2015/06/23(火) - 17:27
カリフォルニア、モーガンヒルにあるスペシャライズドのヘッドクォーター。その風洞実験施設"WIN-TUNNEL(ウィン・トンネル)"でベールが下ろされた時、世界各国から招かれたジャーナリスト達は、驚きのあまり声が出なかった。これまでのエアロロードバイクの常識を打ち破る、最先端マシンの姿がそこにはあった。
スペシャライズドのフラッグシップエアロロードバイクであるVENGEのデビューは2011年のこと。UCI規定の最大比率である3:1の縦横比デザイン、リアホイールに沿わせるようにカットされたシートチューブ。まるでTTバイクのようなそのフォルムは、「エアロロード」というカテゴリーが活気づき始めた自転車界に大きな衝撃を与えたのだった。
それからVENGEはカーボン積層などの微変更を経ながらもプロチームに供給され、マーク・カヴェンディッシュやペーター・サガンといったスプリンターや、トニ・マルティンなど世界第一級の選手による幾多の栄光を支えてきた。それはVENGEの基本設計が優れていたからに他ならず、名実ともに世界最高のピュアレーシングバイクの名を欲しいままにしてきた。
そして早5年。オールラウンドモデルである現行TARMACのデビューから一年を置いて、遂に新型VENGEがその姿を現した。これまでのエアロロードバイクの常識を打ち破るフォルムを伴って。
「史上最速のエアロロードバイクを製作すること」ニューVENGEの開発にあたって掲げられたテーマは至ってシンプルだ。それが簡単でないことは誰にとっても明白だが、スペシャライズドにはそれを可能にするだけの環境が整っていた。自社で造り上げた風洞実験施設"WIN-TUNNEL"、そしてF1界のリーディングブランドである英国マクラーレン社とのタッグがその筆頭だ。
自転車におけるエアロのトレンドである「一体化」もしくは「専用化」を、究極レベルまで押し上げたニューVENGE。まず目につくのはフロントフォーク後ろとシートチューブに取り付けられた「ゼロドラッグブレーキ」システムだろう。構造的にはVブレーキタイプを採用し、フレームに完全内蔵されるワイヤーを介して制動させる仕組みである。フロント側はフォーク〜ブレーキ〜ダウンチューブと、リア側はシートチューブと表面形状が一体化されており、見た目にも強く訴えるものがある。
フレームの前三角は従来からの面影を残しているが、リアバックの形状は大きく変更されている。これは空力性能と、快適性を増すためのデザイン、と開発メンバーの一人は誇らしげに言う。正面から見て砂時計のように絞り込まれたヘッドチューブも見物だ。また、これら徹底した空力に基づくデザインと機能をVenge Integrated Aero System、略してViAS(ヴァイアス)と称している。
さらにワイヤーとケーブルをフル内装するべく、VENGE専用の「Aerofly ViASコクピット」を投入。これによってルーティングはハンドル〜ステム〜ヘッドセット〜フレームとなり、露出箇所はBBからリアブレーキに伸びるワイヤーのみに。更に「ステムはなるべくフレームに近づけた方がエアロである」という理論から、ハンドル形状を垂直に25mmライズさせることでブラケット高を調整している(オプションで0㎜ライズを発売予定)。アグレッシブなポジションを可能とするべく、ステム角はマイナス17°である。
フレームはTarmacと同じFACT 11r工法を採用しており、BBの規格にも変化は無い。もちろんサイズごとにフレームを設計・開発し、体格の異なるライダーであっても共通の乗り味を体感できる「ライダー・ファースト・エンジニアード」も投入されており、その一つ一つに膨大な時間を掛けた風洞実験や実走テストが重ねられている。
更には特許出願済みのフィット向上機能を投入した「S-WORKS EVADE GCスキンスーツ」が同時にデビューを飾り、レーサーから高い人気を誇るシューズも「SWORKS 6」として待望のモデルチェンジを果たしている。こちらはより強度を増したカーボンソールや、マイクロファイバー製の一体構造アッパー、高いホールド力を誇る大型ヒールカップなどが特徴で、従来と同じくBOAダイヤル式、そしてより空力性能を高めたレース(紐)式の2種類が展開される。
VENGEという一つのバイクに対し、ホイール+タイヤ、エアロスーツ、シューズという製品群を送り出してきたスペシャライズド。これらに2013年にデビューをして以来数多くの実績を誇るエアロヘルメット「EVADE」と組み合わせることで、結果的に、平均的な体格・脚力のライダーに対し、距離40kmのタイムトライアルで5分以上のタイム短縮をもたらすという抜きん出た空力性能をマークするに至っている。(各アイテムの空力性能は以下の表を参照。続編にて詳細解説を行います)
ニューVENGEはツール・ド・フランスでの本格実戦投入を前に、スペシャライズド本社を訪れたマーク・カヴェンディッシュによってテストされている。「その時彼は"加速の際にこんなにも脚力を逃がさず、しかもハイスピードをキープできるバイクに乗った事が無い!"と驚いた表情で僕らに伝えてきたよ」とは、開発陣の一人。
そして6月のツール・ド・スイスでは遂に一部のエース級ライダーによって実戦投入が開始され、ペーター・サガンが見事にステージ優勝。強豪スプリンターをゴール前で下し、その初陣を華々しく飾ったのである。
ニューVENGEをはじめ、各アイテムの構造やテクノロジーの詳細、開発過程、そしてWIN-TUNNELでの風洞実験も含めた3日間、延べ200km以上にも渡るインプレッションの模様については次号で、エンジニアの言葉を交えながら詳細にレポートしていこうと思う。
また、スペシャライズド・ジャパンではホットラインを用意して、ライダーの質問や相談を受け付けている。
「VENGEお客様相談室」 電話046-297-4373(代)
月~金 10:00~12:00、13:00~17:00 (土日祝除く)
スペシャライズド本社での発表会 遂にベールを脱いだニューVENGE
日本からおよそ8時間、サンフランシスコ国際空港からクルマで1時間半。延々と続く丘陵地と、どこまでもまっすぐ続くハイウェイ、そしてアウトドアにはうってつけの乾いた空気。ニューバイクのお披露目会が開催されたスペシャライズドのヘッドクォーターは、ツアー・オブ・カリフォルニアのサンノゼステージに程近く、まさにレースで見るような景色のただ中にあった。スペシャライズドのフラッグシップエアロロードバイクであるVENGEのデビューは2011年のこと。UCI規定の最大比率である3:1の縦横比デザイン、リアホイールに沿わせるようにカットされたシートチューブ。まるでTTバイクのようなそのフォルムは、「エアロロード」というカテゴリーが活気づき始めた自転車界に大きな衝撃を与えたのだった。
それからVENGEはカーボン積層などの微変更を経ながらもプロチームに供給され、マーク・カヴェンディッシュやペーター・サガンといったスプリンターや、トニ・マルティンなど世界第一級の選手による幾多の栄光を支えてきた。それはVENGEの基本設計が優れていたからに他ならず、名実ともに世界最高のピュアレーシングバイクの名を欲しいままにしてきた。
そして早5年。オールラウンドモデルである現行TARMACのデビューから一年を置いて、遂に新型VENGEがその姿を現した。これまでのエアロロードバイクの常識を打ち破るフォルムを伴って。
「史上最速のエアロロードバイクを製作すること」ニューVENGEの開発にあたって掲げられたテーマは至ってシンプルだ。それが簡単でないことは誰にとっても明白だが、スペシャライズドにはそれを可能にするだけの環境が整っていた。自社で造り上げた風洞実験施設"WIN-TUNNEL"、そしてF1界のリーディングブランドである英国マクラーレン社とのタッグがその筆頭だ。
自転車におけるエアロのトレンドである「一体化」もしくは「専用化」を、究極レベルまで押し上げたニューVENGE。まず目につくのはフロントフォーク後ろとシートチューブに取り付けられた「ゼロドラッグブレーキ」システムだろう。構造的にはVブレーキタイプを採用し、フレームに完全内蔵されるワイヤーを介して制動させる仕組みである。フロント側はフォーク〜ブレーキ〜ダウンチューブと、リア側はシートチューブと表面形状が一体化されており、見た目にも強く訴えるものがある。
フレームの前三角は従来からの面影を残しているが、リアバックの形状は大きく変更されている。これは空力性能と、快適性を増すためのデザイン、と開発メンバーの一人は誇らしげに言う。正面から見て砂時計のように絞り込まれたヘッドチューブも見物だ。また、これら徹底した空力に基づくデザインと機能をVenge Integrated Aero System、略してViAS(ヴァイアス)と称している。
さらにワイヤーとケーブルをフル内装するべく、VENGE専用の「Aerofly ViASコクピット」を投入。これによってルーティングはハンドル〜ステム〜ヘッドセット〜フレームとなり、露出箇所はBBからリアブレーキに伸びるワイヤーのみに。更に「ステムはなるべくフレームに近づけた方がエアロである」という理論から、ハンドル形状を垂直に25mmライズさせることでブラケット高を調整している(オプションで0㎜ライズを発売予定)。アグレッシブなポジションを可能とするべく、ステム角はマイナス17°である。
フレームはTarmacと同じFACT 11r工法を採用しており、BBの規格にも変化は無い。もちろんサイズごとにフレームを設計・開発し、体格の異なるライダーであっても共通の乗り味を体感できる「ライダー・ファースト・エンジニアード」も投入されており、その一つ一つに膨大な時間を掛けた風洞実験や実走テストが重ねられている。
ホイール、シューズ、スキンスーツ:5分を縮めるためのトータルパッケージ
更にVENGEの性能を昇華させるため、64mmハイトのリムを持つ「ロヴァールCLX 64」と、これに装着すると24mm幅となるS-WORKS Turboタイヤもフロント専用に開発されている。ホイールは従来品からリムハイトを変えただけではなく、リム断面やハブ形状も変更された、完全なる新設計品。これにフロントのみ22mmのタイヤを組み合わせることで理想的なエアフローを実現しているのだ。更には特許出願済みのフィット向上機能を投入した「S-WORKS EVADE GCスキンスーツ」が同時にデビューを飾り、レーサーから高い人気を誇るシューズも「SWORKS 6」として待望のモデルチェンジを果たしている。こちらはより強度を増したカーボンソールや、マイクロファイバー製の一体構造アッパー、高いホールド力を誇る大型ヒールカップなどが特徴で、従来と同じくBOAダイヤル式、そしてより空力性能を高めたレース(紐)式の2種類が展開される。
VENGEという一つのバイクに対し、ホイール+タイヤ、エアロスーツ、シューズという製品群を送り出してきたスペシャライズド。これらに2013年にデビューをして以来数多くの実績を誇るエアロヘルメット「EVADE」と組み合わせることで、結果的に、平均的な体格・脚力のライダーに対し、距離40kmのタイムトライアルで5分以上のタイム短縮をもたらすという抜きん出た空力性能をマークするに至っている。(各アイテムの空力性能は以下の表を参照。続編にて詳細解説を行います)
ニューVENGEはツール・ド・フランスでの本格実戦投入を前に、スペシャライズド本社を訪れたマーク・カヴェンディッシュによってテストされている。「その時彼は"加速の際にこんなにも脚力を逃がさず、しかもハイスピードをキープできるバイクに乗った事が無い!"と驚いた表情で僕らに伝えてきたよ」とは、開発陣の一人。
そして6月のツール・ド・スイスでは遂に一部のエース級ライダーによって実戦投入が開始され、ペーター・サガンが見事にステージ優勝。強豪スプリンターをゴール前で下し、その初陣を華々しく飾ったのである。
ニューVENGEをはじめ、各アイテムの構造やテクノロジーの詳細、開発過程、そしてWIN-TUNNELでの風洞実験も含めた3日間、延べ200km以上にも渡るインプレッションの模様については次号で、エンジニアの言葉を交えながら詳細にレポートしていこうと思う。
また、スペシャライズド・ジャパンではホットラインを用意して、ライダーの質問や相談を受け付けている。
「VENGEお客様相談室」 電話046-297-4373(代)
月~金 10:00~12:00、13:00~17:00 (土日祝除く)
提供:スペシャライズド・ジャパン 製作:シクロワイアード編集部