2016/08/01(月) - 14:41
インプレッションページ前編では、貴重なアルミレーシングバイクとして注目を集めるTCR SLRをフィーチャーする。フルモデルチェンジしたカーボンTCRのコンセプトを受け継ぎ、「最高の走行効率」を求めたバイクの真価を問う。
今回の新型SLRまでに続く、軽量アルミロードがジャイアントのラインナップに加わったのは2011年のこと。ジャイアント独自のヘッド規格「OVERDRIVE2」を投入したTCR SLは、翌年にエアロシートチューブを獲得するなどマイナーチェンジ。その間にも湘南ベルマーレの選手たちが駆り、ツアー・オブ・ジャパンや、国内ロードの最高峰であるJプロツアーなどを舞台にアルミロードの可能性を示してみせた。
2014年には最軽量のアルミニウム「ALUXX SLR」が新投入されたことでフルモデルチェンジが行われ、TCR SLRと名を変え、より軽量に、よりエアロに進化を遂げることとなる。そしてこの度、昨年刷新されたカーボンTCRのコンセプト「トータル・レースバイク」を受け継ぎ、各性能を引き上げたことで更なるオールラウンドレーシングバイクへの飛躍を見たのである。
新型TCR SLRに求められたのは「最高の走行効率」。つまりは重量を削ぎ落とし、剛性を上げるという極めてシンプルな課題が課されることに。
素材は耐衝撃性が不可欠なシクロクロスバイクにも使われるなど、既に実績を得たALUXX SLRを継続。前モデルはエアロを意識したデザインだったものの、ヘッドチューブ+ダウンチューブ接合面のワイド化や、非常に細く絞り込んだトップチューブ後端など、メリハリの効いたデザインによって、よりカーボンTCRに近しいオールラウンダーへと生まれ変わった。
ペダリングパワーを受け止めるBB周辺も、26%ものダウンチューブの拡大を行ったことでペダリング剛性は前モデル比で+10%向上(新型62.89N/mm、旧型57.24N/mm)を達成。前述したヘッドチューブ付近も内装ケーブルの取り入れ口を左側に一本化することで軽量化と強度の向上に貢献している。
もちろん独自のOverDrive2(上1-1/4、下1-1/2インチ)コラムやPOWERCORE BBなど、ジャイアントの持てるテクノロジーがフル投入されており、一方で重量はフレーム960g(Mサイズ、未塗装)と旧型から90g削減し、ジャイアント史上最軽量のアルミフレームに。結果的にフレーム剛性の+18%向上(新型133.51N/mm、旧型112.93N/mm)と合わせ、ターゲットとしていた重量剛性比は+20%もの向上に成功したのである。
剛性強化に伴う乗り心地の懸念については、従来型TCRで採用されていたエアロ形状の「Vector」と、DEFYやTCXに優れた衝撃吸収性をもたらした「D-Fuse」をミックスした「Variant」シートポストを採用することで解決。合わせてシートクランプは内装化され、チューブ接合部の形状が一新されたため、各種性能もブラッシュアップしているという。
フロントフォークはシェイプアップされたADVENCED PRO同等品を導入することで上質な走りを演出すると共に、旧型比で30gを削ぎ落としている。
加えてジオメトリーにも若干の修正が行われ、カーボンTCRと同じ数値となっている。これは昨年のTCRモデルチェンジの再にジャイアント・アルペシンの選手の声を活かしたものであり、ヘッドチューブは各サイズ共に2mmほど短くなり、SサイズとMサイズはBBドロップが2.5mm上げられている。落差を大きく取ることが可能となり、よりレーサーとしての本質を磨き上げている。
ブラッシュアップを遂げた新型TCR SLRだが、今回のテストバイクであるSLR 1は昨年と比較して1万円のプライスダウンが行われ、結果的に大きなコストパフォーマンス向上にも成功している。ハイエンドのカーボンバイクを渡り合える25万円のアルテグラ完成車の価値は全く小さくない。
このSLRの初代に当たるSLもかなり完成度が高く、カーボンに近い乗り味だと感じていたのですが、SLRは段違いでレベルが引き上げられていると感じました。これならば下手なカーボンバイクよりお勧めできる。アルミバイクの進化ぶりに心底驚かされました。
早坂:先日、ショップにあるカーボンTCR(現行モデル)の試乗車を試したのですが、それと比べても体感的な性能差はほぼ皆無だと思います。もちろんカーボンとアルミという走りの質の違いはあれど、完成度はとても高いですね。ハンドリングもクイックですし、ダンシングも軽快。なのに踏めばガツっと受け止めるBB剛性。まさしくレーサーバイクと言い切れる素質を感じます。
山根:このフィーリングはアンダー1kgというフレームの軽さから生み出されているものでしょう。従来の安価なアルミフレームと比べればその差は歴然。テスト中に路面の段差を越えようと車体を浮かせたのですが、思ったよりも高さが出てびっくりです(笑)。それに軽さだけではなく、その他全ての性能がバランス良く合わさっていて、しかもレベルが高い。
早坂:振動吸収性の高さは特に感じませんでした?一般的なアルミフレームと比べたら凄く乗りやすいと思いました。25cのタイヤと幅広リムの組み合わせもナチュラルなフィーリングでしたし、ホイール自体の軽やかさも十分でした。細身のフォークも根本はOVERDRIVE2ですから、ヘッド周りの剛性はガッチリ。こうなってくるとネガティブな部分を探すのが難しい。ロングライドにも問題無く使えるでしょうね。
山根:確かに乗り心地は良かったですよ。もちろんロングライド向けカーボンバイクのようにはいきませんが、レース機材としては十分な衝撃吸収性を持っています。フレームが900g台と軽いので、組み合わせるパーツ次第では7kgを軽く切ってしまうでしょう。初期投資は高いかもしれないけれど、頑張って最初の一台にしてしまえば後々のフレーム買い替えコストが抑えらえるかもしれません。
早坂:今回はアルテグラ完成車のSLR1をテストしましたが、コストパフォーマンスで見れば105で組まれた16万5千円のSLR2がピカイチですね。SLR1が23万円であることを踏まえれば、初めてのロードバイクとしてSLR2を手に入れて、後々デュラエースに載せ替える流れが良いのかもしれません。
山根:そう。デュラエースなど上級コンポーネントを付けても全く見劣りしないのがTCR SLRの良いところ。カーボンモデルを乗り継いでいて、次のバイクに悩んでいる方がこれを選んだら、カーボンモデルとは違ったシャキッとしたフィーリングが新鮮に映るかも。しかも性能はまったく引けを取りませんし、仲間からも、おっ?と思ってもらえるでしょう(笑)。
ルックス的にも、他では無いほど絞り込まれたトップチューブ、かなり細めのシートステーなど大胆なフレームデザインが目を引きますよ。このデザインがメリハリある走りに繋がっているのかなと思います。性能的にはJプロツアーのトップ選手が使っても何ら不満は出ないはずです。本来私はカーボンの乗り味がは好きなのですが、こうも高性能だとその説得力も少し揺らいでしまいます(笑)。
早坂:本当に剛性と振動吸収性が高いレベルに両立できていることに驚かされました。今までカーボンでしか成し得なかったことが、アルミで表現できるようになってきていると感じます。カーボンバイクの走りに慣れた身体に、新たな発見をもたらしてくれる一台でした。
メリハリあるデザインで獲得した、最高の走行効率
今回の新型SLRまでに続く、軽量アルミロードがジャイアントのラインナップに加わったのは2011年のこと。ジャイアント独自のヘッド規格「OVERDRIVE2」を投入したTCR SLは、翌年にエアロシートチューブを獲得するなどマイナーチェンジ。その間にも湘南ベルマーレの選手たちが駆り、ツアー・オブ・ジャパンや、国内ロードの最高峰であるJプロツアーなどを舞台にアルミロードの可能性を示してみせた。
2014年には最軽量のアルミニウム「ALUXX SLR」が新投入されたことでフルモデルチェンジが行われ、TCR SLRと名を変え、より軽量に、よりエアロに進化を遂げることとなる。そしてこの度、昨年刷新されたカーボンTCRのコンセプト「トータル・レースバイク」を受け継ぎ、各性能を引き上げたことで更なるオールラウンドレーシングバイクへの飛躍を見たのである。
新型TCR SLRに求められたのは「最高の走行効率」。つまりは重量を削ぎ落とし、剛性を上げるという極めてシンプルな課題が課されることに。
素材は耐衝撃性が不可欠なシクロクロスバイクにも使われるなど、既に実績を得たALUXX SLRを継続。前モデルはエアロを意識したデザインだったものの、ヘッドチューブ+ダウンチューブ接合面のワイド化や、非常に細く絞り込んだトップチューブ後端など、メリハリの効いたデザインによって、よりカーボンTCRに近しいオールラウンダーへと生まれ変わった。
ペダリングパワーを受け止めるBB周辺も、26%ものダウンチューブの拡大を行ったことでペダリング剛性は前モデル比で+10%向上(新型62.89N/mm、旧型57.24N/mm)を達成。前述したヘッドチューブ付近も内装ケーブルの取り入れ口を左側に一本化することで軽量化と強度の向上に貢献している。
もちろん独自のOverDrive2(上1-1/4、下1-1/2インチ)コラムやPOWERCORE BBなど、ジャイアントの持てるテクノロジーがフル投入されており、一方で重量はフレーム960g(Mサイズ、未塗装)と旧型から90g削減し、ジャイアント史上最軽量のアルミフレームに。結果的にフレーム剛性の+18%向上(新型133.51N/mm、旧型112.93N/mm)と合わせ、ターゲットとしていた重量剛性比は+20%もの向上に成功したのである。
剛性強化に伴う乗り心地の懸念については、従来型TCRで採用されていたエアロ形状の「Vector」と、DEFYやTCXに優れた衝撃吸収性をもたらした「D-Fuse」をミックスした「Variant」シートポストを採用することで解決。合わせてシートクランプは内装化され、チューブ接合部の形状が一新されたため、各種性能もブラッシュアップしているという。
フロントフォークはシェイプアップされたADVENCED PRO同等品を導入することで上質な走りを演出すると共に、旧型比で30gを削ぎ落としている。
加えてジオメトリーにも若干の修正が行われ、カーボンTCRと同じ数値となっている。これは昨年のTCRモデルチェンジの再にジャイアント・アルペシンの選手の声を活かしたものであり、ヘッドチューブは各サイズ共に2mmほど短くなり、SサイズとMサイズはBBドロップが2.5mm上げられている。落差を大きく取ることが可能となり、よりレーサーとしての本質を磨き上げている。
ブラッシュアップを遂げた新型TCR SLRだが、今回のテストバイクであるSLR 1は昨年と比較して1万円のプライスダウンが行われ、結果的に大きなコストパフォーマンス向上にも成功している。ハイエンドのカーボンバイクを渡り合える25万円のアルテグラ完成車の価値は全く小さくない。
TCR SLR 1インプレッション
「アルミバイクの進化ぶりに心底驚かされた」
山根:ジャイアントのアルミレーシングバイクは、選手としてカーボンとアルミのハイブリッドだったTCRアライアンスや、2011年にデビューしたTCR SLなどに乗り、ツール・ド・北海道やツアー・オブ・ジャパンを走りました。このSLRの初代に当たるSLもかなり完成度が高く、カーボンに近い乗り味だと感じていたのですが、SLRは段違いでレベルが引き上げられていると感じました。これならば下手なカーボンバイクよりお勧めできる。アルミバイクの進化ぶりに心底驚かされました。
早坂:先日、ショップにあるカーボンTCR(現行モデル)の試乗車を試したのですが、それと比べても体感的な性能差はほぼ皆無だと思います。もちろんカーボンとアルミという走りの質の違いはあれど、完成度はとても高いですね。ハンドリングもクイックですし、ダンシングも軽快。なのに踏めばガツっと受け止めるBB剛性。まさしくレーサーバイクと言い切れる素質を感じます。
山根:このフィーリングはアンダー1kgというフレームの軽さから生み出されているものでしょう。従来の安価なアルミフレームと比べればその差は歴然。テスト中に路面の段差を越えようと車体を浮かせたのですが、思ったよりも高さが出てびっくりです(笑)。それに軽さだけではなく、その他全ての性能がバランス良く合わさっていて、しかもレベルが高い。
早坂:振動吸収性の高さは特に感じませんでした?一般的なアルミフレームと比べたら凄く乗りやすいと思いました。25cのタイヤと幅広リムの組み合わせもナチュラルなフィーリングでしたし、ホイール自体の軽やかさも十分でした。細身のフォークも根本はOVERDRIVE2ですから、ヘッド周りの剛性はガッチリ。こうなってくるとネガティブな部分を探すのが難しい。ロングライドにも問題無く使えるでしょうね。
「振動吸収性が非常に高い。カーボンモデルとの性能差は無い」
山根:確かに乗り心地は良かったですよ。もちろんロングライド向けカーボンバイクのようにはいきませんが、レース機材としては十分な衝撃吸収性を持っています。フレームが900g台と軽いので、組み合わせるパーツ次第では7kgを軽く切ってしまうでしょう。初期投資は高いかもしれないけれど、頑張って最初の一台にしてしまえば後々のフレーム買い替えコストが抑えらえるかもしれません。
早坂:今回はアルテグラ完成車のSLR1をテストしましたが、コストパフォーマンスで見れば105で組まれた16万5千円のSLR2がピカイチですね。SLR1が23万円であることを踏まえれば、初めてのロードバイクとしてSLR2を手に入れて、後々デュラエースに載せ替える流れが良いのかもしれません。
山根:そう。デュラエースなど上級コンポーネントを付けても全く見劣りしないのがTCR SLRの良いところ。カーボンモデルを乗り継いでいて、次のバイクに悩んでいる方がこれを選んだら、カーボンモデルとは違ったシャキッとしたフィーリングが新鮮に映るかも。しかも性能はまったく引けを取りませんし、仲間からも、おっ?と思ってもらえるでしょう(笑)。
ルックス的にも、他では無いほど絞り込まれたトップチューブ、かなり細めのシートステーなど大胆なフレームデザインが目を引きますよ。このデザインがメリハリある走りに繋がっているのかなと思います。性能的にはJプロツアーのトップ選手が使っても何ら不満は出ないはずです。本来私はカーボンの乗り味がは好きなのですが、こうも高性能だとその説得力も少し揺らいでしまいます(笑)。
早坂:本当に剛性と振動吸収性が高いレベルに両立できていることに驚かされました。今までカーボンでしか成し得なかったことが、アルミで表現できるようになってきていると感じます。カーボンバイクの走りに慣れた身体に、新たな発見をもたらしてくれる一台でした。
提供:ジャイアント・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部