2018/07/07(土) - 00:00
世界の名だたるブランドからエアロロードが発表されている今夏、これまで沈黙を続けていたトレックが遂に新型Madone SLRをデビューさせる。卓越した空力性能はそのままに、ディスクブレーキの投入、新型の調整式トップチューブIsoSpeedによる一歩進んだ快適性、更には軽さまで得たスーパーバイクの詳細を、アメリカはウィスコンシンにあるトレック本社で開催されたプレゼンテーションの模様を通してお伝えしていきたい。
完全なるモデルチェンジを遂げた6代目Madone。ディスクブレーキ、調整式トップチューブIsoSpeedを備えて生まれ変わった photo:So.Isobe
衝撃的とも言えるエアロフォルムを引っさげてデビューした先代から3年、そしてMadone(マドン)という名称が登場して15年、トレックの表現を借りればNo.6(第6世代)となる新型Madone「SLR」がついにデビューを飾る。
プレゼンテーションはアメリカはウィスコンシン州、ウォータールーに拠点を置くトレック本社にて行われた。世界各国から選りすぐられたメディア陣が固唾を飲んで見つめる先に、完全フルモデルチェンジを遂げたMadone SLRの姿があった。
ウィスコンシン、ウォータールーにあるトレック本社で開催されたプレゼンテーション photo:So.Isobe
トレック本社にて進められるプレゼンテーション。Madone No.6という名称が披露された photo:So.Isobe
アルベルト・コンタドール(スペイン)が2008年のジロ・デ・イタリアを制した際に駆った2代目Madone。本社のショースペースに展示されていた photo:So.Isobe
新型IsoSpeedのために、石畳などあらゆる路面を再現できるトレッドミルを開発。詳細はVol.2で紹介予定 photo:So.Isobe
トレックのロードバイクの代名詞とも言えるMadoneのデビューは2003年に遡る。それまでフラッグシップだった5900を置き換える軽量クライミングバイクとして生まれ、2008年には曲線を多用するフォルムへと大幅に進化。以降モデルチェンジを重ねながら性能を磨き、本来の役割を2015年にデビューしたÉmondaに譲った後は空力性能にフォーカスしたエアロロードバイクとして2015に再デビューした。Domane発祥のIsoSpeedによって快適性を身につけ、群雄割拠のエアロロードバイク戦線に激震を走らせたことは記憶にも新しい。
リムブレーキバージョンのMadone SLR。フロントブレーキがフォーク後ろ側に移動している (c)トレック・ジャパン
ツール・ド・フランスの前哨戦であるクリテリウム・デュ・ドーフィネに投入され、話題をさらった新型Madone SLRだが、その全てを見抜いた者はいなかった。Madoneのアイデンティティたる「KVF(Kammtail Vartual Foil)」形状を取り入れたマッシブなデザイン、弧を描くトップチューブ、そしてシートポスト下に入るIsoSpeedシステムなど、ディスクブレーキ化を除けば先代との外観上の違いはそこまで多くない。
しかしその中身は変貌を遂げており、革新的な調整式IsoSpeedをトップチューブに仕込み、軽量性も纏った"エアロオールラウンド"バイクとしてブラッシュアップを遂げている。
空力を強く意識したリアバックの作り。先代との見た目上の変化はあまり大きくない photo:So.Isobe
くびれが大きくなったヘッドチューブ。ディスクブレーキによってこれまで以上にクリーンなルックスを獲得 photo:So.Isobe
マッシブなストレート形状のフロントフォーク。重量はディスク仕様で421gと軽量だ photo:So.Isobe
2016年にフロントIsoSpeedを投入して世を驚かせたDomane SLRと、2017年にディスクブレーキ装備で6.8kgを切る世界最軽量バイクとして発進したÉmonda SLR。それらに続いてデビューする新型Madoneに掲げられた開発目標は、先代の空力性能を引き継ぎつつディスクブレーキバージョンの完成車重量で7.5kg以内を目指し、かつ従来の問題を克服した調整式IsoSpeedを搭載することにあった。
プレゼンテーションで「究極のレースバイクであり、エアロロードの中でベストなバイクに仕上がった」と強調された第6世代Madone。エアロロードをディスクブレーキに一本化するブランドも存在する中で、選択肢を増やすためにリムブレーキバージョンも用意される。電動と機械式コンポーネントに両対応している点もユーザーフレンドリーと言えるだろう。
マッシブなKVF形状は先々代から引き継ぐMadoneのアイデンティティ。曲線と直線を組み合わせた造形が目に止まる photo:So.Isobe
BB規格はトレックが誇るBB90を継続。周辺のフォルムは先代から更にボリュームアップを遂げた photo:So.Isobe
フレーム全体のシェイプは先代の面影を色濃く残しているが、前方投影面積を減らすためにヘッドチューブはより薄く、そして空力特性を向上させるためにフロントフォークはワイドになった。ディスクブレーキバージョンとリムブレーキバージョンも全体的には似通っているものの、リムブレーキが空力のためにフロントフォーク後部に移ったことを踏まえ、特にフォークからダウンチューブにかけてのフォルムは全く別物だ。
CFD(数値流体力学)を使ったシミュレーションを駆使し、更にサンディエゴの低速風洞施設でのテストを繰り返した結果、新形Madone SLRは空力面で不利なディスクブレーキを装備しながら、既に最高レベルの数値*を得ていた先代と同水準の空力性能を獲得している。
*先代Madoneと比較して40km/hで単独走行時には19W、集団走行時には14W削減
新旧Madoneの空力テスト比較。ディスクブレーキを装備しながら、ほぼ同等の値を叩き出している (c)トレック・ジャパン
具体的な数字を挙げると、現実的に最も起こり得るヨー角-12.5から12.5度の範囲の横風において、新型Madoneの最終空気抵抗値は3216g、前Madoneは3202g(14gの差はトレックの目標および、風洞施設の実験で発生する誤差の範囲内)。ディスクブレーキバージョンはUCI規定の関係上、一体式ブレーキを搭載したリムブレーキバージョンよりもダウンチューブを太くワイドにできるため、僅か15gほど空力的アドバンテージを得ているという。
Madone SLRのために新開発された調整式トップチューブIsoSpeed。L字型の中骨が動くことで衝撃を吸収する photo:So.Isobe
新型Madone SLRの最たる特徴は、先代ともDomaneとも異なる調整式トップチューブIsoSpeedだ。先代MadoneのIsoSpeedはシートチューブそのものが構造体の一部だったことで、例えばシートチューブが長い60サイズではしなりが大きく、逆にシートチューブが短い50サイズではしなり量が小さいという根本的な乗り味の違いを抱えていた。
これを解決するために、トレックはフレームに大きな穴を開け放ち、トップチューブ後ろ半分からシートポスト内部に入る、言わば「中骨」のようなL字型のシートマストを開発という誰もが驚く手法を繰り出した。このシートマストがシートチューブとトップチューブの交点に隠された軸を中心に動くことで衝撃を吸収する仕組みで、シートマスト部の長さは各フレーム共通であるため、本来の目標であった全サイズで一貫した乗り味を獲得しているのだ。
Madone SLRのキモである新型IsoSpeed。この内側にL字上の中骨が仕込まれている photo:So.Isobe
トップチューブ裏側に隠されたIsoSpeed。写真では分かりにくいが手前に調整用スライダーが位置している photo:So.Isobe
中央部のボルトはIsoSpeedの調整用。トップチューブ下のボルトと2本を緩めることでスライダーの調整が可能となる photo:So.Isobe
金属パーツの黒い部分がダンパー。IsoSpeedを押し返すことで不必要な動きを抑制する photo:So.Isobe
更にシートマストのリバウンド量を制御する小さなダンパーをシートチューブ内側に搭載することで、不必要なサドルの動きを抑制。従来から一歩進んだ乗り味のチューニングも叶えた。ちなみに、スライダーを最も振動吸収性に優れた位置にセッティングした際の最大しなり量は先代を大きく上回って7mmを越え、Madone 9比較で最大17%の振動吸収性向上を叶えている。各社のエアロロードが似通った形状に収束していく中、あくまで快適性にこだわってIsoSpeedを継続採用し、更にこれほどまでに大幅進化を叶えたことは、トレック開発陣の意地と威信の表れと言えようか。快適性に関してライバルモデルと比較すれば、その差は歴然としていることは間違いない。
Madone SLRは全てトレックが誇る最高峰のカーボン素材「OCLV 700」フレームで統一される。フレーム重量はディスクブレーキバージョンで1021g、リムブレーキバージョンで1036g(56サイズ、未塗装でIsoSpeed用スモールパーツを含む)。R9170系デュラエースDi2フルセットとAeolus 6 Disc Clincherを装備した完成車重量は7,405gで、R9150デュラエースDi2とAeolus 6 Clincherを装備した場合には7,087gと、ディスクブレーキで7.5kg以内という当初の開発目標をクリアしている。
従来のH1とH2の間を取った「H1.5」フィットが登場。Madone SLRは全てのフレームがH1.5で統一される (c)トレック・ジャパン
Madone SLRは長らくトレックがラインアップしてきた「H1フィット」「H2フィット」というジオメトリーの概念にもメスを入れる。フレームスタック、リーチ、ヘッドチューブ長においてH1とH2の中間値という、その名も「H1.5フィット」を開発し、フレームをジオメトリーを1種類へ統一している。これには当然プロ選手の意見も組み込まれており、性別や体格の区別なく誰もが最も乗りやすいポイントが追求された。
また、従来はステム一体式ハンドルを組み合わせていたものの、サイズのオプションが限られること、そして交換の際に高価になりがちだったため、Madone SLRには空力を損なわない新開発のステム/ハンドル別体式のコックピットシステムが投入されている。
専用ハンドルは先代と異なりステム/ハンドル別体式。空力性能と調整の容易さ、そして持ちやすさを両立している photo:So.Isobe
ハンドルとステムは40通りの組み合わせが実現できる他、5度ずつハンドルの送り/しゃくりにも対応する photo:So.Isobe
ボトルケージホルダーを兼ねたコントロールセンター。1タイプであらゆる仕様に対応する photo:So.Isobe
反駆動側チェーンステー内側にはもちろんデュオトラップが装備されている photo:So.Isobe
ステムは一般的な-7度と、先代MadoneのH1フィットを再現できる-14度の2タイプをそれぞれ90mmから130mmまで選べる上、走行中の手の置きやすさを考えて両端がスウィープしたエアロハンドルは38cmから44cmまでの4タイプが用意されている。ハンドルの「しゃくり」と「送り」がそれぞれ+/-5度まで調整可能となったこともステムとハンドルが別体式となった一つの利点と言えるだろう。それに加え、一般的なステムを取り付けられるアダプターも近日中にラインアップに追加される予定であり、手元のセッティングにこだわりたい方にとっては朗報だ。
コントロールセンターはダウンチューブのボトルケージホルダーを兼ねつつ、空力特性が最も高くなる場所へと移動した。1タイプであらゆる仕様に対応するよう改良され、電動コンポーネントの場合にDi2バッテリーとジャンクションBを収めるほか、機械式の場合はこの部分で前後のディレイラー調整を行う仕組みだ。
この他にもシートポストの改良や、リムブレーキキャリパーの構造革新、新型ヘッドスペーサーの採用など、ありとあらゆる箇所が改良された新型Madone。国内販売パッケージは電動変速/リムブレーキのR9100系デュラエースとAeolus Pro 5 TLRをセットした「Madone SLR 8」、そしてシマノ機械式変速/油圧ディスクブレーキのR8050系アルテグラとAeolus Comp 5 TLRホイールをセットした「Madone SLR 6 Disc」という2種類の完成車が用意される。
プロジェクトワン ICON(Black Gold) (c)トレック・ジャパン
プロジェクトワン ICON(Refliptive) (c)トレック・ジャパン
プロジェクトワン ICON(Chrome Tour) (c)トレック・ジャパン
プロジェクトワン ICON(Candy Emerald Green) (c)トレック・ジャパン
プロジェクトワン ICON(Brushed Liquid Metal) (c)トレック・ジャパン
更にMadone SLRだけのスペシャルプランとして、自分だけの一台が作り出せるプロジェクトワンでは「ICON」と称した煌びやかな特別カラーが用意されている。輝くフレーク塗装や、見る角度で色味を変えるマジョーラ、アルミフレームのようなヘアライン加工を施したシルバー、そしてツール・ド・フランスでトレック・セガフレードのメンバーが駆るチームカラーなど、深みと質感を湛えたラグジュアリーなペイントが+112,000円(税抜)で手に入る。強烈な個性を放つこれらモデルは注目の的となること間違いない。
なお、事前からのスパイショットで大きな話題を巻き起こしていた、ダウンチューブの巨大なトレックロゴはチーム仕様のみに限られる。ICONで用意されているツール特別カラーと、プロジェクトワンで用意されている通常のチームカラーがビッグロゴとなる。
また、今回のモデルチェンジに伴い、先代Madoneのフレーム(H2)にOCLV500カーボンを投入したバリューモデル「Madone SL」がデビューする。機械式変速のシマノR8000系アルテグラとAeolus Comp 5 TLRホイール、そして一体式ハンドルではなく通常のアルミステムとアルミハンドルを組み合わせた完成車「Madone SL 6」が唯一の完成車ラインアップとして発売が行なわれるという。税抜価格は462,000円。価値あるハイパフォーマンスバイクとして人気が爆発しそうな予感。
ツール特別カラー(ICONにラインアップあり)のMadone SLRを駆り、ツール・ド・フランスのプレゼンテーションに臨んだトレック・セガフレード選手たち photo:Makoto.AYANO
次章では図解や各種数値を交えつつ、テクニカル面の詳細解説や開発アプローチ、そして開発者インタビューなどを紹介していく。
トレック Madone SLR 8 (c)トレック・ジャパン
Madone SLR6 Disc
トレック Madone SLR 6 Disc (c)トレック・ジャパン
トレック Madone SL 6 (c)トレック・ジャパン
また、トレック・ジャパンでは、新型Madone SLRの発売を記念して、プロジェクトワン購入先着100名にもれなくオリジナル非売品サイクルジャージなど豪華プレゼントがもらえるキャンペーンを実施中。詳しくはキャンペーンサイトをチェックして欲しい。
エアロロードの真打が遂に登場 新型Madone SLRデビュー

衝撃的とも言えるエアロフォルムを引っさげてデビューした先代から3年、そしてMadone(マドン)という名称が登場して15年、トレックの表現を借りればNo.6(第6世代)となる新型Madone「SLR」がついにデビューを飾る。
プレゼンテーションはアメリカはウィスコンシン州、ウォータールーに拠点を置くトレック本社にて行われた。世界各国から選りすぐられたメディア陣が固唾を飲んで見つめる先に、完全フルモデルチェンジを遂げたMadone SLRの姿があった。




トレックのロードバイクの代名詞とも言えるMadoneのデビューは2003年に遡る。それまでフラッグシップだった5900を置き換える軽量クライミングバイクとして生まれ、2008年には曲線を多用するフォルムへと大幅に進化。以降モデルチェンジを重ねながら性能を磨き、本来の役割を2015年にデビューしたÉmondaに譲った後は空力性能にフォーカスしたエアロロードバイクとして2015に再デビューした。Domane発祥のIsoSpeedによって快適性を身につけ、群雄割拠のエアロロードバイク戦線に激震を走らせたことは記憶にも新しい。

ツール・ド・フランスの前哨戦であるクリテリウム・デュ・ドーフィネに投入され、話題をさらった新型Madone SLRだが、その全てを見抜いた者はいなかった。Madoneのアイデンティティたる「KVF(Kammtail Vartual Foil)」形状を取り入れたマッシブなデザイン、弧を描くトップチューブ、そしてシートポスト下に入るIsoSpeedシステムなど、ディスクブレーキ化を除けば先代との外観上の違いはそこまで多くない。
しかしその中身は変貌を遂げており、革新的な調整式IsoSpeedをトップチューブに仕込み、軽量性も纏った"エアロオールラウンド"バイクとしてブラッシュアップを遂げている。
トップレベルの空力と快適性を兼ね備えるために



2016年にフロントIsoSpeedを投入して世を驚かせたDomane SLRと、2017年にディスクブレーキ装備で6.8kgを切る世界最軽量バイクとして発進したÉmonda SLR。それらに続いてデビューする新型Madoneに掲げられた開発目標は、先代の空力性能を引き継ぎつつディスクブレーキバージョンの完成車重量で7.5kg以内を目指し、かつ従来の問題を克服した調整式IsoSpeedを搭載することにあった。
プレゼンテーションで「究極のレースバイクであり、エアロロードの中でベストなバイクに仕上がった」と強調された第6世代Madone。エアロロードをディスクブレーキに一本化するブランドも存在する中で、選択肢を増やすためにリムブレーキバージョンも用意される。電動と機械式コンポーネントに両対応している点もユーザーフレンドリーと言えるだろう。


フレーム全体のシェイプは先代の面影を色濃く残しているが、前方投影面積を減らすためにヘッドチューブはより薄く、そして空力特性を向上させるためにフロントフォークはワイドになった。ディスクブレーキバージョンとリムブレーキバージョンも全体的には似通っているものの、リムブレーキが空力のためにフロントフォーク後部に移ったことを踏まえ、特にフォークからダウンチューブにかけてのフォルムは全く別物だ。
CFD(数値流体力学)を使ったシミュレーションを駆使し、更にサンディエゴの低速風洞施設でのテストを繰り返した結果、新形Madone SLRは空力面で不利なディスクブレーキを装備しながら、既に最高レベルの数値*を得ていた先代と同水準の空力性能を獲得している。
*先代Madoneと比較して40km/hで単独走行時には19W、集団走行時には14W削減

具体的な数字を挙げると、現実的に最も起こり得るヨー角-12.5から12.5度の範囲の横風において、新型Madoneの最終空気抵抗値は3216g、前Madoneは3202g(14gの差はトレックの目標および、風洞施設の実験で発生する誤差の範囲内)。ディスクブレーキバージョンはUCI規定の関係上、一体式ブレーキを搭載したリムブレーキバージョンよりもダウンチューブを太くワイドにできるため、僅か15gほど空力的アドバンテージを得ているという。
調整式のトップチューブIsoSpeedを搭載 一歩上を行く乗り味を

新型Madone SLRの最たる特徴は、先代ともDomaneとも異なる調整式トップチューブIsoSpeedだ。先代MadoneのIsoSpeedはシートチューブそのものが構造体の一部だったことで、例えばシートチューブが長い60サイズではしなりが大きく、逆にシートチューブが短い50サイズではしなり量が小さいという根本的な乗り味の違いを抱えていた。
これを解決するために、トレックはフレームに大きな穴を開け放ち、トップチューブ後ろ半分からシートポスト内部に入る、言わば「中骨」のようなL字型のシートマストを開発という誰もが驚く手法を繰り出した。このシートマストがシートチューブとトップチューブの交点に隠された軸を中心に動くことで衝撃を吸収する仕組みで、シートマスト部の長さは各フレーム共通であるため、本来の目標であった全サイズで一貫した乗り味を獲得しているのだ。




更にシートマストのリバウンド量を制御する小さなダンパーをシートチューブ内側に搭載することで、不必要なサドルの動きを抑制。従来から一歩進んだ乗り味のチューニングも叶えた。ちなみに、スライダーを最も振動吸収性に優れた位置にセッティングした際の最大しなり量は先代を大きく上回って7mmを越え、Madone 9比較で最大17%の振動吸収性向上を叶えている。各社のエアロロードが似通った形状に収束していく中、あくまで快適性にこだわってIsoSpeedを継続採用し、更にこれほどまでに大幅進化を叶えたことは、トレック開発陣の意地と威信の表れと言えようか。快適性に関してライバルモデルと比較すれば、その差は歴然としていることは間違いない。
Madone SLRは全てトレックが誇る最高峰のカーボン素材「OCLV 700」フレームで統一される。フレーム重量はディスクブレーキバージョンで1021g、リムブレーキバージョンで1036g(56サイズ、未塗装でIsoSpeed用スモールパーツを含む)。R9170系デュラエースDi2フルセットとAeolus 6 Disc Clincherを装備した完成車重量は7,405gで、R9150デュラエースDi2とAeolus 6 Clincherを装備した場合には7,087gと、ディスクブレーキで7.5kg以内という当初の開発目標をクリアしている。
H1.5フィット誕生。ステム別体式ハンドルを新投入

Madone SLRは長らくトレックがラインアップしてきた「H1フィット」「H2フィット」というジオメトリーの概念にもメスを入れる。フレームスタック、リーチ、ヘッドチューブ長においてH1とH2の中間値という、その名も「H1.5フィット」を開発し、フレームをジオメトリーを1種類へ統一している。これには当然プロ選手の意見も組み込まれており、性別や体格の区別なく誰もが最も乗りやすいポイントが追求された。
また、従来はステム一体式ハンドルを組み合わせていたものの、サイズのオプションが限られること、そして交換の際に高価になりがちだったため、Madone SLRには空力を損なわない新開発のステム/ハンドル別体式のコックピットシステムが投入されている。




ステムは一般的な-7度と、先代MadoneのH1フィットを再現できる-14度の2タイプをそれぞれ90mmから130mmまで選べる上、走行中の手の置きやすさを考えて両端がスウィープしたエアロハンドルは38cmから44cmまでの4タイプが用意されている。ハンドルの「しゃくり」と「送り」がそれぞれ+/-5度まで調整可能となったこともステムとハンドルが別体式となった一つの利点と言えるだろう。それに加え、一般的なステムを取り付けられるアダプターも近日中にラインアップに追加される予定であり、手元のセッティングにこだわりたい方にとっては朗報だ。
コントロールセンターはダウンチューブのボトルケージホルダーを兼ねつつ、空力特性が最も高くなる場所へと移動した。1タイプであらゆる仕様に対応するよう改良され、電動コンポーネントの場合にDi2バッテリーとジャンクションBを収めるほか、機械式の場合はこの部分で前後のディレイラー調整を行う仕組みだ。
この他にもシートポストの改良や、リムブレーキキャリパーの構造革新、新型ヘッドスペーサーの採用など、ありとあらゆる箇所が改良された新型Madone。国内販売パッケージは電動変速/リムブレーキのR9100系デュラエースとAeolus Pro 5 TLRをセットした「Madone SLR 8」、そしてシマノ機械式変速/油圧ディスクブレーキのR8050系アルテグラとAeolus Comp 5 TLRホイールをセットした「Madone SLR 6 Disc」という2種類の完成車が用意される。
プロジェクトワンに煌びやかなスペシャルカラー「ICON」登場





更にMadone SLRだけのスペシャルプランとして、自分だけの一台が作り出せるプロジェクトワンでは「ICON」と称した煌びやかな特別カラーが用意されている。輝くフレーク塗装や、見る角度で色味を変えるマジョーラ、アルミフレームのようなヘアライン加工を施したシルバー、そしてツール・ド・フランスでトレック・セガフレードのメンバーが駆るチームカラーなど、深みと質感を湛えたラグジュアリーなペイントが+112,000円(税抜)で手に入る。強烈な個性を放つこれらモデルは注目の的となること間違いない。
なお、事前からのスパイショットで大きな話題を巻き起こしていた、ダウンチューブの巨大なトレックロゴはチーム仕様のみに限られる。ICONで用意されているツール特別カラーと、プロジェクトワンで用意されている通常のチームカラーがビッグロゴとなる。
また、今回のモデルチェンジに伴い、先代Madoneのフレーム(H2)にOCLV500カーボンを投入したバリューモデル「Madone SL」がデビューする。機械式変速のシマノR8000系アルテグラとAeolus Comp 5 TLRホイール、そして一体式ハンドルではなく通常のアルミステムとアルミハンドルを組み合わせた完成車「Madone SL 6」が唯一の完成車ラインアップとして発売が行なわれるという。税抜価格は462,000円。価値あるハイパフォーマンスバイクとして人気が爆発しそうな予感。

次章では図解や各種数値を交えつつ、テクニカル面の詳細解説や開発アプローチ、そして開発者インタビューなどを紹介していく。
Madone SLR国内販売スペック
Maodne SLR 8
フレーム | OCLV700フレーム |
フレーム重量 | 1036g |
フォーク重量 | 378g |
コンポーネント | シマノ R9100系デュラエース |
ホイール | Aeolus Pro 5 TLR |
完成車重量 | 7.35kg |
税抜価格 | 764,000円 |
Madone SLR6 Disc

フレーム | OCLV700フレーム |
フレーム重量 | 1021g |
フォーク重量 | 421g |
コンポーネント | シマノ R8050系アルテグラ |
ホイール | Aeolus Comp 5 TLR |
完成車重量 | 8.38kg |
税抜価格 | 630,000円 |
Madone SL国内販売スペック
Maodne SL 6
フレーム | OCLV500フレーム |
フレーム重量 | 1021g |
コンポーネント | シマノ R8000系アルテグラ |
ホイール | Aeolus Comp 5 TLR |
完成車重量 | 8.20kg |
税抜価格 | 462,000円 |
また、トレック・ジャパンでは、新型Madone SLRの発売を記念して、プロジェクトワン購入先着100名にもれなくオリジナル非売品サイクルジャージなど豪華プレゼントがもらえるキャンペーンを実施中。詳しくはキャンペーンサイトをチェックして欲しい。
提供:トレック・ジャパン、text&photo:So.Isobe