2014/04/15(火) - 20:49
山岳王の称号であるキング・オブ・マウンテンの略称を冠したクォータのフラッグシップKOM。2007年にデビューを飾ったこの軽量オールラウンダーは年を追うごとに着実な進化を遂げ、グランツールをはじめ多くのプロレースで高いパフォーマンスを示してきた。そして2014年は、原点となるモデル名を冠して、一から設計を見直した「KOM」となりラインナップへ復活した。
「2013年モデルのKOM Air(以下Air)は、軽量性に特化した分優しい乗り味になり、よりヒルクライムやエンデュランス性能に特化したモデル。
これはこれで確立されているモデルだけれど、元々KOMといえば超軽量で、ヒルクライムだけでなくアタックやスプリントもこなせるオールラウンドな高性能が評価されてきた。
こうした乗り味を求めるユーザーの声に応えて新設計されたのが今回の2014KOMなんだ。開発テーマは、Airの重量と同じレベルながら剛性が高いモデルを目指したこと。」と今中氏は語る。
その言葉にもあるように新型KOMは、エアーとは全くの別ものといえるボリューム感にあふれるフォルムながら、フレーム単体で780g(カタログ値)という超軽量を実現しているのは驚かされる。
ハンガーシェルは次世代スタンダーといわれるBB368規格を採用した。この幅広なハンガーシェルを、チェーステーが外側から支えるようなハンガー部の造形がユニークだ。
シートチューブとダウンチューブを跨ぐようにして配置されるリブは初代モデルから受け継がれる形状で、角形に成形されたチェーンステーとともにKOMとクォータの1つの特徴にもなっている。こうしてハンガー周りを強化したKOMだが、同時に過剛性を防ぎ、ペダリングの快適性を高めるクォータならではの仕様があるという。
「一般的にダウンチューブは、ハンガーシェルの中心と一致するように接合されることが多いけれども、KOMは少し異なっている。ダウンチューブに対するハンガーシェルの接合位置を、少しだけ下側(地面側)にあえてオフセットしているんだ。乗ってみて得られる感覚でいうと、この仕様によってわずかなねじれが演出されていて、脚当たりをよくして快適なペダリングが得られるように思えるんだ。この手法はKOMだけでなく、クォータの他のモデルでも採用されている」
そしてボリュームアップしたフレームの剛性にマッチするように、フロントフォークはAirよりも力強いフォルムが与えられた。テーパードヘッドチューブのロワーベアリングは、現行の規格では最大径となる1-1/2インチに設計してヘッド部の剛性を高め、フォーククラウンからブレード先端に至るまで大きな断面口径をとして、一体感に優れるフロントフォークの高剛性が追求されている。重量的にはエアーよりも60g重くなった360gだが、軽量化よりも剛性アップのメリットの方が断然大きいといえるだろう。
またバックステーについてはクォータの他のモデルでも見られるようにシートステーの接合位置を下げ、さらに横扁平の形状を与えたシートステー形状によってレスポンスのよさを損なうことなく、振動吸収性を高めているという。
「新しいKOMはAirと同等の軽量性を持ちながら、スプリンターまで対応できる高い剛性を備えていて、よりロードレースの性能に特化した1台といえるね。今シーズンからTeam UKYOに供給しているのもそうした性能があるからなんだ。またKOMだけじゃないけれど、サイズもXXS(トップチューブ長は485.2㎜)から用意されているので、より幅広いユーザーの人に乗ってもらえると思うよ」
今中 : マッチョ感の強い第一印象からするとがちがちな乗り味を想像しちゃうけど、走ってみると意外にフレンドリーだよね。
吉本 : 確かにそうですね。踏んだときに弱い印象は微塵もありませんが、肉薄なチューブによって、たわみというレベルではないものの絶妙に脚にかかるストレスを抑えてくれ、大きなトルクをかけるペダリングもしやすかったです。
今中 : 重量も軽くなったのに、でもガツンと踏んでもフレームが負けることはないね。そういう意味では良く進化していると思うよ。以前のKOMはチューブの角断面がもう少し四角に近かった。新生KOMも四角だけど角が丸みを帯びている。断面口径は広げられたけれど、その丸みのあるチューブの形状がペダリングの味付けを若干マイルドにしているかもしれないね。
吉本 : 肉厚とボリュームのバランスがよくて、大径肉薄チューブの利点がしっかり感じられます。パリッとしたペダリングフィールがあり、重量も軽いので加速や上りの軽快さはKOM独特のよさをしっかりと受け継いでいますね。上りはダンシングでの振りも軽いし、シッティングでもサクサク進んでくれる。平地や緩斜面などで大きなトルクをかけ続けるような場面では、微妙に力をいなしてスムーズにペダリングができて、バイクも流れるように進む感覚も強いので、無駄脚を使うことも少ないですね。
今中 : マイルドな踏み心地といってもパワーロスをしているわけではなくて、ペダリング時の反力がガツンとこないから効率的に踏めて、それがあらゆる場面で利点になる。踏力に対する反力の出し方は、KURAROやK-UNOよりもKOMは優しくて、ライダーにアジャストしてくれるような気がするね。
吉本 : これだけボリュームがあるのに、乗り心地も悪くないですよね。エンデュランスモデルのように、どこかを積極的にたわませるわけではありませんが、肉薄のチューブと断面形状を上手く使って、フレーム全体で振動をうまく和らげてくれる感覚があります。安楽というレベルではありませんが、レースバイクとしては十二分の乗り心地でしょう。
今中 : KIRALぐらいのチューブ肉厚である程度の強度があれば、そういうメリハリのある形で乗り心地を高めることもできだろうけど、KOMだとフレーム全体で衝撃を和らげるみたいな感じになるのかな。
吉本 : 振動の減衰も早いので、必要なロードインフォメーションだけをしっかり届けてくれる。しかも少し重心位置が低いクォータ共通の優れた安定感もあるので、軽量モデルにありがちな腰高でふわふわとした乗車感覚はないですね。ハンドリングもピーキーな感覚がないので扱いやすくて安心して乗れます。
今中 : 速く、遠くに走ることができても、疲れや怖さを感じるようでは困るわけで、そういう意味でKOMは、両方をストレスなく上手にバランスしているね。
吉本 : 基本的にはレーシングモデルですが、乗り心地や脚当たりも良好だし、操作性も素直なので結構ロングライドもいけちゃうのでは? まあ、ヘッドチューブの長さは人によって合わないこともあると思いますが。
吉本 : ロングライドを楽しむようなライダーには、上り勾配や風向きの変化でちょっと踏み直しをしたいときにストレスにならない踏みの軽さと、安心できる素直な操作性はとくに必要だと思いますが、そうした部分への対応性も高くて、操作性についてはフロントフォークの良さが大きく貢献していますね。
今中 : ピーキーじゃない操作性というのは確かにそうだね。KOMのフレームだと、これくらいボリュームのあるフロントフォークじゃないとダメだよね。今はブレーキもものすごくよく効くから、しっかりコントロールできるのはクォータの強みだよ。ガツンと効くときにナーバスに動いてしまうとストレスだし。
吉本 : KOMのフォークはクラウンからブレードまでの一体感が強いですね。ブレードの先を動かすブランドもあると思うのですが、先を動かすタイプは制動力のあるブレーキだと内側に入り込んで癖を強く感じてしまう。レースでは落車回避とかハードブレーキングをする場面もあると思うし、そうしたときに先が動くタイプより、KOMみたいなフォークの方が挙動は安定するのかなと。
今中 : テーパードコラム仕様で、そこからしっかり作っているからね。僕はブレードが細くて突っ張り感のあるタイプがだめなので、クォータみたいなのが好みだね。
吉本 : ボリュームがあるけれど嫌な硬さがないです。チューブ肉厚のコントロールで上手にやっているのか、不快な振動もちゃんとカットしてくれる。
今中 : ブレードを動かさない割に乗り心地はいいよね。自分はもっと硬いフレームでもいいけど、KOMほどの乗りやすさがあれば時速90km超えても安定していそうだね。これだけ軽量なフレームで、その速度域までナーバスじゃないのはおもしろいね。
吉本 : エアロ系のホイールを履くユーザーも多いでしょうし、ナーバスにならない操作性や安定感はとても大切だと思います。特に一般のライダーは、プロ選手などに比べて身体能力やスキルも劣るわけで、なおさらですね。
そうした意味でKOMは、ピュアレーサーながら多くのライダーが快適に速さを楽しむことのできる好パッケージの1台だと感じました。
着実な変化を遂げるピュアレーシングバイク KOM
「2013年モデルのKOM Air(以下Air)は、軽量性に特化した分優しい乗り味になり、よりヒルクライムやエンデュランス性能に特化したモデル。
これはこれで確立されているモデルだけれど、元々KOMといえば超軽量で、ヒルクライムだけでなくアタックやスプリントもこなせるオールラウンドな高性能が評価されてきた。
こうした乗り味を求めるユーザーの声に応えて新設計されたのが今回の2014KOMなんだ。開発テーマは、Airの重量と同じレベルながら剛性が高いモデルを目指したこと。」と今中氏は語る。
その言葉にもあるように新型KOMは、エアーとは全くの別ものといえるボリューム感にあふれるフォルムながら、フレーム単体で780g(カタログ値)という超軽量を実現しているのは驚かされる。
力強さと優しさの融合を目指した
「KOMはAirと同様の重量を得ながら高剛性を実現するために、チューブの断面口径を大きくしている。全体的にかなり太くなっているけれど、とくに目立つのはダウンチューブとトップチューブ。トップチューブは三角断面で横方向の幅を大きくとってヘッド部のねじれ剛性を高めている。ダウンチューブは比較的オーソドックスなかまぼこ状の断面形状にして、面を作ることで横剛性を上げて、さらにハンガーシェルに対してほぼ面一(つらいち)で接合するほどの大口径に成型することでパワーロスを防いでいるね」ハンガーシェルは次世代スタンダーといわれるBB368規格を採用した。この幅広なハンガーシェルを、チェーステーが外側から支えるようなハンガー部の造形がユニークだ。
シートチューブとダウンチューブを跨ぐようにして配置されるリブは初代モデルから受け継がれる形状で、角形に成形されたチェーンステーとともにKOMとクォータの1つの特徴にもなっている。こうしてハンガー周りを強化したKOMだが、同時に過剛性を防ぎ、ペダリングの快適性を高めるクォータならではの仕様があるという。
「一般的にダウンチューブは、ハンガーシェルの中心と一致するように接合されることが多いけれども、KOMは少し異なっている。ダウンチューブに対するハンガーシェルの接合位置を、少しだけ下側(地面側)にあえてオフセットしているんだ。乗ってみて得られる感覚でいうと、この仕様によってわずかなねじれが演出されていて、脚当たりをよくして快適なペダリングが得られるように思えるんだ。この手法はKOMだけでなく、クォータの他のモデルでも採用されている」
そしてボリュームアップしたフレームの剛性にマッチするように、フロントフォークはAirよりも力強いフォルムが与えられた。テーパードヘッドチューブのロワーベアリングは、現行の規格では最大径となる1-1/2インチに設計してヘッド部の剛性を高め、フォーククラウンからブレード先端に至るまで大きな断面口径をとして、一体感に優れるフロントフォークの高剛性が追求されている。重量的にはエアーよりも60g重くなった360gだが、軽量化よりも剛性アップのメリットの方が断然大きいといえるだろう。
またバックステーについてはクォータの他のモデルでも見られるようにシートステーの接合位置を下げ、さらに横扁平の形状を与えたシートステー形状によってレスポンスのよさを損なうことなく、振動吸収性を高めているという。
「新しいKOMはAirと同等の軽量性を持ちながら、スプリンターまで対応できる高い剛性を備えていて、よりロードレースの性能に特化した1台といえるね。今シーズンからTeam UKYOに供給しているのもそうした性能があるからなんだ。またKOMだけじゃないけれど、サイズもXXS(トップチューブ長は485.2㎜)から用意されているので、より幅広いユーザーの人に乗ってもらえると思うよ」
クォータ KOM スペック
フレーム | カーボンモノコック |
フロントフォーク | カーボン製 トップ=1-1/8インチ、ボトム=1-1/2インチ インテグラルオーバーサイズ |
重量 | フレーム単体780g、フロントフォーク360g |
サイズ | XXS(435)、XS(465)、S(485)、M(515)、L(535)C-T |
カラー | ホワイト/レッド、ブラック/グリーン、ダークグレー |
税抜価格 | 376,190円(フレームセット) 705,00円(デュラエース仕様完成車) 523,500円(アルテグラ仕様完成車) |
インプレッション
重量が軽くなったのに、ガツンと踏んでもフレームが負けない(今中大介)
加速や上りの軽快さはKOM独特のよさをしっかりと受け継いでいる(吉本司)
今中 : マッチョ感の強い第一印象からするとがちがちな乗り味を想像しちゃうけど、走ってみると意外にフレンドリーだよね。
吉本 : 確かにそうですね。踏んだときに弱い印象は微塵もありませんが、肉薄なチューブによって、たわみというレベルではないものの絶妙に脚にかかるストレスを抑えてくれ、大きなトルクをかけるペダリングもしやすかったです。
今中 : 重量も軽くなったのに、でもガツンと踏んでもフレームが負けることはないね。そういう意味では良く進化していると思うよ。以前のKOMはチューブの角断面がもう少し四角に近かった。新生KOMも四角だけど角が丸みを帯びている。断面口径は広げられたけれど、その丸みのあるチューブの形状がペダリングの味付けを若干マイルドにしているかもしれないね。
吉本 : 肉厚とボリュームのバランスがよくて、大径肉薄チューブの利点がしっかり感じられます。パリッとしたペダリングフィールがあり、重量も軽いので加速や上りの軽快さはKOM独特のよさをしっかりと受け継いでいますね。上りはダンシングでの振りも軽いし、シッティングでもサクサク進んでくれる。平地や緩斜面などで大きなトルクをかけ続けるような場面では、微妙に力をいなしてスムーズにペダリングができて、バイクも流れるように進む感覚も強いので、無駄脚を使うことも少ないですね。
今中 : マイルドな踏み心地といってもパワーロスをしているわけではなくて、ペダリング時の反力がガツンとこないから効率的に踏めて、それがあらゆる場面で利点になる。踏力に対する反力の出し方は、KURAROやK-UNOよりもKOMは優しくて、ライダーにアジャストしてくれるような気がするね。
吉本 : これだけボリュームがあるのに、乗り心地も悪くないですよね。エンデュランスモデルのように、どこかを積極的にたわませるわけではありませんが、肉薄のチューブと断面形状を上手く使って、フレーム全体で振動をうまく和らげてくれる感覚があります。安楽というレベルではありませんが、レースバイクとしては十二分の乗り心地でしょう。
今中 : KIRALぐらいのチューブ肉厚である程度の強度があれば、そういうメリハリのある形で乗り心地を高めることもできだろうけど、KOMだとフレーム全体で衝撃を和らげるみたいな感じになるのかな。
吉本 : 振動の減衰も早いので、必要なロードインフォメーションだけをしっかり届けてくれる。しかも少し重心位置が低いクォータ共通の優れた安定感もあるので、軽量モデルにありがちな腰高でふわふわとした乗車感覚はないですね。ハンドリングもピーキーな感覚がないので扱いやすくて安心して乗れます。
今中 : 速く、遠くに走ることができても、疲れや怖さを感じるようでは困るわけで、そういう意味でKOMは、両方をストレスなく上手にバランスしているね。
吉本 : 基本的にはレーシングモデルですが、乗り心地や脚当たりも良好だし、操作性も素直なので結構ロングライドもいけちゃうのでは? まあ、ヘッドチューブの長さは人によって合わないこともあると思いますが。
「ロングライドやグランフォンドを楽しむ人にも乗ってもらいたい」
今中 : ロングライドやグランフォンドを楽しむ人にも乗ってもらいたいね。疲れにくいし、上りや平地で踏みたいときのレスポンスもいいので、ロードレーサーらしい走りが楽しめる。ヘッドチューブの長さは僕で首下がりのステムが欲しいぐらいのレベルなので一般の方にも対応できるでしょう。吉本 : ロングライドを楽しむようなライダーには、上り勾配や風向きの変化でちょっと踏み直しをしたいときにストレスにならない踏みの軽さと、安心できる素直な操作性はとくに必要だと思いますが、そうした部分への対応性も高くて、操作性についてはフロントフォークの良さが大きく貢献していますね。
今中 : ピーキーじゃない操作性というのは確かにそうだね。KOMのフレームだと、これくらいボリュームのあるフロントフォークじゃないとダメだよね。今はブレーキもものすごくよく効くから、しっかりコントロールできるのはクォータの強みだよ。ガツンと効くときにナーバスに動いてしまうとストレスだし。
吉本 : KOMのフォークはクラウンからブレードまでの一体感が強いですね。ブレードの先を動かすブランドもあると思うのですが、先を動かすタイプは制動力のあるブレーキだと内側に入り込んで癖を強く感じてしまう。レースでは落車回避とかハードブレーキングをする場面もあると思うし、そうしたときに先が動くタイプより、KOMみたいなフォークの方が挙動は安定するのかなと。
今中 : テーパードコラム仕様で、そこからしっかり作っているからね。僕はブレードが細くて突っ張り感のあるタイプがだめなので、クォータみたいなのが好みだね。
吉本 : ボリュームがあるけれど嫌な硬さがないです。チューブ肉厚のコントロールで上手にやっているのか、不快な振動もちゃんとカットしてくれる。
今中 : ブレードを動かさない割に乗り心地はいいよね。自分はもっと硬いフレームでもいいけど、KOMほどの乗りやすさがあれば時速90km超えても安定していそうだね。これだけ軽量なフレームで、その速度域までナーバスじゃないのはおもしろいね。
吉本 : エアロ系のホイールを履くユーザーも多いでしょうし、ナーバスにならない操作性や安定感はとても大切だと思います。特に一般のライダーは、プロ選手などに比べて身体能力やスキルも劣るわけで、なおさらですね。
そうした意味でKOMは、ピュアレーサーながら多くのライダーが快適に速さを楽しむことのできる好パッケージの1台だと感じました。
提供:インターマックス text:吉本司 編集:シクロワイアード