2018/07/18(水) - 17:48
POWERシリーズの魅力はCOMPETITIONだけにとどまらない。高い基本性能を維持しながら耐久性向上を成功させたENDURANCE、そしてウェットグリップを強化したALL SEASONの2モデルの詳細解説とインプレッションを紹介しよう。
POWERシリーズの要となるのが前章で紹介したCOMPETITIONだが、ロングライフ・耐パンク化を図ったENDURANCEと、特にウェットグリップを強化したALL SEASONも決して忘れてはならぬ存在。いずれも専用開発のコンパウンドとケーシングが奢られることで、レーシングタイヤにふさわしい基本性能を有しつつ、それぞれの分野で抜きん出た価値が与えられている。
振り返れば、ミシュランはPROシリーズ時代から各種用途に対応させたモデルをラインナップしてきた。それぞれPOWER ENDURANCEはPRO4 ENDURANCEの、POWER ALL SEASONはPRO4 GRIPの後継モデルであり、例えばブルベライダーや月間1500kmを走るような方にはENDURANCEを、雨レースを走るプロ選手や、より高いグリップ力を求める方にはALL SEASONと選択肢が用意されているのは嬉しい限りと言える。
発売前の実走テストで200名が1000kmずつ走ってもゼロパンクという、驚異的な耐久性を誇るENDURANCEのキモは、特殊素材を配合し磨耗に強い「X-milesコンパウンド」と、COMPETITIONよりも強化された耐パンクベルト「アラミドプロテック"プラス"」という組み合わせ。
ケーシングは110TPIという若干太い繊維を3層構造にすることで、貫通パンクに対するリスクを下げている。総合的な対パンク性能強化は前作に対して+20%という結果を得ているが、同時にトレッド中央とサイド部分のコンパウンドを使い分けることで8.6ワットをセーブ(25c、ライダー+バイクで80kg、45km/hで40kmを走行した場合)するという転がり抵抗面でも大幅な性能向上をマークしているのだ。
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一方、ALL SEASONは、濡れた路面を考慮し低温でも食いつきが低下しないよう配合されたソフトなGRIPコンパウンドを採用したことが最たる特徴だ。更にモトGPタイヤから発想を得た特殊なトレッドパターンによって雨天時のグリップ力をもう一段階引き上げている。
これによってPRO4サービスクルスに対して15%のグリップ力向上(素材で13%向上、トレッドパターンで2%向上)を果たしており、その食いつきはCOMPETITIONとENDURANCEを遥かに凌駕する。そしてそのグリップ力を発揮するべく、60TPIと密度の低いケーシングを3層構造にすることでタイヤ剛性を強化し、雨天時におけるディスクブレーキの制動力にも対応させている。
もちろん走りの軽さも忘れられておらず、PRO4GRIPとの比較で5Wのパワーセーブを実現。耐パンク性に関してはエンデュランスと同じアラミドプロテックプラスが投入されていることが大きな安心材料といえるだろう。
大石: POWER ENDURANCEは現在常用しているのですが、驚かされますね。今5000kmくらい走っているのにまだまだいけますから。タイヤ自体の持ちが良い上にパンクも全く経験してないし、「そろそろ飽きたから他のに替えたいけど、まだ使える...」と思ってしまうほど(笑)。
タイヤ剛性が高いので走りの軽さや乗り心地はCOMPETITIONに譲るものの、耐久性はもちろんコーナリング時のフィーリングもクセがありません。長寿命なのでお財布にも優しいし、トレーニング用タイヤにタフさを求めるならベストだと思いますよ。今までエンデュランス系タイヤはほとんど好きになれなかったのですが、これはオススメです。
藤野:ENDURANCEに関しては23cよりも25cの方がバランスが取れていて好きですね。レースに特化したCOMPETITIONと安全に長く走るためのALL SEASONに挟まれているのでキャラが薄いのですが、とにかく耐久性があって安定しているので、長距離のツーリングイベントに参加するとき、もしくは毎日通勤で使う方には良い選択肢でしょうね。
大石:やっぱり3種類の中で、ENDURANCEが一番中間的な、一般的な乗り味。ちょっと硬さがあるので25cにして、空気圧を落として乗れば乗り心地もぐっと良くなります。
藤野:私(65kg)が25cを使うのであれば、6気圧より下げても大丈夫。人によってはもっさり感が出て嫌かもしれませんが、それであればCOMPETITIONを使えば良い。通勤用としてはちょっと高価ですが、慣れた通勤路と言えどタイヤはしっかりとしたモノを使うべきなので、「レース用じゃないから長持ちすれば何でも良いや」と言わずに、ぜひこうした良い製品を選んで欲しいのが本音ではあります。
大石:本当にそう思うよね。練習であってもなるべくレースと同じタイヤを自分は使いたい。耐久性だけで選んだタイヤ、もしくは安いタイヤだともっさりして、気分的にも乗ってきません。
大石:ALL SEASONは今前輪に使っています。ENDURANCEより劣るものの耐久性も非常にあって、ハイグリップタイヤにありがちな粘っこさというか、重たい感覚もないんです。タイヤ表面のコンパウンドが良い仕事をしているんでしょうね。雨でも不安感は一切ないし、一時期滑るという噂が出たこともあったけれど、それは空気圧を調整していないだけの話です。当然カンカンに空気を張ればどんなタイヤだって限界が低くなりますから。
藤野:ENDURANCEとALL SEASONで迷ったら、通勤も1週間に2回程度の私は間違いなくALL SEASONを選びますね。グリップが良いからどんな場面でもよりメリットがあるし、耐久性も悪くない。COMPETITIONはこの2つに比べるとサイドカットのリスクが高まるので、デイリーユースするならすごく良い選択肢だと思うんです。
例えば、昼夜問わず、しかも走行時間が長いから途中で雨の確率の高まる長距離ブルベ用にセットしておけば安心でしょうね。それからサーキットで行われるエンデューロレース。コース上にクルマやバイクのオイルが染み込んでいる場合がたまにあるので、選択肢としてアリだと思いますよ。
大石:低温でもしっかりグリップするので、冬場にマイナス気温になる場所でも良いですよ。もちろんゴムは固くなるけれど、安曇野の冬でもグリップ感が低下することもなく信頼しています。ただENDURANCE同様にタイヤ剛性が高くカチッとした乗り味なので空気圧は低めにするのが良いですね。
藤野:POWERシリーズの3種類は3種類とも、はっきりコンセプト通りの性能を有していますね。だからどういう状況で使うかによって選択肢が用意されているのはありがたい。そしてどのモデルも基本性能が高いので、タイヤに高いクオリティを求める方にはオススメしたいですね。
大石:自分で選ぶなら僕はCOMPETITION。雨でも問題ないグリップ力があるし、タイヤとしての基本性能がとにかく高いので、レーサーやレースのように走りたい方にはベストバイでしょう。まだ試していませんが、例えばCOMPETITIONにミシュランのラテックスチューブを入れて走ったら最高でしょうね。
高耐久or雨天時の安心感 用途で選べる2種類の高性能クリンチャータイヤ
POWERシリーズの要となるのが前章で紹介したCOMPETITIONだが、ロングライフ・耐パンク化を図ったENDURANCEと、特にウェットグリップを強化したALL SEASONも決して忘れてはならぬ存在。いずれも専用開発のコンパウンドとケーシングが奢られることで、レーシングタイヤにふさわしい基本性能を有しつつ、それぞれの分野で抜きん出た価値が与えられている。
振り返れば、ミシュランはPROシリーズ時代から各種用途に対応させたモデルをラインナップしてきた。それぞれPOWER ENDURANCEはPRO4 ENDURANCEの、POWER ALL SEASONはPRO4 GRIPの後継モデルであり、例えばブルベライダーや月間1500kmを走るような方にはENDURANCEを、雨レースを走るプロ選手や、より高いグリップ力を求める方にはALL SEASONと選択肢が用意されているのは嬉しい限りと言える。
発売前の実走テストで200名が1000kmずつ走ってもゼロパンクという、驚異的な耐久性を誇るENDURANCEのキモは、特殊素材を配合し磨耗に強い「X-milesコンパウンド」と、COMPETITIONよりも強化された耐パンクベルト「アラミドプロテック"プラス"」という組み合わせ。
ケーシングは110TPIという若干太い繊維を3層構造にすることで、貫通パンクに対するリスクを下げている。総合的な対パンク性能強化は前作に対して+20%という結果を得ているが、同時にトレッド中央とサイド部分のコンパウンドを使い分けることで8.6ワットをセーブ(25c、ライダー+バイクで80kg、45km/hで40kmを走行した場合)するという転がり抵抗面でも大幅な性能向上をマークしているのだ。
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一方、ALL SEASONは、濡れた路面を考慮し低温でも食いつきが低下しないよう配合されたソフトなGRIPコンパウンドを採用したことが最たる特徴だ。更にモトGPタイヤから発想を得た特殊なトレッドパターンによって雨天時のグリップ力をもう一段階引き上げている。
これによってPRO4サービスクルスに対して15%のグリップ力向上(素材で13%向上、トレッドパターンで2%向上)を果たしており、その食いつきはCOMPETITIONとENDURANCEを遥かに凌駕する。そしてそのグリップ力を発揮するべく、60TPIと密度の低いケーシングを3層構造にすることでタイヤ剛性を強化し、雨天時におけるディスクブレーキの制動力にも対応させている。
もちろん走りの軽さも忘れられておらず、PRO4GRIPとの比較で5Wのパワーセーブを実現。耐パンク性に関してはエンデュランスと同じアラミドプロテックプラスが投入されていることが大きな安心材料といえるだろう。
ENDURANCE & ALL SEASON 長期使用することで見える、それぞれの特色
「5000km以上余裕で走れるENDURANCE」大石一夫(シクロオオイシ ラヴニール)
大石: POWER ENDURANCEは現在常用しているのですが、驚かされますね。今5000kmくらい走っているのにまだまだいけますから。タイヤ自体の持ちが良い上にパンクも全く経験してないし、「そろそろ飽きたから他のに替えたいけど、まだ使える...」と思ってしまうほど(笑)。
タイヤ剛性が高いので走りの軽さや乗り心地はCOMPETITIONに譲るものの、耐久性はもちろんコーナリング時のフィーリングもクセがありません。長寿命なのでお財布にも優しいし、トレーニング用タイヤにタフさを求めるならベストだと思いますよ。今までエンデュランス系タイヤはほとんど好きになれなかったのですが、これはオススメです。
藤野:ENDURANCEに関しては23cよりも25cの方がバランスが取れていて好きですね。レースに特化したCOMPETITIONと安全に長く走るためのALL SEASONに挟まれているのでキャラが薄いのですが、とにかく耐久性があって安定しているので、長距離のツーリングイベントに参加するとき、もしくは毎日通勤で使う方には良い選択肢でしょうね。
大石:やっぱり3種類の中で、ENDURANCEが一番中間的な、一般的な乗り味。ちょっと硬さがあるので25cにして、空気圧を落として乗れば乗り心地もぐっと良くなります。
藤野:私(65kg)が25cを使うのであれば、6気圧より下げても大丈夫。人によってはもっさり感が出て嫌かもしれませんが、それであればCOMPETITIONを使えば良い。通勤用としてはちょっと高価ですが、慣れた通勤路と言えどタイヤはしっかりとしたモノを使うべきなので、「レース用じゃないから長持ちすれば何でも良いや」と言わずに、ぜひこうした良い製品を選んで欲しいのが本音ではあります。
大石:本当にそう思うよね。練習であってもなるべくレースと同じタイヤを自分は使いたい。耐久性だけで選んだタイヤ、もしくは安いタイヤだともっさりして、気分的にも乗ってきません。
「どんな場所でもメリットがあるALL SEASON」藤野智一(なるしまフレンド)
大石:ALL SEASONは今前輪に使っています。ENDURANCEより劣るものの耐久性も非常にあって、ハイグリップタイヤにありがちな粘っこさというか、重たい感覚もないんです。タイヤ表面のコンパウンドが良い仕事をしているんでしょうね。雨でも不安感は一切ないし、一時期滑るという噂が出たこともあったけれど、それは空気圧を調整していないだけの話です。当然カンカンに空気を張ればどんなタイヤだって限界が低くなりますから。
藤野:ENDURANCEとALL SEASONで迷ったら、通勤も1週間に2回程度の私は間違いなくALL SEASONを選びますね。グリップが良いからどんな場面でもよりメリットがあるし、耐久性も悪くない。COMPETITIONはこの2つに比べるとサイドカットのリスクが高まるので、デイリーユースするならすごく良い選択肢だと思うんです。
例えば、昼夜問わず、しかも走行時間が長いから途中で雨の確率の高まる長距離ブルベ用にセットしておけば安心でしょうね。それからサーキットで行われるエンデューロレース。コース上にクルマやバイクのオイルが染み込んでいる場合がたまにあるので、選択肢としてアリだと思いますよ。
大石:低温でもしっかりグリップするので、冬場にマイナス気温になる場所でも良いですよ。もちろんゴムは固くなるけれど、安曇野の冬でもグリップ感が低下することもなく信頼しています。ただENDURANCE同様にタイヤ剛性が高くカチッとした乗り味なので空気圧は低めにするのが良いですね。
藤野:POWERシリーズの3種類は3種類とも、はっきりコンセプト通りの性能を有していますね。だからどういう状況で使うかによって選択肢が用意されているのはありがたい。そしてどのモデルも基本性能が高いので、タイヤに高いクオリティを求める方にはオススメしたいですね。
大石:自分で選ぶなら僕はCOMPETITION。雨でも問題ないグリップ力があるし、タイヤとしての基本性能がとにかく高いので、レーサーやレースのように走りたい方にはベストバイでしょう。まだ試していませんが、例えばCOMPETITIONにミシュランのラテックスチューブを入れて走ったら最高でしょうね。
インプレッションライダープロフィール
藤野智一(なるしまフレンド)
92年のバルセロナオリンピックロードレースでの21位を皮切りに、94・97年にツール・ド・おきなわ優勝、98、99年は2年連続で全日本ロードチャンピオンとなるなど輝かしい戦歴を持つ。02年に引退してからはチームブリヂストン・アンカーで若手育成に取り組み、11年までは同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長として親しまれている。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
CWレコメンドショップ
大石一夫(シクロオオイシ ラヴニール)
国際サイクルロードレース(現ツアー・オブ・ジャパン)初代王者となったことでキャリアがスタート。歴史上初めて結成された日本ナショナルチームの第1回遠征メンバーとして1986年のツール・ド・ラヴニールに参加。1989年にはツール・ド・北海道とツール・ド・おきなわをダブル優勝、1990年と1993年に全日本選手権優勝、国体3回優勝など屈指のオールラウンダーとして君臨した。長野県安曇野市に移り住み、98年に自身のショップをオープン。今でも全国屈指の"走れる店長"としての脚力を維持している。
シクロオオイシ ラヴニール
92年のバルセロナオリンピックロードレースでの21位を皮切りに、94・97年にツール・ド・おきなわ優勝、98、99年は2年連続で全日本ロードチャンピオンとなるなど輝かしい戦歴を持つ。02年に引退してからはチームブリヂストン・アンカーで若手育成に取り組み、11年までは同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長として親しまれている。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。
なるしまフレンド神宮店
CWレコメンドショップ
大石一夫(シクロオオイシ ラヴニール)
国際サイクルロードレース(現ツアー・オブ・ジャパン)初代王者となったことでキャリアがスタート。歴史上初めて結成された日本ナショナルチームの第1回遠征メンバーとして1986年のツール・ド・ラヴニールに参加。1989年にはツール・ド・北海道とツール・ド・おきなわをダブル優勝、1990年と1993年に全日本選手権優勝、国体3回優勝など屈指のオールラウンダーとして君臨した。長野県安曇野市に移り住み、98年に自身のショップをオープン。今でも全国屈指の"走れる店長"としての脚力を維持している。
シクロオオイシ ラヴニール
提供:日直商会 制作:シクロワイアード編集部