2010年は地滑りによるコースの一部崩落のため開催を断念した2days race in 木祖村が再開する。関係者の努力によりコースの復旧工事も終了し、5月21日、22日の開催が決まった。参加チーム募集は3月から開始される。「草レーサーにとって最高のステージレース」をコンセプトとする大会の概要を解説しよう。

味噌川ダム湖の外周道路を行く集団(2009年大会より)味噌川ダム湖の外周道路を行く集団(2009年大会より) photo:Takashi.Nakazawa長野県木祖村、味噌川ダム外周道路を舞台に2日間で開催されるステージレースである2days race in 木祖村は、初日が8.5kmの個人タイムトライアルと81kmのロードレース。2日目が126kmのロードレース。つまり2日間で合計3ステージの総合で争われるステージレースだ。

初日の個人タイムトライアルには伴走車両(サポートカー)がつくことが義務付けられる。国内のレースで伴走車つきの平地個人タイムトライアルはほとんどないため、選手にも、ドライバーにも、メカニックにも貴重な機会となる。

土曜日のロードレースで失格になった選手には、日曜日の午前中に72kmのコンソレーションレース(残念レース)が用意される。

今年新しくなる2days race in 木祖村は、いくつか修正点を加えている。トップクラスでない選手たちにレースを闘う機会をつくるというユニークな開催意図のため、出場制限ともいうべき参加資格規定が設けられている。

2009年大会の個人総合の表彰式。左から2位の高岡亮寬(イナーメアイランド信濃山形)、優勝のリー・ロジャース(EsperanceStage我逢人)、3位の安藤光平(Team FITTE S)2009年大会の個人総合の表彰式。左から2位の高岡亮寬(イナーメアイランド信濃山形)、優勝のリー・ロジャース(EsperanceStage我逢人)、3位の安藤光平(Team FITTE S) photo:Takashi.Nakazawa・出場資格の修正
まず出場資格が、それまでの「実業団ランキング76位以下の選手」から、「UCIコンチネンタル登録をしていないチーム」に修正された。つまり今年も引き続きシマノレーシングやブリヂストン・アンカー、宇都宮ブリッツェンなどといった国内トップチームは出場できないレースだ。

・O-40ジャージの設定
40歳以上の選手を対象にした個人賞が制定された。最終集団に食らいついてでも完走して、40歳以上で一番良い成績ならO-40のリーダージャージを着用できる。リーダージャージの色はピンク色だ。


2days race in 木祖村2011 開催概要

ここではレースディレクターの藤森信行さんにレースの開催意図と主な特徴を解説してもらった。「草レーサーにとって最高のステージレース」を掲げるだけに、ユニークな工夫が凝らされている。

動けるステージレースを経験
実力のないチームがUCIコンチネンタル登録している強いチームとレースをしていると、レースの主導権を奪うことができません。2Days木祖村ではUCIコンチネンタル登録チームは排除します。
同じ程度の実力のチーム同士で「主導権をとること、レースを支配すること」を体験して欲しいのです。

国内実業団チーム(UCIコンチネンタル登録以上は参加不可)、学生選手権4位以下の同じ程度の実力の選手で行われるレースです。「引っ付き虫+脚きり失格」で終わらない、集団の先頭に出てアタックできるロードレースを走れます。

個人タイムトライアルのスタートは本格的な発射台から個人タイムトライアルのスタートは本格的な発射台から photo:Takashi.Nakazawa個人タイムトライアル
タイムトライアル用ハンドル、ディスクホイール、エアロワンピース、メカニックサポート付きチームカー、スタート発射台、次々と入れ替わる暫定ベストタイム...トップカテゴリーレースの個人タイムトライアルと同じ体験をしてみませんか? 木祖村なら8.5kmもの平地のチームカー付き個人タイムトライアルが体験できます。

スプリント賞の設定
2Days木祖村は「ステージレース」です。個人タイムトライアルに強くなければ勝てない配分に設定されています。ではスプリンターの選手はどうすればいいのでしょう? 
スプリンターのために、ロードステージでの早い段階での周回途中の平坦路でスプリントラインを設定して、上位通過3選手にスプリントポイントを与えます。上り坂が苦手でも、チーム単位で、スプリント賞ねらいで「列車」を組めば、賞金獲得の確率が増えます。
 
U-23賞の設定
2009年大会に引き続きU-23賞を設定します。22歳以下の若手選手にステージレースの経験を積んでもらうためです。ツール・ド・フランスと同じ白色のリーダージャージを、22歳以下の選手のうちで個人総合成績の最もいい選手が着用します。

O-40賞の設定
今年度からO-40賞ジャージを設定します。40歳以上のベテランにステージレースを楽しんでいただくための賞です。とても練習では着用できないピンク色のリーダージャージを、40歳以上の選手のうちで個人総合成績の最もいい選手が着用します。
 
チームプレーでレースを闘う
実業団では2011シーズンからトップカテゴリーから徐々にチームエントリーに変わります。各チーム同じ人数で戦うレースです。同じ人数ならば、入賞の可能性の低い選手をチームの戦力に変えることが出来るかどうか? このことでチーム戦力が変わります。「チームプレーを実行できるアシストマンをどこで養成しますか?」。
同じ選手数の中で、わざと逃がした、あるいは、逃げてしまった先頭集団を追い込む仕事は、アシスト選手の仕事です。先頭集団を追い込んで自身が潰れても評価されます。逃げを決めるために潰れること覚悟で先頭集団の速度を維持することも、アシストの仕事です。毎日必ず逃げ集団でエースをゴールさせるためにも必要な努力です。さらにはエースがパンクした場合、とっさに自分の車輪を差し出すこともあります。受け取った補給はエースから分配してゆくことも、必要になるかもしれません。チームプレーを実践する機会が木祖村にあります。

味噌川ダム外周道路で行われるロードレース味噌川ダム外周道路で行われるロードレース photo:Takashi.Nakazawalink小さな分かり易いステージレース
個人タイムトライアル(8.5kmチームカー付き)と集団スタートロードレース2本(81km、126km)は、ステージレースの最小単位です。そこで試されるのは、個人タイムトライアルの独走力と、スプリントを何回も繰り返すことの出来るスタミナ。必死に食らいつかなければならない登り坂もありますが、コースの大部分はダム湖周回路でほぼ平坦です。今までのレースを振り返ると、集団にぶら下がっているだけならばタイムトライアルで先頭から2分以上(15%以上)遅れた選手も完走していました。

東京名古屋から3時間で会場へ 5月21、22日に開催
東京からなら中央道塩尻インター経由で3時間、名古屋からなら恵那インター経由で3時間。土曜日の朝に出発して間に合う時刻です(9時から10時までがライセンスコントロールです)。
1泊2日で3ステージのレースを走ることができるのです。
 
その場で表彰
個人タイムトライアル暫定上位3選手は、表彰台前のチャンピオンズシートに座って結果を待ちます。個人ロードレースの表彰対象選手は、ゴール直後に担当者がチャンピオンズシートに誘導し、そのまま表彰式が始まります。汗がまだ引かないうちに表彰が始まります。リーダージャージを受け取って、花束を受け取って、シャンペンシャワーで表彰式が完了します。
賞金はその場で監督に渡されます。監督がそれぞれの選手ごとにチームへの貢献度に応じて分配することを期待しているからです。

選手とスタッフが揃わない場合はジョイントチームで
人材不足で選手5人とスタッフ2人のチームが揃わない場合は、知り合いのクラブから選手を借りてきてください。ジョイントチームとしてジャージを統一してもらえば、参加可能です。 参加選手が足りないチームに助っ人として、場合によっては、「傭兵エース」として参加することも可能です。僅かな違いは、誰が監督、メカニックになるかということです。無論、自信のある未登録選手も参加可能です。


参加申し込みは3月から開始される。コース及びルール詳細など開催要項は下記リンクにある2days race in 木祖村テクニカルガイド(エキップアズミノホームページ内)を参照のこと。また、2009年大会の記事も参考にして欲しい。

text:Nobuyuki.FUJIMORI
photo:Takashi.Nakazawa
edit:Makoto.AYANO