めやすい、嵌めにくいは、正直あります。その各メーカーによっての違いを確認しながら、我々もビード周りの設計を進めました。ひとつひとつ、現物で確認する作業です。
パナレーサーではシマノ、カンパニョーロ、マヴィックなど様々なメーカー製品で試験を繰り返しています。中でもマヴィックは相性がよく、スタンズやイーストンも比較的ビードは上げやすいです。タイヤをどこに合わせるかは難しい判断になりますが、パナレーサーとしても製品として販売していく以上、使いやすいタイヤであることを念頭に置いて開発している自負はあります」と三上さん。
RACE EVO4の開発と同時に、パナレーサーは新製品となるタイヤシーラント「シールスマート」を並行して開発を進めていた。もちろん今作のチューブレスレディタイヤと組み合わせて使用することを目的としたもの。ロードタイヤの開発が日本のプロチームとともに行ったように、シーラント自体もまた北米のグラベルチーム「Panaracer/Factor p/b Bicycle X-Change」と共にテストを繰り返し性能を煮詰めていったという。
このチームはダーティカンザで好成績を収めている強豪であり、所属している日本人ライダーの竹下佳映さんが今年のダーティカンザで女子総合4位を獲得(記事はこちら)。そんなメンバーと共に様々な試作品をテストを繰り返し、チームから高評価を得たものをプロダクトとして採用した。
日本製のシールスマートは、配合されるラテックスが硬化することでタイヤ内の空気保持とパンク時のピンホールを塞ぐ役割を担う製品に仕上げられている。細かく粉砕したクルミ殻も入れられており、ラテックスを纏ったクルミ殻がパンク穴に入り込むことでエア漏れを素早く止めてくれる。
「ロードタイヤの場合は30~60mL程の量で、シーラントがタイヤ1周回した後にも液体が残ります。しかし、主成分が水分なので使用していくうちに揮発していってしまうので、定期的なメンテナンスは必要です。シーラントとして機能する期間は、走行状況や保管状況にもよりますが約2ヶ月から7ヶ月の間です。」と三上さんは言う。
また、シールスマートは低アレルゲン性としており、敏感肌の方でも作業しやすいプロダクトだという。弱アルカリ性という性質でもあるため、アルミリムへの攻撃性が低いことも特徴の1つ。一般的なシーラントの中にはリムへの攻撃性がある物もあり、シールスマートはアルミリムへの心配も少なく使用できるのは嬉しい性質を持つシーラントと言えそうだ。
― このパナレーサーのRACE A EVO4 TLCを使用する以前にチューブレスの経験はありましたか
小野寺:僕はチームのキャンプでこのタイヤを使用したのが初めてのチューブレス体験となりました。
阿部:僕も初めてでした。シクロクロスもチューブラーで戦っているので、チューブレス初使用に到達するまで時間がかかってしまいましたね。CXならば現場でタイヤを交換できたり、レースに持ち込むホイールの数を減らすことができるので、個人でレースをするならばチューブレスかな、とは考えていました。しかし使ったことはありませんでした。
― それではこのタイヤが初めてだったわけですね。使ってみての第一印象はいかがでしたか。
阿部&小野寺:感動しました!
小野寺:本当にその一言に尽きると思います。何がそう感じさせているかと言うと、まず乗り出しの軽さですね。これには感激しました。重量が軽いというアドバンテージが影響していると思いますが、とにかく漕ぎ出しが軽いです。さらに乗り心地も好感触です。路面のギャップをタイヤ自体が吸収してくれ、快適なサイクリングを楽しめます。
かつ、タイトなコーナーが続くようなダウンヒルで攻めようとした時は、タイヤのグリップ力が際立ちます。グリップ力の上限が見えないほど路面を捉え続けてくれるため、安心してバイクを倒しこんでコーナーに入ることができる安心感はありました。
阿部:僕が考えていたことと玲の意見は全く同じですね。タイヤ自体の路面追随力が抜群に良かったことを付け加えたいです。タイヤをテストしたキャンプ地の路面はアスファルトの角が立っていたのですが、その様な凹凸のある場所で、タイヤがうまく変形してくれるため様々な情報をライダーに伝えてきてくれるのです。この性能がタイヤに一番求めているものだったので、僕としては非常に良いタイヤであると思っています。
このフィーリングを生み出す理由は、チューブが使われていないからだと思っています。タイヤが薄く作られ、かつ内部でズレるチューブのような物が入っていないからこそ、路面からの入力を受けたタイヤが素早く変形し、かつ変形量が多くなっていると考えています。だからこそ路面の追随感やインフォメーションがダイレクトに伝わる感じが生み出されているのでしょう。
小野寺:オートバイと同じことなのかもしれません。僕はオートバイにも乗るのですが、購入直後はチューブを入れるタイヤで走っていましたが、チューブレスタイヤに切り替えた途端に乗り心地が改善されたことがあります。自転車においても同じようなことが言えるのかもしれませんね。このタイヤをテストしてた時に、途中でクリンチャーに戻したのですが、どうしても乗り心地に差があるように感じてしまいました。それほどフィーリングが異なります。
― RACE Aというタイプに分類されていますが、他のタイヤタイプと性格は似ていますか。
阿部:Aという刻印がタイヤにはされていますが、それぞれの性格は全く異なります。構造による違いなのか、製法による違いなのかははっきりとわかりませんが、別物として捉えたほうが良いです。具体的にどの点が違うかというのは、同じ要素が無いので説明するのが非常に難しいです。
小野寺:見た目はクリンチャーと似ていますが、チューブラーと同じ様にタイヤとしての構造から違うタイヤですので、クリンチャーとも同じタイプのタイヤだとは思えないです。同じコンパウンドを採用していたとしても、グリップ力はチューブレスのほうが高いと感じています。
三上:メーカーとしてもチューブラー、チューブレス、クリンチャーは異なるタイヤとして開発を行っています。Aは「All Round」という意味なので、各タイプごとにオールラウンドに活躍できる性能を備えているという捉え方をしていただければと思います。
クリンチャーのAと比較しても、チューブレスの場合はシーラントを使ったパンク対策を行えるので、ProTiteはトレッドの下のみに配置しています。このような作りの差が軽量性やしなやかさにつながっているのだと思います。
小野寺:確かに軽量性やタイヤのしなやかさが生まれますね。コンパウンドのみがタイヤの性格を変えるとは限らないということが明らかになっていると思います。
― レースでも満足できる性能は備えていますか。
阿部:チューブレスをレースで使えるなら使いたいです。
小野寺:僕も同意見ですね。プロ選手としてはタイヤだけではなく、ホイールといった機材との相性や、ホイールなどの性能もレースでの要求に応えられるものが欲しいです。それらが揃えられた上で、レース途中で空気が抜けてしまう、パンクのしやすさなどの不安がクリアされるのであれば、ぜひ使いたいです。
中里(宇都宮ブリッツェン・メカニック):チューブレスの場合はリム打ちパンクのリスクを軽減することができますし、ちょっとしたピンホールパンクならばシーラントがエア漏れを止めてくれるという観点で見ても、レースで使用しても良いと思います。プロレース、特にステージレースの場合は1回のパンクで負うリスクは非常に大きく、失うものは計り知れないです。その心配を減らすことができるスペックは有していると思います。
三上:メーカーとしてもRACE A TLCはレース用タイヤとして開発を進めてきました。結果を求めるレースの現場で使ってもらいたいですし、性能に関しても自信があります。
阿部:このチューブレスタイヤが備える性能をそのままチューブラーで再現される事ができたら…と思ってしまいます。それではチューブレスタイヤである必要はなくなってしまいますが、僕はタイヤの理想形の1つをRACE A EVO4 TLCに見つけました。それほど衝撃を受けたタイヤでしたね。
210gという世界最軽量※を実現したパナレーサーのチューブレスレディ(※パナレーサー調べ)
今回のRACE EVOのモデルチェンジでチューブレスは第2世代へと進化を果たしている。前作はタイヤ単体で完結するチューブレス仕様であったが、今作はシーラントと組み合わせることが前提のチューブレスレディ仕様だ。パナレーサーではチューブレスレディのことをTLC(チューブレス・コンバーチブル)と呼んでおり、タイヤに入るレターもその三文字で表されている。
「"チューブレス"はタイヤのみで気密性を確保する必要があり、それを実現しようとするとタイヤの着脱が難しくなることや、重量面でのデメリットが否めません。"チューブレスレディ"は、シーラントを使用することでそれらのデメリットを小さくすることができるため、新型ではシーラントも同時に開発を進めていたこともあり、タイヤのタイプを変える選択を取りました」と三上さんは言う。
"チューブレス"と"チューブレスレディ"はチューブを使用しない点では同じ構造だが、パナレーサーは今回のモデルチェンジに際しイチから開発を再び行う。三上さんは「空気の保持層は旧モデルの場合は内側に配していたのですが、内シールの場合はビードまでシールで覆う必要があり、着脱や重量面の問題に影響してしまうんです。新型では外シールとし、ビード周りの設計も煮詰めることで、先ほど言ったようなデメリット解消を図りました」と三上さんは言う。
使用しているコンパウンドはもちろん他のRACE EVO4と同様のZSG Advanced Compound。軽量クリンチャーGILLARに使用されたコンパウンドに改良を加えたものであり、重量面でのメリットは大きいはずだ。また、シーラントでパンクでのエア漏れを防ぐことが前提にあり、ベルトでパンクを防ぐ必要性が少ないため、ProTiteもクリンチャーより幅が細いものを採用。
このような細かい部分でのダイエットを徹底的に行うことで、25Cで210g、28Cで240gというクリンチャーに匹敵する、世界最軽量(※パナレーサー調べ)の重量を実現している。三上さんによるとパナレーサー製のシーラントを30~60mLほど入れることで、空気保持とパンク時の対応が可能となるという。チューブレスタイヤとして運用することを考えてもRACE A EVO4 TLCの重量面でのデメリットは生じなくなっている。チューブレスのウィークポイントであった重量をクリアするこのタイヤは、新たな選択肢としてレース志向のサイクリストにとっても有力な候補となってくるはずだ。
気になるホイールの相性は?
さて、チューブレスではホイールとの嵌合の相性が切っても切れない関係である。世の中にはハンドポンプだけでもビードを上げられるものが存在する一方、タイヤとリムの相性が良くなければエアコンプレッサーを使ってもビードを上げるのに苦労するものも存在していることも事実だ。
「ビード上げにはリムの溝が重要になってくるんですが、その部分の設計がメーカーによって異なるのは当たり前です。さらに年式やモデルによっても細かく違いがあるため、メーカーが同じでもリムによって嵌めやすい、嵌めにくいは、正直あります。その各メーカーによっての違いを確認しながら、我々もビード周りの設計を進めました。ひとつひとつ、現物で確認する作業です。
パナレーサーではシマノ、カンパニョーロ、マヴィックなど様々なメーカー製品で試験を繰り返しています。中でもマヴィックは相性がよく、スタンズやイーストンも比較的ビードは上げやすいです。タイヤをどこに合わせるかは難しい判断になりますが、パナレーサーとしても製品として販売していく以上、使いやすいタイヤであることを念頭に置いて開発している自負はあります」と三上さん。
タイヤと同時にシーラント「シールスマート」をリリース
RACE EVO4の開発と同時に、パナレーサーは新製品となるタイヤシーラント「シールスマート」を並行して開発を進めていた。もちろん今作のチューブレスレディタイヤと組み合わせて使用することを目的としたもの。ロードタイヤの開発が日本のプロチームとともに行ったように、シーラント自体もまた北米のグラベルチーム「Panaracer/Factor p/b Bicycle X-Change」と共にテストを繰り返し性能を煮詰めていったという。
このチームはダーティカンザで好成績を収めている強豪であり、所属している日本人ライダーの竹下佳映さんが今年のダーティカンザで女子総合4位を獲得(記事はこちら)。そんなメンバーと共に様々な試作品をテストを繰り返し、チームから高評価を得たものをプロダクトとして採用した。
日本製のシールスマートは、配合されるラテックスが硬化することでタイヤ内の空気保持とパンク時のピンホールを塞ぐ役割を担う製品に仕上げられている。細かく粉砕したクルミ殻も入れられており、ラテックスを纏ったクルミ殻がパンク穴に入り込むことでエア漏れを素早く止めてくれる。
「ロードタイヤの場合は30~60mL程の量で、シーラントがタイヤ1周回した後にも液体が残ります。しかし、主成分が水分なので使用していくうちに揮発していってしまうので、定期的なメンテナンスは必要です。シーラントとして機能する期間は、走行状況や保管状況にもよりますが約2ヶ月から7ヶ月の間です。」と三上さんは言う。
また、シールスマートは低アレルゲン性としており、敏感肌の方でも作業しやすいプロダクトだという。弱アルカリ性という性質でもあるため、アルミリムへの攻撃性が低いことも特徴の1つ。一般的なシーラントの中にはリムへの攻撃性がある物もあり、シールスマートはアルミリムへの心配も少なく使用できるのは嬉しい性質を持つシーラントと言えそうだ。
チューブレス初体験の宇都宮ブリッツェン・阿部&小野寺がインプレッション
― このパナレーサーのRACE A EVO4 TLCを使用する以前にチューブレスの経験はありましたか
小野寺:僕はチームのキャンプでこのタイヤを使用したのが初めてのチューブレス体験となりました。
阿部:僕も初めてでした。シクロクロスもチューブラーで戦っているので、チューブレス初使用に到達するまで時間がかかってしまいましたね。CXならば現場でタイヤを交換できたり、レースに持ち込むホイールの数を減らすことができるので、個人でレースをするならばチューブレスかな、とは考えていました。しかし使ったことはありませんでした。
― それではこのタイヤが初めてだったわけですね。使ってみての第一印象はいかがでしたか。
阿部&小野寺:感動しました!
小野寺:本当にその一言に尽きると思います。何がそう感じさせているかと言うと、まず乗り出しの軽さですね。これには感激しました。重量が軽いというアドバンテージが影響していると思いますが、とにかく漕ぎ出しが軽いです。さらに乗り心地も好感触です。路面のギャップをタイヤ自体が吸収してくれ、快適なサイクリングを楽しめます。
かつ、タイトなコーナーが続くようなダウンヒルで攻めようとした時は、タイヤのグリップ力が際立ちます。グリップ力の上限が見えないほど路面を捉え続けてくれるため、安心してバイクを倒しこんでコーナーに入ることができる安心感はありました。
阿部:僕が考えていたことと玲の意見は全く同じですね。タイヤ自体の路面追随力が抜群に良かったことを付け加えたいです。タイヤをテストしたキャンプ地の路面はアスファルトの角が立っていたのですが、その様な凹凸のある場所で、タイヤがうまく変形してくれるため様々な情報をライダーに伝えてきてくれるのです。この性能がタイヤに一番求めているものだったので、僕としては非常に良いタイヤであると思っています。
このフィーリングを生み出す理由は、チューブが使われていないからだと思っています。タイヤが薄く作られ、かつ内部でズレるチューブのような物が入っていないからこそ、路面からの入力を受けたタイヤが素早く変形し、かつ変形量が多くなっていると考えています。だからこそ路面の追随感やインフォメーションがダイレクトに伝わる感じが生み出されているのでしょう。
小野寺:オートバイと同じことなのかもしれません。僕はオートバイにも乗るのですが、購入直後はチューブを入れるタイヤで走っていましたが、チューブレスタイヤに切り替えた途端に乗り心地が改善されたことがあります。自転車においても同じようなことが言えるのかもしれませんね。このタイヤをテストしてた時に、途中でクリンチャーに戻したのですが、どうしても乗り心地に差があるように感じてしまいました。それほどフィーリングが異なります。
― RACE Aというタイプに分類されていますが、他のタイヤタイプと性格は似ていますか。
阿部:Aという刻印がタイヤにはされていますが、それぞれの性格は全く異なります。構造による違いなのか、製法による違いなのかははっきりとわかりませんが、別物として捉えたほうが良いです。具体的にどの点が違うかというのは、同じ要素が無いので説明するのが非常に難しいです。
小野寺:見た目はクリンチャーと似ていますが、チューブラーと同じ様にタイヤとしての構造から違うタイヤですので、クリンチャーとも同じタイプのタイヤだとは思えないです。同じコンパウンドを採用していたとしても、グリップ力はチューブレスのほうが高いと感じています。
三上:メーカーとしてもチューブラー、チューブレス、クリンチャーは異なるタイヤとして開発を行っています。Aは「All Round」という意味なので、各タイプごとにオールラウンドに活躍できる性能を備えているという捉え方をしていただければと思います。
クリンチャーのAと比較しても、チューブレスの場合はシーラントを使ったパンク対策を行えるので、ProTiteはトレッドの下のみに配置しています。このような作りの差が軽量性やしなやかさにつながっているのだと思います。
小野寺:確かに軽量性やタイヤのしなやかさが生まれますね。コンパウンドのみがタイヤの性格を変えるとは限らないということが明らかになっていると思います。
― レースでも満足できる性能は備えていますか。
阿部:チューブレスをレースで使えるなら使いたいです。
小野寺:僕も同意見ですね。プロ選手としてはタイヤだけではなく、ホイールといった機材との相性や、ホイールなどの性能もレースでの要求に応えられるものが欲しいです。それらが揃えられた上で、レース途中で空気が抜けてしまう、パンクのしやすさなどの不安がクリアされるのであれば、ぜひ使いたいです。
中里(宇都宮ブリッツェン・メカニック):チューブレスの場合はリム打ちパンクのリスクを軽減することができますし、ちょっとしたピンホールパンクならばシーラントがエア漏れを止めてくれるという観点で見ても、レースで使用しても良いと思います。プロレース、特にステージレースの場合は1回のパンクで負うリスクは非常に大きく、失うものは計り知れないです。その心配を減らすことができるスペックは有していると思います。
三上:メーカーとしてもRACE A TLCはレース用タイヤとして開発を進めてきました。結果を求めるレースの現場で使ってもらいたいですし、性能に関しても自信があります。
阿部:このチューブレスタイヤが備える性能をそのままチューブラーで再現される事ができたら…と思ってしまいます。それではチューブレスタイヤである必要はなくなってしまいますが、僕はタイヤの理想形の1つをRACE A EVO4 TLCに見つけました。それほど衝撃を受けたタイヤでしたね。
RACE A EVO4 TLC(チューブレスコンパーチブル)
サイズ | 25mm、28mm |
重量 | 210g(25mm)、240g(28mm) |
推奨内圧(kPa) | MAX800(25mm)、MAX650(28mm) |
価格 | 6,500円(税抜) |
シールスマート
容量 | 120mL、500mL(いずれもクルミ殻入り) |
価格 | 800円(税抜、120mL)、2,100円(税抜、500mL) |
提供:パナレーサー 取材協力:宇都宮ブリッツェン 制作:シクロワイアード編集部