2018/07/11(水) - 18:09
POWERシリーズ3本柱の中心的存在であり、先代のPRO4、そしてレース機材としてのクリンチャータイヤを定義づけたハイライトの血統を受け継ぐピュアレーシングタイヤがPOWER COMPETITION。先代比で10ワット削減という途方もない性能向上を果たしたロードタイヤ界の名作を、今一度インプレッションした。
今回のPOWERシリーズの中で核となるのがこのコンペティション。文字通りハイスピードを追求した競技向けタイヤであり、グリップ力を与えながら、徹底的に転がり抵抗の削減を狙ったモデルだ。
キーとなるのはRaceコンパウンドと名付けられた、2輪ロードレース最高峰であるモトGP由来のテクノロジーを投入した新型コンパウンド。詳細についてはトップシークレットとして非公開ではあるものの、シリカ由来の成分を中心に走行中のコンパウンド変形、つまり熱によるロスを抑える特殊な配合を行ったことで、PRO4サービスクルスに対して-10ワット(25c、ライダー+バイクで80kg、45km/hで40kmを走行した場合)という類い稀な出力低減をマークするに至った。
PRO4までのネックだった劣化(ひび割れ)についても強化されており、素材の配合を工夫することでクリア。ケーシングはPOWERシリーズ中最も高密度の180TPIを3層構造とし、剛性を上げることで先述した抵抗低減と共にディスクブレーキの強力なストッピングパワーに対応させている。コンパウンドとの組み合わせによって縦方向に10%、横方向には35%のグリップ力向上(上記と同条件)を果たしている。
また、砂利や小石などの貫通パンクを防ぐべく、POWERシリーズのために新開発された耐パンクベルト「アラミドプロテック」をタイヤ中央部分(イメージ図の青い部分がそれ)に配置することで、13%の性能向上を果たしているという。
更に徹底的に転がり抵抗削減を狙うため、他の2モデルとは異なりPOWER COMPETITIONの表面からは一切のトレッドパターンが排除されていることも特徴の一つと言えるだろう。
そんなPOWER COMPETITIONを正式採用しているのが、ナセル・ブアニ(フランス)らを擁するフランス屈指のプロチーム「コフィディス・ソルシオンクレディ」と、今年プロコンチネンタルチームに昇格したアメリカ籍の「ホロウェスコ・シタデル」だ。
特にホロウェスコは実戦でのクリンチャータイヤユースに積極的な姿勢を見せており、選手の一人は「POWERを試すまではクリンチャーでレースすると言われたら絶対信じなかった」というコメントをTwitterにコメントしているほど。10ワットとは例えばアルプデュエズを登る場合1分04秒早く、30秒間のスプリントで2.8m進み、アワーレコードでは776m先に進む計算(いずれもミシュランのデータ)。レースにおける極限の場面では10ワットという数値が生み出すアドバンテージは計り知れないのだ。
今回POWERシリーズのインプレッションを担当するのは、大石一夫さん(シクロオオイシ ラヴニール)と、藤野智一さん(なるしまフレンド)という2人の元全日本王者経験者。いずれも登場時からPOWERシリーズを愛用し、3種類を乗り比べた経験を持つ。今回はカンパニョーロのSHAMAL ULTRA C17に25cモデルを取り付けた状態でテストを行なった。
藤野:当時のハイライトには通常製品とハイライトプロの2種類があって、どちらも断面形状がすごく尖っていたんですよ。コーナリングでめちゃくちゃ切れ込むから慣れるまでは時間が掛かりましたね。でもPROシリーズになった辺りから様々な部分で洗練されて、今はすごく使いやすくなっています。
大石:ほら、フランスの道路ってかまぼこ状になっているじゃないですか。それでレース中の位置取り争いの中で路肩に落ちてしまったとき、ミシュランのタイヤだったら形状的にするりと路上に復帰できる。タイヤサイドが切り上がっていて、トレッド面が平らだった日本のタイヤだと復帰する時かなり怖い思いをしたことありましたね。ああ、やっぱりちゃんとミシュランはレースのことを考えているんだな、って。
それで、POWERシリーズが出た時すぐにCOMPETITIONを購入。何だこの軽さは!と驚きましたね。軽快感を売りにするタイヤは今まで多かったですが、その中でもCOMPETITIONは際立っていると思います。25cであっても重量は200gを切るか切らないか、というところですし、そしてあまりパンクもしない。レース用クリンチャーとしては相当良いな、と思いましたね。
藤野:POWERシリーズが出る前はヴィットリアの新型CORSAを使っていたんですが、COMPETITIONは抜群に転がり抵抗が軽いと言われていたCORSAと同レベルの軽やかさがあると感じましたね。それに関しては間違いなくトップレベルですし、そして乗り味がしなやかなんです。登場から2年経ちましたが、COMPETITIONを上回る転がりの軽いタイヤは、ピレリのP ZERO VELO TTくらい。それでもあっちは23cでしたし、COMPETITIONの優位性は全く崩れていませんね。
そしてそれらメリットを最大限に活かす上で、空気の入れすぎは禁物。僕の体重ですら空気圧は6くらいで、あまりパンパンにしてしまうと振動吸収性が悪くなって、結果的に推進力が失われてしまうんです。最適なセッティングであれば振動をいなしつつトラクションを掛けてくれるから結果的に速くて楽ですよ。公式ページにも注意書きが書かれているのでぜひ参考にしてほしいですね。
大石:そうそう。昔の勢いで9気圧とか10気圧入れる人もいるんですが、そうすると跳ねちゃうし、重く感じてしまう。空気圧を適正にすればパンクのリスクも下げることができますしね。
藤野:それからCOMPETITIONは、転がり抵抗が少ないのにグリップ性能が高いですよね。雨でも全然問題ない、むしり優秀なレベルにあると感じます。
大石:グリップ力で見ればALL SEASONの方が高いのでしょうが、COMPETITION一本でウェットも行けてしまう。これで滑ってしまう人はもはや走り方が悪いか、空気圧が高いんですよ。そもそもCOMPETITIONはレースで使うためのタイヤなので、雨でも走れなければ意味が無いわけです。
それから、個人的にずっと使う中で気づいたことが、耐久性がずっと増していることですね。PRO2時代はひび割れたりぼろぼろになったり、パンクしたりと賞味期限が短い決戦用という感が否めませんでした。そこから比べたらもはや別物と言うべきレベルですよ。
藤野:なるしまフレンドのユーザーの方々の中でも、レースにカーボンクリンチャーホイールを使う方がかなり多いですし、そういう意味ではPOWER COMPETITIONのメリットは非常に高いと感じます。今チューブラーホイールを選ぶメリットと言えば軽さくらいですから、今後はよりクリンチャー率が高まっていくでしょう。
そしてPOWERシリーズの中でも乗り心地が一番ですから、レース以外のロングライド、グランフォンドにも向いていると思いますよ。個人的には通勤や練習など普段使いにはちょっと勿体無い気もするんですが、例えば週に一度しか走る機会がない方であれば、POWER COMPETITIONを選んで上質な走りを楽しむのも良い手かと思いますね。
40km走行で10ワットをセーブ 転がりの軽さを突き詰めたPOWER COMPETITION
今回のPOWERシリーズの中で核となるのがこのコンペティション。文字通りハイスピードを追求した競技向けタイヤであり、グリップ力を与えながら、徹底的に転がり抵抗の削減を狙ったモデルだ。
キーとなるのはRaceコンパウンドと名付けられた、2輪ロードレース最高峰であるモトGP由来のテクノロジーを投入した新型コンパウンド。詳細についてはトップシークレットとして非公開ではあるものの、シリカ由来の成分を中心に走行中のコンパウンド変形、つまり熱によるロスを抑える特殊な配合を行ったことで、PRO4サービスクルスに対して-10ワット(25c、ライダー+バイクで80kg、45km/hで40kmを走行した場合)という類い稀な出力低減をマークするに至った。
PRO4までのネックだった劣化(ひび割れ)についても強化されており、素材の配合を工夫することでクリア。ケーシングはPOWERシリーズ中最も高密度の180TPIを3層構造とし、剛性を上げることで先述した抵抗低減と共にディスクブレーキの強力なストッピングパワーに対応させている。コンパウンドとの組み合わせによって縦方向に10%、横方向には35%のグリップ力向上(上記と同条件)を果たしている。
また、砂利や小石などの貫通パンクを防ぐべく、POWERシリーズのために新開発された耐パンクベルト「アラミドプロテック」をタイヤ中央部分(イメージ図の青い部分がそれ)に配置することで、13%の性能向上を果たしているという。
更に徹底的に転がり抵抗削減を狙うため、他の2モデルとは異なりPOWER COMPETITIONの表面からは一切のトレッドパターンが排除されていることも特徴の一つと言えるだろう。
そんなPOWER COMPETITIONを正式採用しているのが、ナセル・ブアニ(フランス)らを擁するフランス屈指のプロチーム「コフィディス・ソルシオンクレディ」と、今年プロコンチネンタルチームに昇格したアメリカ籍の「ホロウェスコ・シタデル」だ。
特にホロウェスコは実戦でのクリンチャータイヤユースに積極的な姿勢を見せており、選手の一人は「POWERを試すまではクリンチャーでレースすると言われたら絶対信じなかった」というコメントをTwitterにコメントしているほど。10ワットとは例えばアルプデュエズを登る場合1分04秒早く、30秒間のスプリントで2.8m進み、アワーレコードでは776m先に進む計算(いずれもミシュランのデータ)。レースにおける極限の場面では10ワットという数値が生み出すアドバンテージは計り知れないのだ。
POWERシリーズを愛用する二人が語る、COMPETITIONの実力と魅力
今回POWERシリーズのインプレッションを担当するのは、大石一夫さん(シクロオオイシ ラヴニール)と、藤野智一さん(なるしまフレンド)という2人の元全日本王者経験者。いずれも登場時からPOWERシリーズを愛用し、3種類を乗り比べた経験を持つ。今回はカンパニョーロのSHAMAL ULTRA C17に25cモデルを取り付けた状態でテストを行なった。
「転がりの軽さは間違いなくトップレベル」藤野智一(なるしまフレンド)
大石:POWERシリーズは発売と同時に購入し、現在まで愛用しているタイヤです。ミシュランはレーシングクリンチャーの先駆者であり、私もハイライトがデビューした辺りからしばしば使ってきました。当時所属していたボスコチームはミシュランユースではありませんでしたが、レースではない時に試したりして。とにかく信頼性が抜群で、その他性能もすごく優秀だったことを覚えていますよ。藤野:当時のハイライトには通常製品とハイライトプロの2種類があって、どちらも断面形状がすごく尖っていたんですよ。コーナリングでめちゃくちゃ切れ込むから慣れるまでは時間が掛かりましたね。でもPROシリーズになった辺りから様々な部分で洗練されて、今はすごく使いやすくなっています。
大石:ほら、フランスの道路ってかまぼこ状になっているじゃないですか。それでレース中の位置取り争いの中で路肩に落ちてしまったとき、ミシュランのタイヤだったら形状的にするりと路上に復帰できる。タイヤサイドが切り上がっていて、トレッド面が平らだった日本のタイヤだと復帰する時かなり怖い思いをしたことありましたね。ああ、やっぱりちゃんとミシュランはレースのことを考えているんだな、って。
それで、POWERシリーズが出た時すぐにCOMPETITIONを購入。何だこの軽さは!と驚きましたね。軽快感を売りにするタイヤは今まで多かったですが、その中でもCOMPETITIONは際立っていると思います。25cであっても重量は200gを切るか切らないか、というところですし、そしてあまりパンクもしない。レース用クリンチャーとしては相当良いな、と思いましたね。
「性能を発揮するために適正空気圧を見つけて」大石一夫(シクロオオイシ ラヴニール)
藤野:POWERシリーズが出る前はヴィットリアの新型CORSAを使っていたんですが、COMPETITIONは抜群に転がり抵抗が軽いと言われていたCORSAと同レベルの軽やかさがあると感じましたね。それに関しては間違いなくトップレベルですし、そして乗り味がしなやかなんです。登場から2年経ちましたが、COMPETITIONを上回る転がりの軽いタイヤは、ピレリのP ZERO VELO TTくらい。それでもあっちは23cでしたし、COMPETITIONの優位性は全く崩れていませんね。
そしてそれらメリットを最大限に活かす上で、空気の入れすぎは禁物。僕の体重ですら空気圧は6くらいで、あまりパンパンにしてしまうと振動吸収性が悪くなって、結果的に推進力が失われてしまうんです。最適なセッティングであれば振動をいなしつつトラクションを掛けてくれるから結果的に速くて楽ですよ。公式ページにも注意書きが書かれているのでぜひ参考にしてほしいですね。
大石:そうそう。昔の勢いで9気圧とか10気圧入れる人もいるんですが、そうすると跳ねちゃうし、重く感じてしまう。空気圧を適正にすればパンクのリスクも下げることができますしね。
藤野:それからCOMPETITIONは、転がり抵抗が少ないのにグリップ性能が高いですよね。雨でも全然問題ない、むしり優秀なレベルにあると感じます。
大石:グリップ力で見ればALL SEASONの方が高いのでしょうが、COMPETITION一本でウェットも行けてしまう。これで滑ってしまう人はもはや走り方が悪いか、空気圧が高いんですよ。そもそもCOMPETITIONはレースで使うためのタイヤなので、雨でも走れなければ意味が無いわけです。
それから、個人的にずっと使う中で気づいたことが、耐久性がずっと増していることですね。PRO2時代はひび割れたりぼろぼろになったり、パンクしたりと賞味期限が短い決戦用という感が否めませんでした。そこから比べたらもはや別物と言うべきレベルですよ。
藤野:なるしまフレンドのユーザーの方々の中でも、レースにカーボンクリンチャーホイールを使う方がかなり多いですし、そういう意味ではPOWER COMPETITIONのメリットは非常に高いと感じます。今チューブラーホイールを選ぶメリットと言えば軽さくらいですから、今後はよりクリンチャー率が高まっていくでしょう。
そしてPOWERシリーズの中でも乗り心地が一番ですから、レース以外のロングライド、グランフォンドにも向いていると思いますよ。個人的には通勤や練習など普段使いにはちょっと勿体無い気もするんですが、例えば週に一度しか走る機会がない方であれば、POWER COMPETITIONを選んで上質な走りを楽しむのも良い手かと思いますね。
インプレッションライダープロフィール
藤野智一(なるしまフレンド)
92年のバルセロナオリンピックロードレースでの21位を皮切りに、94・97年にツール・ド・おきなわ優勝、98、99年は2年連続で全日本ロードチャンピオンとなるなど輝かしい戦歴を持つ。02年に引退してからはチームブリヂストン・アンカーで若手育成に取り組み、11年までは同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長として親しまれている。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
CWレコメンドショップ
大石一夫(シクロオオイシ ラヴニール)
国際サイクルロードレース(現ツアー・オブ・ジャパン)初代王者となったことでキャリアがスタート。歴史上初めて結成された日本ナショナルチームの第1回遠征メンバーとして1986年のツール・ド・ラヴニールに参加。1989年にはツール・ド・北海道とツール・ド・おきなわをダブル優勝、1990年と1993年に全日本選手権優勝、国体3回優勝など屈指のオールラウンダーとして君臨した。長野県安曇野市に移り住み、98年に自身のショップをオープン。今でも全国屈指の"走れる店長"としての脚力を維持している。
シクロオオイシ ラヴニール
92年のバルセロナオリンピックロードレースでの21位を皮切りに、94・97年にツール・ド・おきなわ優勝、98、99年は2年連続で全日本ロードチャンピオンとなるなど輝かしい戦歴を持つ。02年に引退してからはチームブリヂストン・アンカーで若手育成に取り組み、11年までは同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長として親しまれている。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
CWレコメンドショップ
大石一夫(シクロオオイシ ラヴニール)
国際サイクルロードレース(現ツアー・オブ・ジャパン)初代王者となったことでキャリアがスタート。歴史上初めて結成された日本ナショナルチームの第1回遠征メンバーとして1986年のツール・ド・ラヴニールに参加。1989年にはツール・ド・北海道とツール・ド・おきなわをダブル優勝、1990年と1993年に全日本選手権優勝、国体3回優勝など屈指のオールラウンダーとして君臨した。長野県安曇野市に移り住み、98年に自身のショップをオープン。今でも全国屈指の"走れる店長"としての脚力を維持している。
シクロオオイシ ラヴニール
提供:日直商会 制作:シクロワイアード編集部