2014/03/31(月) - 23:16
ツール・ド・フランスに代表されるステージレースを勝つためのオールラウンドバイク、それがフェルトの誇るFシリーズだ。今回のVol.4では、AR2と同グレードにあたる「F2」のインプレッションを通じ、その比較と検証を行った。インプレライダーの対談も含め読み進んで欲しい。
度重なるモデルチェンジを経ながらも、そのオーソドックスなフォルムは初代から堅持されており、現行モデルは2013年に大きな設計変更を行っている。今回のテストバイクは、AR2と同グレードにあたる「F2」。コンポーネントにシマノ アルテグラDi2を搭載した、628,000円(税抜)というプライスの完成車だ。
「F2」はフレーム形状や工法はハイエンドモデルである「FRD」と同様であり、強度を保ちながらも軽さと高剛性をバランスよくミックスさせている。使用するカーボンはフレームが「UHC ADVANCED」、フォークにはワンランク高品質な「Ultimate+Nano」であり、この部分はAR2と共通だ。
ヘッドチューブは上1-1/8”、下1-1/2”のテーパードヘッド。高い旋回性能と制動力を発揮させ、フォークの性能を向上させている。シートステーも一体型のモノステーからツインチューブ型に変更されたことで、ねじれを抑え、高い運動性能を実現していることも特徴である。
ボトムブラケットはBB30。一体成型の大口径のダウンチューブからチェーンステーに至るフレーム下側部分と合わせることで、より高いパワー伝達性能を追求した格好だ
「フェルトらしさを感じるピュアレーシングバイク」
軽くて硬いというフェルトらしさを体現しており、レースで速く走りたいというニーズに合わせ仕上げられたピュアレーシングバイクです。
バイクの前後が硬く作られている一方、BB周りは比較的ソフトです。バイクの前後の硬さで反応性を高め、BB周りのウィップは踏み心地の優しさや加速感に作用していますね。速い速度域で高いレスポンス性能を味わうバイクという印象を受けました。乗り心地は決して柔軟ではありませんが、レーサー好みの煮詰められた性能を感じます。
フレーム重量が軽いことも相まって、F2はハイケイデンスでペダルを回して登るような長い坂に向いていると思います。短くパワーが求められる登りではやや遅れを感じます。この辺りはARシリーズとの済みわけがキチンとできていますね。脚に優しい踏み心地はロングライドにも効果があるでしょう。
フルカーボンフレームにシマノ アルテグラDi2、そして同RS61ホイールというパッケージながら7.3kgと非常に軽量な仕上がりが特徴です。ホイールベースがやや長めですから安定感もあり、集団走行でもストレスは少ないのかなと感じます。実業団クラスのレーサーでも十分満足できるでしょうし、この全方位的に煮詰められた性能は魅力的です。
澤村:フレームのグレードは違えど、とにかくエアロ効果に優れており、高速巡航性能に長けているという印象でした。旧作のARよりもバランスや横剛性、特にハンドリング性能が研ぎ澄まされています。AR2は剛性が格段に上がっていて、パワーロスなくペダリングができるあたりにピュアレーシングを感じました。
宗吉:そう。AR2は完成度が高かった。けれどAR4とAR5はエアロフレームにありがちな無駄な縦剛性が無く、乗りやすさに優れているという長所がありましたよ。エアロロードは横方向の剛性が弱いというイメージでしたが、ARは全体に下りのコーナリングでも落ち着いた挙動でした。F2のような切り返しの早さは無いものの、安定感はずっと高いです。
澤村:前モデルのARをテストしたことがありますが、やはり長い年月を掛けたというだけあって、性能は大きくブラッシュアップされています。斜度が5%を超えてくると対応が難しいですが、多少のゆるやかなアップダウンには十分対応できるよう変化していました。下った勢いで登る場面では強みを感じましたよ。
CW:国内で言うと、どんなレースやコースがARにはマッチするでしょうか?
澤村:やはり平坦な大井ふ頭でのレースはもちろんですが、AR2の剛性感ならば、パワーライダーは群馬CSCのようなシチュエーションでも問題無いでしょう。より長い登坂がある修善寺CSCではキツくなってきますが、トルクを掛けた踏み方をすることで走りの幅は広がるはずです。
宗吉:ホイールを交換することで登坂性能も上がるでしょうが、これだけ高速巡航に秀でているので、そちらを伸ばしていくのが正解でしょう。サーキットの耐久レースには最高でしょうし、チャンスがあれば「逃げたい」と思わせてくれると思いますよ。
また、リアブレーキを専用設計ではなく、シマノのダイレクトマウントブレーキに対応していることも良いですね。フロントもノーマルのキャリパーブレーキですから汎用性が高く、安心して乗ることができますね。整備性に優れますからショップとしても、ユーザーとしてもありがたいです。
澤村:その辺りはドイツのブランドらしい質実剛健さを感じるところ。エアロロードやTTバイクに関して、ブレーキはこれから専用設計ではなく、このARのような仕様がスタンダードとなっていくのではないでしょうか。特にフェルトは2013年シーズンまでアルゴス・シマノへと機材供給していましたから、その先駆けとしての意味合いもあるのかな、と感じました。
宗吉:そうしたブレーキ構造にも共通しているのですが、ARは従来のエアロロードバイクから、より一般的なロードバイクに近づいた印象を受けました。登りなどまだ不得意な場面を残しますが、クセの少ないニュートラルさが目立ちましたね。
CW:購入するときのポイントがあれば教えて下さい。
澤村:ヒルクライムを好きかどうかが購入のキーポイントとなりますね。YESならばFシリーズ、NOならARシリーズ。またフェルトにはコンフォートに特化したZシリーズもありますから選びやすい。目的を違わずに選択すると強い武器になると思います。
千葉県流山市にある「SPORTS CYCLE SHOP Swacchi」のスタッフ。自転車歴は95年からはじめて、2014年で19年目を迎える。2013年の実業団in群馬でE2カテゴリ6位入賞するなど、アップダウンのあるスピードコースを得意とする。日本体育協会自転車公認コーチの資格も有し、ロードバイクスクール開催に熱心。ショップ店員としてのモットーはお客様に確かなものをオススメすること。
SPORTS CYCLE SHOP Swacchi
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東京都世田谷区駒沢に2010年12月にオープンした「Nicole EuroCycle 駒沢」の店長。実業団ロードレースチーム「Maidservant Subject」ではキャプテンを務め、シクロクロスレースにも積極的に参戦している。同時にトレイル巡りやツーリングなど楽しく自転車に乗ることも追求しており「誰とでも楽しめるサイクリスト」が目標。
Nicole EuroCycle 駒沢
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着実な変化を遂げるオールラウンダー Fシリーズ
オールラウンドレーシングモデルとして、フェルトロードラインナップの中核を成すFシリーズ。ARのデビュー以前よりピュアレーシングモデルとしてトップレーサーから愛されており、昨年のツール・ド・フランス区間4勝など、その活躍はロードバイクファンならば誰もが知るところであろう。度重なるモデルチェンジを経ながらも、そのオーソドックスなフォルムは初代から堅持されており、現行モデルは2013年に大きな設計変更を行っている。今回のテストバイクは、AR2と同グレードにあたる「F2」。コンポーネントにシマノ アルテグラDi2を搭載した、628,000円(税抜)というプライスの完成車だ。
「F2」はフレーム形状や工法はハイエンドモデルである「FRD」と同様であり、強度を保ちながらも軽さと高剛性をバランスよくミックスさせている。使用するカーボンはフレームが「UHC ADVANCED」、フォークにはワンランク高品質な「Ultimate+Nano」であり、この部分はAR2と共通だ。
ヘッドチューブは上1-1/8”、下1-1/2”のテーパードヘッド。高い旋回性能と制動力を発揮させ、フォークの性能を向上させている。シートステーも一体型のモノステーからツインチューブ型に変更されたことで、ねじれを抑え、高い運動性能を実現していることも特徴である。
ボトムブラケットはBB30。一体成型の大口径のダウンチューブからチェーンステーに至るフレーム下側部分と合わせることで、より高いパワー伝達性能を追求した格好だ
インプレッション
「フェルトらしさを感じるピュアレーシングバイク」
宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)
軽くて硬いというフェルトらしさを体現しており、レースで速く走りたいというニーズに合わせ仕上げられたピュアレーシングバイクです。バイクの前後が硬く作られている一方、BB周りは比較的ソフトです。バイクの前後の硬さで反応性を高め、BB周りのウィップは踏み心地の優しさや加速感に作用していますね。速い速度域で高いレスポンス性能を味わうバイクという印象を受けました。乗り心地は決して柔軟ではありませんが、レーサー好みの煮詰められた性能を感じます。
フレーム重量が軽いことも相まって、F2はハイケイデンスでペダルを回して登るような長い坂に向いていると思います。短くパワーが求められる登りではやや遅れを感じます。この辺りはARシリーズとの済みわけがキチンとできていますね。脚に優しい踏み心地はロングライドにも効果があるでしょう。
フルカーボンフレームにシマノ アルテグラDi2、そして同RS61ホイールというパッケージながら7.3kgと非常に軽量な仕上がりが特徴です。ホイールベースがやや長めですから安定感もあり、集団走行でもストレスは少ないのかなと感じます。実業団クラスのレーサーでも十分満足できるでしょうし、この全方位的に煮詰められた性能は魅力的です。
フェルト F2
サイズ | 510、540、560 |
フレーム | FELT Aero Road UHC アドバンスド カーボン |
フォーク | FELT Road UHC Ultimate+nano カーボンモノコック |
コンポーネント | シマノ アルテグラ Di2 |
クランクセット | シマノ アルテグラ 52T/36T |
ホイール | SHIMANO RS61 |
ハンドル | 3T Ergosum Team Stealth カーボン |
ステム | 3T ARX II Team Stealth |
タイヤ | Vittoria Diamante Pro Light, 700c×23c |
重量 | 7.3 kg |
カラー | マットカーボン |
価格 | 628,000円(税抜) |
インプレッション総括
CW:今回は3台のARを用意しインプレッションして頂きました、ズバリ、ARはどのようなバイクでしたか?澤村:フレームのグレードは違えど、とにかくエアロ効果に優れており、高速巡航性能に長けているという印象でした。旧作のARよりもバランスや横剛性、特にハンドリング性能が研ぎ澄まされています。AR2は剛性が格段に上がっていて、パワーロスなくペダリングができるあたりにピュアレーシングを感じました。
宗吉:そう。AR2は完成度が高かった。けれどAR4とAR5はエアロフレームにありがちな無駄な縦剛性が無く、乗りやすさに優れているという長所がありましたよ。エアロロードは横方向の剛性が弱いというイメージでしたが、ARは全体に下りのコーナリングでも落ち着いた挙動でした。F2のような切り返しの早さは無いものの、安定感はずっと高いです。
澤村:前モデルのARをテストしたことがありますが、やはり長い年月を掛けたというだけあって、性能は大きくブラッシュアップされています。斜度が5%を超えてくると対応が難しいですが、多少のゆるやかなアップダウンには十分対応できるよう変化していました。下った勢いで登る場面では強みを感じましたよ。
CW:国内で言うと、どんなレースやコースがARにはマッチするでしょうか?
澤村:やはり平坦な大井ふ頭でのレースはもちろんですが、AR2の剛性感ならば、パワーライダーは群馬CSCのようなシチュエーションでも問題無いでしょう。より長い登坂がある修善寺CSCではキツくなってきますが、トルクを掛けた踏み方をすることで走りの幅は広がるはずです。
宗吉:ホイールを交換することで登坂性能も上がるでしょうが、これだけ高速巡航に秀でているので、そちらを伸ばしていくのが正解でしょう。サーキットの耐久レースには最高でしょうし、チャンスがあれば「逃げたい」と思わせてくれると思いますよ。
また、リアブレーキを専用設計ではなく、シマノのダイレクトマウントブレーキに対応していることも良いですね。フロントもノーマルのキャリパーブレーキですから汎用性が高く、安心して乗ることができますね。整備性に優れますからショップとしても、ユーザーとしてもありがたいです。
澤村:その辺りはドイツのブランドらしい質実剛健さを感じるところ。エアロロードやTTバイクに関して、ブレーキはこれから専用設計ではなく、このARのような仕様がスタンダードとなっていくのではないでしょうか。特にフェルトは2013年シーズンまでアルゴス・シマノへと機材供給していましたから、その先駆けとしての意味合いもあるのかな、と感じました。
宗吉:そうしたブレーキ構造にも共通しているのですが、ARは従来のエアロロードバイクから、より一般的なロードバイクに近づいた印象を受けました。登りなどまだ不得意な場面を残しますが、クセの少ないニュートラルさが目立ちましたね。
CW:購入するときのポイントがあれば教えて下さい。
澤村:ヒルクライムを好きかどうかが購入のキーポイントとなりますね。YESならばFシリーズ、NOならARシリーズ。またフェルトにはコンフォートに特化したZシリーズもありますから選びやすい。目的を違わずに選択すると強い武器になると思います。
インプレライダーのプロフィール
宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)
千葉県流山市にある「SPORTS CYCLE SHOP Swacchi」のスタッフ。自転車歴は95年からはじめて、2014年で19年目を迎える。2013年の実業団in群馬でE2カテゴリ6位入賞するなど、アップダウンのあるスピードコースを得意とする。日本体育協会自転車公認コーチの資格も有し、ロードバイクスクール開催に熱心。ショップ店員としてのモットーはお客様に確かなものをオススメすること。
SPORTS CYCLE SHOP Swacchi
CWレコメンドショップページ
ショップHP
澤村健太郎(Nicole EuroCycle 駒沢)
東京都世田谷区駒沢に2010年12月にオープンした「Nicole EuroCycle 駒沢」の店長。実業団ロードレースチーム「Maidservant Subject」ではキャプテンを務め、シクロクロスレースにも積極的に参戦している。同時にトレイル巡りやツーリングなど楽しく自転車に乗ることも追求しており「誰とでも楽しめるサイクリスト」が目標。
Nicole EuroCycle 駒沢
ショップHP
提供:ライトウェイプロダクツジャパン 編集:シクロワイアード