2014/04/15(火) - 20:49
KOMと並びクォータのハイエンドモデルとして位置づけられる「K-UNO」。アールの与えられたトップチューブによって流麗フォルムに仕立てられたこのモデルは、レースバイクと同等のレスポンスを備えつつもロングホイールベースなどの設計より、乗り心地をはじめとする快適性も追求されている。しかしながらロードバイクならではの優れたレスポンスを理想とする同社らしく、加速性と快適性は、市場にあふれるエンデュランス系モデルとはひと味違った硬派なバランスに仕上げられている。
「クォータのフラッグシップであるKOMは、Ag2rやアグリチュベルなどのプロチームに供給されて、優れた結果を残してきた。その後にグランフォンドやロングライドを楽しむライダーにも、乗り心地をはじめ快適性を、もう少し高めた毛色の違うロードバイクを提案したいということで登場したのが、ロングホイールベース設計のK-UNOなんだ。」
「KOMではダウンチューブとチェーンステーを、ハンガーシェル対して面一(つらいち)になるような大きな断面で接合して、ボリューム感にあふれるハンガー周りを形成してきたけれど、この設計は優れた運動性能を実現していたので、引き続きK-UNOにも採用することになった」と今中さんが語るように、K-UNOはワイドシェルタイプのPF86規格をベースに、ボリューム感にあふれるハンガー周りを形成して、高トルクのペダリングもガッチリと受け止めている。
「トップチューブは、横方向に扁平したワイドなデザインとすることで横剛性を確保して、同時にシートチューブに向かって緩やかなアールを描いて振動吸収性を高めている。ちょうどK-UNOが登場したころ(2012年モデル)からクォータでもこの形状を採用するようになり、そんなモデルが市場にも数多く出てきた。まさにK-UNOのフレーム形状は絶好のタイミングといえるものだった。
そして乗ってみると、ロングホイールベースでエンデュランスを意識したモデルなのですが、レスポンスがよくてシャキシャキと進んでくれる。グランフォンドやロングライドといった走りを意識しているけれど、レーシーな部分をしっかりと残すのはクォータならではといえるね。」
ジオメトリーを見てもロングライドを強く意識したモデルではないことがよく分かる。チェーンステーの長さは400mm前半の数値で、ヘッドチューブはLサイズ以上のモデルで10mmほど長いのを除いて、レースモデルとほぼ同様に設計され(KOM AirのLサイズと比べた場合)。さらにテーパードヘッドチューブのロワーベアリングは、最も大きな規格の1-1/2インチとしていることからも、K-UNOが重視する性能はコンフォートよりもレスポンスのよさに置かれている。
快適性の追求は、先に触れたアーチシェイプのトップチューブ、細身のシートステー、オーソドックスな27.mm径を採用したシートポストを含めたフレームのアッパー側に加えて、エンドに向かって細さを強調したフロントフォークのブレードも、振動吸収性の向上に大きな役割を果たしている。
クォータのレース系モデルのフロントフォークといえばKOMに代表されるように、クラウンからエンド部分まで太めのブレードで仕上げるタイプを主流としているが、K-UNOはブレードの形状を見てもKOMと差別化する性能を追求していることがよく分かる。
「重量もフレーム単体で860gという軽さに仕上げられている(フロントフォーク重量は350g)。通常800g台のモデルというと、柔らかさのあるライディングフィールを想像したくなるけれども、K-UNOにそうした感覚はない。K-UNOはプロチームに供給されたことのない、完全に一般のライダーを対象としたモデル。けれども重量は軽くて、BB周りも硬く踏力に対してのレスポンスにも優れているので、ロードレースやヒルクライム、グランフォンドでも一所懸命走ってタイムを削りたい人など、中・上級者のライダーに向いている一台といえるでしょう」
吉本 : アーチ状のトップチューブをはじめ、見た目からすると快適性を強く意識しているのかなと思うのですが、走らせるとかなりレーシーですね。
フレーム形状を見るとフレーム下部のパワーラインがガッチリと太くパワーロスを防ぎ、トップチューブもヘッド側はヘッドチューブと同じレベルに横扁平されていて、ねじれ剛性が高められていますね。しかも指でチューブをはじいてみるとペコペコな感じはなく、硬質な反響音から十分な肉厚があることが分かります。これもレーシーな走りに貢献しているのでしょう。
今中 : 僕もK-UNOを普段から使っているわけではなくて、こうして試乗や社内でほかのモデルの比較する時に乗ると、その走りは改めてレーサーだと感じるね。KOM EVOなどと比べると剛性感は似ているけれど、K-UNOは長めのホイールベースによって安定志向になっているのが違いかな。
吉本 : 前三角は面でトルクを支えてくれるような力強さがあって、それこそパワーのあるレーサーが乗っても不足はない程だと感じました。僕には十二分の剛性でした。トルクを逃がしてくれるような感覚はKIRAL程ではありませんが、脚当たりが悪いと感じるレベルでもないです。おそらくバックステーなどで力を逃がしていると感じました。
今中 : 確かにK-UNOは前三角が硬いから、それで剛性を調整しているんだろうね。
吉本 : 剛性が高くて反応性に優れる性能を武器に、上りも軽く走れますね。ただその硬さゆえに、つい踏まされてしまう面もあります。だから僕みたいに脚に覚えのないライダーが乗ると、勢いよく走れる反面、脚がいっぱいになるのは予想よりも早かったです。そういった意味では、KIRALの方が自分にとって扱いやすさはありました。
とはいえ脚にきそうになったときは、軽めのギヤでケイデンスを意識したペダリングをすると軽く走れるので、フレームに慣れて、使いこなせるようになれば軽い走りのメリットは大きいですね。あと、これは余談なのですが、試乗をしたバイクの順番もK-UNOのフィーリングに影響を及ぼした可能性もあります。しなやかなKIRALの後にK-UNOに乗ったので、よりフレームの硬さが際立ったのかもしれません。
今中 : そういえば甲府盆地のちょっと高いところにフルーツラインという道があって、そこはダッシュで駆け抜けられる30mぐらいの上りを繰り返す、いい感じのアップダウンのあるルートなんだよね。この道でレーシングドライバーの中山友貴くん(GT300、スーパーフォーミュラーに参戦するレーサーでK-UNOを愛用)とインターバルトレーニングをすることがあるのだけれど、そういうコースで一気に駆け上がるような走り方をすると、K-UNOの性能はすごく生きてくるんだよ。
吉本 : なるほど分かる気がします。K-UNOはフレーム重量が軽いですし、フレーム剛性の高さを生かして一気に加速できるような気がしますね。
今中 : イタリア語で「スカット」(跳ね上がる)って言い方があるんだけど、K-UNOはまさにそれで一気にスピードを上げるときの駆け出しの早さ、レスポンスの良さは気持ちいいよね。
吉本 : 運動性能はまるっきりレーサーですね。普通に走っているだけなら、言われなければロングホイールベースであることは気がつかないかもしれません。下りやコーナリングでは高い安定感を得られるので、「あれ、もしかすると長いかも?」とは思いますが。
今中 : 確かにそうだね。K-UNOの性能を発揮できる走りを、ロングライドやグランフォンドでできたら相当の脚力の持ち主だろうね。
吉本 : イタリアのグランフォンドはレベルが半端ないですよね。集団前方はロードレースですし、グランフォンドのプロ選手ばかりですから。K-UNOはロングライドやグランフォンドを意識して快適性を追求しているものの、そこはロードレースがベースにあるイタリアという国だけあって、多くのロングライドモデルにあるような安楽さはないですね。
あくまでも速さを求めることがベースにあって、それを引き出すための乗り心地や安定性を追求しているということなのでしょう。したがって実業団レベルのレーサーでも十二分にレースでアドバンテージを得られる性能があると思います。僕なんかはスプリントをするにも十分でした。
今中 : さすがにバリバリのスプリンターまでは行かないにしても、パンチャーの脚質だったら十分トップレースに対応できるだけの性能を持っているよ。
反応性をそのままに快適性を高めたグランフォンド向け
「クォータのフラッグシップであるKOMは、Ag2rやアグリチュベルなどのプロチームに供給されて、優れた結果を残してきた。その後にグランフォンドやロングライドを楽しむライダーにも、乗り心地をはじめ快適性を、もう少し高めた毛色の違うロードバイクを提案したいということで登場したのが、ロングホイールベース設計のK-UNOなんだ。」
「KOMではダウンチューブとチェーンステーを、ハンガーシェル対して面一(つらいち)になるような大きな断面で接合して、ボリューム感にあふれるハンガー周りを形成してきたけれど、この設計は優れた運動性能を実現していたので、引き続きK-UNOにも採用することになった」と今中さんが語るように、K-UNOはワイドシェルタイプのPF86規格をベースに、ボリューム感にあふれるハンガー周りを形成して、高トルクのペダリングもガッチリと受け止めている。
「トップチューブは、横方向に扁平したワイドなデザインとすることで横剛性を確保して、同時にシートチューブに向かって緩やかなアールを描いて振動吸収性を高めている。ちょうどK-UNOが登場したころ(2012年モデル)からクォータでもこの形状を採用するようになり、そんなモデルが市場にも数多く出てきた。まさにK-UNOのフレーム形状は絶好のタイミングといえるものだった。
そして乗ってみると、ロングホイールベースでエンデュランスを意識したモデルなのですが、レスポンスがよくてシャキシャキと進んでくれる。グランフォンドやロングライドといった走りを意識しているけれど、レーシーな部分をしっかりと残すのはクォータならではといえるね。」
市場のニーズを読み取り登場したK-UNO
ジオメトリーを見てもロングライドを強く意識したモデルではないことがよく分かる。チェーンステーの長さは400mm前半の数値で、ヘッドチューブはLサイズ以上のモデルで10mmほど長いのを除いて、レースモデルとほぼ同様に設計され(KOM AirのLサイズと比べた場合)。さらにテーパードヘッドチューブのロワーベアリングは、最も大きな規格の1-1/2インチとしていることからも、K-UNOが重視する性能はコンフォートよりもレスポンスのよさに置かれている。
快適性の追求は、先に触れたアーチシェイプのトップチューブ、細身のシートステー、オーソドックスな27.mm径を採用したシートポストを含めたフレームのアッパー側に加えて、エンドに向かって細さを強調したフロントフォークのブレードも、振動吸収性の向上に大きな役割を果たしている。
クォータのレース系モデルのフロントフォークといえばKOMに代表されるように、クラウンからエンド部分まで太めのブレードで仕上げるタイプを主流としているが、K-UNOはブレードの形状を見てもKOMと差別化する性能を追求していることがよく分かる。
「重量もフレーム単体で860gという軽さに仕上げられている(フロントフォーク重量は350g)。通常800g台のモデルというと、柔らかさのあるライディングフィールを想像したくなるけれども、K-UNOにそうした感覚はない。K-UNOはプロチームに供給されたことのない、完全に一般のライダーを対象としたモデル。けれども重量は軽くて、BB周りも硬く踏力に対してのレスポンスにも優れているので、ロードレースやヒルクライム、グランフォンドでも一所懸命走ってタイムを削りたい人など、中・上級者のライダーに向いている一台といえるでしょう」
クォータ K-UNO スペック
フレーム | カーボンモノコック |
フロントフォーク | カーボン製 トップ=1-1/8インチ、ボトム=1-1/2インチ インテグラルオーバーサイズ |
重量 | フレーム単体860g、フロントフォーク350g |
サイズ | XS(460)、S(490)、M(510)、L(530)、XL(550)C-T |
カラー | ブラック/レッド、ブラック/イエロー、マットブラック |
税抜価格 | 361,900円(フレームセット) 685,000円(デュラエース仕様完成車) 508,000円(アルテグラ仕様完成車) |
インプレッション
パンチャーの脚質ならトップレースに対応できる性能がある(今中大介)
高剛性で反応性に優れる走行性能はレースバイクといっていい(吉本司)
吉本 : アーチ状のトップチューブをはじめ、見た目からすると快適性を強く意識しているのかなと思うのですが、走らせるとかなりレーシーですね。
フレーム形状を見るとフレーム下部のパワーラインがガッチリと太くパワーロスを防ぎ、トップチューブもヘッド側はヘッドチューブと同じレベルに横扁平されていて、ねじれ剛性が高められていますね。しかも指でチューブをはじいてみるとペコペコな感じはなく、硬質な反響音から十分な肉厚があることが分かります。これもレーシーな走りに貢献しているのでしょう。
今中 : 僕もK-UNOを普段から使っているわけではなくて、こうして試乗や社内でほかのモデルの比較する時に乗ると、その走りは改めてレーサーだと感じるね。KOM EVOなどと比べると剛性感は似ているけれど、K-UNOは長めのホイールベースによって安定志向になっているのが違いかな。
吉本 : 前三角は面でトルクを支えてくれるような力強さがあって、それこそパワーのあるレーサーが乗っても不足はない程だと感じました。僕には十二分の剛性でした。トルクを逃がしてくれるような感覚はKIRAL程ではありませんが、脚当たりが悪いと感じるレベルでもないです。おそらくバックステーなどで力を逃がしていると感じました。
今中 : 確かにK-UNOは前三角が硬いから、それで剛性を調整しているんだろうね。
吉本 : 剛性が高くて反応性に優れる性能を武器に、上りも軽く走れますね。ただその硬さゆえに、つい踏まされてしまう面もあります。だから僕みたいに脚に覚えのないライダーが乗ると、勢いよく走れる反面、脚がいっぱいになるのは予想よりも早かったです。そういった意味では、KIRALの方が自分にとって扱いやすさはありました。
とはいえ脚にきそうになったときは、軽めのギヤでケイデンスを意識したペダリングをすると軽く走れるので、フレームに慣れて、使いこなせるようになれば軽い走りのメリットは大きいですね。あと、これは余談なのですが、試乗をしたバイクの順番もK-UNOのフィーリングに影響を及ぼした可能性もあります。しなやかなKIRALの後にK-UNOに乗ったので、よりフレームの硬さが際立ったのかもしれません。
今中 : そういえば甲府盆地のちょっと高いところにフルーツラインという道があって、そこはダッシュで駆け抜けられる30mぐらいの上りを繰り返す、いい感じのアップダウンのあるルートなんだよね。この道でレーシングドライバーの中山友貴くん(GT300、スーパーフォーミュラーに参戦するレーサーでK-UNOを愛用)とインターバルトレーニングをすることがあるのだけれど、そういうコースで一気に駆け上がるような走り方をすると、K-UNOの性能はすごく生きてくるんだよ。
吉本 : なるほど分かる気がします。K-UNOはフレーム重量が軽いですし、フレーム剛性の高さを生かして一気に加速できるような気がしますね。
今中 : イタリア語で「スカット」(跳ね上がる)って言い方があるんだけど、K-UNOはまさにそれで一気にスピードを上げるときの駆け出しの早さ、レスポンスの良さは気持ちいいよね。
吉本 : 運動性能はまるっきりレーサーですね。普通に走っているだけなら、言われなければロングホイールベースであることは気がつかないかもしれません。下りやコーナリングでは高い安定感を得られるので、「あれ、もしかすると長いかも?」とは思いますが。
今中 : 確かにそうだね。K-UNOの性能を発揮できる走りを、ロングライドやグランフォンドでできたら相当の脚力の持ち主だろうね。
吉本 : イタリアのグランフォンドはレベルが半端ないですよね。集団前方はロードレースですし、グランフォンドのプロ選手ばかりですから。K-UNOはロングライドやグランフォンドを意識して快適性を追求しているものの、そこはロードレースがベースにあるイタリアという国だけあって、多くのロングライドモデルにあるような安楽さはないですね。
あくまでも速さを求めることがベースにあって、それを引き出すための乗り心地や安定性を追求しているということなのでしょう。したがって実業団レベルのレーサーでも十二分にレースでアドバンテージを得られる性能があると思います。僕なんかはスプリントをするにも十分でした。
今中 : さすがにバリバリのスプリンターまでは行かないにしても、パンチャーの脚質だったら十分トップレースに対応できるだけの性能を持っているよ。
提供:インターマックス text:吉本司 編集:シクロワイアード