2012/12/11(火) - 23:09
須磨にある閑静な寺院の参道で、その静寂を打ち破る、手に汗握る激しいDHレースが行われた。「須磨寺一騎打ち」と銘打った戦いの模様と、開催に至ったバックグラウンドをレポートしよう。
国内ではスキー場のゲレンデや専用コースで行われるダウンヒルレース。しかし海外では街の傾斜地で行われる「アーバンダウンヒル」が数多く行われ、その迫力から非常に人気が高い。それに倣って開催されたのが、11月24日に開催された「須磨寺一騎打ち」だ。兵庫県神戸市須磨区にある須磨寺の境内をコースとし、2人で同時にスタートして勝負を競うデュアルレースは大きな盛り上がりを見せた。
末政実緒選手が監修を務めたコースは狭く急峻な石段とダート区間が繰り返し現れる難易度の高いもの。特に義経坂と呼ばれるダート区間は崖に近いレイアウトで、これを抜けると墓石の前を曲がる鋭角コーナーが現れる。距離にして約500mだが、2名が同時に全速力で下るバトルは手に汗握るほど。関西地区のみならず、全国からトップライダーを含む31名の選手が顔を揃えた。
狭い参道を縫って走るため、勝敗はスタートで前に出れるかどうかが重要なキーポイントとなる。義経坂はラインが数本あってルート選択に迷うところだが、そんなコース誰よりも早く駆け抜けて優勝をさらったのは引退からカムバックした安達靖選手。決勝ヒートで和田良平選手を破り流石の走りを披露した。
「コースが狭く、なかなか抜き所が無くて、スタート勝負かな? と思いました。8決ではくじ運が悪く、アウト側で先行され焦りましたが、中盤で相手が転倒し、それ以降私もクラッシュに気をつけて走りました。観客も多く、是非また開催して欲しいと思います」と語ってくれた。
源平合戦の「一の谷の戦いの逆落し」を自転車で再現
盛況に終わった須磨寺一騎打ちの背景には、「他所では真似できないような何かで須磨地区を盛り上げたい」という、代表を務めた福島雄一郎さんの思いがあった。
イベントは源平合戦の転機となった「一の谷の戦いの逆落し」を自転車で再現しようという福島さんのアイディアから生まれ、実行委員会には須磨寺、綱式天満宮、須磨浦商店街、須磨寺前商店街の関係者や一般ボランティアなど地元の名前が多く連ねられる。運営は神戸市の流通科学大学の学生(及び卒業生)がボランティアとして携わった。
「『逆落とし』という歴史から考えると、開催場所はどこでもいいわけではありません。源平にゆかりのある須磨寺さんに話を持ちかけました」と福島さんは語る。レースは選手がくじ引きで源・平に分かれ、チームとしての勝敗もつける工夫を施した。
「コースの一番の特徴は一部土斜面の義経坂があるところ。石段とは違った技術が求められますし、石段→土→石段と路面状況を変えることでタイヤの選び方にも影響しますね。抜き所が無いという意見もありましたが、その”狭さ”も特徴でした。そこであえてタイムトライアルではなく、デュアルレースとすることで大会の盛り上がりにもつながりました。観る人は楽しかったと思います」
「義経坂は全く手付かずの状態だったため、レースができる状態まで草木を刈り、整地を行いました。夏ごろから整備に着手しましたが、石段の状態も整ってない部分が多くコンパネや土嚢で出来る限りスムーズに走行できるようコースアドバイザーの末政実緒さんの意見を伺いながら苦労しました。墓石の保護も最後まで頭を悩ませたポイントです」。
コースアドバイザーを務めた末政選手は言う。
「今日はいつもと違う場所の上ものすごく難しいコースでしたが、良いレースができたと思います。観光スポットということで、ライダーだけではなく一般の方にも見に来てもらえました。私は今回アドバイザーとしてレース運営も関わりましたが、安全に終わってほっとしています。こういったレースを多くの人に見てもらえるよう機会を作っていけたらと思います」。
福島さんは語る。「参戦者、観戦者、参拝者、地域住民のどこからも、良い意味でも悪い意味でも非常に大きな反響を得られました。至らなかった点があったことは否めませんが、ある意味で事前の期待が大きかった故の反動もあるのかもしれません」
「いずれにしても、須磨寺という地元人しか知らない場所に、埼玉から鳥取まで様々な地域からのべ400名以上の方が参戦・観戦に訪れて下さり、とてもありがたく感じています。次回の開催は未定ですが、須磨寺さんとも話し合った上で考えたいと思います。またやって欲しいという声が関係者だけでなく、地元からも上がるようであれば良いですね」と締めくくった。
和田良平選手撮影によるヘッドカメラムービー 決勝ヒート
text&photo:Akihiro.NAKAO
国内ではスキー場のゲレンデや専用コースで行われるダウンヒルレース。しかし海外では街の傾斜地で行われる「アーバンダウンヒル」が数多く行われ、その迫力から非常に人気が高い。それに倣って開催されたのが、11月24日に開催された「須磨寺一騎打ち」だ。兵庫県神戸市須磨区にある須磨寺の境内をコースとし、2人で同時にスタートして勝負を競うデュアルレースは大きな盛り上がりを見せた。
末政実緒選手が監修を務めたコースは狭く急峻な石段とダート区間が繰り返し現れる難易度の高いもの。特に義経坂と呼ばれるダート区間は崖に近いレイアウトで、これを抜けると墓石の前を曲がる鋭角コーナーが現れる。距離にして約500mだが、2名が同時に全速力で下るバトルは手に汗握るほど。関西地区のみならず、全国からトップライダーを含む31名の選手が顔を揃えた。
狭い参道を縫って走るため、勝敗はスタートで前に出れるかどうかが重要なキーポイントとなる。義経坂はラインが数本あってルート選択に迷うところだが、そんなコース誰よりも早く駆け抜けて優勝をさらったのは引退からカムバックした安達靖選手。決勝ヒートで和田良平選手を破り流石の走りを披露した。
「コースが狭く、なかなか抜き所が無くて、スタート勝負かな? と思いました。8決ではくじ運が悪く、アウト側で先行され焦りましたが、中盤で相手が転倒し、それ以降私もクラッシュに気をつけて走りました。観客も多く、是非また開催して欲しいと思います」と語ってくれた。
源平合戦の「一の谷の戦いの逆落し」を自転車で再現
盛況に終わった須磨寺一騎打ちの背景には、「他所では真似できないような何かで須磨地区を盛り上げたい」という、代表を務めた福島雄一郎さんの思いがあった。
イベントは源平合戦の転機となった「一の谷の戦いの逆落し」を自転車で再現しようという福島さんのアイディアから生まれ、実行委員会には須磨寺、綱式天満宮、須磨浦商店街、須磨寺前商店街の関係者や一般ボランティアなど地元の名前が多く連ねられる。運営は神戸市の流通科学大学の学生(及び卒業生)がボランティアとして携わった。
「『逆落とし』という歴史から考えると、開催場所はどこでもいいわけではありません。源平にゆかりのある須磨寺さんに話を持ちかけました」と福島さんは語る。レースは選手がくじ引きで源・平に分かれ、チームとしての勝敗もつける工夫を施した。
「コースの一番の特徴は一部土斜面の義経坂があるところ。石段とは違った技術が求められますし、石段→土→石段と路面状況を変えることでタイヤの選び方にも影響しますね。抜き所が無いという意見もありましたが、その”狭さ”も特徴でした。そこであえてタイムトライアルではなく、デュアルレースとすることで大会の盛り上がりにもつながりました。観る人は楽しかったと思います」
「義経坂は全く手付かずの状態だったため、レースができる状態まで草木を刈り、整地を行いました。夏ごろから整備に着手しましたが、石段の状態も整ってない部分が多くコンパネや土嚢で出来る限りスムーズに走行できるようコースアドバイザーの末政実緒さんの意見を伺いながら苦労しました。墓石の保護も最後まで頭を悩ませたポイントです」。
コースアドバイザーを務めた末政選手は言う。
「今日はいつもと違う場所の上ものすごく難しいコースでしたが、良いレースができたと思います。観光スポットということで、ライダーだけではなく一般の方にも見に来てもらえました。私は今回アドバイザーとしてレース運営も関わりましたが、安全に終わってほっとしています。こういったレースを多くの人に見てもらえるよう機会を作っていけたらと思います」。
福島さんは語る。「参戦者、観戦者、参拝者、地域住民のどこからも、良い意味でも悪い意味でも非常に大きな反響を得られました。至らなかった点があったことは否めませんが、ある意味で事前の期待が大きかった故の反動もあるのかもしれません」
「いずれにしても、須磨寺という地元人しか知らない場所に、埼玉から鳥取まで様々な地域からのべ400名以上の方が参戦・観戦に訪れて下さり、とてもありがたく感じています。次回の開催は未定ですが、須磨寺さんとも話し合った上で考えたいと思います。またやって欲しいという声が関係者だけでなく、地元からも上がるようであれば良いですね」と締めくくった。
和田良平選手撮影によるヘッドカメラムービー 決勝ヒート
text&photo:Akihiro.NAKAO
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