2016/07/22(金) - 17:40
ここ数年で急速に普及してきた電動コンポーネント。そこにアメリカのスラムが世界初となるフル無線電動コンポーネント「RED eTap」を投入してきた。世界中から注目を集めるRED eTapの全貌に迫るスペシャルコンテンツをお届けしよう。
2005年にロードレーサー用コンポーネントへの本格参入を果たしたスラム。「ダブルタップ」と名付けられた独自のインターフェースによって、瞬く間にシェアを獲得し、日本のシマノ、イタリアのカンパニョーロに並ぶコンポーネントサプライヤーとしてその地位を確かなものとしたアメリカンブランドだ。
2007年に発表された世界最軽量のコンポーネント「RED」は2009年、2010年ではアルベルト・コンタドールのマイヨジョーヌ獲得に貢献。2014年のブエルタ・ア・エスパーニャでも総合優勝を始め、数々のビッグレースでの勝利を支えてきた。
2016年シーズンはAG2Rラモンディアールとカチューシャという2つのワールドチーム、そして発足したばかりの女子チームキャニオン・スラムレーシングへとコンポーネントを供給。ジロ・デ・イタリアで活躍したイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)やドーフィネのクイーンステージで2位に入ったロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)らの走りをサポートしている。
このように、世界のトップレベルのレースの現場で多くの実績を積み上げてきたスラム。フロントディレイラーが首を振りながら動作することでトリム操作を不要とした「YAWテクノロジー」や油圧リムブレーキなどアメリカ企業らしいイノベーションに満ちた様々な技術を生み出し、独自の路線を歩んできた。
そんなスラムが満を持して発表した同社初の電動コンポーネントが「RED eTap」である。長らく電動コンポーネントをリリースしてこなかったスラムが参入することで、三大コンポーネントメーカー全てが電動コンポーネントをそのラインアップに揃えることとなった。
2009年にシマノがデュラエースDi2を発表して以来、特にプロレースの世界では電動コンポ―ネントへのスイッチが進んできた。賛否両論があったものの、カンパニョーロがEPSを開発したことで電動化の流れは決定的なものとなり、プロトンはほとんどが電動コンポーネントを搭載したバイクで埋め尽くされることとなった。
最後発となったスラムだが、先行するライバルたちに追い付き追い越すべく、一つの大きな特徴を「RED eTap」に与えた。シフトケーブルを完全に廃止し、世界で初めて前後変速ともにワイヤレス化を果たしたコンポーネントとして「RED eTap」をデビューさせたのだ。
ワイヤレス電動コンポーネントといえば、1999年にマヴィックが世に問うた「メカトロニック」を思い出し、混線に悩まされ、信頼性に欠けるというイメージを持たれる方もいるかもしれない。しかし、その心配は杞憂となるだろう。
携帯電話やwifiなど、多くの電波が飛び交う中で確実な通信を実現すべく、RED eTapは128ビットの暗号化通信を用いると同時に「eTapプロトコル」という専用の帯域を確保することで、混信を防止。多数の自転車が密集する集団の中でも確実な変速を実現しているのだ。
肝心の変速性能についても、疑問を差し挟む余地は少ないだろう。RED eTapは既にワールドツアーで実戦デビューしており、なんとなれば既に勝利を経験してすらいるのだから。ツアー・オブ・カタールやツアー・オブ・カリフォルニアにてアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)はRED eTapを装着したバイクで肘と肘がぶつかり合うようなスプリントを制し、今季既に8勝を挙げている。
今季の勝利を支えたeTapについて、クリストフは語る。「eTapのシフト動作はとても正確。石畳のレースや集団スプリントで限界まで追い込んでいる時でも、いつも完璧に変速してくれる。左右独立した操作方式も、とても良いね。これまで使ってきたコンポーネントの中でも一番しっくりきた。eTapはメカトラブルにも強いのが嬉しいね。多くのトラブルが起きるクラシックシーズンでもノートラブルだった」
強大な出力を発揮するトップスプリンターのもがきの中でも、確実な変速を約束するRED eTap。ワイヤレスであることから想起されるようなトラブルとは縁遠い、高い完成度を誇るプロダクトであることが窺い知れよう。
「これまで2シーズンに渡ってeTapを使用しているが、これといって目立ったトラブルは未だ経験していないんだ。確かに何回か小さな問題が起こったことはあったけれど、正直トラブルが起こる頻度はとても低いコンポーネントだね。機械式や他の電動コンポーネントと比べても、とても信頼性が高いと言えるだろう。毎日の洗車で高圧洗浄機を使っている(※)けれど、eTapだからといって特別な防水作業などは必要ないし、現にこれが原因で起きたトラブルはないね。
だから、今回のツールに出場するメンバーは基本的に全員がeTapを使用する。しかし、eTapのRDは最大28Tにしか対応していないから、登りの厳しいステージでは32Tにまで対応している機械式を使うことになる。」とマルク氏。実際、他チームのメカニックと同じように、手際良く高圧洗浄機で洗車を行っていた。特にデリケートな扱いを受けているわけでなく、これまでのコンポーネントの扱いは何一つ変わらない。
気になるバッテリーについても、「レース中に完全にバッテリー切れを起こしたことは一度もないね。スペアバッテリーは全てのサポートカーに積んでいるけれど、出番があったのはバッテリー残量が少なくなった選手からのリクエストで交換した、1〜2回くらいだね。作業自体もとても簡単だから、走りながら対応できる。」とのことだ。
一方、ワイヤレスであることは、整備性にも大きく影響する。特にフレームへのケーブル類の内装化が進む最新のロードバイクにとって、ケーブルを通す作業は最も手間がかかる工程であるはずだ。しかしRED eTapであれば、その手間はゼロとなる。
「eTapにして組み付けはしやすくなった?」と尋ねると、「アッセンブルに関しては最高のコンポーネントだよ。とにかく簡単で、メカニックにとってはパラダイスのようだね(笑)。ケーブルをフレームの中に通す必要がないから、TTバイクは特に楽なんだ。eTapだったら1時間以内で1台を組み上げられるけど、機械式なら1時間以上は必ず掛かってしまう。」と満面の笑顔で答えてくれた。選手からもメカニックからも愛されるRED eTap。現在開催中のツール・ド・フランスでもその存在感を見せてくれるはずだ。
※なおスラムとしては高圧洗浄機の使用は推奨していない
vol.2ではRED eTapの操作方法やペアリング手順などを紹介していきます。
多くのビッグレースで実績を残してきたスラム RED
2005年にロードレーサー用コンポーネントへの本格参入を果たしたスラム。「ダブルタップ」と名付けられた独自のインターフェースによって、瞬く間にシェアを獲得し、日本のシマノ、イタリアのカンパニョーロに並ぶコンポーネントサプライヤーとしてその地位を確かなものとしたアメリカンブランドだ。
2007年に発表された世界最軽量のコンポーネント「RED」は2009年、2010年ではアルベルト・コンタドールのマイヨジョーヌ獲得に貢献。2014年のブエルタ・ア・エスパーニャでも総合優勝を始め、数々のビッグレースでの勝利を支えてきた。
2016年シーズンはAG2Rラモンディアールとカチューシャという2つのワールドチーム、そして発足したばかりの女子チームキャニオン・スラムレーシングへとコンポーネントを供給。ジロ・デ・イタリアで活躍したイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)やドーフィネのクイーンステージで2位に入ったロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)らの走りをサポートしている。
このように、世界のトップレベルのレースの現場で多くの実績を積み上げてきたスラム。フロントディレイラーが首を振りながら動作することでトリム操作を不要とした「YAWテクノロジー」や油圧リムブレーキなどアメリカ企業らしいイノベーションに満ちた様々な技術を生み出し、独自の路線を歩んできた。
そんなスラムが満を持して発表した同社初の電動コンポーネントが「RED eTap」である。長らく電動コンポーネントをリリースしてこなかったスラムが参入することで、三大コンポーネントメーカー全てが電動コンポーネントをそのラインアップに揃えることとなった。
世界初のフルワイヤレス電動コンポーネントとしてデビューしたRED eTap
2009年にシマノがデュラエースDi2を発表して以来、特にプロレースの世界では電動コンポ―ネントへのスイッチが進んできた。賛否両論があったものの、カンパニョーロがEPSを開発したことで電動化の流れは決定的なものとなり、プロトンはほとんどが電動コンポーネントを搭載したバイクで埋め尽くされることとなった。
最後発となったスラムだが、先行するライバルたちに追い付き追い越すべく、一つの大きな特徴を「RED eTap」に与えた。シフトケーブルを完全に廃止し、世界で初めて前後変速ともにワイヤレス化を果たしたコンポーネントとして「RED eTap」をデビューさせたのだ。
ワイヤレス電動コンポーネントといえば、1999年にマヴィックが世に問うた「メカトロニック」を思い出し、混線に悩まされ、信頼性に欠けるというイメージを持たれる方もいるかもしれない。しかし、その心配は杞憂となるだろう。
携帯電話やwifiなど、多くの電波が飛び交う中で確実な通信を実現すべく、RED eTapは128ビットの暗号化通信を用いると同時に「eTapプロトコル」という専用の帯域を確保することで、混信を防止。多数の自転車が密集する集団の中でも確実な変速を実現しているのだ。
トッププロのスプリントにも応える信頼性
肝心の変速性能についても、疑問を差し挟む余地は少ないだろう。RED eTapは既にワールドツアーで実戦デビューしており、なんとなれば既に勝利を経験してすらいるのだから。ツアー・オブ・カタールやツアー・オブ・カリフォルニアにてアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)はRED eTapを装着したバイクで肘と肘がぶつかり合うようなスプリントを制し、今季既に8勝を挙げている。
今季の勝利を支えたeTapについて、クリストフは語る。「eTapのシフト動作はとても正確。石畳のレースや集団スプリントで限界まで追い込んでいる時でも、いつも完璧に変速してくれる。左右独立した操作方式も、とても良いね。これまで使ってきたコンポーネントの中でも一番しっくりきた。eTapはメカトラブルにも強いのが嬉しいね。多くのトラブルが起きるクラシックシーズンでもノートラブルだった」
強大な出力を発揮するトップスプリンターのもがきの中でも、確実な変速を約束するRED eTap。ワイヤレスであることから想起されるようなトラブルとは縁遠い、高い完成度を誇るプロダクトであることが窺い知れよう。
AG2Rのメカニックが語るeTapのメリット
「とても信頼性と整備性が高く、メカニックにとっては理想のコンポーネントさ」
プロトタイプ時代からeTapを使用し続けるAG2R。そのチームバイクを預かるメカニック、マルク・アコード氏の目に、eTapはどのように映っているのだろうか。ツール・ド・フランスの現場でインタビューを行った。「これまで2シーズンに渡ってeTapを使用しているが、これといって目立ったトラブルは未だ経験していないんだ。確かに何回か小さな問題が起こったことはあったけれど、正直トラブルが起こる頻度はとても低いコンポーネントだね。機械式や他の電動コンポーネントと比べても、とても信頼性が高いと言えるだろう。毎日の洗車で高圧洗浄機を使っている(※)けれど、eTapだからといって特別な防水作業などは必要ないし、現にこれが原因で起きたトラブルはないね。
だから、今回のツールに出場するメンバーは基本的に全員がeTapを使用する。しかし、eTapのRDは最大28Tにしか対応していないから、登りの厳しいステージでは32Tにまで対応している機械式を使うことになる。」とマルク氏。実際、他チームのメカニックと同じように、手際良く高圧洗浄機で洗車を行っていた。特にデリケートな扱いを受けているわけでなく、これまでのコンポーネントの扱いは何一つ変わらない。
気になるバッテリーについても、「レース中に完全にバッテリー切れを起こしたことは一度もないね。スペアバッテリーは全てのサポートカーに積んでいるけれど、出番があったのはバッテリー残量が少なくなった選手からのリクエストで交換した、1〜2回くらいだね。作業自体もとても簡単だから、走りながら対応できる。」とのことだ。
一方、ワイヤレスであることは、整備性にも大きく影響する。特にフレームへのケーブル類の内装化が進む最新のロードバイクにとって、ケーブルを通す作業は最も手間がかかる工程であるはずだ。しかしRED eTapであれば、その手間はゼロとなる。
「eTapにして組み付けはしやすくなった?」と尋ねると、「アッセンブルに関しては最高のコンポーネントだよ。とにかく簡単で、メカニックにとってはパラダイスのようだね(笑)。ケーブルをフレームの中に通す必要がないから、TTバイクは特に楽なんだ。eTapだったら1時間以内で1台を組み上げられるけど、機械式なら1時間以上は必ず掛かってしまう。」と満面の笑顔で答えてくれた。選手からもメカニックからも愛されるRED eTap。現在開催中のツール・ド・フランスでもその存在感を見せてくれるはずだ。
※なおスラムとしては高圧洗浄機の使用は推奨していない
vol.2ではRED eTapの操作方法やペアリング手順などを紹介していきます。
提供:インターマックス 編集:シクロワイアード