2016/03/22(火) - 11:52
大分県国東半島を自転車で楽しむ2日間。シーサイドロードを満喫した1日目に続く2日目は、国東半島のもう一つの顔である山岳エリアへ足を踏み入れる。目まぐるしく変化する峠道と、そこかしこに現れる寺社仏閣、そして〆は温泉で。
海派と山派。おおよそのアウトドアアクティビティはこの二つに分けられるものである。幸いなことに自転車はそんな枠組みとは無縁にどちらの良いところも楽しめるのが魅力の一つでもある。平坦な海沿いの道をさわやかな海風を感じながら走るのはもちろん最高だ。しかし、呼吸を荒げながら自分と自転車を高みへと押し上げていく、その苦しみの中に覚える快感もまたサイクリストのDNAに深く刻まれたもの。
そのどちらの楽しみも内包するのが国東半島である。海に浮かぶ奥多摩といえば、首都圏サイクリストにはわかりやすいだろうか。標高721mの火山である両子山を中心に、放射状に広がる半径30kmの山岳地帯が瀬戸内海へと突き出しているのが国東半島なのだ。
つまり、海沿いの道から曲がれば、そこはすでに峠へのアプローチ。内陸部には網の目のように道路が張り巡らされており、コース選びは無限大。人里の中を走っていく緩やかな登りから、尾根を越えて谷と谷とをつなぐ細い林道まで、日本中の峠の景色がここに集まってるのでは?と思わされるのが国東半島の内陸部なのだ。今回は国東半島の中心に位置する両子寺を起点に、周辺の様々な魅力的なスポットを紹介していこう。
2日目のスタートはあいにくの曇り空。ときどきぱらつく雨粒を気にしつつも、登りであればあまり関係ないか、ということで宿を出発。まず目指すのは両子山の中腹に位置する「両子寺」だ。国東半島の寺院群を統括する立場にあった両子寺。石造りの金剛力士像には、その力強い脚に触ると脚力が増すという言い伝えがあり、まさにサイクリストにはピッタリのパワースポットである。ちなみに両子寺の境内からすぐそばには、美味しいお蕎麦を頂くことのできる「両子河原座」がある。お昼にこちらに立ち寄ってみるのもおすすめだ。
さて、そんな両子寺を出て、南西側へと向かう。走っていて気づかされるのは、寺社仏閣の多さ。人里であれば必ずお寺や社があるし、大きな岩などには締め縄が掛けられ信仰の対象となっていることが伺える。なんとなれば、718年に開山されたとされる「六郷満山」と呼ばれる寺院による台密系仏教と、近隣に位置する八幡信仰の総本社である宇佐八幡の影響、古代から連綿と続く山岳修験道が混淆した独特の神仏習合の文化が連綿と受け継がれているのだ。
往時には国東半島全体で1800以上の寺院や社、僧坊や石仏といった宗教的施設が存在していたといわれるこのエリア。2度の大戦を経た現代にも確かな形で信仰が受け継がれていることは、自転車で走ればより身近に実感できるだろう。
南西部には国宝に指定された大堂を持つ「富貴寺」や重要文化財の仏像が4件9躯集められた「真木大堂」といった重要な寺院が建立されている。また、日本でも有数のスケールを持つ高さ8メートルの不動明王像の「熊野磨崖仏」は圧倒的な迫力で、一見の価値ありだ。ただ、300mほどのかなりハードな石段を上がる必要があるので、ロード用ビンディングだとかなり厳しいかもしれない。
これらが集う田染(たしぶ)地区は宇佐八幡宮の荘園であった歴史を持つ地域。その中でも小崎地区は、当時の面影を色濃く残す「田染荘」として、現代にもその姿を伝えている。山間に広がる水田は地形を生かしながら開墾された結果として、複雑で有機的な曲線を描く風景は多くの人が思い描く「日本の原風景」そのもの。
そんな、歴史を巡る山岳サイクリングを楽しんでいると小腹が空いてくる。海沿いであればコンビニなどもいくつかあるのだが、内陸部には手軽に補給できるスポットはかなり限られてくる。そこで、地元ライダーの方が良く休憩ポイントにしているという饅頭屋さんへ。
50年以上この場所で営業しているという老舗である「三の宮まんじゅう」さんでは、ふかふかの皮にあっさりめの餡子がぎっしり詰まったお饅頭をいただける。アップダウンの連続で消費したカロリーを補うのにはぴったりの甘味で、おもわず普通の味のとよもぎ味の2つをぺろりと平らげてしまった。
さて、エネルギーを補給したら、向かうは北へ。温泉県として大分が名を馳せるのは、別府や由布院といった超メジャー級の温泉だけのおかげではない。県全域に温泉が湧出し、そのどれもが特徴豊かな泉質を誇っているからなのだ。
この国東半島でもそれは例外ではない。両子山が火山であることを考えると、温泉が湧き出ることは何ら不思議ではないだろう。真玉温泉や国見温泉、海沿いの海門温泉など、多くの温泉が湧き出る国東半島だが、今回目指したのは、すこし小さな地域密着型の温泉だ。
奇岩が連なる夷耶馬(えびすやば)の風景の中を下っていくと、谷底にあるのが夷谷温泉だ。決して大きくはないものの、硫酸塩泉の泉質には定評があり、赤銅色のお湯は湯冷めしづらく身体を芯から温めてくれた。
湯上りの私たちを待っていたのは寒ざらしそば。冬の間、そばを冷たい流水に10日間ほど浸すことでアクを抜き、より芳醇な味わいを増した寒ざらしそばの製造を九州で初めて手掛けたとのことで、そのお披露目にテレビクルーも駆けつけるほど。そんな特別な一品で、国東山岳ライドを締めくくるのはいかがだろうか。
海と山、二つの楽しみ方が隣り合う国東半島の魅力をお伝えしてきたがいかがだっただろう。実はここまで紹介してきたスポットのほぼすべてが、自転車用のスタンドやフロアポンプを用意してくれている「サイクルハブ」として整備されているのだ。
だから、自転車で訪ねても置き場所に困ることもないし、パンク修理なども安心して行える。とくに山の中であれば、よりその安心感は強いだろう。大分空港を出て直ぐの国東半島にも、こんなにたくさんの魅力が詰まっている。JALでは東京から2泊3日のサイクリスト向けのツアーなども用意されている(詳細はコチラから)ので、一度、自転車を持って飛行機に飛び乗ってみては?
海派と山派。おおよそのアウトドアアクティビティはこの二つに分けられるものである。幸いなことに自転車はそんな枠組みとは無縁にどちらの良いところも楽しめるのが魅力の一つでもある。平坦な海沿いの道をさわやかな海風を感じながら走るのはもちろん最高だ。しかし、呼吸を荒げながら自分と自転車を高みへと押し上げていく、その苦しみの中に覚える快感もまたサイクリストのDNAに深く刻まれたもの。
そのどちらの楽しみも内包するのが国東半島である。海に浮かぶ奥多摩といえば、首都圏サイクリストにはわかりやすいだろうか。標高721mの火山である両子山を中心に、放射状に広がる半径30kmの山岳地帯が瀬戸内海へと突き出しているのが国東半島なのだ。
つまり、海沿いの道から曲がれば、そこはすでに峠へのアプローチ。内陸部には網の目のように道路が張り巡らされており、コース選びは無限大。人里の中を走っていく緩やかな登りから、尾根を越えて谷と谷とをつなぐ細い林道まで、日本中の峠の景色がここに集まってるのでは?と思わされるのが国東半島の内陸部なのだ。今回は国東半島の中心に位置する両子寺を起点に、周辺の様々な魅力的なスポットを紹介していこう。
2日目のスタートはあいにくの曇り空。ときどきぱらつく雨粒を気にしつつも、登りであればあまり関係ないか、ということで宿を出発。まず目指すのは両子山の中腹に位置する「両子寺」だ。国東半島の寺院群を統括する立場にあった両子寺。石造りの金剛力士像には、その力強い脚に触ると脚力が増すという言い伝えがあり、まさにサイクリストにはピッタリのパワースポットである。ちなみに両子寺の境内からすぐそばには、美味しいお蕎麦を頂くことのできる「両子河原座」がある。お昼にこちらに立ち寄ってみるのもおすすめだ。
さて、そんな両子寺を出て、南西側へと向かう。走っていて気づかされるのは、寺社仏閣の多さ。人里であれば必ずお寺や社があるし、大きな岩などには締め縄が掛けられ信仰の対象となっていることが伺える。なんとなれば、718年に開山されたとされる「六郷満山」と呼ばれる寺院による台密系仏教と、近隣に位置する八幡信仰の総本社である宇佐八幡の影響、古代から連綿と続く山岳修験道が混淆した独特の神仏習合の文化が連綿と受け継がれているのだ。
往時には国東半島全体で1800以上の寺院や社、僧坊や石仏といった宗教的施設が存在していたといわれるこのエリア。2度の大戦を経た現代にも確かな形で信仰が受け継がれていることは、自転車で走ればより身近に実感できるだろう。
南西部には国宝に指定された大堂を持つ「富貴寺」や重要文化財の仏像が4件9躯集められた「真木大堂」といった重要な寺院が建立されている。また、日本でも有数のスケールを持つ高さ8メートルの不動明王像の「熊野磨崖仏」は圧倒的な迫力で、一見の価値ありだ。ただ、300mほどのかなりハードな石段を上がる必要があるので、ロード用ビンディングだとかなり厳しいかもしれない。
これらが集う田染(たしぶ)地区は宇佐八幡宮の荘園であった歴史を持つ地域。その中でも小崎地区は、当時の面影を色濃く残す「田染荘」として、現代にもその姿を伝えている。山間に広がる水田は地形を生かしながら開墾された結果として、複雑で有機的な曲線を描く風景は多くの人が思い描く「日本の原風景」そのもの。
そんな、歴史を巡る山岳サイクリングを楽しんでいると小腹が空いてくる。海沿いであればコンビニなどもいくつかあるのだが、内陸部には手軽に補給できるスポットはかなり限られてくる。そこで、地元ライダーの方が良く休憩ポイントにしているという饅頭屋さんへ。
50年以上この場所で営業しているという老舗である「三の宮まんじゅう」さんでは、ふかふかの皮にあっさりめの餡子がぎっしり詰まったお饅頭をいただける。アップダウンの連続で消費したカロリーを補うのにはぴったりの甘味で、おもわず普通の味のとよもぎ味の2つをぺろりと平らげてしまった。
さて、エネルギーを補給したら、向かうは北へ。温泉県として大分が名を馳せるのは、別府や由布院といった超メジャー級の温泉だけのおかげではない。県全域に温泉が湧出し、そのどれもが特徴豊かな泉質を誇っているからなのだ。
この国東半島でもそれは例外ではない。両子山が火山であることを考えると、温泉が湧き出ることは何ら不思議ではないだろう。真玉温泉や国見温泉、海沿いの海門温泉など、多くの温泉が湧き出る国東半島だが、今回目指したのは、すこし小さな地域密着型の温泉だ。
奇岩が連なる夷耶馬(えびすやば)の風景の中を下っていくと、谷底にあるのが夷谷温泉だ。決して大きくはないものの、硫酸塩泉の泉質には定評があり、赤銅色のお湯は湯冷めしづらく身体を芯から温めてくれた。
湯上りの私たちを待っていたのは寒ざらしそば。冬の間、そばを冷たい流水に10日間ほど浸すことでアクを抜き、より芳醇な味わいを増した寒ざらしそばの製造を九州で初めて手掛けたとのことで、そのお披露目にテレビクルーも駆けつけるほど。そんな特別な一品で、国東山岳ライドを締めくくるのはいかがだろうか。
海と山、二つの楽しみ方が隣り合う国東半島の魅力をお伝えしてきたがいかがだっただろう。実はここまで紹介してきたスポットのほぼすべてが、自転車用のスタンドやフロアポンプを用意してくれている「サイクルハブ」として整備されているのだ。
だから、自転車で訪ねても置き場所に困ることもないし、パンク修理なども安心して行える。とくに山の中であれば、よりその安心感は強いだろう。大分空港を出て直ぐの国東半島にも、こんなにたくさんの魅力が詰まっている。JALでは東京から2泊3日のサイクリスト向けのツアーなども用意されている(詳細はコチラから)ので、一度、自転車を持って飛行機に飛び乗ってみては?
提供:サイクリングおおいた 編集:CW編集部