2019/05/23(木) - 13:32
「被りたくても、被れなかった」。そんな思いが過去のものとなる時がやってきた。ジロのハイエンドヘルメット「AETHER」と「SYNTHE」、そしてミドルグレードの「SYNTAX」に、待望のアジアンフィットモデルが追加されたのだ。
今回はそのインプレッションとリリースに至るまでの開発ストーリー、そしてMIPSの採用など安全性に対するこだわりを総力特集。選手やホビーユーザーの声、そして本社スタッフへのインタビューを含め、それら製品の使い勝手やブランドの魅力に迫っていきたい。
「ジロのヘルメットは日本人には合わない」。今でもそんなイメージを持っている方は少なくないはずだ。その昔からジロのシェル型は欧米ブランドの中でも狭めで、大多数の日本ユーザーにはフィットしなかったのは一つの事実。思い返せばディスカバリーチャンネルに始まり、ラボバンクやBMCレーシングなど世界屈指のトップチームに愛用されてきた印象があるだけに、試着で涙を飲んだ方も少なくはないだろう。
そんなジロに変化が起こったのは5年前のこと。SAVANTを皮切りに、かつてのトッププロチームに使用されたAEONが、そしてエアロロードヘルメットのVANQUISHが次々とアジアンフィット化。そして今年は遂にハイエンドモデル「AETHER」と「SYNTHE」、そしてミドルグレードの「SYNTAX」がアジアンフィット対応となったことで隙のないアジアンフィットのラインナップが完成したのだ。2019年は日本国内のジロファンにとって大きな変革の年と言えるだろう。
筆者はジロのアジアンフィットモデルについて、同社でグローバルマーケティングを務めるエリック・リクター氏に話を聞く機会を得た。今アジアンフィットを拡充させた理由や、グローバルフィットとは実際に何が違うのか、そしていかにして研究開発したのかを聞いてみた。
― 長い間グローバルフィットしかなかったジロが、今アジアンフィットに力を入れている理由は?
やはりグローバル的には無視できないものでしたから。ただし取り掛かりたくてもノウハウがなく、データを収集するのにだいぶ時間を費やしました。ジロがアジアンフィットのヘルメットをリリースしたのは5年ほど前からで、それ以前の2年ほどはデータを収集し、多方面から検証しています。最初の製品としてはスキー用のヘルメットでしたね。
― アジアンフィットとグローバルフィットの違いは?
アジアンフィットというと単に横幅が広いことだけが注目されがちですが、実際は鉢回りはもちろん、頭頂から耳までの遠さ、鼻までの遠さなど、様々な要素が3D的に絡み合っているんです。現在のところアジアンフィットの反応は上々ですが、ジロとしてはまだ経験値が浅いため、これからもデータの収集と分析を重ねていかなければなりません。これはアジアンフィットに限った話ではなく、グローバルとしても数年に一度は形状のデータ分析を行っているのです。
例えば同じアジアンフィットでも、製品によって被り心地が異なる場合がありますが、これはアウターシェルのデザインによってパッド形状も違えば、クロージャーもMIPSも形状が異なってくるため。ヘルメットの様々なパーツによってフィットが変わるといって過言ではありません。
ヘルメットブランドとして最も重要なことは、安全性の追求です。それが二重シェル構造のAETHER MIPSを作った理由ですし、ジロはヘルメットの全ラインナップをMIPS化した最初のブランドであることからも理解して頂けるはずです。
― トップモデル各種がアジアンフィット化したことは大きいですね。
ええ。そしてそれだけでなく、ミドルグレードのSYNTAX MIPSがアジアンフィットになったことも非常に大きなことだと考えています。ルックス的にはもっと高級なヘルメットに見えますし、重量も重くない。ビギナーにとって素晴らしい選択になると自負しています。
今まで我々のヘルメットを諦めていた方も、ぜひ一度試着をしてみて下さい。今までとは違うジロを体感できるはずです。
これまで紹介したようにジロのアジアンフィットヘルメットが拡充されたわけだが、実際のところ、アジアンフィットを求める声や、一般ユーザーの反応はどのようなものなのだろう? それを聞き求めるべく取材班は東京都港区、東京タワー至近にある世界初のジロ専門ストア「GIRO STUDIO TOKYO」を訪問。ストアマネージャーの内田雅樹さんに、これまでの実情や、売り場での本音を聞いてみた。
― 今日はよろしくお願いします。もう売り場のヘルメットのほとんどがアジアンフィットモデルに刷新されていますね。ジロのアジアンフィットの特徴とはどのようなものなのでしょう?
ジロのアジアンフィットモデルの特徴は、幅広頭に対応しつつ、見た目がほとんど変わってないこと。これは良いポイントですよ。特にジロは安全はもちろんルックスにもこだわるブランドですから、その辺りは重視されたんでしょう。せっかく被るんだから、スマートに、カッコよく乗りたいですからね。
実際の日本人のユーザーで、欧米フィットのヘルメットが合う方って、私の体感的におよそ1割、せいぜい2割くらいしかいないんです。特にAETHER MIPSは2重シェル構造になっているので、インナーシェルはSYNTHEよりもずっとタイト。前側には余裕を持たせたシェルなんですが、側面がきついのでどうしても日本人には厳しくなってしまったんですね。
SYNTHEと同じつもりで試着にいらっしゃっても「あれ?これ被れないや...」という声が多く、売り手として申し訳なかったわけです。デザインが良いのに被れない方が多くて、アジアンフィットへの要望は非常に高かったですね。
― そして遂にアジアンフィットが発売されました。GIRO STUDIO TOKYOを訪れる方の反応はいかがですか?
「そうは言ってもジロだから被れないでしょ?」という声が多かったのですが、実際に見て触って被ったお客さんは皆驚くわけです。「あれ!?被れるじゃん!」、「これMサイズだよ!?僕今までジロのMなんて被れた試しがないよ」って。
そういう反応をそれこそ無数に見てきたので、すごく嬉しかったですね。今まで何とかLサイズを被っていた方が、何のストレスもなくアジアンフィットのMサイズを被れるようになった。これはユーザーにとって素晴らしいことですよ。特にSYNTHEなんてコンパクトなデザインのままですから、よりスマートな出で立ちを実現できるようになったんです。
― 人気はどのモデルですか?やはり新作のAETHER?
アジアンフィット化してからの売れ線は断然SYNTHEですね。アーティストとコラボした限定モデルも多くて、国内外価格差もほとんどなくて、特にホワイトとブラックの売れ行きは入荷が追いつかない程なんです。AETHERはまだ見慣れない方が多いこともあってか2番人気、といったところでしょうか。
― ミドルグレードのSYNTAXがアジアンフィット化したことについては?
SYNTAXの他ともっとも異なる点は被り心地なんですよ。SYNTHEやAETHERとも違って、かなり深めにすっぽりと頭を覆ってくれるので安心感があるし。ほぼAETHERの半値ですし、デザインだって2つのトップモデルの特徴を合わせたもので見劣りしません。これから自転車を始める方にとってはすごく良い選択肢だと思いますよ。GIRO STUDIO TOKYOではほぼ全製品を在庫していますので、新しくなったアジアンフィットモデルを是非試しにいらっしゃって頂きたいですね。
Vol.2では、ジロサポートチームの一つ「AVENTURA CYCLNG」を率いる管洋介さんによる手記で、各ヘルメットの印象や、選手の落車体験を通して"もしもの時"にどうヘルメットが機能するのかを紹介します。
今回はそのインプレッションとリリースに至るまでの開発ストーリー、そしてMIPSの採用など安全性に対するこだわりを総力特集。選手やホビーユーザーの声、そして本社スタッフへのインタビューを含め、それら製品の使い勝手やブランドの魅力に迫っていきたい。
AETHER、SYNTHE、SYNTAXが待望のアジアンフィット化
「ジロのヘルメットは日本人には合わない」。今でもそんなイメージを持っている方は少なくないはずだ。その昔からジロのシェル型は欧米ブランドの中でも狭めで、大多数の日本ユーザーにはフィットしなかったのは一つの事実。思い返せばディスカバリーチャンネルに始まり、ラボバンクやBMCレーシングなど世界屈指のトップチームに愛用されてきた印象があるだけに、試着で涙を飲んだ方も少なくはないだろう。
そんなジロに変化が起こったのは5年前のこと。SAVANTを皮切りに、かつてのトッププロチームに使用されたAEONが、そしてエアロロードヘルメットのVANQUISHが次々とアジアンフィット化。そして今年は遂にハイエンドモデル「AETHER」と「SYNTHE」、そしてミドルグレードの「SYNTAX」がアジアンフィット対応となったことで隙のないアジアンフィットのラインナップが完成したのだ。2019年は日本国内のジロファンにとって大きな変革の年と言えるだろう。
本社スタッフに聞く、アジアンフィットを拡充させたワケ
筆者はジロのアジアンフィットモデルについて、同社でグローバルマーケティングを務めるエリック・リクター氏に話を聞く機会を得た。今アジアンフィットを拡充させた理由や、グローバルフィットとは実際に何が違うのか、そしていかにして研究開発したのかを聞いてみた。
― 長い間グローバルフィットしかなかったジロが、今アジアンフィットに力を入れている理由は?
やはりグローバル的には無視できないものでしたから。ただし取り掛かりたくてもノウハウがなく、データを収集するのにだいぶ時間を費やしました。ジロがアジアンフィットのヘルメットをリリースしたのは5年ほど前からで、それ以前の2年ほどはデータを収集し、多方面から検証しています。最初の製品としてはスキー用のヘルメットでしたね。
― アジアンフィットとグローバルフィットの違いは?
アジアンフィットというと単に横幅が広いことだけが注目されがちですが、実際は鉢回りはもちろん、頭頂から耳までの遠さ、鼻までの遠さなど、様々な要素が3D的に絡み合っているんです。現在のところアジアンフィットの反応は上々ですが、ジロとしてはまだ経験値が浅いため、これからもデータの収集と分析を重ねていかなければなりません。これはアジアンフィットに限った話ではなく、グローバルとしても数年に一度は形状のデータ分析を行っているのです。
例えば同じアジアンフィットでも、製品によって被り心地が異なる場合がありますが、これはアウターシェルのデザインによってパッド形状も違えば、クロージャーもMIPSも形状が異なってくるため。ヘルメットの様々なパーツによってフィットが変わるといって過言ではありません。
ヘルメットブランドとして最も重要なことは、安全性の追求です。それが二重シェル構造のAETHER MIPSを作った理由ですし、ジロはヘルメットの全ラインナップをMIPS化した最初のブランドであることからも理解して頂けるはずです。
― トップモデル各種がアジアンフィット化したことは大きいですね。
ええ。そしてそれだけでなく、ミドルグレードのSYNTAX MIPSがアジアンフィットになったことも非常に大きなことだと考えています。ルックス的にはもっと高級なヘルメットに見えますし、重量も重くない。ビギナーにとって素晴らしい選択になると自負しています。
今まで我々のヘルメットを諦めていた方も、ぜひ一度試着をしてみて下さい。今までとは違うジロを体感できるはずです。
GIRO STUDIO TOKYO店長が語る、売り場のリアル
これまで紹介したようにジロのアジアンフィットヘルメットが拡充されたわけだが、実際のところ、アジアンフィットを求める声や、一般ユーザーの反応はどのようなものなのだろう? それを聞き求めるべく取材班は東京都港区、東京タワー至近にある世界初のジロ専門ストア「GIRO STUDIO TOKYO」を訪問。ストアマネージャーの内田雅樹さんに、これまでの実情や、売り場での本音を聞いてみた。
― 今日はよろしくお願いします。もう売り場のヘルメットのほとんどがアジアンフィットモデルに刷新されていますね。ジロのアジアンフィットの特徴とはどのようなものなのでしょう?
ジロのアジアンフィットモデルの特徴は、幅広頭に対応しつつ、見た目がほとんど変わってないこと。これは良いポイントですよ。特にジロは安全はもちろんルックスにもこだわるブランドですから、その辺りは重視されたんでしょう。せっかく被るんだから、スマートに、カッコよく乗りたいですからね。
実際の日本人のユーザーで、欧米フィットのヘルメットが合う方って、私の体感的におよそ1割、せいぜい2割くらいしかいないんです。特にAETHER MIPSは2重シェル構造になっているので、インナーシェルはSYNTHEよりもずっとタイト。前側には余裕を持たせたシェルなんですが、側面がきついのでどうしても日本人には厳しくなってしまったんですね。
SYNTHEと同じつもりで試着にいらっしゃっても「あれ?これ被れないや...」という声が多く、売り手として申し訳なかったわけです。デザインが良いのに被れない方が多くて、アジアンフィットへの要望は非常に高かったですね。
― そして遂にアジアンフィットが発売されました。GIRO STUDIO TOKYOを訪れる方の反応はいかがですか?
「そうは言ってもジロだから被れないでしょ?」という声が多かったのですが、実際に見て触って被ったお客さんは皆驚くわけです。「あれ!?被れるじゃん!」、「これMサイズだよ!?僕今までジロのMなんて被れた試しがないよ」って。
そういう反応をそれこそ無数に見てきたので、すごく嬉しかったですね。今まで何とかLサイズを被っていた方が、何のストレスもなくアジアンフィットのMサイズを被れるようになった。これはユーザーにとって素晴らしいことですよ。特にSYNTHEなんてコンパクトなデザインのままですから、よりスマートな出で立ちを実現できるようになったんです。
― 人気はどのモデルですか?やはり新作のAETHER?
アジアンフィット化してからの売れ線は断然SYNTHEですね。アーティストとコラボした限定モデルも多くて、国内外価格差もほとんどなくて、特にホワイトとブラックの売れ行きは入荷が追いつかない程なんです。AETHERはまだ見慣れない方が多いこともあってか2番人気、といったところでしょうか。
― ミドルグレードのSYNTAXがアジアンフィット化したことについては?
SYNTAXの他ともっとも異なる点は被り心地なんですよ。SYNTHEやAETHERとも違って、かなり深めにすっぽりと頭を覆ってくれるので安心感があるし。ほぼAETHERの半値ですし、デザインだって2つのトップモデルの特徴を合わせたもので見劣りしません。これから自転車を始める方にとってはすごく良い選択肢だと思いますよ。GIRO STUDIO TOKYOではほぼ全製品を在庫していますので、新しくなったアジアンフィットモデルを是非試しにいらっしゃって頂きたいですね。
GIRO STUDIO TOKYO紹介
東京都港区、東京タワーからすぐの場所にある世界初のジロオフィシャルストア。ヘルメットやシューズのフィッティングにうってつけであるだけでなく、店内ディスプレイやインハウスイベントを通してジロの世界観を伝える唯一無二の存在。内田店長の親切な接客も評判だ。
住所:東京都港区芝2丁目1-23 ニューカナール升田ビル 1F
電話:03-6809-3998
営業時間:11:00~19:00
定休日:火曜、水曜
店舗オフィシャルサイト
店舗オンラインストア
住所:東京都港区芝2丁目1-23 ニューカナール升田ビル 1F
電話:03-6809-3998
営業時間:11:00~19:00
定休日:火曜、水曜
店舗オフィシャルサイト
店舗オンラインストア
アジアンフィットモデル一覧、スペック・カラー一覧
AETHER MIPS AF
サイズ | S、M、L |
重量 | 270g(Mサイズ) |
カラー | Matte Black Mmatte-Red-Dark-red Matte-White-Silver Matte-Mmidnight-Blue Black-flash |
価格 | 37,000円(税抜) |
SYNTHE MIPS AF
サイズ | S、M、L |
重量 | 250g(Mサイズ) |
カラー | Matte-Dusty-Purple-Heatwave Matte-Olive-Citron Matte-Citron-White Matte-Black Matte-White-Silver |
価格 | 27,500円(税抜) |
VANQUISH MIPS AF
サイズ | S、M、L |
重量 | 305g(シールド無し) 355g(シールドあり) |
カラー | Matte Black、Matte Dazzle Red / Black、Matte White Matte-Citron-White Matte-Midnight Blue Matte Grey Firechrome |
価格 | 36,000円(税抜) |
AEON AF
サイズ | S、M、L |
重量 | 211g(Mサイズ) |
カラー | Matte Frost / Charcoal Matte Black Matte Black / Bright Red Matte White / Silver Mat Flame / Vermillion Fade Matte Titanium Fade |
価格 | 18,500円(税抜) |
SYNTAX MIPS AF
サイズ | S、M、L |
重量 | 290g(Mサイズ) |
カラー | Matte Black、Matte White Midnight-Blue Citron White BLACK / BRIGHT RED |
価格 | 14,600円(税抜) |
SAVANT AF
サイズ | S、M、L |
重量 | 226g(Mサイズ) |
カラー | Matte Black /White Matte White / Black Matte Titanium /White Highlight Yellow |
価格 | 9,600円(税抜) |
Vol.2では、ジロサポートチームの一つ「AVENTURA CYCLNG」を率いる管洋介さんによる手記で、各ヘルメットの印象や、選手の落車体験を通して"もしもの時"にどうヘルメットが機能するのかを紹介します。
提供:ダイアテック text:So.Isobe