2016/07/29(金) - 20:52
注目が集まるスラムのワイヤレス電動コンポーネントRED eTap。今回は各パーツにフォーカスし、その機能や操作方法を分かりやすく説明していこう。
機械式のフォルムを受け継ぐブラケット
正面から見ると八の字に開く。シフトケーブルが無いためハンドル回りは非常にすっきりしている。
握りやすい形状のブラケット
RED eTapが他社の電動コンポーネントと大きく異なる点は2つある。もちろん一つ目は、ケーブルを廃した無線式コンポーネントであること。そしてもう一つは、右レバーがリア変速、左レバーがフロント変速を司っていたこれまでのコンポーネントとは全く異なるインターフェースを持つことである。
そう書くとなにかとても複雑な操作方法なのかと思われる方もいるかもしれないが、RED eTapの操作方法は極めて簡単。左レバーを押すとリアが軽くなり、右レバーを押すとリアが重くなる。両方のレバーを同時に押すとフロントディレイラーが動く。
リアディレイラーには制御を司るCPUが入っている
スリムな造りのフロントディレイラー
左のレバーを押すとロー側へと変速する
右のレバーを押すとトップ側に移動する
左右のブラケットそれぞれにシフトレバーが1本ずつ用意されていた機械式のREDのデザインはそのままに、電動コンポーネントへと落としこまれたインターフェースとなっているのだ。車のパドルシフトのようなものだと思えば馴染みやすいのではないだろうか。
多段変速も可能となっており、レバーを押している間は変速動作を続けていくこととなる。多段変速中に反対側のレバーを押すと、フロントが同時に変速するため、フロントとリアの同時変速も可能。フロントを重くしながらリアを軽くする、あるいはその逆の動きもストレスなく行うことができる。
ガーミンのEDGE1000Jおよび520Jと連携機能を備える
ブレーキフードを外すと、レバーストローク調整用のねじが現れる。
ブレーキフードを外すと、レバーストローク調整用のねじが現れる。これは最も遠い状態
一番レバーを近くした状態。レバーの間隔は4段階で調節できる
また、ガーミンのEDGE520Jおよび1000Jとの連携機能も備えており現在のシフト位置をモニタに表示することができる。この機能を使えば、フロントがどちらに入っているか分からなくなる心配も少なくなるだろう。
ブレーキレバーは機械式から形状を受け継いでおり、握りやすいエルゴノミックなデザイン。ブレーキレバーの間隔は4段階で調整することができるので、手の小さな方でも無理なくレバーに指が届くよう調節できることも、嬉しいポイントだろう。
BLIPSを押したイメージ ハンドルの前側や後側に設置することもできる
BLIPS用のポートは2つ備えられる また、電動コンポーネントならではの利点である複数個所での変速操作にももちろん対応している。
「BLIPS」(ブリップス)と呼ばれるボタンを取り付けることで、様々な場所に変速スイッチを増設することに対応している。BLIPSの取り付け方法は至って簡単。ブラケットフードを外すと、内側に現れる専用のポートに端子を差しこむだけ。
片側のブラケットに二つのポートが用意されているため、シフトレバーを含めて最大3ポジションでの変速を可能となる。BLIPSはバーテープなどに巻きこんで設置するため、設置する場所や方向の自由度が高く、自分が最も操作しやすい位置や角度にセッティングすることが可能。
また、エクステンションバーの先端に設置するバーエンドタイプも用意されている。エアロブレーキレバーの横に通常のBLIPSボタンを設置し、エクステンションにはバーエンドタイプを使用することで、トライアスロンやタイムトライアルバイクでの使用も容易だ。
左右のレバーと前後ディレイラーのみでペアリングは完了する
シフトレバーと前後ディレイラーは「eTapプロトコル」と呼ばれる帯域を割り当てられた128bitの暗号化通信によって繋がる。携帯やwifiなど様々な電波が飛び交う都市部や高圧電線の下といった通信に悪影響を及ぼしやすい場所でも確実に信号を送受信することができる。
また、集団の中で複数のRED eTapを装着したバイクが走っていても混信する心配はない。あらかじめ、シフトレバーと前後ディレイラーはペアリングされることで、お互い以外の信号を受け付けないように設定されるのだ。ペアリングの方法も簡単で、慣れてしまえば30秒もかからない簡単な作業だ。
まず、リアディレイラーのファンクションボタンをライトが点滅するまで長押しする
フロントディレイラーのファンクションスイッチの位置はここ
まずはじめに、リアディレイラーのファンクションボタンを緑のLEDが点滅するまで長押しすることでペアリングモードへと移行する。RED eTapの心臓部ともいえるコンピューターはリアディレイラーの中に納められているため、ペアリングの起点もリアディレイラーになるのだ。
その後は、左右のシフトレバーおよびフロントディレイラーのファンクションボタンを長押ししていくだけ。ペアリングに成功すると、緑色のLEDがチチチッと素早く点滅するため、確認も容易となっている。シフトレバーとフロントディレイラーのペアリングはどの順序で行っても問題ない。
ディレイラーのバッテリーはとても付け外ししやすいが、ホールド力は抜群
フロントディレイラーもバッテリーは簡単に外すことができる
バッテリーは前後共通となるため、充電器も一種類のみ。
集中的にバッテリーを運用する方式に対して、個別に電源を用意するこの方式は連続使用時間という観点からすると不利に働いてしまう。個別のバッテリーに端子や制御チップを組み込む必要があるため、同じ重量にしても電池容量は少なくなってしまうからだろう。
しかし、冗長性という観点からすると、この方式は逆にメリットとなる。電源を分散していること、そして前後ディレイラーの電池を共通としていることによって、前後ディレイラー共に動かなくなることがほとんどなくなるはずだからだ。
ちなみに、バッテリーの容量としてはリアディレイラーは最長60時間、フロントディレイラーは最長90時間、シフターは最長24ヵ月間駆動するようになっている。電池残量はそれぞれについているLEDインジケーターで確認できるようになっている。それぞれ満充電状態から25%までは緑点灯、25%から10%では赤点灯、10%以下になると赤点滅となる。
シフトレバーの電池交換には+ドライバーが必要だ
シフトレバー分解図
バッテリー単体では24gと軽くコンパクトなため、予備を携行しやすいだろう 前述したとおり、リアディレイラーに心臓部となる制御用のCPUが搭載されている関係上、リアディレイラーの電源が失われると、システムが動かなくなってしまう。しかし、その時はフロントディレイラーの電池をリアへと付け替えることで、リアディレイラーが動くようになる。ファンクションボタンによって、フロントをインナーに入れておけば、出先で電池が切れたとしても難なく帰ってくることができるはず。
また、電池が小さいということも安心感につながるポイント。背中のポケットやツールケースなどに入れておいても全くストレスにならないほどの大きさなので、常に予備バッテリーを常備しておくことも苦にならないだろう。ライドごとに充電するというのも、スマホを充電するのと同じルーチンだと思えば、充電を忘れていて不意に電池が切れてしまうという事態も、むしろ少なくなるのではないだろうか。
無線通信の電波を受信する関係上、動いていなくても電力を常に消費する。その待機電力を極力減らすべく、スラムはREDeTapに加速度センサーを装備した。自転車が止まっている間はスリープ状態に入ることで、無駄な電力消費を抑えているのだ。スリープモードには信号待ち程度の時間でも切り替わるというが、少しでもディレイラーが動けば再びアクティブなモードに戻るという。
ただ、一点注意してほしいのが、車などでの輸送時。リアディレイラーの振動に反応してアクティブなモードとなるため、移動中はバッテリーを外し、ディレイラーに端子保護キャップをつけた状態で輸送しないと電池が消費されてしまうという。取り扱いにあたって、もっとも注意するべきはこのポイントだろう。
逆に言えば、他の点についてはほとんど特別な取り扱いを必要としないということ。ワイヤレス化という大きな進歩を果たしたにかかわらず、ストレスフリーな使い心地が特徴的なコンポーネントとして、REDeTapは高い完成度を有している。
機械式から一新された変速方式
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RED eTapが他社の電動コンポーネントと大きく異なる点は2つある。もちろん一つ目は、ケーブルを廃した無線式コンポーネントであること。そしてもう一つは、右レバーがリア変速、左レバーがフロント変速を司っていたこれまでのコンポーネントとは全く異なるインターフェースを持つことである。
そう書くとなにかとても複雑な操作方法なのかと思われる方もいるかもしれないが、RED eTapの操作方法は極めて簡単。左レバーを押すとリアが軽くなり、右レバーを押すとリアが重くなる。両方のレバーを同時に押すとフロントディレイラーが動く。
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左右のブラケットそれぞれにシフトレバーが1本ずつ用意されていた機械式のREDのデザインはそのままに、電動コンポーネントへと落としこまれたインターフェースとなっているのだ。車のパドルシフトのようなものだと思えば馴染みやすいのではないだろうか。
多段変速も可能となっており、レバーを押している間は変速動作を続けていくこととなる。多段変速中に反対側のレバーを押すと、フロントが同時に変速するため、フロントとリアの同時変速も可能。フロントを重くしながらリアを軽くする、あるいはその逆の動きもストレスなく行うことができる。
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また、ガーミンのEDGE520Jおよび1000Jとの連携機能も備えており現在のシフト位置をモニタに表示することができる。この機能を使えば、フロントがどちらに入っているか分からなくなる心配も少なくなるだろう。
ブレーキレバーは機械式から形状を受け継いでおり、握りやすいエルゴノミックなデザイン。ブレーキレバーの間隔は4段階で調整することができるので、手の小さな方でも無理なくレバーに指が届くよう調節できることも、嬉しいポイントだろう。
変速ボタンを増設できるBLIPS
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「BLIPS」(ブリップス)と呼ばれるボタンを取り付けることで、様々な場所に変速スイッチを増設することに対応している。BLIPSの取り付け方法は至って簡単。ブラケットフードを外すと、内側に現れる専用のポートに端子を差しこむだけ。
片側のブラケットに二つのポートが用意されているため、シフトレバーを含めて最大3ポジションでの変速を可能となる。BLIPSはバーテープなどに巻きこんで設置するため、設置する場所や方向の自由度が高く、自分が最も操作しやすい位置や角度にセッティングすることが可能。
また、エクステンションバーの先端に設置するバーエンドタイプも用意されている。エアロブレーキレバーの横に通常のBLIPSボタンを設置し、エクステンションにはバーエンドタイプを使用することで、トライアスロンやタイムトライアルバイクでの使用も容易だ。
30秒で完了 ストレスフリーなペアリング
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シフトレバーと前後ディレイラーは「eTapプロトコル」と呼ばれる帯域を割り当てられた128bitの暗号化通信によって繋がる。携帯やwifiなど様々な電波が飛び交う都市部や高圧電線の下といった通信に悪影響を及ぼしやすい場所でも確実に信号を送受信することができる。
また、集団の中で複数のRED eTapを装着したバイクが走っていても混信する心配はない。あらかじめ、シフトレバーと前後ディレイラーはペアリングされることで、お互い以外の信号を受け付けないように設定されるのだ。ペアリングの方法も簡単で、慣れてしまえば30秒もかからない簡単な作業だ。
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まずはじめに、リアディレイラーのファンクションボタンを緑のLEDが点滅するまで長押しすることでペアリングモードへと移行する。RED eTapの心臓部ともいえるコンピューターはリアディレイラーの中に納められているため、ペアリングの起点もリアディレイラーになるのだ。
その後は、左右のシフトレバーおよびフロントディレイラーのファンクションボタンを長押ししていくだけ。ペアリングに成功すると、緑色のLEDがチチチッと素早く点滅するため、確認も容易となっている。シフトレバーとフロントディレイラーのペアリングはどの順序で行っても問題ない。
バッテリー切れに強い前後独立駆動方式
eTapがユニークなポイントは他にもある。その一つがバッテリーが前後ディレイラーそれぞれに装着されているということ。そして、そのバッテリーが前後で共通とされていることだ。他の電動コンポーネントは一つの大容量バッテリーからそれぞれシフトレバー、前後ディレイラーに給電される形式となっているが、完全な無線化を果たしたeTapはそれぞれに電源を備えている。
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集中的にバッテリーを運用する方式に対して、個別に電源を用意するこの方式は連続使用時間という観点からすると不利に働いてしまう。個別のバッテリーに端子や制御チップを組み込む必要があるため、同じ重量にしても電池容量は少なくなってしまうからだろう。
しかし、冗長性という観点からすると、この方式は逆にメリットとなる。電源を分散していること、そして前後ディレイラーの電池を共通としていることによって、前後ディレイラー共に動かなくなることがほとんどなくなるはずだからだ。
ちなみに、バッテリーの容量としてはリアディレイラーは最長60時間、フロントディレイラーは最長90時間、シフターは最長24ヵ月間駆動するようになっている。電池残量はそれぞれについているLEDインジケーターで確認できるようになっている。それぞれ満充電状態から25%までは緑点灯、25%から10%では赤点灯、10%以下になると赤点滅となる。
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また、電池が小さいということも安心感につながるポイント。背中のポケットやツールケースなどに入れておいても全くストレスにならないほどの大きさなので、常に予備バッテリーを常備しておくことも苦にならないだろう。ライドごとに充電するというのも、スマホを充電するのと同じルーチンだと思えば、充電を忘れていて不意に電池が切れてしまうという事態も、むしろ少なくなるのではないだろうか。
無線通信の電波を受信する関係上、動いていなくても電力を常に消費する。その待機電力を極力減らすべく、スラムはREDeTapに加速度センサーを装備した。自転車が止まっている間はスリープ状態に入ることで、無駄な電力消費を抑えているのだ。スリープモードには信号待ち程度の時間でも切り替わるというが、少しでもディレイラーが動けば再びアクティブなモードに戻るという。
ただ、一点注意してほしいのが、車などでの輸送時。リアディレイラーの振動に反応してアクティブなモードとなるため、移動中はバッテリーを外し、ディレイラーに端子保護キャップをつけた状態で輸送しないと電池が消費されてしまうという。取り扱いにあたって、もっとも注意するべきはこのポイントだろう。
逆に言えば、他の点についてはほとんど特別な取り扱いを必要としないということ。ワイヤレス化という大きな進歩を果たしたにかかわらず、ストレスフリーな使い心地が特徴的なコンポーネントとして、REDeTapは高い完成度を有している。
提供:インターマックス 編集:シクロワイアード