2017/03/03(金) - 19:45
ファクターというブランドのアイデンティティとも言える、独自の双胴式ダウンチューブを採用した「ONE」と「ONE-S」をインプレッション。処女作001の流れを組む意欲作の詳細解説とテストコメントは必見だ。
F1等の超高速域で争うモータースポーツをデザインしてきたエンジニアが、自転車で空力を突き詰めた時に行き着いた”1つ”の答えが、この”ONE/ONE-S”。エアロロードの終着点ともいえる形状を獲得したと言っても過言ではないスペシャルなエアロロードである。
基本的なフレームデザインは前身である「Vis Vires」を踏襲。その特徴的なダウンチューブはヘッド側から二股に別れ、BB上まで割りが入れられた「Twin Vane」デザインを採用している。この溝によって空気を後方へとスムーズに流すことで、走行時にダウンチューブにぶつかる空気が乱流となるのを防ぎ、抗力を低減させることで空力性能を高めている。
この双胴ダウンチューブ形状により、伝統的な丸型のチューブに比べ約23倍もの空力性能を生み出しており、実際のテストにおいては通常の非分割ダウンチューブとの比較で40km/hにおいて1秒短縮という空力効率を手に入れている。
更にONEはOTIS(ONE Total Integration System)と呼ばれる専用設計を採用。エアロヒンジ仕様のフロントフォークと、ケーブル類を内装するステム一体型専用ハンドルを用いることで、前方投影面積を小さくし空力性能を高めている。
このOTISフォークはヘッドチューブ上部まで一体成型とされ、ヘッドの上下で固定されるデュアルクランプと相まって高い剛性を生み出している。複雑な造形ながら安定したハンドリングをライダーに提供してくれる設計だ。ONE-Sに搭載されたShankフォークはOTISフォークと同等の空力性能を持ちながら、通常のアヘッドタイプであり、市販のハンドルとステムを使用できるため、よりアグレッシブなポジションも可能だ。
細かく見ていけば、内蔵されたシートクランプや、前後ダイレクトマウントを採用したブレーキ、専用のガーミンマウント、ボトルケージ下のDi2ジャンクションマウント(ONEのみ)等、空力向上のための工夫が随所に施されている。電動シフト専用設計であるのも、エアロダイナミクスを追求したからこそだ。
エアロダイナミクスを体現するこのマシンを形作るのは、弾性率の異なる3種類のカーボンだ。特に、最も高弾性の素材にはピッチファイバー系のカーボンを採用。あまりの硬さのために加工難易度が著しく高く、自転車にはほとんど用いられない素材であるが、ファクターは高い技術によって実用化を可能とした。フレームへと織り込まれることでレーシングマシンに必要な高い剛性を持たせることに成功している。
また、Fibersimと呼ばれるコンピュータプログラムにて緻密に設計されたカーボンレイアップに基づき、各レイヤーは個別にカット。最小限の素材を使用し、カーボン層同士の余計な重なりを抑えることでフレームの軽量化を図っている。
完成車でアッセンブルされるホイールは、ファクターのオーナー、ギティス氏がファクトリーを所有するブラックインクの「Fifty Clincher」。50mmハイトのディープリムホイールが付属する妥協のない仕様であり、デンマークブランドであるブラックインクは同郷のセラミックスピードと協力体制にあり、オリジナルのハブ、そしてフレームBBには同社のセラミックベアリングが採用されている。
販売ラインアップはONEがフレームセットとデュラエースDi2完成車の2種類、ONE-SはそこにアルテグラDi2完成車も加わった3種類が用意される。色はそれぞれ共通のカラーリングを施したブラック、ブルーとONEにはターコイズ、ONE-Sにはレッドという3種類が揃う。
藤岡:独特のデザインながら、その見た目に反して良い意味で違和感なくテストできました。ONEもONE-Sもどちらもレーシングバイクらしい味付けがされていますが、真ん中で分かれたダウンチューブ構造のためか踏んだ際に横方向へと逃しが効いている感覚があり、嫌な硬さは全く感じません。乗りやすさに繋がっている部分だと思います。
若生:そうですね。手で持った時の車体の軽さから、パリッとした乗り味を想像したのですが、その形状のおかげでしっとりとマイルドな走り心地に味付けされていると感じました。しかし、基本的な性能はエアロフレームそのものです。スピードを乗せていくとバイク自体がスッと前に進んでくれる感覚が味わえますね。奇抜な見た目ですが、これはこれで正解と思わせる完成度の高さを感じました。
藤岡:漕ぎ方で言えば、真上からガンガンとトルクをかけるのではなく、どのギアでも全体的にトルクをかけてやって、丸く回すようなペダリングが合っていると感じました。無理やり踏んでいくような漕ぎ方をしてしまうと、BB付近で力が逃げてしまう。キレイなペダリングが求められるかもしれませんが、スピードの乗りは非常に良いので、アベレージスピードの高いレース等でも十分に使っていけると思います。
若生:フレーム全体でしなる動きがあるのか、踏んだ時のウィップは大きく感じるところです。逆に言えばその感覚やタイミングが掴めないと、ペダリングと連動せず進まないと感じてしまうかもしれませんね。シチュエーションを問わず、まずは十分に練習を重ねてバイクの性格を理解できれば、よりその持ち味を十分に引き出してあげることができるでしょう。
藤岡:ONEとONE-Sの乗り味での違いは、フォークの差異によるフロント周りのフィーリングにあります。ONEはフォークからステム、ハンドルまで一体となった構造のために、ヘッド部分が硬く、そのおかげでコーナーは鋭く切り込んでいけるんです。少々ピーキーとも言えるレーシングバイクらしい味付けのハンドリングですね。
若生:そうですね。反対にONE-Sはオーソドックスな作りでハンドリングもニュートラル。ヘッドの硬さが和らいだ分、乗り心地もソフトになっているので、長距離を走るならONE-Sの方が体に優しいかなと感じました。フレームは同一でありバイクの走らせ方は共通していますが、乗った時のフィーリングは全く別のものになっていますね。
藤岡:全体を通してどちらも高い完成度だと思います。巡航性能や反応性は高く、ハイレベルなレースでも十分使えるフレームスペックを備えているので、合わせるホイールを変えれば様々なシーンで活躍するでしょう。個人的にはONEの専用ハンドルが軽くて、握りやすくて、それでいてすっきりとしたルックスが気に入りました。
若生:特殊な造形をしたフレームですが、見た目ほどクセのある乗り味ではないので、普通のエアロフレームとして誰にでも扱うことができるバイクです。まだ入ってきたばかりのブランドですから他の人とも差別化できますし、所有欲は大いに満たされますよね。カラーリングも美しく仕上げられていますし、レースに出ずとも十分楽しめるフレームです。
独創的なダウンチューブが見もの ファクターが考えるエアロロードの理想形
F1等の超高速域で争うモータースポーツをデザインしてきたエンジニアが、自転車で空力を突き詰めた時に行き着いた”1つ”の答えが、この”ONE/ONE-S”。エアロロードの終着点ともいえる形状を獲得したと言っても過言ではないスペシャルなエアロロードである。
基本的なフレームデザインは前身である「Vis Vires」を踏襲。その特徴的なダウンチューブはヘッド側から二股に別れ、BB上まで割りが入れられた「Twin Vane」デザインを採用している。この溝によって空気を後方へとスムーズに流すことで、走行時にダウンチューブにぶつかる空気が乱流となるのを防ぎ、抗力を低減させることで空力性能を高めている。
この双胴ダウンチューブ形状により、伝統的な丸型のチューブに比べ約23倍もの空力性能を生み出しており、実際のテストにおいては通常の非分割ダウンチューブとの比較で40km/hにおいて1秒短縮という空力効率を手に入れている。
更にONEはOTIS(ONE Total Integration System)と呼ばれる専用設計を採用。エアロヒンジ仕様のフロントフォークと、ケーブル類を内装するステム一体型専用ハンドルを用いることで、前方投影面積を小さくし空力性能を高めている。
このOTISフォークはヘッドチューブ上部まで一体成型とされ、ヘッドの上下で固定されるデュアルクランプと相まって高い剛性を生み出している。複雑な造形ながら安定したハンドリングをライダーに提供してくれる設計だ。ONE-Sに搭載されたShankフォークはOTISフォークと同等の空力性能を持ちながら、通常のアヘッドタイプであり、市販のハンドルとステムを使用できるため、よりアグレッシブなポジションも可能だ。
細かく見ていけば、内蔵されたシートクランプや、前後ダイレクトマウントを採用したブレーキ、専用のガーミンマウント、ボトルケージ下のDi2ジャンクションマウント(ONEのみ)等、空力向上のための工夫が随所に施されている。電動シフト専用設計であるのも、エアロダイナミクスを追求したからこそだ。
エアロダイナミクスを体現するこのマシンを形作るのは、弾性率の異なる3種類のカーボンだ。特に、最も高弾性の素材にはピッチファイバー系のカーボンを採用。あまりの硬さのために加工難易度が著しく高く、自転車にはほとんど用いられない素材であるが、ファクターは高い技術によって実用化を可能とした。フレームへと織り込まれることでレーシングマシンに必要な高い剛性を持たせることに成功している。
また、Fibersimと呼ばれるコンピュータプログラムにて緻密に設計されたカーボンレイアップに基づき、各レイヤーは個別にカット。最小限の素材を使用し、カーボン層同士の余計な重なりを抑えることでフレームの軽量化を図っている。
完成車でアッセンブルされるホイールは、ファクターのオーナー、ギティス氏がファクトリーを所有するブラックインクの「Fifty Clincher」。50mmハイトのディープリムホイールが付属する妥協のない仕様であり、デンマークブランドであるブラックインクは同郷のセラミックスピードと協力体制にあり、オリジナルのハブ、そしてフレームBBには同社のセラミックベアリングが採用されている。
販売ラインアップはONEがフレームセットとデュラエースDi2完成車の2種類、ONE-SはそこにアルテグラDi2完成車も加わった3種類が用意される。色はそれぞれ共通のカラーリングを施したブラック、ブルーとONEにはターコイズ、ONE-Sにはレッドという3種類が揃う。
ONE/ONE-S インプレッション
藤岡:独特のデザインながら、その見た目に反して良い意味で違和感なくテストできました。ONEもONE-Sもどちらもレーシングバイクらしい味付けがされていますが、真ん中で分かれたダウンチューブ構造のためか踏んだ際に横方向へと逃しが効いている感覚があり、嫌な硬さは全く感じません。乗りやすさに繋がっている部分だと思います。
若生:そうですね。手で持った時の車体の軽さから、パリッとした乗り味を想像したのですが、その形状のおかげでしっとりとマイルドな走り心地に味付けされていると感じました。しかし、基本的な性能はエアロフレームそのものです。スピードを乗せていくとバイク自体がスッと前に進んでくれる感覚が味わえますね。奇抜な見た目ですが、これはこれで正解と思わせる完成度の高さを感じました。
藤岡:漕ぎ方で言えば、真上からガンガンとトルクをかけるのではなく、どのギアでも全体的にトルクをかけてやって、丸く回すようなペダリングが合っていると感じました。無理やり踏んでいくような漕ぎ方をしてしまうと、BB付近で力が逃げてしまう。キレイなペダリングが求められるかもしれませんが、スピードの乗りは非常に良いので、アベレージスピードの高いレース等でも十分に使っていけると思います。
若生:フレーム全体でしなる動きがあるのか、踏んだ時のウィップは大きく感じるところです。逆に言えばその感覚やタイミングが掴めないと、ペダリングと連動せず進まないと感じてしまうかもしれませんね。シチュエーションを問わず、まずは十分に練習を重ねてバイクの性格を理解できれば、よりその持ち味を十分に引き出してあげることができるでしょう。
藤岡:ONEとONE-Sの乗り味での違いは、フォークの差異によるフロント周りのフィーリングにあります。ONEはフォークからステム、ハンドルまで一体となった構造のために、ヘッド部分が硬く、そのおかげでコーナーは鋭く切り込んでいけるんです。少々ピーキーとも言えるレーシングバイクらしい味付けのハンドリングですね。
若生:そうですね。反対にONE-Sはオーソドックスな作りでハンドリングもニュートラル。ヘッドの硬さが和らいだ分、乗り心地もソフトになっているので、長距離を走るならONE-Sの方が体に優しいかなと感じました。フレームは同一でありバイクの走らせ方は共通していますが、乗った時のフィーリングは全く別のものになっていますね。
藤岡:全体を通してどちらも高い完成度だと思います。巡航性能や反応性は高く、ハイレベルなレースでも十分使えるフレームスペックを備えているので、合わせるホイールを変えれば様々なシーンで活躍するでしょう。個人的にはONEの専用ハンドルが軽くて、握りやすくて、それでいてすっきりとしたルックスが気に入りました。
若生:特殊な造形をしたフレームですが、見た目ほどクセのある乗り味ではないので、普通のエアロフレームとして誰にでも扱うことができるバイクです。まだ入ってきたばかりのブランドですから他の人とも差別化できますし、所有欲は大いに満たされますよね。カラーリングも美しく仕上げられていますし、レースに出ずとも十分楽しめるフレームです。
提供:トライスポーツ 制作:シクロワイアード編集部