2017/08/14(月) - 18:00
シクロクロスの中心地とも言えるベルギーのフランドル地方で行われたキャニオンの新車発表会。そこで明らかにされたのは同社としては初となるカーボンのシクロクロスバイクだった。
これまでアルミ製のINFLITE ALシリーズをラインナップしてきたキャニオンが、初のカーボンシクロクロスバイクとなるINFLITE CF SLXシリーズを発表した。発表の場に選ばれたのはベルギー東部のゾンホーフェン。世界各国から集まったジャーナリストたちを前にホテルで新型バイクが披露された後、シクロクロスのスーパープレスティージュが開催される砂の周回コースに舞台を移して実践的なバイクの説明やテストライドが行われた。
「いかなるコンディションの中でもレースが行われるシクロクロスは、サイクリングにおいて最もバイクとライダーの技量が問われるアルティメイトな競技。シクロクロスはバイクハンドリングの真骨頂である」という開発陣が、今まで同社に欠けていたコンペティティブなシクロクロスバイク開発に取り組み始めたのは2年半前のこと。一度見れば明らかなように、INFLITE CF SLXはALをそのままカーボン化したバイクではない。ゼロから開発が進められた全く新しいバイクであり、ジオメトリーなど何から何まで全くの別物。そのキャッチフレーズは「TAKE FLITE=優勝への最短フライト」。次章ではその開発コンセプトやテクノロジーに迫っていく。
「細部の積み重ねが大きな差を生む」をコンセプトに作られたニューバイクの中で最も目を引くのが独特なトップチューブの形状だ。トップチューブが後方で屈曲するデザインに至った理由は主に二つある。一つはトップチューブをより高い位置に上げることで、もう一つはシートポストの露出部を伸ばすこと。
バイクを持ち上げる、バイクを担ぐという動作が加わるシクロクロスにおいて、高い位置のトップチューブは取り回しの良さにつながる。大きい前三角は肩の入れやすさ、つまり担ぎやすさにつながっている。トップチューブとシートチューブとの接合部を平らにすることで肩のフィット感が増し、ランニング時の安定感アップの狙いも。この特許取得済みのフレームはもちろんUCI規定に準拠している。
シートクランプの位置を下げることにより物理的にシートポストの突き出し量が増加し、さらにトップチューブ後方に設けられたインテグレートクランプによりシートポストの柔軟性が増して快適性が向上。縦方向の柔軟性は15%アップし、従来のシステムより15g軽量化されている。クランプが内側に位置することで上部からの水にも強い。
「ただ単にロードバイクのタイヤクリアランスを広げただけのバイクでは決してない」と開発陣は念を押した。軽量で剛性の高いフレームが求められるシクロクロス。同時に、ラフな地形を走るために耐久性も高めないといけない。飛び乗りや下車、シケインのバニーホップなど過酷なシチュエーションが多いので、ロードバイクとは異なる様々な耐久テストを実施。チューブ形状が同じように見えてもCTスキャンで見ると内部の違いは歴然だという。
シクロクロスのためにカーボンの積層も調整。軽量さと剛性のバランスを追求した結果、単体重量940g(フォーク込み1300g)という軽量なフレームに仕上がっている。フロントディレイラー台座に取り付けられるフロントシングル用チェーンキャッチャーは13gと軽量だ。
バイク交換の頻度を下げることは速さにつながるため、シクロクロスでは泥や付着物に対する対策も必須。BB後方など重要なポイントのデザインを極力シンプルなものにすることで、泥などの付きやすい部分の面積を8.5%減少させているという。タイヤは38mmまで対応している。40mm以上に対応することも考えられたが、ここはアドベンチャーバイクではなくUCI承認のレースバイクとして開発が進められた。また、ケーブルルーティングの見直しによりシフトケーブルの摩擦は31%減少。泥の付着につながるためケーブル類も可能な限り内装されている。
すべてのモデルにはステム一体型ハンドルのH31エルゴコクピットCFが装着される。フレーム同様に付着物の減少を狙ったシンプルなデザインで、ロードバイクと比較するとステムが同サイズ比で10mm短く、ハンドル幅は広めだ。リーチが短く(6度セットバック)扁平した形状は手のストレスを減らすとともにラフなコースでの正確なハンドリングを狙った設計だ。
ホイール周りはディスクブレーキにチューブレスタイヤの組み合わせ(出荷時はチューブ入り)。プロのようにコースに合わせて10セットも揃えることができない一般ライダーにとってチューブレスタイヤが最も実用的な選択だというのがキャニオンの結論だ。デフォルトで装着されるシュワルベタイヤはオールラウンドなパターンで、低圧にも対応している。
開発陣のプレゼンテーションの中でキャニオンが最もこだわりを見せたのがバイクのハンドリングだった。ライダーの技量が求められる近年のシクロクロスにおいて「ベストハンドラーがベストレーサー」。マウンテンバイクの経験の積み重ねもシクロクロスのレーシングジオメトリーに反映させている。
安定感を上げるためにホイールベースを伸ばしながら、72.5度のヘッド角度(Mサイズ)によりクイックでレスポンスの良いハンドリングに。そしてそのハンドリング性能を全てのライダーが享受できるよう、3XSと2XSの2サイズに650Bのホイールを採用した。3XSサイズは参考適正身長が152cmからとなっている。
650Bホイールの採用により3XSはヘッドアングル70.2度でトレイル値72.6mmに。仮に700Cホイールでジオメトリーを組むとヘッドアングルが69度まで”寝る”ことになり、トレイル値が87.3mmまで伸びてクイックさが損なわれてしまう。レース用のアグレッシブなハンドリングを実現するためには650Bが不可欠だった。
「すでにウィメンズのロードバイクに採用している。小さいサイズのフレームに650Bを組み合わせることは他のブランドも追従するだろう」と、プロダクトエンジニアのルーカス・シューフニック氏は自信を見せる。650Bのホイールやチューブレスタイヤはメーカーとの提携で実現。「なぜならこれが最も理屈にあっているのだから」。
サイズごとに最適化されているのはホイール径だけではなく、ローター径やクランク長も当然小さいサイズには小さい(短い)サイズに。合理的にライドフィーリングの共通化を目指していることがよくわかる。
ゼロから開発されたカーボンシクロクロスバイク新発表
これまでアルミ製のINFLITE ALシリーズをラインナップしてきたキャニオンが、初のカーボンシクロクロスバイクとなるINFLITE CF SLXシリーズを発表した。発表の場に選ばれたのはベルギー東部のゾンホーフェン。世界各国から集まったジャーナリストたちを前にホテルで新型バイクが披露された後、シクロクロスのスーパープレスティージュが開催される砂の周回コースに舞台を移して実践的なバイクの説明やテストライドが行われた。
「いかなるコンディションの中でもレースが行われるシクロクロスは、サイクリングにおいて最もバイクとライダーの技量が問われるアルティメイトな競技。シクロクロスはバイクハンドリングの真骨頂である」という開発陣が、今まで同社に欠けていたコンペティティブなシクロクロスバイク開発に取り組み始めたのは2年半前のこと。一度見れば明らかなように、INFLITE CF SLXはALをそのままカーボン化したバイクではない。ゼロから開発が進められた全く新しいバイクであり、ジオメトリーなど何から何まで全くの別物。そのキャッチフレーズは「TAKE FLITE=優勝への最短フライト」。次章ではその開発コンセプトやテクノロジーに迫っていく。
独創的なフレームデザイン
「細部の積み重ねが大きな差を生む」をコンセプトに作られたニューバイクの中で最も目を引くのが独特なトップチューブの形状だ。トップチューブが後方で屈曲するデザインに至った理由は主に二つある。一つはトップチューブをより高い位置に上げることで、もう一つはシートポストの露出部を伸ばすこと。
バイクを持ち上げる、バイクを担ぐという動作が加わるシクロクロスにおいて、高い位置のトップチューブは取り回しの良さにつながる。大きい前三角は肩の入れやすさ、つまり担ぎやすさにつながっている。トップチューブとシートチューブとの接合部を平らにすることで肩のフィット感が増し、ランニング時の安定感アップの狙いも。この特許取得済みのフレームはもちろんUCI規定に準拠している。
シートクランプの位置を下げることにより物理的にシートポストの突き出し量が増加し、さらにトップチューブ後方に設けられたインテグレートクランプによりシートポストの柔軟性が増して快適性が向上。縦方向の柔軟性は15%アップし、従来のシステムより15g軽量化されている。クランプが内側に位置することで上部からの水にも強い。
「ただ単にロードバイクのタイヤクリアランスを広げただけのバイクでは決してない」と開発陣は念を押した。軽量で剛性の高いフレームが求められるシクロクロス。同時に、ラフな地形を走るために耐久性も高めないといけない。飛び乗りや下車、シケインのバニーホップなど過酷なシチュエーションが多いので、ロードバイクとは異なる様々な耐久テストを実施。チューブ形状が同じように見えてもCTスキャンで見ると内部の違いは歴然だという。
シクロクロスのためにカーボンの積層も調整。軽量さと剛性のバランスを追求した結果、単体重量940g(フォーク込み1300g)という軽量なフレームに仕上がっている。フロントディレイラー台座に取り付けられるフロントシングル用チェーンキャッチャーは13gと軽量だ。
バイク交換の頻度を下げることは速さにつながるため、シクロクロスでは泥や付着物に対する対策も必須。BB後方など重要なポイントのデザインを極力シンプルなものにすることで、泥などの付きやすい部分の面積を8.5%減少させているという。タイヤは38mmまで対応している。40mm以上に対応することも考えられたが、ここはアドベンチャーバイクではなくUCI承認のレースバイクとして開発が進められた。また、ケーブルルーティングの見直しによりシフトケーブルの摩擦は31%減少。泥の付着につながるためケーブル類も可能な限り内装されている。
すべてのモデルにはステム一体型ハンドルのH31エルゴコクピットCFが装着される。フレーム同様に付着物の減少を狙ったシンプルなデザインで、ロードバイクと比較するとステムが同サイズ比で10mm短く、ハンドル幅は広めだ。リーチが短く(6度セットバック)扁平した形状は手のストレスを減らすとともにラフなコースでの正確なハンドリングを狙った設計だ。
ホイール周りはディスクブレーキにチューブレスタイヤの組み合わせ(出荷時はチューブ入り)。プロのようにコースに合わせて10セットも揃えることができない一般ライダーにとってチューブレスタイヤが最も実用的な選択だというのがキャニオンの結論だ。デフォルトで装着されるシュワルベタイヤはオールラウンドなパターンで、低圧にも対応している。
自然なハンドリングを実現するため650Bを小さいサイズに採用
開発陣のプレゼンテーションの中でキャニオンが最もこだわりを見せたのがバイクのハンドリングだった。ライダーの技量が求められる近年のシクロクロスにおいて「ベストハンドラーがベストレーサー」。マウンテンバイクの経験の積み重ねもシクロクロスのレーシングジオメトリーに反映させている。
安定感を上げるためにホイールベースを伸ばしながら、72.5度のヘッド角度(Mサイズ)によりクイックでレスポンスの良いハンドリングに。そしてそのハンドリング性能を全てのライダーが享受できるよう、3XSと2XSの2サイズに650Bのホイールを採用した。3XSサイズは参考適正身長が152cmからとなっている。
650Bホイールの採用により3XSはヘッドアングル70.2度でトレイル値72.6mmに。仮に700Cホイールでジオメトリーを組むとヘッドアングルが69度まで”寝る”ことになり、トレイル値が87.3mmまで伸びてクイックさが損なわれてしまう。レース用のアグレッシブなハンドリングを実現するためには650Bが不可欠だった。
「すでにウィメンズのロードバイクに採用している。小さいサイズのフレームに650Bを組み合わせることは他のブランドも追従するだろう」と、プロダクトエンジニアのルーカス・シューフニック氏は自信を見せる。650Bのホイールやチューブレスタイヤはメーカーとの提携で実現。「なぜならこれが最も理屈にあっているのだから」。
サイズごとに最適化されているのはホイール径だけではなく、ローター径やクランク長も当然小さいサイズには小さい(短い)サイズに。合理的にライドフィーリングの共通化を目指していることがよくわかる。
INFLITE CF SLX ラインナップ
INFLITE CF SLX 9.0 PRO RACE
コンポーネント | SRAM Force 1 |
カラー | Lightning yellow/Stealth |
価格 | 449,000円(※税別、送料等別途) |
INFLITE CF SLX 9.0
コンポーネント | Shimano Ultegra R8000 ミックス |
カラー | Aero silver/Stealth |
価格 | 359,000円(※税別、送料等別途) |
INFLITE CF SLX 8.0 PRO RACE
コンポーネント | SRAM Rival 1 |
カラー | Lightning yellow/Stealth |
価格 | 309,000円(※税別、送料等別途) |
INFLITE CF SLX フレームセット
価格 | 219,000円(※税別、送料等別途) |
text:Kei Tsuji photo:Kei Tsuji, René Zieger
提供:キャニオン・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部
提供:キャニオン・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部