2014/06/11(水) - 12:03
プレゼンテーションに先立って行われた新Tarmacのテストライド。カリフォルニア州はサンタクルズ、サンノゼ周辺において400km以上走るこのライドイベントにCW編集部の綾野が参加。その性能を体感してきたレポートをお届けする。
まず日本からの出国前にスペシャライズド・ジャパンからTarmac SL4を1ヶ月間貸出を受け、乗り込んだ。事前に何が発表されるかは日本法人も教えてくれなかったのだが、新Tarmacに違いないと予習をしておいたというわけだ。
かくしてメディアキャンプの地、サンタクルズには予想通り新Tarmacが待っていた。その名がSL5でなかったのは予想が外れたわけだが。
ここでは2日間のテストライドが予定されていた。初日がディスクブレーキ、2日目がノーマルブレーキモデル。そしてオプションの3日目がグランフォンド大会に参加という3日間のライドだ。
その間、カリフォルニア州の中でもとくに恵まれたライド環境を誇るスペシャライズド本社周辺の公道を走り尽くした。テストの2日とも150km、標高差約2000up。3日目は144kmのグランフォンドだから、合計3日間のグランフォンド走行というわけだ!
思わず歓声を上げてしまいたくなるほどの素晴らしいライド環境のもとで、ワインディングロード、九十九折れの細い林道、荒れた路面の急勾配のアップダウン、はてはグラベルなど、あらゆる路面状況の道がチョイスされた。コースを選んだスタッフからは、「新Tarmacのすべての性能を試してもらう」という意気込みが伝わってきた。「実走行テストを繰り返して生まれたバイクだから、徹底的に乗ってもらいたいんだ」とホスト役のスタッフは言う。
欧米の元プロ、プロに近い走力を持つ走り屋系バイクジャーナリスト約10名と、バイクファナティックを地で行くスペシャライズドの社員スタッフたちで3日間を走り倒した。プレゼンに登場した開発スタッフのクリス・ダルージオ氏らもメンバーだ。つまり意見交換をしながらのテストライドだ。
初日はディスクブレーキモデルのブレーキフィーリングと特性を楽しみつつ、そのポテンシャルを充分に感じることができた。先に言ってしまえば、2日目に乗ったノーマルブレーキモデルとの乗車感の差は少なく、共通した乗り味だった。ローターとブレーキ本体がフォークとリアエンド周辺にあることの重量を感じるものの、ほとんどそれだけの差と言っていいだろう。
そして3日目には新モデルの変化した点、その差を確かめるために改めてSL4に乗ってグランフォンド大会を走った。
SL4から新Tarmacに乗り換えてまず感じるのはスムーズさだ。SL4の剛性が高く、カリカリと加速し、ペダリング入力をまったく撓みなく受け止める印象とは大きく異る剛性感になっている。おそらくは49サイズに顕著だった、足の裏を撥ね返すようなBB周りの硬さはマイルドに抑えられた。「しなる」という表現まではいかないが、ペダリングが乱れたとしても適度な剛性感でそのバラツキを収めてくれるような懐の深さがある。
そして荒れた路面でスムーズだ。路面のクラックなどのギャップを舐めるように越えていく。SL4で感じた、一枚板のような硬さや跳ねてコントロールが難しいといったことが無いのだ。事前テストでホイールもタイヤも共通したものを使ってきたから、これは確かに差を感じる。しかも大きな差だ。
スムーズで快適。かといってルーベのようなゴージャスな振動吸収性が与えられているわけではなく、走りはレーシングバイクそのもの。鋭い加速性、機敏な反応性。それらはまぎれもなくTarmacだ。気持ち良いぐらい、すばしっこいレースバイクだ。
乗り味の面でとくに大きな向上を感じるのは路面追従性だ。同社が盛んに謳う「ヴァーティカル・コンプライアンス(垂直方向の柔軟性)」が高まったことで、タイヤが路面に吸い付くように接地する感触が確かにある。これならロングライドも苦にならない。
走りながらダルージオ氏にその感想を述べてみた。氏は身長170cmに満たない”小さなアメリカ人”だ。
「その通り、SL4に比べるとスムーズになったんだ。剛性を最適化しただけでなく、シートポスト固定方法の変更と新しいポストによってヴァーティカル・コンプライアンスを向上させている。とくに君(49)や僕(52)といった小サイズのフレームでその快適性の向上は顕著に感じるだろうね。数値以上に、その差は大きいと感じるはずだよ。このスムーズさは結果、速さにつながっているんだ」。
そして特筆すべきは下りの速さだ。路面から弾かれないスムーズさはそのまま速さにつながる。ステアリングは軽く切れ込み、連続する急コーナーでの切り返しもシャープにこなす。フォークもよく粘り、不快な微振動をカットする。まさに自由自在に操れる感覚で攻めて行ける。SL4も確かに速かったが、ギャップに弾かれたらどこかに飛んでしまいそうな危うさを感じていた。
グループで一列棒状に連なって飛ばしたダウンヒルで感じたバイクを操る快感は、今回のテストライドのハイライトだった。
フロントフォーク、バックフォークは強固で、しなるわけではないので、エンデュランスバイクのように粘るような路面追従性は期待できない。しかしロード本来の走りのなかで必要な路面追従性を十ニ分に備えている。
ハンドリングは極めてクイックだ。高速域ではピタリと安定するものの、ハンドルに軽く力を加えればスパッとレーンチェンジし、またすぐにピタリと安定する。例えばレーススピードで集団内で落車があったり、穴や小石を見つけたときの回避性能は素晴らしいものがある。
グリップをしっかり稼げるタイヤと、自分の適正空気圧、横剛性の高いホイールなど条件が揃えばダウンヒルのスーパーマシンとなる。
反面、ライドそのものに集中していないときや、例えばサイコンをいじりながらの片手運転などの際はふらついて安定しない。レースバイクとしてのステアリング特性が煮詰められているぶん、のんびりツーリング派には向かないだろう。これもSL4と共通の特性だ。例えば上半身が力んでしまうような、乗り方にまだ習熟していない初心者にはあまりおすすめできないクイックさだ。反面、上級者やレースマンにはこの上ない武器になる操作感だ。
ジオメトリーはもちろんレースとスピードライドを追求できるものが与えられている。ダルージオ氏曰く、各チューブ長、アングルなどの数値はSL4と共通とのことだ。
今までのSL4で感じていた高剛性、反応性といった突出した部分については、それがたとえ高性能の要素だったとしても、長く乗った際には早く脚にきたり、路面に跳ねたりと、美点はイコール弱点につながる要素だったのではないかという思いを強くした。
新Tarmacは「尖ったものを感じない、バランスがとれたバイク」という印象だが、長距離を乗る、あるいはレースの最終局面といった場面で脚が残せるなど、結果的に良いパフォーマンスを得られるバイクなのだと思う。
前世代まで同社がスローガンとしてきた lighter、stiffer、faster(軽く、硬く、速い)から、Better ride quality =つまり「走りが良くなった」と言い表されたことが体感できた3日間だった。
目を引く新形状や革新的な新機構は搭載されないぶん、オーソドックスな外観に仕上がっている新Tarmac。しかし今までになく時間と労力のかかった開発。その手法はロードバイクの進化にとって新たな方向性を切り拓いたと感じる。これに追従するのは、他社にとって容易なことではなさそうだ。これからはライダーである人間本位の開発力というものが問われることになるのだろう。
ディスクのブレーキングパワーに耐えられるように、フォーク末端やリアエンド周辺の剛性を高めている(高まっている)ことは想像に難くない。しかし乗り味としてはノーマルブレーキモデルとほとんど変わらなかった。これも“ライダー・ファースト・エンジニアード”の恩恵なのだろう。
フロントにはスルーアクスルを搭載するわけでもなく、ROVALホイールではフロントハブのエンド当たり面を大きな面積でとることで、ディスクロードに頻発しているFハブのズレ、固定力不足といった問題を回避している。グラベル(未舗装路)含めて激しく乗ったテストライドでも問題は発生しなかった。このホイールとセットで使うことで問題の発生は確実に抑えられる。クリンチャータイプながらこのROVALホイールは重量も軽く、上りでも引きずるような印象は皆無だった。性能面でチューブラータイプとの遜色はほぼ感じない。こういった出来の良いホイールを使えばクリンチャーホイールおよびディスクブレーキのデメリットはほぼ無くすことができると感じた。
ロード用油圧ディスクブレーキは現在のところシマノR785一択という現状だが、軽いタッチで十分な制動力を得られ、なんら不満は感じなかった。先入観としてある「制動力が高過ぎる」といったことはまったく無く、ストッピングパワーも徐々に立ち上がるので極めてコントローラブルだ。とはいえキャリパーブレーキモデルとはやや挙動が異なるため、グループ走行でダウンヒルを限界まで攻めるといった場面では「ノーマルブレーキの人とは一緒には下りたくない」というのが正直な印象だ。
全天候型のアドベンチャーバイクとしての色が濃くなるが、レースでの使用も十分なほど良く走るのはまぎれもなくTarmacだ。グランフォンド大会でスペシャライズド会長のマイク・シンヤード氏と一緒に走ったが、氏の選択はディスクの新Tarmacだった。
64歳のシンヤード氏の、その年齢を感じさせない勇姿を見ると、「もう人とは競わない」「レースには出ない」しかし「安楽なコンフォートモデルではなく、走りを極めたモデルを選びたい」というユーザー像は存在すると確信した。
新Tarmacのディスクモデルは、走れる大人のための最先端バイクたり得るだろう。
まず日本からの出国前にスペシャライズド・ジャパンからTarmac SL4を1ヶ月間貸出を受け、乗り込んだ。事前に何が発表されるかは日本法人も教えてくれなかったのだが、新Tarmacに違いないと予習をしておいたというわけだ。
かくしてメディアキャンプの地、サンタクルズには予想通り新Tarmacが待っていた。その名がSL5でなかったのは予想が外れたわけだが。
カリフォルニアの山野を3日間フルに走るテストライド
ここでは2日間のテストライドが予定されていた。初日がディスクブレーキ、2日目がノーマルブレーキモデル。そしてオプションの3日目がグランフォンド大会に参加という3日間のライドだ。
その間、カリフォルニア州の中でもとくに恵まれたライド環境を誇るスペシャライズド本社周辺の公道を走り尽くした。テストの2日とも150km、標高差約2000up。3日目は144kmのグランフォンドだから、合計3日間のグランフォンド走行というわけだ!
思わず歓声を上げてしまいたくなるほどの素晴らしいライド環境のもとで、ワインディングロード、九十九折れの細い林道、荒れた路面の急勾配のアップダウン、はてはグラベルなど、あらゆる路面状況の道がチョイスされた。コースを選んだスタッフからは、「新Tarmacのすべての性能を試してもらう」という意気込みが伝わってきた。「実走行テストを繰り返して生まれたバイクだから、徹底的に乗ってもらいたいんだ」とホスト役のスタッフは言う。
欧米の元プロ、プロに近い走力を持つ走り屋系バイクジャーナリスト約10名と、バイクファナティックを地で行くスペシャライズドの社員スタッフたちで3日間を走り倒した。プレゼンに登場した開発スタッフのクリス・ダルージオ氏らもメンバーだ。つまり意見交換をしながらのテストライドだ。
初日はディスクブレーキモデルのブレーキフィーリングと特性を楽しみつつ、そのポテンシャルを充分に感じることができた。先に言ってしまえば、2日目に乗ったノーマルブレーキモデルとの乗車感の差は少なく、共通した乗り味だった。ローターとブレーキ本体がフォークとリアエンド周辺にあることの重量を感じるものの、ほとんどそれだけの差と言っていいだろう。
そして3日目には新モデルの変化した点、その差を確かめるために改めてSL4に乗ってグランフォンド大会を走った。
スムーズさとバランスの良さを感じる新Tarmacの乗り味
では、乗り込むに連れて体感できた新Tarmacのインプレッションを綴ろう。私が乗ったのは49サイズ。事前に送ったRETULのフィッティングデータどおりにメカニックがポジションを仕上げてくれたので、マイバイクと言っていいほどに違和感なく乗れたことをまずは記しておく(同社はこういったサポート面も常に万全の体制で迎えてくれる)。SL4から新Tarmacに乗り換えてまず感じるのはスムーズさだ。SL4の剛性が高く、カリカリと加速し、ペダリング入力をまったく撓みなく受け止める印象とは大きく異る剛性感になっている。おそらくは49サイズに顕著だった、足の裏を撥ね返すようなBB周りの硬さはマイルドに抑えられた。「しなる」という表現まではいかないが、ペダリングが乱れたとしても適度な剛性感でそのバラツキを収めてくれるような懐の深さがある。
そして荒れた路面でスムーズだ。路面のクラックなどのギャップを舐めるように越えていく。SL4で感じた、一枚板のような硬さや跳ねてコントロールが難しいといったことが無いのだ。事前テストでホイールもタイヤも共通したものを使ってきたから、これは確かに差を感じる。しかも大きな差だ。
スムーズで快適。かといってルーベのようなゴージャスな振動吸収性が与えられているわけではなく、走りはレーシングバイクそのもの。鋭い加速性、機敏な反応性。それらはまぎれもなくTarmacだ。気持ち良いぐらい、すばしっこいレースバイクだ。
乗り味の面でとくに大きな向上を感じるのは路面追従性だ。同社が盛んに謳う「ヴァーティカル・コンプライアンス(垂直方向の柔軟性)」が高まったことで、タイヤが路面に吸い付くように接地する感触が確かにある。これならロングライドも苦にならない。
走りながらダルージオ氏にその感想を述べてみた。氏は身長170cmに満たない”小さなアメリカ人”だ。
「その通り、SL4に比べるとスムーズになったんだ。剛性を最適化しただけでなく、シートポスト固定方法の変更と新しいポストによってヴァーティカル・コンプライアンスを向上させている。とくに君(49)や僕(52)といった小サイズのフレームでその快適性の向上は顕著に感じるだろうね。数値以上に、その差は大きいと感じるはずだよ。このスムーズさは結果、速さにつながっているんだ」。
ヒルクライム、ダウンヒルともに軽く・速くなった
登りの軽さにも磨きがかかった。踏めば弾かれるように飛び出す反応性はSL4に軍配が上がるだろうが、新Tarmacは鋭く加速しながらもスムーズだ。BB周辺の跳ねっ返りが無く、トルクをかけて踏むのも回すのも両方得意だ。バイク重量の軽さ以上に軽く感じるクライミング性能は、ついついダンシングが楽しくなるほどだ。脚にこないマイルドさの恩恵をここでも感じることができる。そして特筆すべきは下りの速さだ。路面から弾かれないスムーズさはそのまま速さにつながる。ステアリングは軽く切れ込み、連続する急コーナーでの切り返しもシャープにこなす。フォークもよく粘り、不快な微振動をカットする。まさに自由自在に操れる感覚で攻めて行ける。SL4も確かに速かったが、ギャップに弾かれたらどこかに飛んでしまいそうな危うさを感じていた。
グループで一列棒状に連なって飛ばしたダウンヒルで感じたバイクを操る快感は、今回のテストライドのハイライトだった。
フロントフォーク、バックフォークは強固で、しなるわけではないので、エンデュランスバイクのように粘るような路面追従性は期待できない。しかしロード本来の走りのなかで必要な路面追従性を十ニ分に備えている。
ハンドリングは極めてクイックだ。高速域ではピタリと安定するものの、ハンドルに軽く力を加えればスパッとレーンチェンジし、またすぐにピタリと安定する。例えばレーススピードで集団内で落車があったり、穴や小石を見つけたときの回避性能は素晴らしいものがある。
グリップをしっかり稼げるタイヤと、自分の適正空気圧、横剛性の高いホイールなど条件が揃えばダウンヒルのスーパーマシンとなる。
反面、ライドそのものに集中していないときや、例えばサイコンをいじりながらの片手運転などの際はふらついて安定しない。レースバイクとしてのステアリング特性が煮詰められているぶん、のんびりツーリング派には向かないだろう。これもSL4と共通の特性だ。例えば上半身が力んでしまうような、乗り方にまだ習熟していない初心者にはあまりおすすめできないクイックさだ。反面、上級者やレースマンにはこの上ない武器になる操作感だ。
ジオメトリーはもちろんレースとスピードライドを追求できるものが与えられている。ダルージオ氏曰く、各チューブ長、アングルなどの数値はSL4と共通とのことだ。
尖った点が無くなり、総合的な性能が底上げされた
新Tarmacのコンセプト、“ライダーファースト・エンジニアード”のキモとなっている「サイズごとの開発と性能の適正化」については、自分の身体がひとつである以上、各サイズで同じ性能が実現できているかどうかは正確には体感できないものだ。しかし自分の乗った49サイズについては、剛性、ハンドリング特性など、性能の適正化は十分に感じることができた(エアロダイナミクスの向上については体感することはできなかったが)。今までのSL4で感じていた高剛性、反応性といった突出した部分については、それがたとえ高性能の要素だったとしても、長く乗った際には早く脚にきたり、路面に跳ねたりと、美点はイコール弱点につながる要素だったのではないかという思いを強くした。
新Tarmacは「尖ったものを感じない、バランスがとれたバイク」という印象だが、長距離を乗る、あるいはレースの最終局面といった場面で脚が残せるなど、結果的に良いパフォーマンスを得られるバイクなのだと思う。
前世代まで同社がスローガンとしてきた lighter、stiffer、faster(軽く、硬く、速い)から、Better ride quality =つまり「走りが良くなった」と言い表されたことが体感できた3日間だった。
目を引く新形状や革新的な新機構は搭載されないぶん、オーソドックスな外観に仕上がっている新Tarmac。しかし今までになく時間と労力のかかった開発。その手法はロードバイクの進化にとって新たな方向性を切り拓いたと感じる。これに追従するのは、他社にとって容易なことではなさそうだ。これからはライダーである人間本位の開発力というものが問われることになるのだろう。
ディスクブレーキモデルの可能性
ディスクブレーキモデルの日本での展開は少し先になりそうだが、そのポテンシャルについて触れておこう。ディスクのブレーキングパワーに耐えられるように、フォーク末端やリアエンド周辺の剛性を高めている(高まっている)ことは想像に難くない。しかし乗り味としてはノーマルブレーキモデルとほとんど変わらなかった。これも“ライダー・ファースト・エンジニアード”の恩恵なのだろう。
フロントにはスルーアクスルを搭載するわけでもなく、ROVALホイールではフロントハブのエンド当たり面を大きな面積でとることで、ディスクロードに頻発しているFハブのズレ、固定力不足といった問題を回避している。グラベル(未舗装路)含めて激しく乗ったテストライドでも問題は発生しなかった。このホイールとセットで使うことで問題の発生は確実に抑えられる。クリンチャータイプながらこのROVALホイールは重量も軽く、上りでも引きずるような印象は皆無だった。性能面でチューブラータイプとの遜色はほぼ感じない。こういった出来の良いホイールを使えばクリンチャーホイールおよびディスクブレーキのデメリットはほぼ無くすことができると感じた。
ロード用油圧ディスクブレーキは現在のところシマノR785一択という現状だが、軽いタッチで十分な制動力を得られ、なんら不満は感じなかった。先入観としてある「制動力が高過ぎる」といったことはまったく無く、ストッピングパワーも徐々に立ち上がるので極めてコントローラブルだ。とはいえキャリパーブレーキモデルとはやや挙動が異なるため、グループ走行でダウンヒルを限界まで攻めるといった場面では「ノーマルブレーキの人とは一緒には下りたくない」というのが正直な印象だ。
全天候型のアドベンチャーバイクとしての色が濃くなるが、レースでの使用も十分なほど良く走るのはまぎれもなくTarmacだ。グランフォンド大会でスペシャライズド会長のマイク・シンヤード氏と一緒に走ったが、氏の選択はディスクの新Tarmacだった。
64歳のシンヤード氏の、その年齢を感じさせない勇姿を見ると、「もう人とは競わない」「レースには出ない」しかし「安楽なコンフォートモデルではなく、走りを極めたモデルを選びたい」というユーザー像は存在すると確信した。
新Tarmacのディスクモデルは、走れる大人のための最先端バイクたり得るだろう。
提供:スペシャライズド・ジャパン 取材・レポート:綾野 真(シクロワイアード編集部)、photo:Alex.Chiu