2012/07/05(木) - 10:15
前日から一夜明け、いよいよ「セルフディスカバリーアドベンチャー・イン(SDA)王滝」当日を迎えた。MTB超初心者であるCW編集部 磯部のぶっつけレポートをお届けします。
5月末の日の出は早い。王滝村のはずれにある会場は、4時半頃にはうっすらと明るくなってきた。どうやら良く睡眠は取れたようだ。いよいよ迎えたSDA王滝当日。たくさんのテントが並んだ会場横の駐車場も、楽しげな雰囲気だった昨晩とはうって変わって静かな緊張感が漂っている。
今日はダートを延々と100km走り、獲得標高2500mの厳しいコースへと挑む。カロリー消費量も非常に多いので眠い目をこすりつつ、おにぎりなどを中心に炭水化物をできるだけ多く採っておく。ちなみに一番近いコンビニは会場から25kmも離れているので、事前の準備が不可欠だ。
補給のパワージェルをフラスコに移したり、撮影機材の準備を進めていると、今日はコースコンディションが良好との情報が放送で流れた。コンパクトカメラでは無くいつも実走取材で使っている一眼レフを首から下げてレースに臨むことにした。
いよいよ6時、スタートの時を迎えた。最初の5kmは舗装路を走るパレード走行だ。先導車が外れ左に曲がると未舗装路が始まり、いよいよリアルスタートが切られた。先頭を行く池田祐樹選手たちは、コーナーを曲がった途端に視界から消えた。意味がわからない速さだ。
コーナーを幾つかクリアすると、いきなり登攀距離6.5kmのヒルクライムが現れる。平均斜度は6.9%、標高差は450mだ。集団の最前列に位置していたので、周りの選手たちは皆当然のように速い。ついて行けないことも無いけれど、何しろMTB経験ほぼゼロなのでマイペースを維持して上っていく。
普段私はロード一辺倒のため、その感覚からするととにかくMTBは進まない。ダートの路面がこんなにも進まないのかと今更ながらに思い知らされる。その感覚のズレを修正しながら、無理しない程度のケイデンスを保って頂上へたどり着いた。
と、ここでまさかの緊急事態発生。まだ15kmほどしか走っていないのに、特別無理をしていないのに、あれれの痙攣発生である。その原因は恐らく連日の睡眠不足に加えて、この上りで補給をしなかったこと。とにかく15分おきに補給は摂り続けること、という先日竹谷さんの講習会で受けたアドバイスを完全に忘れてしまっていた。
慌ててバイクから降りてマッサージを行なったものの、時既に遅し。これ以降は70km以上にわたって、攣りかけた脚でだましだまし走らざるを得なくなってしまった。
王滝は、とにかく最初から最後まで終始ダイナミックな上りと下りで構成されたコースだ。本当に平坦はわずかで、おまけにバイクは(ロードよりも)進まないから短い上りでも下りでも体力の消耗がとても大きい。絶対無理をしないことが鉄則である。
標高差200mを下り、また350mを上る。セーブしながら走っているため脚の攣り具合もさほど悪化せず、34km地点の第1チェックポイントへと到着した。制限時間は、まだまだ余裕がある。
一応コースにエイドステーションはある。けれど"セルフ・ディスカバリー"の名に相応しく、用意されているものは水だけ。補給食は今回第3エイドで配られていたものの、基本的に無いものと考えたほうが良い。
私の携行した補給食は、パワージェル×8、パワーバー×1、グミ状のパワーブラスト×4、固形のエナジーフード×2、ジャムパンと大福。これにハイドレーションパック(1Lほど)を背中に背負ってバイクにボトルを装備し、粉末ドリンクを混ぜた。
その総計3000kcalほどだが、結果それでも全て消費しきってしまった。5~9時間をずっと高い運動強度で走っているので、補給食はあればあっただけ困らない(と思う)。常に何かを食べつつ、先を急ぐ。
SDA王滝が走るコースは、急峻な山を無理矢理削って据え付けたようなジープ道だ。このあたりは鋭く尖った岩が多い地質で、ルートに転がっているならまだしも、厚く堆積した岩の上をクリアする箇所も頻繁に現れるため、パンクストップをしている方が異常なくらい多い。
第2エイドの付近で私もパンクに見舞われたが、このレースは2,3回のパンクは当たり前と聞く。予備チューブも多く持っていて絶対に損は無い。そしてパンクならまだ良いが、荒れたコースはチェーン切れなど、思いもよらないトラブルをも招く。だからバイクや体調も含めてあらゆる面で準備が必要だし、それがセルフディスカバリーだ。
私の場合はバイクは完璧だったが、レースを甘く見ていたために体の準備ができていなかった。大きな反省点だ。
第2エイドを過ぎても果てなく続くアップダウン。しかもコースの厳しさは一層グレードアップし、河原のように大きな石が堆積した15%はあろうかという激坂上りや、深くえぐれた溝が頻繁に道を横切っていたりともうスゴい。ここまで脚をセーブする走りをしてきたものの、かばって走る余裕なんてすっかりどこかに行ってしまった。痙攣も頻発しはじめて、痛くて涙が出てくる。
リタイアしたって自走で帰らなきゃならないから、とにかく必死にハンドルにしがみついて坂やギャップを一つ一つクリアするしか選択肢は無い。押しても良かったが、「バイクから降りる」という動作で脚が攣るので、必死に乗車してクリアした。首からぶら下げている一眼カメラが超絶に邪魔だ。
エントリーした時は「何とかなるんじゃないかな」とか考えていたけれど、実際何とかならない。本当にキツい。
苦痛に耐え続けていると、やがて第3チェックポイントが現れた。自分でも意外なほどに早く到着したような感じを受けたが、無心で走っていたのかもしれない。どうやら制限時間もまだ大丈夫とのことで、ゴールまで走りきれさえすれば、完走だ。小さくガッツポーズが出た。
少々の休憩を経て再出発。残りは20kmを切っているのに、やっぱりキツいことは変わりなく、トドメに距離2km、平均勾配10%弱の上りも出てくる。しかし気の持ちようとは良く言ったもので、完走が見えたことで気が楽になったのか、それとも何かが吹っ切れたのか、先程よりは脚も良く回っている。懸念の坂もペースを落とさずにクリアできた。
最後の上りをクリアしたら、残るは7kmの下りのみ。29er+フルサスバイクの走破性を活かして全速力でダウンヒルをぶっ飛ばし、13時36分、7時間36分のタイムでゴールを迎えた。
ゴールラインを抜けて、係の方にチップを回収してもらう。バイクを降りようとしたら膝が笑っていて、また危うく両脚を攣りかけてしまった。でも、「もう走らなくていいんだ」と思うと、それだけで嬉しかった。スタッフが手渡してくれた冷えた水が最高に美味い。
走っている時はなぜこんな辛いことしているのか全く理解できず、やめてしまおうかとも一瞬思った。それでもきっとその分、ゴールしてしばらく経つと、厳しいながらも雄大なコースを走り切った達成感が徐々に湧き、またチャレンジしてみたいという気さえしてきた。
私の当面の目標は、タイムを1時間短縮して6時間半切りに設定。
気づけばもうすっかりとSDA王滝の魅力にはまってしまったようだ。またぜひとも参加して、苦しんでみたい。9月の王滝はコースが逆周りとなるため、参加すればまた新しい発見をすることができるだろう。今からもう、次の参加が楽しみだ。
今回、私が取材参戦をさせて頂いた「セルフディスカバリーアドベンチャー・イン・王滝」を支えて下さった大会関係者並びにサポートスタッフの皆様に心より御礼申し上げます。
text:So.Isobe
photo:Akihiko.Harimoto,So.Isobe
5月末の日の出は早い。王滝村のはずれにある会場は、4時半頃にはうっすらと明るくなってきた。どうやら良く睡眠は取れたようだ。いよいよ迎えたSDA王滝当日。たくさんのテントが並んだ会場横の駐車場も、楽しげな雰囲気だった昨晩とはうって変わって静かな緊張感が漂っている。
今日はダートを延々と100km走り、獲得標高2500mの厳しいコースへと挑む。カロリー消費量も非常に多いので眠い目をこすりつつ、おにぎりなどを中心に炭水化物をできるだけ多く採っておく。ちなみに一番近いコンビニは会場から25kmも離れているので、事前の準備が不可欠だ。
補給のパワージェルをフラスコに移したり、撮影機材の準備を進めていると、今日はコースコンディションが良好との情報が放送で流れた。コンパクトカメラでは無くいつも実走取材で使っている一眼レフを首から下げてレースに臨むことにした。
いよいよ6時、スタートの時を迎えた。最初の5kmは舗装路を走るパレード走行だ。先導車が外れ左に曲がると未舗装路が始まり、いよいよリアルスタートが切られた。先頭を行く池田祐樹選手たちは、コーナーを曲がった途端に視界から消えた。意味がわからない速さだ。
コーナーを幾つかクリアすると、いきなり登攀距離6.5kmのヒルクライムが現れる。平均斜度は6.9%、標高差は450mだ。集団の最前列に位置していたので、周りの選手たちは皆当然のように速い。ついて行けないことも無いけれど、何しろMTB経験ほぼゼロなのでマイペースを維持して上っていく。
普段私はロード一辺倒のため、その感覚からするととにかくMTBは進まない。ダートの路面がこんなにも進まないのかと今更ながらに思い知らされる。その感覚のズレを修正しながら、無理しない程度のケイデンスを保って頂上へたどり着いた。
と、ここでまさかの緊急事態発生。まだ15kmほどしか走っていないのに、特別無理をしていないのに、あれれの痙攣発生である。その原因は恐らく連日の睡眠不足に加えて、この上りで補給をしなかったこと。とにかく15分おきに補給は摂り続けること、という先日竹谷さんの講習会で受けたアドバイスを完全に忘れてしまっていた。
慌ててバイクから降りてマッサージを行なったものの、時既に遅し。これ以降は70km以上にわたって、攣りかけた脚でだましだまし走らざるを得なくなってしまった。
王滝は、とにかく最初から最後まで終始ダイナミックな上りと下りで構成されたコースだ。本当に平坦はわずかで、おまけにバイクは(ロードよりも)進まないから短い上りでも下りでも体力の消耗がとても大きい。絶対無理をしないことが鉄則である。
標高差200mを下り、また350mを上る。セーブしながら走っているため脚の攣り具合もさほど悪化せず、34km地点の第1チェックポイントへと到着した。制限時間は、まだまだ余裕がある。
一応コースにエイドステーションはある。けれど"セルフ・ディスカバリー"の名に相応しく、用意されているものは水だけ。補給食は今回第3エイドで配られていたものの、基本的に無いものと考えたほうが良い。
私の携行した補給食は、パワージェル×8、パワーバー×1、グミ状のパワーブラスト×4、固形のエナジーフード×2、ジャムパンと大福。これにハイドレーションパック(1Lほど)を背中に背負ってバイクにボトルを装備し、粉末ドリンクを混ぜた。
その総計3000kcalほどだが、結果それでも全て消費しきってしまった。5~9時間をずっと高い運動強度で走っているので、補給食はあればあっただけ困らない(と思う)。常に何かを食べつつ、先を急ぐ。
SDA王滝が走るコースは、急峻な山を無理矢理削って据え付けたようなジープ道だ。このあたりは鋭く尖った岩が多い地質で、ルートに転がっているならまだしも、厚く堆積した岩の上をクリアする箇所も頻繁に現れるため、パンクストップをしている方が異常なくらい多い。
第2エイドの付近で私もパンクに見舞われたが、このレースは2,3回のパンクは当たり前と聞く。予備チューブも多く持っていて絶対に損は無い。そしてパンクならまだ良いが、荒れたコースはチェーン切れなど、思いもよらないトラブルをも招く。だからバイクや体調も含めてあらゆる面で準備が必要だし、それがセルフディスカバリーだ。
私の場合はバイクは完璧だったが、レースを甘く見ていたために体の準備ができていなかった。大きな反省点だ。
第2エイドを過ぎても果てなく続くアップダウン。しかもコースの厳しさは一層グレードアップし、河原のように大きな石が堆積した15%はあろうかという激坂上りや、深くえぐれた溝が頻繁に道を横切っていたりともうスゴい。ここまで脚をセーブする走りをしてきたものの、かばって走る余裕なんてすっかりどこかに行ってしまった。痙攣も頻発しはじめて、痛くて涙が出てくる。
リタイアしたって自走で帰らなきゃならないから、とにかく必死にハンドルにしがみついて坂やギャップを一つ一つクリアするしか選択肢は無い。押しても良かったが、「バイクから降りる」という動作で脚が攣るので、必死に乗車してクリアした。首からぶら下げている一眼カメラが超絶に邪魔だ。
エントリーした時は「何とかなるんじゃないかな」とか考えていたけれど、実際何とかならない。本当にキツい。
苦痛に耐え続けていると、やがて第3チェックポイントが現れた。自分でも意外なほどに早く到着したような感じを受けたが、無心で走っていたのかもしれない。どうやら制限時間もまだ大丈夫とのことで、ゴールまで走りきれさえすれば、完走だ。小さくガッツポーズが出た。
少々の休憩を経て再出発。残りは20kmを切っているのに、やっぱりキツいことは変わりなく、トドメに距離2km、平均勾配10%弱の上りも出てくる。しかし気の持ちようとは良く言ったもので、完走が見えたことで気が楽になったのか、それとも何かが吹っ切れたのか、先程よりは脚も良く回っている。懸念の坂もペースを落とさずにクリアできた。
最後の上りをクリアしたら、残るは7kmの下りのみ。29er+フルサスバイクの走破性を活かして全速力でダウンヒルをぶっ飛ばし、13時36分、7時間36分のタイムでゴールを迎えた。
ゴールラインを抜けて、係の方にチップを回収してもらう。バイクを降りようとしたら膝が笑っていて、また危うく両脚を攣りかけてしまった。でも、「もう走らなくていいんだ」と思うと、それだけで嬉しかった。スタッフが手渡してくれた冷えた水が最高に美味い。
走っている時はなぜこんな辛いことしているのか全く理解できず、やめてしまおうかとも一瞬思った。それでもきっとその分、ゴールしてしばらく経つと、厳しいながらも雄大なコースを走り切った達成感が徐々に湧き、またチャレンジしてみたいという気さえしてきた。
私の当面の目標は、タイムを1時間短縮して6時間半切りに設定。
気づけばもうすっかりとSDA王滝の魅力にはまってしまったようだ。またぜひとも参加して、苦しんでみたい。9月の王滝はコースが逆周りとなるため、参加すればまた新しい発見をすることができるだろう。今からもう、次の参加が楽しみだ。
今回、私が取材参戦をさせて頂いた「セルフディスカバリーアドベンチャー・イン・王滝」を支えて下さった大会関係者並びにサポートスタッフの皆様に心より御礼申し上げます。
text:So.Isobe
photo:Akihiko.Harimoto,So.Isobe
リンク
Amazon.co.jp