2019/06/11(火) - 18:00
新たなるジロのハイエンドロードシューズIMPERIAL特集後編では、インプレッションと本社スタッフへのインタビューを紹介。「快適性を第一に開発した」というIMPERIALは、従来のジロシューズとは全く異なる日本人の足にもマッチするものだった。
プレゼンテーションが行われたガイオーレ・イン・キアンティの村は、ストラーデビアンケの発着地点でもあるシエナから車で30分ほど走った山の中にある。
ワイン通ならご存知の、キアンティ・クラシコの名産地。細かいカーブを繰り返すワインディングの両側には無限とも思える丘が連なり、その斜面は葡萄かオリーブの木で埋め尽くされている。名門ワイナリーとしても知られるプレゼン会場は、小高い丘の頂上に位置する集落にあった。
ジロの顔役と言って良いエリック(リクター)や各国から集まったメディア陣と挨拶を済ませ、翌日からホテルの一室でIMPERIALの紹介を受ける。プロジェクターも何も無い、わずか30分ほどの簡潔なプレゼンテーション。「御託をいろいろと並べるよりも、まずは試してみてほしい」という意思が伝わってくる。
今回のテストライドは、イタリアを中心にしたプレミアムガイドツアー「inGAMBA(ガンバ)Tour」のプログラムを使ったものだった。毎日メカニックが調整してくれる最新バイク(RED e-Tap AXSを装備したピナレロ DOGMA F10 DISK)に乗り、風光明媚な風景の中を元プロのガイドで走り、終了後にはプロのソワニエによるマッサージと地産の美味しい食事、ワイン、そして就寝...を2日半。初日と3日目は3時間ほどのショートライドで、中日は5時間ほどの行程だ。
このプログラムが使われた理由は、ジロがツアー用ヘルメットを提供しているから。ちなみに今回のガイド役は、1994年のモンヴァントゥーを超えるツール・ド・フランス第15ステージで逃げ切り優勝を挙げたエロス・ポーリ(イタリア)と、元トレック・セガフレードのアンドレ・カルドソ(ポルトガル)だった。贅沢極まりないツアーを体験させて頂いたことを、この場を借りてお礼申し上げたい。
さて、IMPERIALだ。足を通してまず気づくのは、今までのジロシューズよりもラストに余裕があること。比較的細身(甲は高い)の足を持つ私でも同社製シューズはややきつく感じていたが、IMPERIALはきつくもなく、だぶつくでもなく、 ピタリと足に馴染む。昨今のシューズトレンドになりつつある、ガチガチに固めない作りは、昔から変わらないジロの一貫した哲学であり、それが更なる進化を遂げていた。薄いアッパーが肌に寄り添う感覚はとても新鮮で、他社ブランドで比較すればスペシャライズドのS-WORKS 7よりもアッパーは薄く柔らかい。
150gという軽さを誇るPROLIGHT TECHLACEがあるのに、なぜ215gもあるハイエンドシューズを?と疑問に思う方もいるだろう。しかしそれは、10年前のシューズのローンチから快適性を追い求めてきたジロならではの答え。履き比べて確かめてみたが、IMPERIALの方が確実に横幅が広く、特に従来先細りと感じていたつま先部分に余裕が生まれた。これまでマイサイズだった41.5は「全く需要がなかった」という理由でカタログから消え、渋々41.0へと下げたにも関わらず。
後に聞いたところ、従来品と変わらないものの、アッパー素材が薄くなったこと、そしてメッシュ部分が広く柔軟性が上がったことで余裕が生まれたのだという。「使う素材が違えばアッパーのパターンも、縫い目も、足入れ部分の形状も違ってくる。各製品でフィッティングが若干変化するのは良くあることなのです」とはエリックの談。
私の右足は内反小趾(小指の付け根が外に張り出している)気味で、例えばオフロードシューズのEMPIRE VR90を長時間履き続けた場合、必ずと言って良いほど痛みが出る。しかしIMPERIALはアッパー、特にメッシュの柔軟性が高く、ライドの休憩中でもBOAダイヤルを緩める必要を感じなかったのだ。「休憩中にシューズを緩める」という行為が当たり前となり、気にも留めていなかった自分(きっとこういう方は多いと思う)にとって、改めてストレスフリーの素晴らしさに気づくきっかけとなった。
幸いなことに、私含め今回の発表会に参加したジャーナリストは、3日間使用したIMPERIALを持ち帰ることができた。帰国後1ヶ月ほど履き続けているが、手渡された当初よりもアッパーが脚に馴染んできたと感じる。へたったのではなく、ストレスの掛かっている部分(自分の場合は小指の付け根と甲の足首側)が僅かに伸びた感じ。「第二の肌のような脚あたりを目指した」というエリックの言葉が頭の中を反芻する。
アッパーのメッシュはフィット感のみならず、もちろん通気性にも貢献する部分だ。アウトソールには小さな通気孔しか開いていないが、アッパー部分で内部の熱を逃がしてくれるのを感じる。試しに厚手のソックスを履いたところ、通気性とフィット感も台無しになってしまったので、同社のHRC TEAMのような薄いものをオススメしたい。
例えばグリップ力の強いタンにBOAのワイヤーが引っかかり、ダイヤルを全開放した場合でも指でワイヤーを送り出さなければならないなど、改善点もあることはある。しかしIMPERIALの伸びやかなフィット感はそれを補って余りあるメリットだし、それゆえ同社製シューズのどれよりも日本人の足にマッチする。もしかしたら、ワイドフィットなんて要らないんじゃないかと思えるほどに。
港区のGIRO STUDIO TOKYOを始めとした全国の6ショップでは、IMPERIALの先行販売が開始されるという。兄弟分の新型EMPIRE SLXと共に、その類稀なるフィット感を体感して欲しい。
私はプレゼンテーションを行ったエリックにインタビューを行い、IMPERIALを生み出した理由やこだわり、プロ選手たちの声、従来モデルとのフィッティングの差などに付いて深堀りしてみた。
― このシューズを生み出すきっかけとなったものは?
第一の理由としては、よりフィッティングに優れるシューズをユーザーに届けたかったから。より良い締め付け調整を素早くイージーに行う目的でTECHLACEをリリースし、大きな成功を収めましたが、ベルクロと靴紐の組み合わせは、正直に言うと細やかな調整という意味で完全に満足できてはいませんでした。BOAダイヤルを好む方は一般ユーザーでもプロレーサーでも多く、そこで 今回はジロとして初めて2BOAダイヤル式のロードシューズ製作に取り掛かりました。
しかし、フィッティングシステムを変えるというのは、単に既存のアッパーを使い回せば良いというものではありません。特にプロ選手使用を前提としたプレミアムシューズなので、軽く、快適で、通気性が良く、若干の防水性能を与え、見た目も最新という彼らの要求に応える必要がありました。そこで、ジロのラインアップ中最もその条件に近いPROLITE TECHLACEをベースに、できる限り縫い目を抑えて完璧なフィッティングを求めたのです。
開発ではテイラー・フィニー(アメリカ、EFエデュケーションファースト)やティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)、ティファニー・クロムウェル(オーストラリア、キャニオン・スラム)に協力してもらいました。そして、彼らの好みに合わせてシューレース式の「EMPIRE SLX」も同時デビューさせます。シューレースを愛用するフィニーはこちらのモデルですし、選択肢を与えることができたのは個人的にも嬉しく思っています。
このアッパー自体はPROLITE TECHLACEで使用経験があり、ソールのEC90SLXは EMPIRE SLXで使用したもの。ですので開発としてはアッパーのアップデートとパターン開発が中心でした。どこにどう通気孔を配置するか、最良のフィットのために何をどうすれば良いのか、など。ここまで20ヶ月ほどの開発期間を要しています。
― IMPERIALを試した選手たちの反応は?
「すごく快適」ということに尽きるでしょうか。狙い通りではありますが(笑)。何か特別なフィッティングを施さずとも、ただ足を通しただけでフィットする感覚は新鮮だったようです。
加えてプロ選手が使う上でもう一つ重要なことは「信用できるか否か」。例えば落車した時にダイヤルが壊れたり、あまりにも軽いシューズであれば壊れないか、とか。その意味でEC90SLXソールは非常に丈夫ですし、BOAは様々なダイヤルの中でも構造がシンプルなので壊れにくい。そしてシューレースのEMPIREであれば破損とは無縁です。ヒールパーツは交換式ですし、アッパーも掃除しやすいし、洗ってもすぐに乾かすことができる。こうした要素は毎日使う「機材」として好まれるものです。
― アッパー素材のカッティングパターンの狙いは?
第一には軽量化と通気性を推し進めるため。BOAから放射線状にカットされているのは、ダイヤルを締め込んだ際に足全体を包み込むように締め上げるためです。踵側にはヒールカップが入っているので通気性は期待できませんが、可能な限りの軽量化とルックスを兼ね備えるためにシューズ全体にカットティングを施しているんです。BOA社にもアドバイスを求めつつ、締め込んだ際においても違和感の無いフィッティングにこだわりました。
― 私は普段41.5ですが、41に変わりました。その理由は?
シューズに関して各製品でフィッティングが若干変化するのはよくあることです。それぞれのシューズは使う素材が違えばアッパーのパターンも、縫い目も、足入れ部分の形状も違う。実際にIMPERIALのラスト(足型)は他と変わりませんが、アッパー素材が非常に薄いため、シューズ内に若干の余裕が生まれています。実際に41.5と41サイズの差は2mmと非常に小さなものです。つま先の形状はほんのわずかにEmpireなどとは異なりますので、そうした体感の違いが生まれます。
日本のマーケットにとってもIMPERIALは良くマッチすると考えています。従来Empire、特にアッパー素材が硬いリフレクティブ系の製品は脚に対する自由度が少ないので、フィット感の良いIMPERIALを通して我々ジロが目指す「本当のフィット感」を体感してもらえると思いますね。
― 今のサイクリングシューズの流行、風潮とは?
第一には軽さの追求。これは間違いありません。我々も先駆者と言えますし、最近ではスペシャライズドも超軽量シューズ戦線に打って出てきました。シディやシマノはこの波に乗っていませんが、おそらくは耐久性を重視した指針なのでしょう。例えばシディは調整機能がたくさんあって、かつ複雑。そういったものよりも、より簡単で、快適なシューズが求められていると感じています。ロードでも、シクロクロスでも、あるいはMTBに関しても。
― ワイドフィットモデルの展開は考えていますか?
案としてはありますが、まだ取り掛かってはいません。理由としては先ほどと同じくグローバルラストでもシューズ内部のボリュームが増したことで、アジア人のラストにマッチするようになったためです。例えばEMPIREなどにワイドフィット版のリクエストは多いのですが、ひとまずこのIMPERIALとEMPIRE SLXの反応を見て動いていきたいと考えています。これからのジロに注目して下さいね。
トスカーナで開催されたプレゼンテーション。ワイン産地を駆け巡る
プレゼンテーションが行われたガイオーレ・イン・キアンティの村は、ストラーデビアンケの発着地点でもあるシエナから車で30分ほど走った山の中にある。
ワイン通ならご存知の、キアンティ・クラシコの名産地。細かいカーブを繰り返すワインディングの両側には無限とも思える丘が連なり、その斜面は葡萄かオリーブの木で埋め尽くされている。名門ワイナリーとしても知られるプレゼン会場は、小高い丘の頂上に位置する集落にあった。
ジロの顔役と言って良いエリック(リクター)や各国から集まったメディア陣と挨拶を済ませ、翌日からホテルの一室でIMPERIALの紹介を受ける。プロジェクターも何も無い、わずか30分ほどの簡潔なプレゼンテーション。「御託をいろいろと並べるよりも、まずは試してみてほしい」という意思が伝わってくる。
今回のテストライドは、イタリアを中心にしたプレミアムガイドツアー「inGAMBA(ガンバ)Tour」のプログラムを使ったものだった。毎日メカニックが調整してくれる最新バイク(RED e-Tap AXSを装備したピナレロ DOGMA F10 DISK)に乗り、風光明媚な風景の中を元プロのガイドで走り、終了後にはプロのソワニエによるマッサージと地産の美味しい食事、ワイン、そして就寝...を2日半。初日と3日目は3時間ほどのショートライドで、中日は5時間ほどの行程だ。
このプログラムが使われた理由は、ジロがツアー用ヘルメットを提供しているから。ちなみに今回のガイド役は、1994年のモンヴァントゥーを超えるツール・ド・フランス第15ステージで逃げ切り優勝を挙げたエロス・ポーリ(イタリア)と、元トレック・セガフレードのアンドレ・カルドソ(ポルトガル)だった。贅沢極まりないツアーを体験させて頂いたことを、この場を借りてお礼申し上げたい。
日本人でもワイドフィット要らず。薄く、足に寄り添うフィット感
さて、IMPERIALだ。足を通してまず気づくのは、今までのジロシューズよりもラストに余裕があること。比較的細身(甲は高い)の足を持つ私でも同社製シューズはややきつく感じていたが、IMPERIALはきつくもなく、だぶつくでもなく、 ピタリと足に馴染む。昨今のシューズトレンドになりつつある、ガチガチに固めない作りは、昔から変わらないジロの一貫した哲学であり、それが更なる進化を遂げていた。薄いアッパーが肌に寄り添う感覚はとても新鮮で、他社ブランドで比較すればスペシャライズドのS-WORKS 7よりもアッパーは薄く柔らかい。
150gという軽さを誇るPROLIGHT TECHLACEがあるのに、なぜ215gもあるハイエンドシューズを?と疑問に思う方もいるだろう。しかしそれは、10年前のシューズのローンチから快適性を追い求めてきたジロならではの答え。履き比べて確かめてみたが、IMPERIALの方が確実に横幅が広く、特に従来先細りと感じていたつま先部分に余裕が生まれた。これまでマイサイズだった41.5は「全く需要がなかった」という理由でカタログから消え、渋々41.0へと下げたにも関わらず。
後に聞いたところ、従来品と変わらないものの、アッパー素材が薄くなったこと、そしてメッシュ部分が広く柔軟性が上がったことで余裕が生まれたのだという。「使う素材が違えばアッパーのパターンも、縫い目も、足入れ部分の形状も違ってくる。各製品でフィッティングが若干変化するのは良くあることなのです」とはエリックの談。
私の右足は内反小趾(小指の付け根が外に張り出している)気味で、例えばオフロードシューズのEMPIRE VR90を長時間履き続けた場合、必ずと言って良いほど痛みが出る。しかしIMPERIALはアッパー、特にメッシュの柔軟性が高く、ライドの休憩中でもBOAダイヤルを緩める必要を感じなかったのだ。「休憩中にシューズを緩める」という行為が当たり前となり、気にも留めていなかった自分(きっとこういう方は多いと思う)にとって、改めてストレスフリーの素晴らしさに気づくきっかけとなった。
幸いなことに、私含め今回の発表会に参加したジャーナリストは、3日間使用したIMPERIALを持ち帰ることができた。帰国後1ヶ月ほど履き続けているが、手渡された当初よりもアッパーが脚に馴染んできたと感じる。へたったのではなく、ストレスの掛かっている部分(自分の場合は小指の付け根と甲の足首側)が僅かに伸びた感じ。「第二の肌のような脚あたりを目指した」というエリックの言葉が頭の中を反芻する。
アッパーのメッシュはフィット感のみならず、もちろん通気性にも貢献する部分だ。アウトソールには小さな通気孔しか開いていないが、アッパー部分で内部の熱を逃がしてくれるのを感じる。試しに厚手のソックスを履いたところ、通気性とフィット感も台無しになってしまったので、同社のHRC TEAMのような薄いものをオススメしたい。
例えばグリップ力の強いタンにBOAのワイヤーが引っかかり、ダイヤルを全開放した場合でも指でワイヤーを送り出さなければならないなど、改善点もあることはある。しかしIMPERIALの伸びやかなフィット感はそれを補って余りあるメリットだし、それゆえ同社製シューズのどれよりも日本人の足にマッチする。もしかしたら、ワイドフィットなんて要らないんじゃないかと思えるほどに。
港区のGIRO STUDIO TOKYOを始めとした全国の6ショップでは、IMPERIALの先行販売が開始されるという。兄弟分の新型EMPIRE SLXと共に、その類稀なるフィット感を体感して欲しい。
本社スタッフインタビュー
私はプレゼンテーションを行ったエリックにインタビューを行い、IMPERIALを生み出した理由やこだわり、プロ選手たちの声、従来モデルとのフィッティングの差などに付いて深堀りしてみた。
― このシューズを生み出すきっかけとなったものは?
第一の理由としては、よりフィッティングに優れるシューズをユーザーに届けたかったから。より良い締め付け調整を素早くイージーに行う目的でTECHLACEをリリースし、大きな成功を収めましたが、ベルクロと靴紐の組み合わせは、正直に言うと細やかな調整という意味で完全に満足できてはいませんでした。BOAダイヤルを好む方は一般ユーザーでもプロレーサーでも多く、そこで 今回はジロとして初めて2BOAダイヤル式のロードシューズ製作に取り掛かりました。
しかし、フィッティングシステムを変えるというのは、単に既存のアッパーを使い回せば良いというものではありません。特にプロ選手使用を前提としたプレミアムシューズなので、軽く、快適で、通気性が良く、若干の防水性能を与え、見た目も最新という彼らの要求に応える必要がありました。そこで、ジロのラインアップ中最もその条件に近いPROLITE TECHLACEをベースに、できる限り縫い目を抑えて完璧なフィッティングを求めたのです。
開発ではテイラー・フィニー(アメリカ、EFエデュケーションファースト)やティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)、ティファニー・クロムウェル(オーストラリア、キャニオン・スラム)に協力してもらいました。そして、彼らの好みに合わせてシューレース式の「EMPIRE SLX」も同時デビューさせます。シューレースを愛用するフィニーはこちらのモデルですし、選択肢を与えることができたのは個人的にも嬉しく思っています。
このアッパー自体はPROLITE TECHLACEで使用経験があり、ソールのEC90SLXは EMPIRE SLXで使用したもの。ですので開発としてはアッパーのアップデートとパターン開発が中心でした。どこにどう通気孔を配置するか、最良のフィットのために何をどうすれば良いのか、など。ここまで20ヶ月ほどの開発期間を要しています。
― IMPERIALを試した選手たちの反応は?
「すごく快適」ということに尽きるでしょうか。狙い通りではありますが(笑)。何か特別なフィッティングを施さずとも、ただ足を通しただけでフィットする感覚は新鮮だったようです。
加えてプロ選手が使う上でもう一つ重要なことは「信用できるか否か」。例えば落車した時にダイヤルが壊れたり、あまりにも軽いシューズであれば壊れないか、とか。その意味でEC90SLXソールは非常に丈夫ですし、BOAは様々なダイヤルの中でも構造がシンプルなので壊れにくい。そしてシューレースのEMPIREであれば破損とは無縁です。ヒールパーツは交換式ですし、アッパーも掃除しやすいし、洗ってもすぐに乾かすことができる。こうした要素は毎日使う「機材」として好まれるものです。
― アッパー素材のカッティングパターンの狙いは?
第一には軽量化と通気性を推し進めるため。BOAから放射線状にカットされているのは、ダイヤルを締め込んだ際に足全体を包み込むように締め上げるためです。踵側にはヒールカップが入っているので通気性は期待できませんが、可能な限りの軽量化とルックスを兼ね備えるためにシューズ全体にカットティングを施しているんです。BOA社にもアドバイスを求めつつ、締め込んだ際においても違和感の無いフィッティングにこだわりました。
― 私は普段41.5ですが、41に変わりました。その理由は?
シューズに関して各製品でフィッティングが若干変化するのはよくあることです。それぞれのシューズは使う素材が違えばアッパーのパターンも、縫い目も、足入れ部分の形状も違う。実際にIMPERIALのラスト(足型)は他と変わりませんが、アッパー素材が非常に薄いため、シューズ内に若干の余裕が生まれています。実際に41.5と41サイズの差は2mmと非常に小さなものです。つま先の形状はほんのわずかにEmpireなどとは異なりますので、そうした体感の違いが生まれます。
日本のマーケットにとってもIMPERIALは良くマッチすると考えています。従来Empire、特にアッパー素材が硬いリフレクティブ系の製品は脚に対する自由度が少ないので、フィット感の良いIMPERIALを通して我々ジロが目指す「本当のフィット感」を体感してもらえると思いますね。
― 今のサイクリングシューズの流行、風潮とは?
第一には軽さの追求。これは間違いありません。我々も先駆者と言えますし、最近ではスペシャライズドも超軽量シューズ戦線に打って出てきました。シディやシマノはこの波に乗っていませんが、おそらくは耐久性を重視した指針なのでしょう。例えばシディは調整機能がたくさんあって、かつ複雑。そういったものよりも、より簡単で、快適なシューズが求められていると感じています。ロードでも、シクロクロスでも、あるいはMTBに関しても。
― ワイドフィットモデルの展開は考えていますか?
案としてはありますが、まだ取り掛かってはいません。理由としては先ほどと同じくグローバルラストでもシューズ内部のボリュームが増したことで、アジア人のラストにマッチするようになったためです。例えばEMPIREなどにワイドフィット版のリクエストは多いのですが、ひとまずこのIMPERIALとEMPIRE SLXの反応を見て動いていきたいと考えています。これからのジロに注目して下さいね。
提供:ダイアテック text:So.Isobe