2018/05/22(火) - 14:09
ウエイブワンが送り出すヒルクライム向けオーダージャージ、レジェフィットクレスト。フラットシーマ縫製などのテクノロジーによって、軽く空力に優れながらも、着心地の良さにもこだわったハイエンドモデルを、トップホビーレーサーの中村龍太郎がインプレッション。
フルタイムワーカーにして、全日本王者に。そんな、ホビーライダーなら誰もが憧れる輝かしい経歴を持つ中村龍太郎。Jプロツアーや全日本選手権といったトップカテゴリーのロードレースだけでなく、トラックやシクロクロスまで、幅広く自転車競技全般に取り組むオールラウンドレーサーだ。
2015年の全日本選手権タイムトライアルで優勝を飾ったことから、ルーラーとしての印象が強い中村だが、登りにおいてもその強さは証明されている。全日本チャンピオンジャージを手にした2週前に行われたMt.富士ヒルクライムで、大会記録となる59分28秒で勝利。並み居るピュアクライマーを押しのけて、日本最大のヒルクライムイベントの頂点を獲得した。
ウエイブワンとの関係も深く、全日本や富士ヒルクライムで勝利した2015年は、ウエイブワンでオーダーしたチームジャージをシーズン通して着用。レジェフィットプロシリーズとともに輝かしい戦績を残しており、その性能を知悉している。その中村の目に、レジェフィットクレストはどう映ったのか。
ウエイブワン レジェフィットクレストインプレッションby中村龍太郎
決して軽さだけの扱いづらいジャージではない
袖を通した瞬間に、「あ、良いな」って。肌触りがすごく良くて、身体にぴたっとフィットするんです。それに、意外に寒くない。「ヒルクライム用の軽いジャージだよ」ということしか知らなくて、もっとペラペラで薄い生地を使ってるのかと思っていたので。(※取材日の朝はおよそ15℃程度、昼には23℃ほどに上がった)
ヒルクライムジャージというと、極薄のメッシュ素材を使ったジャージがあるじゃないですか。スケスケでちょっと着辛いレベルの(笑)このクレストは、ああいった製品とは目指しているところが違うんだな、とは思いました。やろうと思えば、脇の下の素材を全面に使えばもっと軽くできたはずです。でも、あえてそうせずに使いやすさや快適性といった要素を蔑ろにしないコンセプトなんでしょう。
適応気温も広くて、扱いやすいですね。真夏のヒルクライムシーズンにしか使えないということは無いですし、逆にそういった時期に蒸れてしまうこともないでしょう。日が昇ってある程度気温が上がったタイミングで、峠を一本登っても、全然不快な感じは無かったです。結構いいペースで登ってきて、かなり汗もかいたはずなんですけど、頂上で何枚か写真撮ってもらって、さあ下ろう!としたときにはかなり乾いていたので、汗抜けの良さは相当良いはずです。特に脇のパネルが効果的に働いているように感じますね。
身体を包み込むフィット感がストレスフリーな着心地の良さを生み出す
一つ驚いたことがあって。今日、本格的な登りを含めて50kmほど走ってきたのですが、ジャージを直す、という動作が必要無かったんですよ。しっかりとフィットしてないジャージだと、ダンシングしたら裾がずり上がってきたりして、バタつく原因になったりしますよね。そういった不快な動きが無くって、身体の動きにシームレスに追従してくれるんです。
かといって、エアロスキンスーツのようにキュッと締め付ける訳でもないのが不思議。ソフトに身体全体を包み込んでくれるような着心地ですね。レジェフィットプロもフィット感は良かったですけど、さらに進化しています。脇の下へ回り込むようなフロントパネルや、裾のグリッパーテープがしっかり仕事しているんでしょうね。とにかく、この窮屈すぎず緩すぎない締め付け感は気に入りました。
このフラットな縫い目も面白い。表の見栄えを優先してしまって、裏側がチクチク肌に当たるジャージもありますよね。胴回りであればアンダーを着ればいいですけど、袖の辺りはどうしても気になりますし、それこそヒルクライムレースだと、軽くしたいという思いでアンダーを着たくない人もいるはず。この縫製であれば、縫い目に関する不快感はゼロなので、そういった悩みも解決できますよ。
ヒルクライム決戦用というのはもったいないバランスを持つレーシングジャージ
ヒルクライム決戦用ジャージ、というキャッチコピーはもったいない気もします。もちろんヒルクライムでも速いんですけれど、トップヒルクライマーたちはみんなエアロワンピースを着ちゃうから、このジャージが登り最速!とは言いづらいかな(笑)でも、それって裏を返すともっと汎用的に使いやすいということ。だって、いくら軽くて空気抵抗が少なくても普段からエアロワンピースは着てられないじゃないですか?
このジャージは、そのバランスの取り方が上手いですよね。着用感は普通の半袖ジャージと変わらないか、それ以上に良いのに、走行性能にも優れている。袖口や裾回りの仕上げも凝っていて、まるでエアロワンピースみたいな凹凸の無さで腕やビブショーツへ繋がっていて、空気抵抗も少なそう。でも、構造としてはあくまで半袖ジャージというのがいいですね。ロードレースでも十分武器になると思いますよ。
そのバランス感覚でいえば、襟周りの処理もこだわりが感じられます。個人的には、あんまり襟が高すぎるのは首にジッパーの金具が当たるのが気になってしまうんですよ。でも、バタつかないようにジッパーは上まで上げたいじゃないですか。
でも、エアロワンピースみたいな襟なし仕上げだとレーシーすぎるし、一般的な感覚であれがカッコいいのかというのは、ちょっと疑問ですよね。いや、僕らはカッコいいと思うんですけど(笑)とにかく、かなり好みが別れちゃうところだと思うんです。そこで、襟はしっかり残したまま、短めの高さに抑えているのは素晴らしいなあ、と。
一つだけ、速さのために犠牲にしている点を挙げるとすれば、バックポケットの大きさですね。容量が少なめなので、ロングライドには向かないかも。でも、容量が少なめといっても、いくつかの補給食とウインドブレーカーくらいは入るので、ヒルクライムレースでは十分ですよ。それに、着心地が良いから速めのペースで距離を稼ぐような走り方だったら、ロングだって良いかもしれない。さらに言えば、どうせバッグを持っていくようなツーリングだったら、むしろメリットしかない(笑)
ヒルクライム決戦用として作られてはいますが、ロードレースから練習まで、速く快適に走りたいというシチュエーション全般で活躍してくれそうな一着です。もちろん本来の用途通り、ヒルクライムに真摯に取り組んでいて、機材の軽量化の次に自分の軽量化を考えているという人にはピッタリでしょう。富士ヒルでシルバーを目指す!とか、自己ベスト更新!という目標があるのなら、このジャージが一歩近づけてくれるでしょうね。
提供:ウエイブワン 制作:シクロワイアード編集部