2017/08/29(火) - 07:00
初代の登場から早4年、トップスプリンターによって幾多の勝ち星を挙げてきたジャイアントのエアロロード、PROPELがモデルチェンジ。フランスはマニクール・サーキットで開催された発表会の様子と共に、これから3編に渡ってその詳細や、開発者インタビュー、そしてインプレッションを紹介していきたい。
田園風景の只中にある15世紀の古城「シャトー・バゾワ」が発表会の会場 (c)GIANT/Sterling Lorence
現在建物はシャトーホテルとして使われている。中世の雰囲気が色濃く残る空間 (c)GIANT/Sterling Lorence
披露された第2世代PROPEL DISC。画像は最高峰完成車のPROPEL ADVANCED SL 0 DISC
各々がレンズを向ける先に姿を現したのは、自転車界で世界随一の規模を誇る”台湾の巨人”ジャイアントが誇る新型PROPEL DISC。2013年8月にローンチされ、これまでトップスプリンターに愛されてきたエアロロードバイクが4年ぶりにリニューアルを遂げる。
発表の場はリヨンとパリを結んだ中ほどに位置するニエーヴル県のコミューン、ヌヴェール。宿泊先ともなったシャトーホテルで新型PROPEL DISCの発表会が行われた後、2008年までF1フランスGPが開催されてきた国際サーキット、マニクール(サーキット・デ・ヌヴェール・マニ=クール)に場所を移して施設見学とフルコースを使ったテストライドが行われた。
「なぜ、台湾ブランドのジャイアントがフランスで発表会を?」と思う方も多いだろう。しかしここフランス中部、田園風景の真っ只中にあるマニクールサーキットこそ、実はPROPEL DISCの生まれ故郷。サーキット敷地内にある風洞実験施設「ACE(Aero Concept Engineering)」にて度重なる実験と解析を繰り返した末に生まれた、流体エンジニアリングの結晶と言うべき次世代機なのだ。
開発の中枢を担ったニクソン・ファン氏。ジャイアントのロードバイク開発に欠かせないエンジニアだ (c)GIANT/Sterling Lorence
実際に模擬風洞実験が行われ、その様子を見学することができた (c)GIANT/Sterling Lorence
マニクール・サーキット内の風洞実験施設「ACE」を見学。その規模に驚く (c)GIANT/Sterling Lorence
マニクール・サーキットを使ったテストライドの模様は次章で詳しくレポートする (c)GIANT/Sterling Lorence
初代PROPELのデビューは今から4年前、2013年シーズン初頭に遡る。それ以来マルセル・キッテルやジョン・デゲンコルブ(共にドイツ)、マイケル・マシューズ(オーストラリア)といったスプリンターはもちろん、持ち前の剛性からグランツールの山岳ステージや、TTバイクを持て余すテクニカルなタイムトライアルでも活躍してきた。
第2世代PROPRL開発にあたっての目標は、ディスクブレーキのメリットを享受し、よりエアロで、より強い剛性を秘め、全ての性能面で先代モデルを超えることだ。キャッチコピーは”究極のスピードを叶えるプレミアムエアロロード”。開発段階では数々のライバルモデルを試験に掛けたというが、開発陣の一人は「新型PROPEL DISCは全てのライバルたちを越えている確証、そして自信がある」と胸を張る。まずはバイクの概要を見ていきたい。
「ULTIMATE SPEED」を掲げる新型PROPEL DISCのキーフィーチャーは、全く新しいチューブ形状「AeroSystem シェイプ」を取り入れたことだ。実際の走行中には真正面から風を受けることは少なく、常に大なり小なり横風を受けているため、先代のチューブシェイプでは乱流によるロスが若干発生していた。これを解消するために断面形状を先代よりもワイドに、かつ前後に短くしたデザインを投入することで、ヨー角が増大した際の乱流発生を限りなくゼロに抑えることに成功したという。
直線的で力強いデザインのフロントフォーク。12mmスルーアクスルを採用する
先代よりも精悍な顔つきとなったヘッドチューブ。もちろんOVERDRIVE2を採用している
特にボリュームアップを果たしたダウンチューブ。全く新しいチューブ形状「AeroSystem シェイプ」を取り入れている
いかにも空気抵抗を生みそうに見えるディスクブレーキも、実は空力的には何の影響も発生していない。開発陣曰くその理由は、前から受ける風はブレーキ部分に当たる前に、既にタイヤ、リム、スポークでかき乱されているから。先代では専用のミニVブレーキを作動させるワイヤーが抵抗を産んでいたが、ディスクブレーキ化したことでその僅かな抵抗さえも除去しきっているという。
専用ハンドルや専用ブレーキといった「トータルインテグレーション」が昨今のムーブメントであることは間違いの無い事実だが、もちろん新型PROPEL DISCもその例に漏れず、先代よりもその姿勢を強く打ち出してきた。
特徴的な分割式ハンドルシステム「CONTACT SLR AERO」を採用。エアロと剛性、メンテナンス性を両立させる
ボルトを外して上部のカバーを取り払うとブレーキホースとDi2ケーブルが露出する。空力性能とメンテナンス性を両立している
ハンドルを大きく切った際にはフラップが動作し、ケーブル類の擦れやハンドリングの重たさを防ぐ
見た目にもボリューム感が伝わる特徴的なハンドルシステム「CONTACT SLR AERO」は、一般的な形状に近いステムに、ブレーキホースやDi2ケーブルを隠すカバーを設けたものだ。一体型バーステムを採用していた先代とは異なり組み合わせの自由度が出るステムハンドル別体式で、ボルト4本を介してステム上側のカバーを外せばケーブル類にもすぐ手が届く。
ハンドルを大きく切った際にはステムに設けられたフラップが”逃し”の役割を持ち、ケーブル類の擦れやハンドリングの重たさを防ぐ役目を持つなど、従来の専用エアロハンドルにありがちだったメンテナンスの猥雑さを可能な限り排除した設計だ。
コンパクトで直線的なリアバックは先代譲り。ディスクブレーキ化したことで低重心化も果たした
シートチューブ上部にあしらわれたUCIの公認ロゴ。当然UCIレースで使用可能だ
スプリンターのパワーを受け止めるボトムブラケット。POWERCORE採用だ
緩やかに曲線を描くチェーンステーにはRIDESENCEが搭載されている
更には空力を大きく左右するホイールに関しても専用品を取り入れた。ジャイアントはここ3年オリジナルホイール開発を推し進めているが、新型PROPEL ADVACNED SL 0 DISCには前42mm/後65mmという新開発でチューブレス対応のSLR0ホイールがデフォルトで用意される。前後で異なるリムハイトを設定したのは、空力はもちろん、例えばツアー・オブ・カタールに代表される強風下でも扱いやすくするため。フロントは42mmと低くなったが、フレーム同様AeroSystem シェイプを与え、かつダウンチューブと一体となって風を受け流すよう注意が払われている。パーツ単体ではなく、あくまでバイク全体のトータル設計を意識した、とはプレゼン内で何度も語られた部分だ。
前述したACEの協力を仰ぐことで、300回以上にも渡る世界トップレベルの空力解析・実験を繰り返して生み出された新型PROPEL DISCのフレーム重量は、ISP込みで982g。先代よりも精悍になったヘッドチューブは上側1-1/4インチ、下側1-1/2インチ内径のベアリングを擁するOVERDRIVE2が引き続き採用され、屈強なスプリンターの高出力に耐えうる。サドルも深い前傾姿勢に対応した新型のCONTACT SLR FORWARDが用意され、もちろんジャイアントがハイエンドモデルで継続し続けるインテグレートシートポスト(-5mm、15mmで調整可能)、POWERCOREやジオメトリーも継続されており、ジャイアント”らしさ”は微塵も薄まっていない。
前42mm/後65mmという前後で異なるリムハイトのホイールを搭載。安定したハンドリングと空力性能を求めた結果だという
深い前傾姿勢に対応した新型のCONTACT SLR FORWARDサドル
新登場したチューブレスタイヤGAVIA RACE 0
新型PROPEL DISCはジャイアントが誇る最高峰のADVANCED SLグレードと、高いコストパフォーマンスを誇るADVANCED PRO、そして弟分のADVANCEDという3モデルが展開される。ADVANCED PROとADVANCEDグレードのフレームは共通でフォークのみ異なる。日本国内では、ADVANCED SL DISC と ADVANCED PRO DISCの2モデルがラインナップされる。尚、価格情報は近日中にジャイアントから発表される予定。
先代よりも長い、約3年間という開発期間を経て世に送り出された新型PROPEL DISCは、先のツール・ド・フランスで実戦投入が行われた。サンウェブカラーに塗られたバイクはエーススプリンターを担うマイケル・マシューズ(オーストラリア)に供給され、シャンゼリゼでのマイヨヴェール(ポイント賞)獲得に大きく貢献するという上々の滑り出しを見せた。今後はバイクの台数が揃い次第、順次チームに投入されていくことのことで、その活躍が楽しみでならない。
ツール・ド・フランスでマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)が駆ったPROPEL ADVANCED SLR Disc photo:Makoto.Ayano
PROPEL ADVANCED SL 0 DISC (c)GIANT
PROPEL ADVANCED PRO DISC (c)GIANT
次章では、新型PROPEL DISCの類まれなる性能を各種データで紹介し、ACEを訪問した様子と共に開発ストーリーや、車体に詰め込まれた最先端テクノロジーについて迫っていく。また、併せて発表された新型のサイクルコンピュータ「NEOSTRACK GPS」や、新型ホイールの詳細もお伝えする。
マニクール・サーキットで披露された新型PROPEL DISC
羽田空港からパリ・シャルルドゴール空港まで13時間、そして空港から車で南下すること3時間半。高速鉄道もターミナル駅も無い田園風景の只中にある15世紀の古城「シャトー・バゾワ」には、各国を代表するサイクルジャーナリストたちが集まっていた。
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各々がレンズを向ける先に姿を現したのは、自転車界で世界随一の規模を誇る”台湾の巨人”ジャイアントが誇る新型PROPEL DISC。2013年8月にローンチされ、これまでトップスプリンターに愛されてきたエアロロードバイクが4年ぶりにリニューアルを遂げる。
発表の場はリヨンとパリを結んだ中ほどに位置するニエーヴル県のコミューン、ヌヴェール。宿泊先ともなったシャトーホテルで新型PROPEL DISCの発表会が行われた後、2008年までF1フランスGPが開催されてきた国際サーキット、マニクール(サーキット・デ・ヌヴェール・マニ=クール)に場所を移して施設見学とフルコースを使ったテストライドが行われた。
「なぜ、台湾ブランドのジャイアントがフランスで発表会を?」と思う方も多いだろう。しかしここフランス中部、田園風景の真っ只中にあるマニクールサーキットこそ、実はPROPEL DISCの生まれ故郷。サーキット敷地内にある風洞実験施設「ACE(Aero Concept Engineering)」にて度重なる実験と解析を繰り返した末に生まれた、流体エンジニアリングの結晶と言うべき次世代機なのだ。
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初代PROPELのデビューは今から4年前、2013年シーズン初頭に遡る。それ以来マルセル・キッテルやジョン・デゲンコルブ(共にドイツ)、マイケル・マシューズ(オーストラリア)といったスプリンターはもちろん、持ち前の剛性からグランツールの山岳ステージや、TTバイクを持て余すテクニカルなタイムトライアルでも活躍してきた。
第2世代PROPRL開発にあたっての目標は、ディスクブレーキのメリットを享受し、よりエアロで、より強い剛性を秘め、全ての性能面で先代モデルを超えることだ。キャッチコピーは”究極のスピードを叶えるプレミアムエアロロード”。開発段階では数々のライバルモデルを試験に掛けたというが、開発陣の一人は「新型PROPEL DISCは全てのライバルたちを越えている確証、そして自信がある」と胸を張る。まずはバイクの概要を見ていきたい。
最先端の流体エンジニアリングが生み出したエアロフォルム
「ULTIMATE SPEED」を掲げる新型PROPEL DISCのキーフィーチャーは、全く新しいチューブ形状「AeroSystem シェイプ」を取り入れたことだ。実際の走行中には真正面から風を受けることは少なく、常に大なり小なり横風を受けているため、先代のチューブシェイプでは乱流によるロスが若干発生していた。これを解消するために断面形状を先代よりもワイドに、かつ前後に短くしたデザインを投入することで、ヨー角が増大した際の乱流発生を限りなくゼロに抑えることに成功したという。
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いかにも空気抵抗を生みそうに見えるディスクブレーキも、実は空力的には何の影響も発生していない。開発陣曰くその理由は、前から受ける風はブレーキ部分に当たる前に、既にタイヤ、リム、スポークでかき乱されているから。先代では専用のミニVブレーキを作動させるワイヤーが抵抗を産んでいたが、ディスクブレーキ化したことでその僅かな抵抗さえも除去しきっているという。
専用ハンドルや専用ブレーキといった「トータルインテグレーション」が昨今のムーブメントであることは間違いの無い事実だが、もちろん新型PROPEL DISCもその例に漏れず、先代よりもその姿勢を強く打ち出してきた。
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見た目にもボリューム感が伝わる特徴的なハンドルシステム「CONTACT SLR AERO」は、一般的な形状に近いステムに、ブレーキホースやDi2ケーブルを隠すカバーを設けたものだ。一体型バーステムを採用していた先代とは異なり組み合わせの自由度が出るステムハンドル別体式で、ボルト4本を介してステム上側のカバーを外せばケーブル類にもすぐ手が届く。
ハンドルを大きく切った際にはステムに設けられたフラップが”逃し”の役割を持ち、ケーブル類の擦れやハンドリングの重たさを防ぐ役目を持つなど、従来の専用エアロハンドルにありがちだったメンテナンスの猥雑さを可能な限り排除した設計だ。
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更には空力を大きく左右するホイールに関しても専用品を取り入れた。ジャイアントはここ3年オリジナルホイール開発を推し進めているが、新型PROPEL ADVACNED SL 0 DISCには前42mm/後65mmという新開発でチューブレス対応のSLR0ホイールがデフォルトで用意される。前後で異なるリムハイトを設定したのは、空力はもちろん、例えばツアー・オブ・カタールに代表される強風下でも扱いやすくするため。フロントは42mmと低くなったが、フレーム同様AeroSystem シェイプを与え、かつダウンチューブと一体となって風を受け流すよう注意が払われている。パーツ単体ではなく、あくまでバイク全体のトータル設計を意識した、とはプレゼン内で何度も語られた部分だ。
前述したACEの協力を仰ぐことで、300回以上にも渡る世界トップレベルの空力解析・実験を繰り返して生み出された新型PROPEL DISCのフレーム重量は、ISP込みで982g。先代よりも精悍になったヘッドチューブは上側1-1/4インチ、下側1-1/2インチ内径のベアリングを擁するOVERDRIVE2が引き続き採用され、屈強なスプリンターの高出力に耐えうる。サドルも深い前傾姿勢に対応した新型のCONTACT SLR FORWARDが用意され、もちろんジャイアントがハイエンドモデルで継続し続けるインテグレートシートポスト(-5mm、15mmで調整可能)、POWERCOREやジオメトリーも継続されており、ジャイアント”らしさ”は微塵も薄まっていない。
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新型PROPEL DISCはジャイアントが誇る最高峰のADVANCED SLグレードと、高いコストパフォーマンスを誇るADVANCED PRO、そして弟分のADVANCEDという3モデルが展開される。ADVANCED PROとADVANCEDグレードのフレームは共通でフォークのみ異なる。日本国内では、ADVANCED SL DISC と ADVANCED PRO DISCの2モデルがラインナップされる。尚、価格情報は近日中にジャイアントから発表される予定。
先代よりも長い、約3年間という開発期間を経て世に送り出された新型PROPEL DISCは、先のツール・ド・フランスで実戦投入が行われた。サンウェブカラーに塗られたバイクはエーススプリンターを担うマイケル・マシューズ(オーストラリア)に供給され、シャンゼリゼでのマイヨヴェール(ポイント賞)獲得に大きく貢献するという上々の滑り出しを見せた。今後はバイクの台数が揃い次第、順次チームに投入されていくことのことで、その活躍が楽しみでならない。
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ジャイアント 新型PROPEL DISCラインアップ
PROPEL ADVANCED SL 0 DISC
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サイズ | 680(XS)、710(S)、740(M)、770(ML)mm |
フレーム&フォーク | Advanced SL-Grade Composite |
コンポーネント | シマノR9170系DURA-ACE |
ホイール | ジャイアント SLR0 AERO DISC Carbon |
タイヤ | ジャイアント GAVIA RACE 0 700x25C Tubeless Ready |
価格 | 1,250,000円(税抜) |
PROPEL ADVANCED PRO DISC
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サイズ | 465(XS)、500(S)、520(M)、545(ML)mm |
フレーム | Advanced-Grade Composite |
フォーク | Pro-Spec, Advanced-Grade Composite |
コンポーネント | シマノ 8000系ULTEGRA |
ホイール | ジャイアント SLR1 AERO DISC Carbon |
タイヤ | ジャイアント GAVIA RACE 1 700x25C Tubeless Ready |
価格 | 600,000円(税抜) |
次章では、新型PROPEL DISCの類まれなる性能を各種データで紹介し、ACEを訪問した様子と共に開発ストーリーや、車体に詰め込まれた最先端テクノロジーについて迫っていく。また、併せて発表された新型のサイクルコンピュータ「NEOSTRACK GPS」や、新型ホイールの詳細もお伝えする。
text:So.Isobe photo:GIANT/Sterling Lorence,So.Isobe,
提供:ジャイアント・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部
提供:ジャイアント・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部