2014/11/20(木) - 11:31
完成度高い軽量オールラウンダー SCLUTURA
グランツールの山岳ステージや起伏のあるクラシックレースでの使用を踏まえ、プロサーキットにおいて最高性能の軽量性と推進力、そしてコンフォート性能を同じ水準で獲得することを目標としたオールラウンドバイク、SCLUTURA。登場してから3シーズン目に入ろうとしているが、未だその性能は他と比べて全く遜色が見られない。
中でも特徴的なのは、チューブ内にリブ補強を施す「ダブルチャンバーテクノロジー」を他のモデルに先駆けて投入したことだろう。チューブ内を縦に区分けして2つの独立したチャンバーを設けるという、MTBトップモデルに採用されてきた技術を用いることで、曲げや捻りに対する剛性を向上させ、通じて軽量化を達成している。
ボリュームのあるヘッドチューブ〜ダウンチューブの造形は剛性を増すためだが、対してトップチューブやシートステーは緩やかかつ扁平なフォルムを描いており、振動吸収性を狙っていることが見て取れる。リアバックとフロントフォークのカーボンレイアップに植物由来のバイオファイバーを加えたことで、形状と素材両面から快適性を高めているのだ。
実際にSCULTURAはランプレ・メリダの選手から愛用され、幾多の勝利をマークしたことでその性能はお墨付きと言えよう。今回はSRAM REDにマヴィック・キシリウムSLEホイールを搭載したトップモデルの「SCULTURA 9000」をテストした。
インプレッション
鈴木 : その軽さゆえの登坂能力や剛性などはもちろんですが、SCULTURAが長けているのはそのバランス感。非常に重心バランスが掴みやすくできているため、前後タイヤのグリップ感がとても掴みやすいんです。オールラウンドモデルとしてかなり完成度は高いと感じました。朝倉 : デビューから数回のモデルチェンジを経て、性能は非常に煮詰められていると感じます。軽いのに軽量バイクにありがちな、悪い意味でのヒラヒラとしたフィーリングがありません。スピードの伸びと巡航性能もまったく遜色無く、リアバックの造形と素材によって乗り心地も悪くありませんでした。踏んだ際の剛性感も適切で、軽さを活かした気持ちよい加速を見せてくれますね。
非常にポテンシャルが高く、これはカーボンのグレードが異なるミドルグレードにも当てはまるんです。ある意味コンポーネントが105クラスではもったいないほどです。だから最高峰モデルにこだわらずとも気持ちよい走りを楽しめますし、是非自分の予算に合うSCULTURAを安心して選んで欲しいですね。
ランプレ・メリダのメインバイク「登れるエアロロード」REACTO
ランプレへのスポンサードが決まるや否や発表されたエアロロードバイク、REACTO。初年度はスプリントステージや単独での逃げが予想されるステージのための特別なマシンとして使用されていたが、その卓越した登坂能力から2014年シーズンはチームの「スタンダード機材」へと昇格したという経緯を持つ。
TTバイクと見紛うばかりのエアロフォルムは「WARP TT」を踏襲しており、解析の結果から最適化された「ファストバック」形状を採用したことが特徴だ。左右のフォークブレードの間隔を広げることで、フロント周りのエアロダイナミクスを大幅に向上。更にダイレクトマウントブレーキを採用することで空力性能をそのままに、力強い制動力をも手に入れている。
万能なエアロロードとして開発されたREACTOにとって、空力性能の向上はバイク全体の要素の一部にすぎない。ヘッドチューブは下側1.5インチのX-Taperヘッドを採用し、キレのあるハンドリングとダイレクトマウントブレーキの強大な制動力にも負けない剛性を確保。BBハンガーはBB386を採用することで、フレーム全体のねじれ剛性を高めると同時に、クランクの選択肢も特殊規格より多くなった。
ダウンチューブとフロントフォークにはダブルチャンバーテクノロジーを用いて剛性高め、コンパクトに設計された特徴的なリアバックは、空気抵抗の削減に寄与すると同時に、スプリントにも十分にこたえる剛性を確保。エアロ効果を生かして逃げを成功させた後のスプリント勝負において、勝利を掴むための設計だ。従来エアロロードの弱点だった乗り心地に関しても、衝撃吸収素材を内蔵した「S-Flex シートポスト」で大幅な改善を見た。空力特性のみに留まらず、捻れ剛性を高める事でクラス最高レベルのペダリング効率を実現した万能エアロロードに昇華したのである。
インプレッション
朝倉 : このバイクのテーマは、「Fastest aero bike in the world」。非常にスタビリティが高く、どの速度域からもスピードを上げ、それを維持できるバイクです。横風が吹いた時に若干振られたりと若干クセは否めないのですが、とにかくあらゆる場面において速い。その一言に尽きると僕は思いますね。それはエアロはもちろんですが、絶妙な剛性コントロールにあると感じています。形こそ硬さをイメージさせますが、その実嫌なフィーリングはありません。確かに脚は削られてしまいますが、オールラウンダーのSCULTURAを更に進化させたレーシングバイクだと僕は考えます。レーサーや、レーサーのような走りをしたい方だったら選ばない理由はありません。ダンシングの軽さはSCULTURAに譲りますが、エアロロード=直線が速いだけのバイクと思う方は是非一度試乗することをお勧めします。35mmハイトのホイールであればよりオールラウンドな走りを演出できますね。
鈴木 : 空力で速度が乗っていく、乗り始めてすぐにそんな印象を持ちました。カーボンレイアップや剛性バランスも兼ね合って加速も、巡航もとても良い。今回はアルミモデルも試しましたが、こちらもやはりスピードの伸びは素晴しい。つまりこの独特のフレーム形状が空力に貢献していることは間違いない事実と言わざるをえないでしょう。
やはりある程度の硬さがあるため、ロングライドをゆっくり楽しみたい方には別のバイクをお勧めしたいですね。しかし特殊なシートポストなど快適性を高めるための工夫も施されていますから、レースはもちろん、長距離を速いスピードで走り抜けるようなファストライドにはもってこいではないでしょうか。平均速度を高めることに喜びを感じさせてくれますね。
アルミの400に関しては、まるでアルミと思わせないほどにカーボンモデルと瓜二つ。完成車で17万円以下という価格のエアロロードも今までにほとんどありませんでしたし、メーカーの試みとしてとても面白いですね。完成度自体も非常に高いですし、ロードレーサーの持つスピード感を手軽に感じさせてくれるベストチョイスですね。
パリ〜ルーベのために開発されたエンデュランスロード RIDE
ランプレ・メリダのチームメンバーによって “PAVE(パヴェ、つまり石畳)” の愛称で親しまれ、石畳などの悪路を含むレースで絶大な信頼を集めるRIDE。実際に石畳が登場した2014年のツール・ド・フランスでも使用された実績を持つ実力派だ。
振動吸収性を高める工夫は多岐に渡り、サドルへの突き上げをカットするためにシートステーの厚みはUCI規定ジャストの10mmに設定され、構造的な柔軟性を与えるためにシートチューブとの交点は下方に。植物性由来のバイオファイバー繊維はSCLUTURAよりも多分にカーボン積層中に織り込むことで、フレーム素材自体での振動吸収能力をより一層向上させている。
先細り&ベンド形状のフロントフォークは、もちろん振動吸収性を狙ったもの。しかしただ柔らかいだけではコーナリング中のブレに繋がってしまう。これを回避するため、他の2モデルとも共通の「ダブルチャンバーテクノロジー」を採用しており、捻り剛性と快適性の両立を可能とした。
フロント三角のフォルムはSCULTURAをほぼ踏襲したものであり、グランツールの走破に欠かせいない走行性能もおざなりになっていない。プロライダーのみならず、チャレンジングなライドを楽しむ全てのサイクリストに最適なバイクに仕上げられている。
インプレッション
鈴木 : 乗ったフィーリングが他の2台と比べて非常に軽いことが特徴です。ペダリングの軽さ、ダンシングの軽さ、コーナーでの倒し込みの軽さなど、全体的に気持ちの良い走り心地が味わえました。それは恐らく衝撃吸収性に長けていることが影響していて、路面とケンカしないことが理由でしょう。乗り心地が良いバイクと言うとボヤけた印象ですが、軽快感に長けているためそんなこともありませんでした。特に優秀だなと感じたのはフロントフォーク。いかにもしなりそうなフォルムですが、先端まで剛性が確保されていてブレーキングでビビることもなく、それでいて振動をかなり消してくれる。この技術を使ってシクロクロスのフォークを使ったら、とても良い製品ができるんじゃないでしょうか(笑)。
朝倉 : 長くペダリングを楽しめるバイクと言えます。コンフォートロードながら過度に各部分が動きませんし、かといってガチガチではない。適度な硬さでペダリングをずっと続けられるんです。疲れないという表現とは少し違いますが、ペダリングにおける「楽しさ」を突き詰めるとこうなるんだな、という踏み味です。
スムーズで滑らかであるため、非常にペダリングに対する受け幅が広いんです。だから一つ重ためのギアでトルクを掛けつつギアを回していけばとても良いフィーリング。ジオメトリー的に若干重心が高いのですが、これはあまり大きな問題にはならないでしょう。自転車本来の楽しみ方を、万人に教えてくれるバイクですね。
提供:ミヤタサイクル 作成:シクロワイアード編集部