2012/08/14(火) - 20:46
8月1日から3日まで3日間に渡って開催されたリトゥールのプロフィッター養成講座、「RETUL University in Japan」。講師として来日したイヴァン・オゴーマン氏にインタビューを行なった。
イヴァン・オゴーマン氏。今回の講習会に講師として招かれた氏は、リトゥールのプロフェッショナルフィッターとして、UCIプロツアーチームであるガーミン・シャープやその他プロサイクリスト、プロトライアスリートのフィッティングを担当する人物だ。自身もエリートトライアスリートである氏に対して、彼の考えるフィッティング理論、そしてリトゥールとプロフェッショナルアスリートの関わりについて聞いた。
― リトゥールの基本的な考えについて教えてください。
リトゥールがメインとするのは、その人のライディングスタイル、能力に合ったライディングポジションを紹介すること、そしてそれを可能とするバイクやパーツを選ぶ助けとなることです。また、もう一つのメインテーマとしては、適正なポジションを取ることで長期的にケガから身体を守る事を目的としています。
骨格の違い、利き足/手による筋肉の付き方など、完全な左右対称を持っている人間は存在しません。それを無理に矯正するのは故障を招くことに繋がります。その人の左右非対称を活かした上で、パフォーマンスを引き出していくのがリトゥールのプロセスです。これはアマチュアでもプロライダーでも変わりません。
リトゥールのフィッティングは教育プロセスと似ていると感じます。まずは起こっている問題を知ること。問題を理解できれば解決策が見つかります。そしてシステムを熟知したフィッターを通してその原因を更に細く突き詰め、識別し、快適なライディングを可能とするアドバイスを行います。それを繰り返していくことで、一つ上のレベルでバイクライドを楽しむことができると考えています。
― あなたはガーミン・シャープチームにリトゥールのフィッティングを行なっていると伺いましたが?
はい、私達リトゥールはオフィシャルフィッターとしてガーミン・シャープチームをサポートをしています。毎年11月にアメリカ・ボルダーで、そして2月にはスペインのマヨルカ島で行われるトレーニングキャンプに同行し、そこで全ての選手たちにフィッティングを行います。
チームのマネージメントを行うスリップストリーム社とリトゥールは良い関係を築いていて、私たちは選手たちの過去5年分全てのデータを管理し、それらをケガの防止やシーズンを通してのポテンシャル改善に結びつけていく作業をしています。
また、ガーミンチームの配下にある有望な若手を集めた育成チーム「ガーミン・チポトレ」にも同様のシステムを使用しています。有望な若手選手に正しい乗り方を教えることでさらなるパフォーマンスを引き出し、長くプロ選手として活躍できるようにアドバイスを行うことは非常に重要ですし、私達にとってもエキサイティングな体験です。
リトゥールにとっての一番大きな勝利は、ライダー・ヘジダルによる今年のジロ・デ・イタリア制覇でしょうか。彼はフィッティングを通して以前よりも小さなフォームになりました。
しかし彼はサドル高が我々の規格を少し飛び出してしまっています。足首の角度も我々が推奨する以上の角度となっていますが、これは個人差によるものです。私達が最初に推奨する数値はあくまでも平均ですので、人によっては範囲外の値が適正となる場合もあります。固定の数値で決めつけてしまわないこと、これは重要なことだと思います。
デーヴィッド・ミラーはタイムトライアルが得意で、身長が190cm。長身かつ柔軟性が非常に高い選手です。そのためロードバイクでもかなりエアロに特化したポジションとなっていますね。140mmのステム、限界まで付き出したシートポスト、ハンドルを更に下げるためヘッドチューブのトップキャップを取り払っていますが、そこまでしてもまだ理想のポジションが取れていないと不満を言っていつもバイクメーカーを困らせています(笑)。
ガーミンのみならず、チームスカイ、レディオシャック・ニッサン、トライアスロンの世界チャンピオン、さらにはMTBのエリート選手にも多くフィッティングを施しています。
― よりフィッティングが重要とされる、タイムトライアルについて話を聞かせて下さい。
私が思うに、TTでは持続できるポジションであること、そしてエアロダイナミクスに優れることという、2つのコンビネーションが重要です。空力のみに特化したポジションを取っていたとしても、持続できなければ意味がありませんね。
ガーミンチームのトレーニングキャンプでは、フィッティングと風洞での効率的なフォームの実験を繰り返しながら、空力とピークパワーを維持できるベストなポジションを決定していきます。
ロードと比べると窮屈なフィッティングが求められるタイムトライアルですが、身体の柔軟性は個人によってことなるため、理想のポジションはその人それぞれですし、それはタイムトライアルの距離が2kmでも50kmでも変わりません。短距離TTだからといってエアロのみを考えたポジションではいけないのです。
しかしタイムトライアルは高い集中力が求められる競技です。そのため、あまり快適さを求めすぎてしまうと競技中に集中力が欠如してしまうこともあります。その深い部分までを考えてフィッティングを選手たちに施しています。
例えば、デーヴィッド・ザブリスキーは遠く低いハンドル、高いサドルハイトのかなりアグレッシブで攻撃的なポジションを取っていましたが、最近はアップライトでコンフォートかつ、コンパクトなポジションへと変化しました。
フィッティングというものは、常に新しい理論が生まれ変化をしてきました。そしてこれからもそれは変わらないでしょう。その時代にあった柔軟な解釈が求められるのです。
Interview&text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano,Kei.Tsuji,Riccardo Scanferla,CorVos
イヴァン・オゴーマン氏。今回の講習会に講師として招かれた氏は、リトゥールのプロフェッショナルフィッターとして、UCIプロツアーチームであるガーミン・シャープやその他プロサイクリスト、プロトライアスリートのフィッティングを担当する人物だ。自身もエリートトライアスリートである氏に対して、彼の考えるフィッティング理論、そしてリトゥールとプロフェッショナルアスリートの関わりについて聞いた。
― リトゥールの基本的な考えについて教えてください。
リトゥールがメインとするのは、その人のライディングスタイル、能力に合ったライディングポジションを紹介すること、そしてそれを可能とするバイクやパーツを選ぶ助けとなることです。また、もう一つのメインテーマとしては、適正なポジションを取ることで長期的にケガから身体を守る事を目的としています。
骨格の違い、利き足/手による筋肉の付き方など、完全な左右対称を持っている人間は存在しません。それを無理に矯正するのは故障を招くことに繋がります。その人の左右非対称を活かした上で、パフォーマンスを引き出していくのがリトゥールのプロセスです。これはアマチュアでもプロライダーでも変わりません。
リトゥールのフィッティングは教育プロセスと似ていると感じます。まずは起こっている問題を知ること。問題を理解できれば解決策が見つかります。そしてシステムを熟知したフィッターを通してその原因を更に細く突き詰め、識別し、快適なライディングを可能とするアドバイスを行います。それを繰り返していくことで、一つ上のレベルでバイクライドを楽しむことができると考えています。
― あなたはガーミン・シャープチームにリトゥールのフィッティングを行なっていると伺いましたが?
はい、私達リトゥールはオフィシャルフィッターとしてガーミン・シャープチームをサポートをしています。毎年11月にアメリカ・ボルダーで、そして2月にはスペインのマヨルカ島で行われるトレーニングキャンプに同行し、そこで全ての選手たちにフィッティングを行います。
チームのマネージメントを行うスリップストリーム社とリトゥールは良い関係を築いていて、私たちは選手たちの過去5年分全てのデータを管理し、それらをケガの防止やシーズンを通してのポテンシャル改善に結びつけていく作業をしています。
また、ガーミンチームの配下にある有望な若手を集めた育成チーム「ガーミン・チポトレ」にも同様のシステムを使用しています。有望な若手選手に正しい乗り方を教えることでさらなるパフォーマンスを引き出し、長くプロ選手として活躍できるようにアドバイスを行うことは非常に重要ですし、私達にとってもエキサイティングな体験です。
リトゥールにとっての一番大きな勝利は、ライダー・ヘジダルによる今年のジロ・デ・イタリア制覇でしょうか。彼はフィッティングを通して以前よりも小さなフォームになりました。
しかし彼はサドル高が我々の規格を少し飛び出してしまっています。足首の角度も我々が推奨する以上の角度となっていますが、これは個人差によるものです。私達が最初に推奨する数値はあくまでも平均ですので、人によっては範囲外の値が適正となる場合もあります。固定の数値で決めつけてしまわないこと、これは重要なことだと思います。
デーヴィッド・ミラーはタイムトライアルが得意で、身長が190cm。長身かつ柔軟性が非常に高い選手です。そのためロードバイクでもかなりエアロに特化したポジションとなっていますね。140mmのステム、限界まで付き出したシートポスト、ハンドルを更に下げるためヘッドチューブのトップキャップを取り払っていますが、そこまでしてもまだ理想のポジションが取れていないと不満を言っていつもバイクメーカーを困らせています(笑)。
ガーミンのみならず、チームスカイ、レディオシャック・ニッサン、トライアスロンの世界チャンピオン、さらにはMTBのエリート選手にも多くフィッティングを施しています。
― よりフィッティングが重要とされる、タイムトライアルについて話を聞かせて下さい。
私が思うに、TTでは持続できるポジションであること、そしてエアロダイナミクスに優れることという、2つのコンビネーションが重要です。空力のみに特化したポジションを取っていたとしても、持続できなければ意味がありませんね。
ガーミンチームのトレーニングキャンプでは、フィッティングと風洞での効率的なフォームの実験を繰り返しながら、空力とピークパワーを維持できるベストなポジションを決定していきます。
ロードと比べると窮屈なフィッティングが求められるタイムトライアルですが、身体の柔軟性は個人によってことなるため、理想のポジションはその人それぞれですし、それはタイムトライアルの距離が2kmでも50kmでも変わりません。短距離TTだからといってエアロのみを考えたポジションではいけないのです。
しかしタイムトライアルは高い集中力が求められる競技です。そのため、あまり快適さを求めすぎてしまうと競技中に集中力が欠如してしまうこともあります。その深い部分までを考えてフィッティングを選手たちに施しています。
例えば、デーヴィッド・ザブリスキーは遠く低いハンドル、高いサドルハイトのかなりアグレッシブで攻撃的なポジションを取っていましたが、最近はアップライトでコンフォートかつ、コンパクトなポジションへと変化しました。
フィッティングというものは、常に新しい理論が生まれ変化をしてきました。そしてこれからもそれは変わらないでしょう。その時代にあった柔軟な解釈が求められるのです。
Interview&text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano,Kei.Tsuji,Riccardo Scanferla,CorVos
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