2014/06/16(月) - 17:44
サイクルウエアの“ファーストクラス”と賞され、世界中の多くのサイクリストから支持されるスイスのアソス。今年の春夏コレクションから新型ショーツの「S7」シリーズが投入されたことは、先のスペシャルコンテンツでお伝えした通り。今回はそのなかでもレースフィットのミドルグレードに位置づけられる「T.Equipe」と、ノーマルフィットの末弟モデル「T.Neopro」の使用感をレポートしよう。
「ミドルグレードながら従来のトップモデルの全てを凌ぐ高性能」
私が初めてアソスと出会ったのは1989年に遡る。当時、スイスのフランク・トーヨーというプロチームに市川雅敏氏が所属しており(90年に日本人で初めてジロ・デ・イタリアに出場。個人総合成績50位)、氏が持ち帰ったとされる同チームのウエアを、知り合いを通じて幸運にも手に入れることができた。それがアソスだった。当時のビブショーツとして群を抜く履き心地だったことは、25年近く経った今でも覚えている。
その頃は日本であまり目にすることのなかったアソスだが、90年代後半に入ると安定的に供給されるようになり、「カンピオニッシモEVO」、「Fi13_S2」、「Fi13_S5」という歴代の最高峰モデルのほか、下位グレードやタイツなども合わせると、これまでアソスのボトムは20着近くを所有してきた。そして新しくなったモデルを履く度に、製品の進化とその高性能に驚かされている。それだけにアソスが“ショーツの常識を覆す“ゲームチェンジャー”と自信を持つS7シリーズ「T.Equipe」のテストを心待ちにしていた。
ペダリングをすると股間はサドルの上で左右前後に細かく動いているが、その際にインナーパッドがしっかりとフィットしてないとペダリングし難く、最悪の場合、股ずれなどを引き起こす。S7のインナーパッドは、最適なパッドの形状や肉厚とその配置を考えているのはもちろんだが、パッド全体を生地に縫い付けないことにより、ペダリングによるサドル上の股間の動きにフレキシブルにフィットすることが可能になり、これにより常に最適なパッドのサポートを得られるというわけだ。前作のFi13_S5でもパッドをフレキシブルな状態にするコンセプトを展開していたものの、GoldenGateシステムはFi13_S5よりも構造をシンプルにしながら、より高いフィット感を得ている。
実際にショーツを履くと、乗車前にしてフィット感の違いが分かる。パッド形状を見直した点の影響もあるが、Fi13_S5と比べると股間の奥までしっかりフィットして、パッドが余るような感覚もない。そしてペダリングをすると、さらに効果は顕著になる。性器自体の収まりもよく、もちろん圧迫感もない。股間におけるだぶつき感がないので、今まで以上に脚をスムーズに動かせる。とくにケイデンスが高いときは顕著だ。
また下りのワインディングやダンシングなど横方向への大きな動きを繰り返したときの安定感も増している。それはパッド自体だけではなく、生地や裁断方法の見直しといった総合的なものだが、「Fi13_S5」と比べて「T.Equipe」のフィット感は、股間がすっきりとして清々しいフィーリングに進化している。
同時にGoldenGateは通気性の面でも効果があるようだ。肌側に近いパッドにワッフル状の加工を施していることもそうだが、パッド側面と生地の間に大きな空間が生まれる構造は、ウエア内に空気が通りやすくなりパンツ内の蒸れを抑えてくれると感じた。
またパッドを単体で見ると座骨が当たる側の肉厚は比較的厚く、フォームも高密度でしっかり感も得られるため、少々分厚さのある座り心地かと想像したが、そうした感覚は皆無だ。座骨への圧迫感を和らげつつも、高ケイデンス、高トルクのペダリングでもフワフワとした座り心地を感じないので快適だ。アソスのデータでは股間の圧迫感は23%低減しているというが、その数値も納得できる。10mmパッドを装備したロングライド用の「T.cento」は試していないとはいえ、個人的にはT.Equipeがあればロングライドも十分快適に走ることができそうだ。
そこでS7ではこれまでと手法を変えた。生地自体を見直し、その伸縮性を最大限に利用しながら立体裁断を駆使することでパネルと縫製の数を低減したのだ。T.Equipeには「Type.439」と呼ばれる生地をメインで使用するが、ゴム製のフロントサスペンダーを除くと5つのパネルしか用いていない。とくに大腿部からお尻にかけてはパネル数がかなり減っており、縫製箇所も抑えているために見た目のフラット感も強い。
生地そのものは従来のものに比べると繊維密度とコシが増した印象だ。生地の伸び自体は抑えられているが、伸縮の強さは増している。手に取っただけでは履き心地が少々硬そうに思えるが、実際にはそんなことはない。締め付けを落としたコンプレッションウエアのような感覚で、適度な締まりのある心地のいいサポート感だ。
この密着感の高さは生地の性能と最適な裁断に加えて、縫製箇所が減っていることも大きい。とくに大腿部は、縫製が後方にしかないので、全体を包み込むようにフィットする感覚が強い。したがってパッドの密着感とも相まって、全体的にすっきりとした着用感が演出されていて、ペダリングでの脚の運びは軽くなり、気持ちのいい走りができる。T.Equipeはミドルグレードだが、その着用感はS5シリーズ最高峰であるFi13_S5と比べても上質になったと言える。
またサスペンダーの取り付けが従来よりも外側に位置するようになり、背中の生地に対してY字型でしっかりと接続される構造も、その性能を発揮できる要因のひとつもいえるだろう。そして幅広となったことにより肩への圧迫が分散されるので、長時間のライディング起こりやすい肩こりなどを軽減する効果も期待できそうだ。
サスペンダー部分の設計を新たにしたことは、涼しさの向上にもつながっている。背中の生地は従来よりも圧倒的に面積を縮小し、さらにお腹の側もサスペンダーの取り付け位置を外側に移動したことにより、腹部を覆う面積が減少している。試乗を行なった当日は夏日の気温で、そのなかを150kmほど走ったのだが、明らかに「Fi13_S5」と比べると涼しさを得られた。その反面ハイスピードの長距離の下りでは、もしかするとお腹が冷えやすいなんてこともあるかもしれない。
ページの冒頭で、アソスの新製品を着用する度に驚かされてきたと述べたが、S7 T.Equipeの試乗後もまた大きな驚きと喜びを得られた。さらにいえば今回のモデルチェンジは、Fi13_S2からFi13_S5へ変わった時以上に大きな進化を果たしていると感じた。アソスがS7シリーズについて、“ショーツの常識を覆すゲームチェンジャー”と自信を持つのも、そのパフォーマンスを体感すると納得してしまう。
今回試したモデルはミドルグレードのT.Equipeにもかかわらず、その性能はS5のシリーズ最高峰となるFi13_S5を全ての面で上回っていると言っていいだろう。そして2万円台前半のビブショーツとしてのプライスパフォーマンスは傑出したレベルにあり、上級者のサイクリストであっても多くがその性能に満足できるはずだ。それだけに最高峰の「T.Campionissimo」の性能も気になるところだ。
ここ数十年にわたるウエアの目覚ましい性能進化はアソスが牽引し、同社の製品をベンチマークとしてライバルメーカーは製品開発を行なってきた。S7シリーズの登場によって、バイクショーツの性能は、また一段も二段も底上げされるだろう。S7シリーズは、またしても大きな影響力を持つモデルといえる。
「履いていることを感じさせない理想的なビブショーツ」
パッド、ビブ部分、生地の全てが心地よく仕上げられており、いい意味で着用感が無いというのが第一印象です。従来モデルはサドルと干渉してしまうほどパッドが大きく、存在を感じましたが、今回インプレッションした「T.Neopro」の場合は十分な厚みがありながらも、自然にフィットしてくれます。
「Golden Gate」についても、いい意味で存在感がないですね。裏を返せば、それだけ自然に馴染んでくれているということの現れでしょう。細かな動きにもパッドが十分に追従してくれるため、ペダリングの動作が邪魔されている印象もありませんでした。履いた直後はビブ部分の締め付けが強いと感じましたが、走って見ると窮屈な印象はほとんど感じませんでした。また、ビブ紐が肩幅一杯に広げられたことで胸部への圧迫感が少なくなっています。
生地も良質ですね。体の動きに沿ってスムーズに伸び縮みし、汗をかいてもすぐに吸収・発散してくれます。昨今トレンドになっているカットオフ仕様の裾も快適性に貢献していますね。耐久性が気になるところですが、アソスのことですから心配ないと思います。
カッティングについてはレギュラーとのことですが、特に気になるようなダボつきはありません。これまでのアソスの製品は全体的に細身というイメージがあり、ショーツの丈やジャージの袖が長すぎることが多くありました。しかし、今回のモデルチェンジでサイジングの見直しが図られたのか、すんなり履くことが出来ました。これまで、泣く泣くアソスを諦めていた方にも、もう一度試してもらいたいですね。
「さすがはアソスと思わせてくれる履き心地の良さ。ビブ部分の造りの良さが秀逸」
ショーツといえばパッドに目が行きがちですが、個人的にはビブ部分の造りの良さが印象的でした。中でも胸からお腹にかけてのストレスの無さは特筆すべき点で、何も着ていないのでは無いかと不思議な感触すら覚えます。その一方で、ライディングで激しく動いてもズレずに、ピッタリと吸い付くようにフィットしてくれます。
パッドについてはクッション性が良く、厚手ながらもフィット感が高いという印象です。加えてペダリング動作に細かく追従してくれる伸縮性も持っています。パッドの周囲を一部だけを縫製せずに動きを出すという新しい機構はとてもユニークですが、それが快適性の向上に一役買っているという印象ですね。
ショーツ本体の部分についても、ビブ部分同様にフィット感が高いですね。高級モデルとしては珍しくステッチを減らしていますが、パネル構成と生地の伸縮性によって高いフィット感を実現できているのでしょう。ライディング中は前傾度合いに関わらず、ペダリングを邪魔するような印象は無く、常に身体の動きに沿ってフィットしてくれます。個人的には少し生地が硬いという印象を受けました。コンプレッション機能を狙っているのでしょうか。吸汗速乾性についても良好で、暑い日に長く履いても全く不快感がありませんでした。
裾はゴム素材でできていることに加え、シリコングリップが配されていることから、ズレることは極めて少ないでしょう。ステッチ部分は意識して触るとザラザラとしていますが、走行中に違和感を感じることはありませんでした。総じて、エントリーモデルという位置づけですが、さすがはアソスと思わせてくれる履き心地の良さがありますね。
「ミドルグレードながら従来のトップモデルの全てを凌ぐ高性能」
吉本司(フリーサイクルジャーナリスト)
私が初めてアソスと出会ったのは1989年に遡る。当時、スイスのフランク・トーヨーというプロチームに市川雅敏氏が所属しており(90年に日本人で初めてジロ・デ・イタリアに出場。個人総合成績50位)、氏が持ち帰ったとされる同チームのウエアを、知り合いを通じて幸運にも手に入れることができた。それがアソスだった。当時のビブショーツとして群を抜く履き心地だったことは、25年近く経った今でも覚えている。その頃は日本であまり目にすることのなかったアソスだが、90年代後半に入ると安定的に供給されるようになり、「カンピオニッシモEVO」、「Fi13_S2」、「Fi13_S5」という歴代の最高峰モデルのほか、下位グレードやタイツなども合わせると、これまでアソスのボトムは20着近くを所有してきた。そして新しくなったモデルを履く度に、製品の進化とその高性能に驚かされている。それだけにアソスが“ショーツの常識を覆す“ゲームチェンジャー”と自信を持つS7シリーズ「T.Equipe」のテストを心待ちにしていた。
ペダリングの動きにしっかりと同調するインナーパッド
さて少々前置きは長くなったが、T.Equipeのパフォーマンスについて述べよう。なんといっても印象的なのは、S7シリーズの大きな特徴となっているインナーパッドだ。「GoldenGate」と呼ばれる新しい構造は極めて独創的といえる。一般的なバイクショーツの場合、インナーパッドはその全周をショーツの生地に縫い合わせることで固定される。しかしながらS7は数ヵ所をあえて縫製をしない設計とすることで、いわばインナーパッドが生地に対して宙づりのような状態となる。写真を見ていただけると分かるが、両サイドにはポッカリと大きな穴ができるほどの状態となる。ペダリングをすると股間はサドルの上で左右前後に細かく動いているが、その際にインナーパッドがしっかりとフィットしてないとペダリングし難く、最悪の場合、股ずれなどを引き起こす。S7のインナーパッドは、最適なパッドの形状や肉厚とその配置を考えているのはもちろんだが、パッド全体を生地に縫い付けないことにより、ペダリングによるサドル上の股間の動きにフレキシブルにフィットすることが可能になり、これにより常に最適なパッドのサポートを得られるというわけだ。前作のFi13_S5でもパッドをフレキシブルな状態にするコンセプトを展開していたものの、GoldenGateシステムはFi13_S5よりも構造をシンプルにしながら、より高いフィット感を得ている。
実際にショーツを履くと、乗車前にしてフィット感の違いが分かる。パッド形状を見直した点の影響もあるが、Fi13_S5と比べると股間の奥までしっかりフィットして、パッドが余るような感覚もない。そしてペダリングをすると、さらに効果は顕著になる。性器自体の収まりもよく、もちろん圧迫感もない。股間におけるだぶつき感がないので、今まで以上に脚をスムーズに動かせる。とくにケイデンスが高いときは顕著だ。
また下りのワインディングやダンシングなど横方向への大きな動きを繰り返したときの安定感も増している。それはパッド自体だけではなく、生地や裁断方法の見直しといった総合的なものだが、「Fi13_S5」と比べて「T.Equipe」のフィット感は、股間がすっきりとして清々しいフィーリングに進化している。
同時にGoldenGateは通気性の面でも効果があるようだ。肌側に近いパッドにワッフル状の加工を施していることもそうだが、パッド側面と生地の間に大きな空間が生まれる構造は、ウエア内に空気が通りやすくなりパンツ内の蒸れを抑えてくれると感じた。
またパッドを単体で見ると座骨が当たる側の肉厚は比較的厚く、フォームも高密度でしっかり感も得られるため、少々分厚さのある座り心地かと想像したが、そうした感覚は皆無だ。座骨への圧迫感を和らげつつも、高ケイデンス、高トルクのペダリングでもフワフワとした座り心地を感じないので快適だ。アソスのデータでは股間の圧迫感は23%低減しているというが、その数値も納得できる。10mmパッドを装備したロングライド用の「T.cento」は試していないとはいえ、個人的にはT.Equipeがあればロングライドも十分快適に走ることができそうだ。
進化した生地を効果的に使うことでフィット感が向上
S7ではパッドの見直しだけでなく、生地とその裁断も変更されている。前傾姿勢による脚の動きでも高いフィット感を得るために、バイクショーツでは場所に応じて生地を複雑に裁断して縫い合わせるのが通常になっている。一般的には高級品ほど裁断数(パネル数)と縫製を増やし、高いフィット感が得られるとされてきた。実際にアソスのFi13_S5では9枚のパネルで構成されている。しかしパネル数の増加は、その効果の反面、縫製があることで生地に突っ張りが生じ、縫い目が当たって快適な着心地を損ねるデメリットを生むこともある。そこでS7ではこれまでと手法を変えた。生地自体を見直し、その伸縮性を最大限に利用しながら立体裁断を駆使することでパネルと縫製の数を低減したのだ。T.Equipeには「Type.439」と呼ばれる生地をメインで使用するが、ゴム製のフロントサスペンダーを除くと5つのパネルしか用いていない。とくに大腿部からお尻にかけてはパネル数がかなり減っており、縫製箇所も抑えているために見た目のフラット感も強い。
生地そのものは従来のものに比べると繊維密度とコシが増した印象だ。生地の伸び自体は抑えられているが、伸縮の強さは増している。手に取っただけでは履き心地が少々硬そうに思えるが、実際にはそんなことはない。締め付けを落としたコンプレッションウエアのような感覚で、適度な締まりのある心地のいいサポート感だ。
この密着感の高さは生地の性能と最適な裁断に加えて、縫製箇所が減っていることも大きい。とくに大腿部は、縫製が後方にしかないので、全体を包み込むようにフィットする感覚が強い。したがってパッドの密着感とも相まって、全体的にすっきりとした着用感が演出されていて、ペダリングでの脚の運びは軽くなり、気持ちのいい走りができる。T.Equipeはミドルグレードだが、その着用感はS5シリーズ最高峰であるFi13_S5と比べても上質になったと言える。
手抜きのない細部の作り込みが快適性を高める
「T.Equipe」のすっきりとして上質な装着感には、新しくなったサスペンダー部も大きく貢献している。前側部分はゴムタイプの幅広形状となり、従来よりも伸縮性とその力が増したことで肩での安定感が増している。それ自体がしっかりしているので、乗車姿勢をとった場合、大げさに言うと背中からお尻まわりが軽く引き上げられるような感覚がある。それがショーツ全体のフィッティングを安定させることにつながっている。またサスペンダーの取り付けが従来よりも外側に位置するようになり、背中の生地に対してY字型でしっかりと接続される構造も、その性能を発揮できる要因のひとつもいえるだろう。そして幅広となったことにより肩への圧迫が分散されるので、長時間のライディング起こりやすい肩こりなどを軽減する効果も期待できそうだ。
サスペンダー部分の設計を新たにしたことは、涼しさの向上にもつながっている。背中の生地は従来よりも圧倒的に面積を縮小し、さらにお腹の側もサスペンダーの取り付け位置を外側に移動したことにより、腹部を覆う面積が減少している。試乗を行なった当日は夏日の気温で、そのなかを150kmほど走ったのだが、明らかに「Fi13_S5」と比べると涼しさを得られた。その反面ハイスピードの長距離の下りでは、もしかするとお腹が冷えやすいなんてこともあるかもしれない。
ページの冒頭で、アソスの新製品を着用する度に驚かされてきたと述べたが、S7 T.Equipeの試乗後もまた大きな驚きと喜びを得られた。さらにいえば今回のモデルチェンジは、Fi13_S2からFi13_S5へ変わった時以上に大きな進化を果たしていると感じた。アソスがS7シリーズについて、“ショーツの常識を覆すゲームチェンジャー”と自信を持つのも、そのパフォーマンスを体感すると納得してしまう。
今回試したモデルはミドルグレードのT.Equipeにもかかわらず、その性能はS5のシリーズ最高峰となるFi13_S5を全ての面で上回っていると言っていいだろう。そして2万円台前半のビブショーツとしてのプライスパフォーマンスは傑出したレベルにあり、上級者のサイクリストであっても多くがその性能に満足できるはずだ。それだけに最高峰の「T.Campionissimo」の性能も気になるところだ。
ここ数十年にわたるウエアの目覚ましい性能進化はアソスが牽引し、同社の製品をベンチマークとしてライバルメーカーは製品開発を行なってきた。S7シリーズの登場によって、バイクショーツの性能は、また一段も二段も底上げされるだろう。S7シリーズは、またしても大きな影響力を持つモデルといえる。
「履いていることを感じさせない理想的なビブショーツ」
鈴木雅彦(サイクルショップDADDY)
パッド、ビブ部分、生地の全てが心地よく仕上げられており、いい意味で着用感が無いというのが第一印象です。従来モデルはサドルと干渉してしまうほどパッドが大きく、存在を感じましたが、今回インプレッションした「T.Neopro」の場合は十分な厚みがありながらも、自然にフィットしてくれます。「Golden Gate」についても、いい意味で存在感がないですね。裏を返せば、それだけ自然に馴染んでくれているということの現れでしょう。細かな動きにもパッドが十分に追従してくれるため、ペダリングの動作が邪魔されている印象もありませんでした。履いた直後はビブ部分の締め付けが強いと感じましたが、走って見ると窮屈な印象はほとんど感じませんでした。また、ビブ紐が肩幅一杯に広げられたことで胸部への圧迫感が少なくなっています。
生地も良質ですね。体の動きに沿ってスムーズに伸び縮みし、汗をかいてもすぐに吸収・発散してくれます。昨今トレンドになっているカットオフ仕様の裾も快適性に貢献していますね。耐久性が気になるところですが、アソスのことですから心配ないと思います。
カッティングについてはレギュラーとのことですが、特に気になるようなダボつきはありません。これまでのアソスの製品は全体的に細身というイメージがあり、ショーツの丈やジャージの袖が長すぎることが多くありました。しかし、今回のモデルチェンジでサイジングの見直しが図られたのか、すんなり履くことが出来ました。これまで、泣く泣くアソスを諦めていた方にも、もう一度試してもらいたいですね。
「さすがはアソスと思わせてくれる履き心地の良さ。ビブ部分の造りの良さが秀逸」
二戸康寛(東京ヴェントス監督/Punto Ventos)
ショーツといえばパッドに目が行きがちですが、個人的にはビブ部分の造りの良さが印象的でした。中でも胸からお腹にかけてのストレスの無さは特筆すべき点で、何も着ていないのでは無いかと不思議な感触すら覚えます。その一方で、ライディングで激しく動いてもズレずに、ピッタリと吸い付くようにフィットしてくれます。パッドについてはクッション性が良く、厚手ながらもフィット感が高いという印象です。加えてペダリング動作に細かく追従してくれる伸縮性も持っています。パッドの周囲を一部だけを縫製せずに動きを出すという新しい機構はとてもユニークですが、それが快適性の向上に一役買っているという印象ですね。
ショーツ本体の部分についても、ビブ部分同様にフィット感が高いですね。高級モデルとしては珍しくステッチを減らしていますが、パネル構成と生地の伸縮性によって高いフィット感を実現できているのでしょう。ライディング中は前傾度合いに関わらず、ペダリングを邪魔するような印象は無く、常に身体の動きに沿ってフィットしてくれます。個人的には少し生地が硬いという印象を受けました。コンプレッション機能を狙っているのでしょうか。吸汗速乾性についても良好で、暑い日に長く履いても全く不快感がありませんでした。
裾はゴム素材でできていることに加え、シリコングリップが配されていることから、ズレることは極めて少ないでしょう。ステッチ部分は意識して触るとザラザラとしていますが、走行中に違和感を感じることはありませんでした。総じて、エントリーモデルという位置づけですが、さすがはアソスと思わせてくれる履き心地の良さがありますね。
提供:ダイアテックプロダクツ text:吉本司、シクロワイアード編集部