2017/10/16(月) - 18:00
プレゼンテーションと風洞実験施設「ACE」でのデモンストレーションを見学したお次は、待ちに待ったPROPEL DISCのテストライド。はやる気持ちを隠しきれないジャーナリスト一同が、揃いのジャージを纏い、それぞれの体格に合わせてセッティングされた(もちろんISPもカット。この後各ディーラーの試乗車に回すといっても、脚の短いアジア人に合わせて大丈夫なのかと不安になる)PROPEL DISCを駆り出した。
テストのスケジュールは、初日夕方にマニクールサーキットのフルコースを使ったファストライド、翌日に宿泊先のホテルを拠点に、片田舎の美しい丘陵地帯を駆け巡る100kmという贅沢な2日間。70km/h近い超高速コーナーから、短くも厳しい登りまで、あらゆるシチュエーションで試したPROPEL DISCの走りは、まさに豪快。エアロを纏う正当派レーシングバイクの性能を思う存分堪能させてもらった。
テストに供されたのはPROPEL ADVANCED SL 0 DISC(税抜1,250,000円)。Advanced SLグレードのカーボンを奢るフレームに、最新鋭のシマノR9170系DURA-ACEを組み合わせた完成車ラインアップ最高峰モデルであり、タイヤはこのバイクに合わせて登場したチューブレス仕様のGAVIA RACE 0。ハンドルマウントに装備された、新型のGPS搭載コンピュータ、NEOS TRACKのスイッチをONにしてペダルを踏みつけた。
リアホイールのリムハイトが65mmもあるから、お世辞にもゼロ発進は軽量バイク同等とは言えない。しかし、ひとたびスピードを乗せていくと、そこからが本領を発揮する部分。強めにダンシングすると、フレームとホイールが一体となって、芯が強く、テンポが早いウィップを生んで次の加速に繋げてくれる。
大きなトルクを掛けた時の頼もしさは先代を大きく超え、各社のハイエンドバイクと比較しても最高レベルだと確信できるほど。だからこそ全力でバイクと対峙でき、ツールでPROPEL DISCを使ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)が「瞬間的な加速により対応してくれるようになった」と言ったことにも納得。平坦路でTT的に踏んだ時の反応もパワフルだ。
もう一つ大きな改善点がハンドリングだ。筆者が事前に借り受けた先代のSサイズには、低速域ではクイックで、25km/h程度になると突然安定志向に変化するという癖があり、どうしても慣れることができなかった。しかしPROPEL DISCでは不安さが消え、速度域を問わず一本筋を通したハンドリングに生まれ変わっている。
言葉に表すならば、その性格はどっしり。ニュートラルよりも少々アンダーステア寄りだが、乗り手側で姿勢制御をしっかりと行えば、細かいターンも不得意にはしない。それに速度が上がるほどに立ちが強くなって車体が安定するので、例えばダウンヒルを経て70km/hに近い速度で進入するマニクールの最終セクション「リセ」でも、ビターッと這うようにコース幅いっぱいコーナリングを楽しめたし、他のジャーナリストたちとスプリント合戦をしてもラインがふらつかなかった。先述したパワフルな剛性感共々、ハイスピードを売りにするエアロロードらしい走りに感心してしまう。
フロントフォークはディスクブレーキの制動力に全くたわむことなく、リア側の振動吸収性能も上々だ。乗り心地に関しては新開発されたチューブレスタイヤも相当に役割を担っていると感じる。初乗りなのにしっくりとフィッティングの良いサドルや、フラット部分の両端が手前にベンドして持ちやすいハンドルなども扱いやすく、トータルパッケージで開発できる部分は総合ブランドならではの強み。試乗したADVANCED SL 0 DISCは細部に至るまで「ピュアレーシング」であり、コンセプトがブレている部分はどこにも感じない。
もちろん、純粋に速さと硬さを追い求めたことで犠牲になっている部分はある。剛性至上主義な乗り味ゆえに、魅力を引き出すためには脚力はあればあっただけ良いし、デフォルトで65mmもあるリアホイールハイトは、週末ライドでオールラウンドに楽しむには重すぎる。ビギナーレベルだとPROPEL ADVANCED SLの本領すら見えてこないかもしれない。
しかし、そういった乗りやすさをある意味無視したからこそ、レース機材としてより研ぎ澄まされたこともまた事実。その鋭さはTCRにもDEFYにも無いし、例えば剛性としなやかさを兼ね備えるトレックのMADONEとも、速さに対するアプローチは違うように感じる。筆者レベルではフレームの限界を推し量るのは不可能だが、強い踏み込みに対してグッグッ!とスピードに乗っていく様は、ある種の官能すら呼び起こしてくれる。これこそ自転車趣味人にとって重要な要素であり、数あるエアロロードの中でも中毒性は抜群。もしあなたがPROPEL DISCを所有すれば、きっと「乗りこなすために身体を鍛えたい」と思うはずだ。もちろん前後42mmハイト(SLR0 42)で揃えればよりダッシュの軽さが生まれ、距離の長い登りにも対応してくれるだろうし、各種ホイールが前後単品で発売されているのは、そういった意味も含まれているに違いない。
私がPROPEL DISCを人に勧めるとしたら、もちろんその対象はレーサー(もしくはレーサーのように走る方)で、アグレッシブな走り方を好む方。ただしディスクブレーキはUCIワールドツアーでは全面的に試用が認可されているものの、まだ国内のJBCFレースでは不可という現状がある。
関係者の話によれば早くて来年、再来年に解禁となる見込みだが、PROPEL DISCが最も活きる場面で使えないのはあまりにもったいない。しかし一部のホビーレースでは認可され始めてきているし、エアロダイナミクスを存分に活かせるサーキットエンデューロなどではこの上ない武器になってくれるだろう。何よりPROPEL DISCは、現在のところUCIワールドツアーレーサーと我々一般ユーザーにだけ許された機材というエクスクルーシブなアイテムだ。数年先を見据えた先物買いとしてもその価値は十分すぎる。
今シーズンはマイケル・マシューズのみに渡されたPROPEL DISCだが、このオフシーズンには多くの選手に手渡され、春先から多くの平坦レースで投入されるという。ディスクブレーキロード普及の一役を担うことになる、PROPEL DISCの活躍が楽しみでならない。
フランスの丘陵地でPROPEL DISCを試す、贅沢な2日間
テストのスケジュールは、初日夕方にマニクールサーキットのフルコースを使ったファストライド、翌日に宿泊先のホテルを拠点に、片田舎の美しい丘陵地帯を駆け巡る100kmという贅沢な2日間。70km/h近い超高速コーナーから、短くも厳しい登りまで、あらゆるシチュエーションで試したPROPEL DISCの走りは、まさに豪快。エアロを纏う正当派レーシングバイクの性能を思う存分堪能させてもらった。
テストに供されたのはPROPEL ADVANCED SL 0 DISC(税抜1,250,000円)。Advanced SLグレードのカーボンを奢るフレームに、最新鋭のシマノR9170系DURA-ACEを組み合わせた完成車ラインアップ最高峰モデルであり、タイヤはこのバイクに合わせて登場したチューブレス仕様のGAVIA RACE 0。ハンドルマウントに装備された、新型のGPS搭載コンピュータ、NEOS TRACKのスイッチをONにしてペダルを踏みつけた。
速度が上がるほどに感じる、ピュアレーシング
「とにかく剛性を強化して欲しいという、サンウェブからのリクエストに最大限応えた」とプロダクトマネージャーのニクソン・ファン氏が言う通り、足元から伝わる剛性感は非常に骨太だ。先代PROPELはウィップを伴って小気味良く加速していく性格だったが、PROPEL DISCは見た目のボリュームアップ同様、ドシンと腰を据えた厚みある走りにキャラチェンジを経ている。リアホイールのリムハイトが65mmもあるから、お世辞にもゼロ発進は軽量バイク同等とは言えない。しかし、ひとたびスピードを乗せていくと、そこからが本領を発揮する部分。強めにダンシングすると、フレームとホイールが一体となって、芯が強く、テンポが早いウィップを生んで次の加速に繋げてくれる。
大きなトルクを掛けた時の頼もしさは先代を大きく超え、各社のハイエンドバイクと比較しても最高レベルだと確信できるほど。だからこそ全力でバイクと対峙でき、ツールでPROPEL DISCを使ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)が「瞬間的な加速により対応してくれるようになった」と言ったことにも納得。平坦路でTT的に踏んだ時の反応もパワフルだ。
もう一つ大きな改善点がハンドリングだ。筆者が事前に借り受けた先代のSサイズには、低速域ではクイックで、25km/h程度になると突然安定志向に変化するという癖があり、どうしても慣れることができなかった。しかしPROPEL DISCでは不安さが消え、速度域を問わず一本筋を通したハンドリングに生まれ変わっている。
言葉に表すならば、その性格はどっしり。ニュートラルよりも少々アンダーステア寄りだが、乗り手側で姿勢制御をしっかりと行えば、細かいターンも不得意にはしない。それに速度が上がるほどに立ちが強くなって車体が安定するので、例えばダウンヒルを経て70km/hに近い速度で進入するマニクールの最終セクション「リセ」でも、ビターッと這うようにコース幅いっぱいコーナリングを楽しめたし、他のジャーナリストたちとスプリント合戦をしてもラインがふらつかなかった。先述したパワフルな剛性感共々、ハイスピードを売りにするエアロロードらしい走りに感心してしまう。
フロントフォークはディスクブレーキの制動力に全くたわむことなく、リア側の振動吸収性能も上々だ。乗り心地に関しては新開発されたチューブレスタイヤも相当に役割を担っていると感じる。初乗りなのにしっくりとフィッティングの良いサドルや、フラット部分の両端が手前にベンドして持ちやすいハンドルなども扱いやすく、トータルパッケージで開発できる部分は総合ブランドならではの強み。試乗したADVANCED SL 0 DISCは細部に至るまで「ピュアレーシング」であり、コンセプトがブレている部分はどこにも感じない。
もちろん、純粋に速さと硬さを追い求めたことで犠牲になっている部分はある。剛性至上主義な乗り味ゆえに、魅力を引き出すためには脚力はあればあっただけ良いし、デフォルトで65mmもあるリアホイールハイトは、週末ライドでオールラウンドに楽しむには重すぎる。ビギナーレベルだとPROPEL ADVANCED SLの本領すら見えてこないかもしれない。
しかし、そういった乗りやすさをある意味無視したからこそ、レース機材としてより研ぎ澄まされたこともまた事実。その鋭さはTCRにもDEFYにも無いし、例えば剛性としなやかさを兼ね備えるトレックのMADONEとも、速さに対するアプローチは違うように感じる。筆者レベルではフレームの限界を推し量るのは不可能だが、強い踏み込みに対してグッグッ!とスピードに乗っていく様は、ある種の官能すら呼び起こしてくれる。これこそ自転車趣味人にとって重要な要素であり、数あるエアロロードの中でも中毒性は抜群。もしあなたがPROPEL DISCを所有すれば、きっと「乗りこなすために身体を鍛えたい」と思うはずだ。もちろん前後42mmハイト(SLR0 42)で揃えればよりダッシュの軽さが生まれ、距離の長い登りにも対応してくれるだろうし、各種ホイールが前後単品で発売されているのは、そういった意味も含まれているに違いない。
PROPEL DISCはディスクブレーキロード時代の寵児となり得るか?
今回はADVANCEDグレードを試す機会はなかったが、これまでのジャイアントから推測すれば、若干マイルドで、扱いやすい乗り味になっていると推測できる。ISPではない部分も一般ユーザーにとっては使い勝手が良い上に、特徴的なハンドル&ステムシステムや、ジャイアントとして初めて採用されたグラフィックもADVANCED SL同様で、所有欲はほとんど薄まらないだろう。私がPROPEL DISCを人に勧めるとしたら、もちろんその対象はレーサー(もしくはレーサーのように走る方)で、アグレッシブな走り方を好む方。ただしディスクブレーキはUCIワールドツアーでは全面的に試用が認可されているものの、まだ国内のJBCFレースでは不可という現状がある。
関係者の話によれば早くて来年、再来年に解禁となる見込みだが、PROPEL DISCが最も活きる場面で使えないのはあまりにもったいない。しかし一部のホビーレースでは認可され始めてきているし、エアロダイナミクスを存分に活かせるサーキットエンデューロなどではこの上ない武器になってくれるだろう。何よりPROPEL DISCは、現在のところUCIワールドツアーレーサーと我々一般ユーザーにだけ許された機材というエクスクルーシブなアイテムだ。数年先を見据えた先物買いとしてもその価値は十分すぎる。
今シーズンはマイケル・マシューズのみに渡されたPROPEL DISCだが、このオフシーズンには多くの選手に手渡され、春先から多くの平坦レースで投入されるという。ディスクブレーキロード普及の一役を担うことになる、PROPEL DISCの活躍が楽しみでならない。
text:So.Isobe photo:GIANT/Sterling Lorence,So.Isobe,
提供:ジャイアント・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部
提供:ジャイアント・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部