2014/03/31(月) - 23:12
トライアスロンバイクをルーツとし、ツール・ド・フランスなど様々なビッグレースで勝利に貢献して来たジャーマンブランド、フェルト。同社のロードバイクラインナップの一翼を担うエアロロードARシリーズが、デビューから5年の時を経た2014年、モデルチェンジを果たした。このスペシャルコンテンツではインプレッションを交えつつ、新型ARシリーズの実力と魅力を解説していく。
そんな同社が、ライバルブランドに先駆けエアロダイナミクスを駆使したロードバイク「AR」をデビューさせたのは2008年のツール・ド・フランスだ。
前方投影面積を極限まで抑えた板状のチューブ、前後輪に沿わせる様にデザインされたチューブなど、TTバイク「DA」をベースとしたフォルムは、驚きをもってプロトンに迎え入れられた。
初代ARの開発に携わったのは、当時のサポートチームであり、エアロスーツをロードレースに導入するなど積極的にプロトンのエアロダイナミクス化を推し進めたチームガーミン・チポレ(現ガーミン・シャープ)。デーヴィッド・ミラーなどTTスペシャリストからは特に愛用され、シーズンを通して彼らの走りを支えていった。しかし、サポートチームの変更に伴い、プロレースでのメインバイクはオールラウンダーのFシリーズへとスイッチしていくことになる。
初代のリリースと共に始まった新型ARのキーワードは、様々な方向から吹き付ける風やホイールによる空気の乱れなどを考慮した「実世界におけるエアロダイナミクス」。風洞実験ではなく、リアルに使い勝手の良いエアロロードバイクをテーマに据え、開発が進められた。
自社に構えるスーパーコンピューターでのシミュレーション、クレイ(粘土)モックアップを使った風洞実験の回数は数知れず、リアルを想定したパーツアッセンブルが施され、更に形状を煮詰めていく。ここにカーボンの配置や厚み、レイアップを重ね、通常のロードバイクとは比較にならないほど緻密な設計が行われた。その完成には5年の歳月が流れたという。
リアトライアングルはホイールの回転による空気の乱れを低減する「Gap Shield Rear Triangle」デザインだ。シートチューブは初代ARと同様にリアタイヤに沿って大きくえぐられ、チェーンステー、シートステーの切り欠きなどは生粋のTTバイクのよう。エアロロードだが、トレンドのワイド幅タイヤにも対応可能だ。
またエアロロードバイクで一般化する専用ブレーキは採用せず、フロントは一般的なキャリパータイプを導入。確実な制動力と整備性を高め「扱いやすさ」を重視するあたりは、ドイツブランドらしい堅実さが現れている部分と言えよう。リアはBB下にダイレクトマウントブレーキを取り付ける構造であり、エアロ性能と制動力を両立したかたち。シートステーが軽量化と快適性の向上を果たしたことも、ブレーキをBB下へと移動させた事の恩恵だ。
エアロダイナミクスに大きな影響を及ぼすポジション調整も幅広く対応するシートポストの前後を入れ替える「Variable Geometry Optimized(VGO)」システムによって、一つで72.5度と78.5度という2つのシートアングルを出すことができる上、無断階で角度調整できる独自のシングルボルト式クランプ「VariMount」や、ポストの自由な高さ調整ができる特殊な「Internaloc」システムを採用。ロードライディングのみならず、TTポジションにも対応する深い柔軟性を兼ね備えているのだ。
そうして緻密なエンジニアリングが重ねられてた新型ARは、アメリカ・サンディエゴ州の低速度域専門風洞実験施設で、Fシリーズに対して最大31.1%、初代ARに対して14.7%という圧倒的な空気抵抗値をマーク。
ヨー角が5°〜15°へ変化する過程でも優秀な空力性能を示したという。これはつまり、風の変化に対しても安定した挙動を見せることを意味するものであり、まさに「オールマイティなエアロロード」たる性能を身につけたのである。
次ページでは高級グレードのAR2と、ミッドレンジに位置づけられるAR4、AR5の性能を、インプレッションを通じてお伝えする。
業界に革新をもたらしたエアロロードバイク「AR」
ジャーマンブランド、フェルトと言えば過去にガーミンやアルゴスのサポートを行っていたことで、ロードバイクのイメージが強いだろう。しかしその発端は1980年台後半にジム・フェルト氏が作成したトライアスロンバイクであり、TTバイクの開発など今日に至るまでエアロダイナミクスに関する経験やノウハウを積み上げてきたリーディングカンパニーなのだ。そんな同社が、ライバルブランドに先駆けエアロダイナミクスを駆使したロードバイク「AR」をデビューさせたのは2008年のツール・ド・フランスだ。
前方投影面積を極限まで抑えた板状のチューブ、前後輪に沿わせる様にデザインされたチューブなど、TTバイク「DA」をベースとしたフォルムは、驚きをもってプロトンに迎え入れられた。
初代ARの開発に携わったのは、当時のサポートチームであり、エアロスーツをロードレースに導入するなど積極的にプロトンのエアロダイナミクス化を推し進めたチームガーミン・チポレ(現ガーミン・シャープ)。デーヴィッド・ミラーなどTTスペシャリストからは特に愛用され、シーズンを通して彼らの走りを支えていった。しかし、サポートチームの変更に伴い、プロレースでのメインバイクはオールラウンダーのFシリーズへとスイッチしていくことになる。
5年の開発期間を経て登場 全方向に進化した新世代のARシリーズ
時代は進み、現在はプロトンの中でもエアロロードバイクの存在は欠かせない。ARシリーズも細やかな仕様変更を繰り返しラインナップが続けられていたが、2014年、遂にフルモデルチェンジを経てデビューを果たす。それも単に空力性能を追求したに留まらず、軽量に、より高い剛性で、よりレースで求められるピュアロードレーサーとしての性能をブラッシュアップして生まれ変わったのが新型ARシリーズである。初代のリリースと共に始まった新型ARのキーワードは、様々な方向から吹き付ける風やホイールによる空気の乱れなどを考慮した「実世界におけるエアロダイナミクス」。風洞実験ではなく、リアルに使い勝手の良いエアロロードバイクをテーマに据え、開発が進められた。
自社に構えるスーパーコンピューターでのシミュレーション、クレイ(粘土)モックアップを使った風洞実験の回数は数知れず、リアルを想定したパーツアッセンブルが施され、更に形状を煮詰めていく。ここにカーボンの配置や厚み、レイアップを重ね、通常のロードバイクとは比較にならないほど緻密な設計が行われた。その完成には5年の歳月が流れたという。
生まれ変わったAR そのディテールに迫る
新型ARの要となるのが、フォーククラウンとヘッドチューブをインテグレーテッド化した「Twin Tail Fork」である。空気抵抗において大きな割合を占めるフレーム前方部分とフロントホイールの回転による乱流を特殊な形状を用いて大幅にカット。フォーククラウン上部はワイドな形状となっており、振動軽減と剛性強化、ブレーキング性能を向上させた。リアトライアングルはホイールの回転による空気の乱れを低減する「Gap Shield Rear Triangle」デザインだ。シートチューブは初代ARと同様にリアタイヤに沿って大きくえぐられ、チェーンステー、シートステーの切り欠きなどは生粋のTTバイクのよう。エアロロードだが、トレンドのワイド幅タイヤにも対応可能だ。
またエアロロードバイクで一般化する専用ブレーキは採用せず、フロントは一般的なキャリパータイプを導入。確実な制動力と整備性を高め「扱いやすさ」を重視するあたりは、ドイツブランドらしい堅実さが現れている部分と言えよう。リアはBB下にダイレクトマウントブレーキを取り付ける構造であり、エアロ性能と制動力を両立したかたち。シートステーが軽量化と快適性の向上を果たしたことも、ブレーキをBB下へと移動させた事の恩恵だ。
エアロダイナミクスに大きな影響を及ぼすポジション調整も幅広く対応するシートポストの前後を入れ替える「Variable Geometry Optimized(VGO)」システムによって、一つで72.5度と78.5度という2つのシートアングルを出すことができる上、無断階で角度調整できる独自のシングルボルト式クランプ「VariMount」や、ポストの自由な高さ調整ができる特殊な「Internaloc」システムを採用。ロードライディングのみならず、TTポジションにも対応する深い柔軟性を兼ね備えているのだ。
そうして緻密なエンジニアリングが重ねられてた新型ARは、アメリカ・サンディエゴ州の低速度域専門風洞実験施設で、Fシリーズに対して最大31.1%、初代ARに対して14.7%という圧倒的な空気抵抗値をマーク。
ヨー角が5°〜15°へ変化する過程でも優秀な空力性能を示したという。これはつまり、風の変化に対しても安定した挙動を見せることを意味するものであり、まさに「オールマイティなエアロロード」たる性能を身につけたのである。
次ページでは高級グレードのAR2と、ミッドレンジに位置づけられるAR4、AR5の性能を、インプレッションを通じてお伝えする。
提供:ライトウェイプロダクツジャパン 編集:シクロワイアード