2010/12/09(木) - 07:54
ホノルルセンチュリーライド、CW編集部員の実走レポート最終編は、100マイルの折り返し地点のスワンジービーチパークからいよいよ帰路へ。途中、一緒になった女性3人のグループにゴール直前に訪れたアクシデント。果たして無事ゴールできるのか?
到着初日から、濃密なホノルルの日々
ようやく初参加が決まったホノルルセンチュリーライド。ところが期待だけでなく不安も同時に抱えて本番を迎えていた。なにせここまで、かなり濃いホノルルの日々を過ごしていたのだから。
ここでちょっと戻って本番2日前、我々は金曜の朝にホノルル空港に降り立った。寝不足と時差ボケの体を引きづりながら、ワイキキのホテルに到着。幸い初日の予定は夕方のミーティングまで空いている。この間にゆっくりと時差ボケを直して・・・と考えていた私の視線の先には、なぜか着いて早々に自転車を組み始める我らが編集長の姿。
ぼんやりとした時差ボケ頭で聞いてみれば「じっとしているのも勿体無い。さあ下見の下見だぁ!」編集長も同じく時差ボケしているハズなので日本語が少々おかしいのだが、どうやら大会前日に予定されているプラクティスライドのコースを、自ら事前確認しに出掛けるつもりらしい。
その熱心さには感心するものの、明らかに自転車に乗れることが嬉しくて仕方ない様子も。さすがに無視する訳にもいかず一緒に準備を始めた。
こうして私はハワイ到着の数時間後にはサドルに跨がり走り出していた。嬉々として先頭を走る編集長の背中を、我々以上に時差ボケでぼんやりしている、サポート役の大学生コンビ中澤くん橘田くんと共に3人で追いかけて。
ところが寝不足と時差ボケが重なった肉体には、これがずいぶんと過酷らしく、全くスピードが上がらない。おまけに山側に向かうにつれて天候が怪しくなり気温も下がり、ついにはひどいドシャ降りに。
雨で霞んだ前方では編集長が登りでアタック、それを大学生の中澤くんが潰しに掛かっている姿が見える。その後方で私は急激にスピードダウンし辛い状況にすっかり気が滅入っていた。するとBR-1レーサーの橘田くんがどこからともなく現れて斜め前方に付き、丁度いいスピードで引きながら様々な話しを投げかけてきて和ませてくれた。
その後なんとか先行の2人と合流したものの、限界は早く訪れ寒さと疲れで足が何度も痙攣を起こし、ついには完全に止まってしまった。すると、今度は中澤くんが私の腰を押してグイグイ登り始めた。もう電動アシスト、いや、元気なときの自分より完全に上回っている速度。
みるみる前方を登る編集長に近づき、ついには追い抜いた!こうして絶妙なメンタルサポートの橘田くん、力強いアシストの中澤くんという鉄壁のアシストコンビに助けられて“魔の下見の下見”から無事に帰ってきたのだった。
ツアー参加者の誰よりも早く、2人のサポートを身をもって体験した私は、彼らに絶大の信頼をよせて大会当日を迎えていた。一方で自分の体力には随分と自信を無くしたけれど。
ここまで来たら覚悟を決めて!
そうして迎えた大会当日。ここだけの話し、内心は取材を大義名分にして、途中でこっそりと折り返してこようと考えていた。そんな私がとうとう、100マイル(約160km)の折り返し地点まで来てしまったのだ。ここまで来たらもう戻るだけ。その際に出来るだけ多くの参加者の皆さんを、なんとか制限時間内にゴールまで導くことができればなおヨシ。
そう考えた私が、折り返し地点のスワンジー・ビーチ・パークでまず行なったのは、絶景のビーチを目の前にノンビリしている参加者に出発を促すこと。「そんなにリゾート気分に浸ってのんびりしてたら、ゴールに間に合わないぞ!」ハワイの時間はゆっくりと流れていそうだけれど、じつは全世界で平等だということを皆さんに説いて回っていた。
ここからは海岸沿いの絶景ロケーションの道、その名もカメハメハ・ハイウェイをひた走る。左側には道路に面してすぐに海岸、右はまるで太古の昔に戻ったような岩山が広がる。
折り返しからしばらく一緒に走ったのは、水色のウエアと白地に水色がキレイなアンカーに乗る早坂さん。ホノルルセンチュリーライドは、今まで1年おきに参加して、今回が3回目。これまでは50マイル、75マイルと着実に完走を果たして、今回3回目にして初の100マイルにチャレンジだという。3回ともにお友達と一緒に堅実に距離を伸ばしてこられた方です。
鉄壁のアシストコンビと役割確認
折り返して最初のエイドステーション、ヘエイア・プレイグラウンドまでは、比較的平坦な道が続いたこともありすんなりと到着。ただし決して余裕があるわけではなく、新婚旅行で参加の伊藤さんご夫婦は、時間ギリギリで到着。折り返しの直前で一緒だった、シクロクロスのみつ田さん、BMCの山本さん、レンタルバイクの木村さんの3人組も余裕は無さそうな感じ。どちらも重いレンタルバイクに乗る初心者が居るだけに、かなり気がかりなグループ。
ここで鉄壁のアシストコンビ、中澤くんと橘田くんと作戦会議。現時点でのタイムアウトギリギリとなりそうな参加者をお互いに報告。そして彼らにはそのギリギリ最終ラインについてもらい、最後の押し上げ役を任せることにして、私はそれよりも10分ほど前を走って周辺の参加者のペースをコントロールすることに。ここからは、ちょうどあの3人組とペースが重なり、ほぼ彼女たちを先導しながら進むのでした。
じつはこの3人組で私が一番心配していたのは、重いレンタルバイクで走る木村さん。ここまでは持ち前のガッツでロードバイクの2人と変わらない驚異のペースを刻んでいるものの、後半に疲れが一気に襲ってくることもよくあること。だから、おもに彼女のペースに合わせながら進行していった。
アクシデント発生!
続くエイドステーションは、カイルア・インターミディエイト・スクール。ここまでくると75マイル(約120km)を走破している。ちょっとはゴールが見え隠れするものの、残りに備えてここでしっかりとした補給と体の準備が大切となるころ。
少し長めの休憩を取って出発しようとしたところ、最初のアクシデントが発生。赤いBMCのジャージを着る山本さんのリアタイアがパンク。ちょうどエイドステーションなのでメカニックサービスが整っていたことが不幸中の幸い、さっそく修理に向かう。すると山本さん「先に進んで下さい。私は修理が終わったら追いかけますから。」いやいやそうは言っても、パンク修理でのロスタイムを帳消しにすることはかなり大変なこと。しかも1人で追いかけるとなると、プロでも大変だ。
そんな私の心配を尻目に、彼女の友人2人は「そうだねぇ」という調子で先に進もうとしている。心配する私に「彼女なら大丈夫ですから行きましょう!」そう促され複雑な思いで先に進むのだった。残した山本さんのことが、かなり心配なまま先に進んでいると、「お待たせぇ〜」20分も経過しないうちに山本さん早くも合流。一同「ほらね!」。聞けば、かなり手際良く素早く修理してくれたそうだが、いくらなんでも早くない?
しばらくは順調に進んで行くものの、85マイルを過ぎたあたりで、レンタルバイクの木村さんのペースがガックリと落ちる。頑張れ!もう目の前に朝の最初のエイドステーション、サンデー・ビーチパークが迫っている!そう言い聞かせながら進んだものの、実際には帰りのエイドステーションはそこではなく、さらに先に進んだ地点だった。私の間違った情報で変な期待をさせてしまった木村さんのペースは益々落ちることに。そのため日陰を見つけてとりあえず小休止。まだカバンに残っていた補給食で腹ごしらえを終えると、なんとかペースも戻ってきた。
最後のエイドステーションは、90マイル地点のクアパ・プリ・スクール。ここの終了時刻は16:00だから、もし終了まで休んでいても、残りの10マイル(約16km)に1時間使える計算となる。何事もなければ、完走出来る時間だ。そう何事もなければ・・・
ゴールまで残り僅かで、再びアクシデント!
その何事かが起きてしまった。帰りのハイウェイに出たところで、山本さんのリアタイヤが再びパンク。
時間的にこれ以上トラブルを繰り返すと間に合わない。そのため、みつ田さんと木村さんの2人には先にゴールに向かってもらい、私は残って彼女のパンク修理を行う。
その間に最後尾の鉄壁のアシストコンビがこちらを心配しながらも、参加者とともに通り過ぎていく。ということは、ほぼビリ。しかも山本さんを時間内にゴールさせるサポートは私のみということに。
修理が終わったところで山本さんから「どうしても3人揃ってゴールしたいんです。だから2人を追いかけます!」「承知しました。そういうことなら、お手伝いします。先頭交代しながら追いましょう!」と答える私。ここで再び私のスイッチが入った!彼女と2人で先頭交代しながら、先行した2人を追ってハイウェイを疾走することを決意!
ところが最初に前を引いた山本さん、私の予想以上にメチャクチャ速いのである。こちらは離されないように着いて行くだけで必死。メーターを見ると時速45km/hで巡航中!前になんて到底出れないし、先頭交代どころではない。ようやく信号で停まったところで、今度は私が先頭を引く。
ここからは自分の渾身の力を込めて前を引いた。彼女が2人に追いつければ、私はここで終わってもいい。まるで気分はエースのシュレックを引く、アシストのカンチェラーラ。
でも振り返ると笑顔で涼しく着いてくる。しかも追っても追っても先行する2人の姿は現れず。そのうちハイウェイも終わって住宅街に差しかかった。
信号の変わり目で、山本さんがもう一度前へ出た。そして彼女は先行する友人を追って、さらに軽快に加速していく。先ほどまでの引きですっかり力尽きた私は、あろうことか彼女に完全に千切られた。なす術もなく彼女の後ろ姿を見送ることに。しかし彼女はXCレースに出ているとは言っていたけれど、何者なんだ?
なんとか無事にゴールを迎える!
その後、山本さんも無事に友人2人に合流。私も追いつき残り数キロを、顔見知りになった皆さんと噛み締めながら確実にゴールに向かう。そしてスタート地点のカピオラニ公園に戻って、長い1日が終了となる。
最後までハラハラした、山本さん含む3人組はゴール閉鎖の9分前に到着、木村さんはとうとう重いレンタルバイクで見事100マイルを走破!
そしてもう一組レンタルバイクで100マイルにチャレンジしていた、新婚旅行カップルの伊藤さんご夫婦は、鉄壁のアシストにしっかりサポートされ、なんとゴール閉鎖の2分前に到着!というきわどさ。
長い1日を終えたゴール付近には、みなさんの充実した笑顔が絶えず続いていた。そんなゴール後の笑顔は、フォトギャラリーでご覧下さい。
山本さんは、実はとんでもない人だった!
さて最後に猛烈な追い上げを見せたBMCジャージの山本さんですが、翌日にある事実が判明。じつは彼女、女子MTBクロカンのエリート選手で、今シーズンBMC のサポートを受けて走る山本佳苗さんその人でした。
しかもホノルルセンチュリーライドの直前に行なわれた、王滝120kmの女子の部で優勝も飾っているすごい人だったのです!
こりゃ、相手が悪かったということで。
とういことで、初挑戦のホノルルセンチュリーライドも、なんとか無事に終了。
皆様、長い一日お疲れさまでした。
photo:Makoto.AYANO Takashi.KAYABA
text&edit :Takashi.KAYABA
到着初日から、濃密なホノルルの日々
ようやく初参加が決まったホノルルセンチュリーライド。ところが期待だけでなく不安も同時に抱えて本番を迎えていた。なにせここまで、かなり濃いホノルルの日々を過ごしていたのだから。
ここでちょっと戻って本番2日前、我々は金曜の朝にホノルル空港に降り立った。寝不足と時差ボケの体を引きづりながら、ワイキキのホテルに到着。幸い初日の予定は夕方のミーティングまで空いている。この間にゆっくりと時差ボケを直して・・・と考えていた私の視線の先には、なぜか着いて早々に自転車を組み始める我らが編集長の姿。
ぼんやりとした時差ボケ頭で聞いてみれば「じっとしているのも勿体無い。さあ下見の下見だぁ!」編集長も同じく時差ボケしているハズなので日本語が少々おかしいのだが、どうやら大会前日に予定されているプラクティスライドのコースを、自ら事前確認しに出掛けるつもりらしい。
その熱心さには感心するものの、明らかに自転車に乗れることが嬉しくて仕方ない様子も。さすがに無視する訳にもいかず一緒に準備を始めた。
こうして私はハワイ到着の数時間後にはサドルに跨がり走り出していた。嬉々として先頭を走る編集長の背中を、我々以上に時差ボケでぼんやりしている、サポート役の大学生コンビ中澤くん橘田くんと共に3人で追いかけて。
ところが寝不足と時差ボケが重なった肉体には、これがずいぶんと過酷らしく、全くスピードが上がらない。おまけに山側に向かうにつれて天候が怪しくなり気温も下がり、ついにはひどいドシャ降りに。
雨で霞んだ前方では編集長が登りでアタック、それを大学生の中澤くんが潰しに掛かっている姿が見える。その後方で私は急激にスピードダウンし辛い状況にすっかり気が滅入っていた。するとBR-1レーサーの橘田くんがどこからともなく現れて斜め前方に付き、丁度いいスピードで引きながら様々な話しを投げかけてきて和ませてくれた。
その後なんとか先行の2人と合流したものの、限界は早く訪れ寒さと疲れで足が何度も痙攣を起こし、ついには完全に止まってしまった。すると、今度は中澤くんが私の腰を押してグイグイ登り始めた。もう電動アシスト、いや、元気なときの自分より完全に上回っている速度。
みるみる前方を登る編集長に近づき、ついには追い抜いた!こうして絶妙なメンタルサポートの橘田くん、力強いアシストの中澤くんという鉄壁のアシストコンビに助けられて“魔の下見の下見”から無事に帰ってきたのだった。
ツアー参加者の誰よりも早く、2人のサポートを身をもって体験した私は、彼らに絶大の信頼をよせて大会当日を迎えていた。一方で自分の体力には随分と自信を無くしたけれど。
ここまで来たら覚悟を決めて!
そうして迎えた大会当日。ここだけの話し、内心は取材を大義名分にして、途中でこっそりと折り返してこようと考えていた。そんな私がとうとう、100マイル(約160km)の折り返し地点まで来てしまったのだ。ここまで来たらもう戻るだけ。その際に出来るだけ多くの参加者の皆さんを、なんとか制限時間内にゴールまで導くことができればなおヨシ。
そう考えた私が、折り返し地点のスワンジー・ビーチ・パークでまず行なったのは、絶景のビーチを目の前にノンビリしている参加者に出発を促すこと。「そんなにリゾート気分に浸ってのんびりしてたら、ゴールに間に合わないぞ!」ハワイの時間はゆっくりと流れていそうだけれど、じつは全世界で平等だということを皆さんに説いて回っていた。
ここからは海岸沿いの絶景ロケーションの道、その名もカメハメハ・ハイウェイをひた走る。左側には道路に面してすぐに海岸、右はまるで太古の昔に戻ったような岩山が広がる。
折り返しからしばらく一緒に走ったのは、水色のウエアと白地に水色がキレイなアンカーに乗る早坂さん。ホノルルセンチュリーライドは、今まで1年おきに参加して、今回が3回目。これまでは50マイル、75マイルと着実に完走を果たして、今回3回目にして初の100マイルにチャレンジだという。3回ともにお友達と一緒に堅実に距離を伸ばしてこられた方です。
鉄壁のアシストコンビと役割確認
折り返して最初のエイドステーション、ヘエイア・プレイグラウンドまでは、比較的平坦な道が続いたこともありすんなりと到着。ただし決して余裕があるわけではなく、新婚旅行で参加の伊藤さんご夫婦は、時間ギリギリで到着。折り返しの直前で一緒だった、シクロクロスのみつ田さん、BMCの山本さん、レンタルバイクの木村さんの3人組も余裕は無さそうな感じ。どちらも重いレンタルバイクに乗る初心者が居るだけに、かなり気がかりなグループ。
ここで鉄壁のアシストコンビ、中澤くんと橘田くんと作戦会議。現時点でのタイムアウトギリギリとなりそうな参加者をお互いに報告。そして彼らにはそのギリギリ最終ラインについてもらい、最後の押し上げ役を任せることにして、私はそれよりも10分ほど前を走って周辺の参加者のペースをコントロールすることに。ここからは、ちょうどあの3人組とペースが重なり、ほぼ彼女たちを先導しながら進むのでした。
じつはこの3人組で私が一番心配していたのは、重いレンタルバイクで走る木村さん。ここまでは持ち前のガッツでロードバイクの2人と変わらない驚異のペースを刻んでいるものの、後半に疲れが一気に襲ってくることもよくあること。だから、おもに彼女のペースに合わせながら進行していった。
アクシデント発生!
続くエイドステーションは、カイルア・インターミディエイト・スクール。ここまでくると75マイル(約120km)を走破している。ちょっとはゴールが見え隠れするものの、残りに備えてここでしっかりとした補給と体の準備が大切となるころ。
少し長めの休憩を取って出発しようとしたところ、最初のアクシデントが発生。赤いBMCのジャージを着る山本さんのリアタイアがパンク。ちょうどエイドステーションなのでメカニックサービスが整っていたことが不幸中の幸い、さっそく修理に向かう。すると山本さん「先に進んで下さい。私は修理が終わったら追いかけますから。」いやいやそうは言っても、パンク修理でのロスタイムを帳消しにすることはかなり大変なこと。しかも1人で追いかけるとなると、プロでも大変だ。
そんな私の心配を尻目に、彼女の友人2人は「そうだねぇ」という調子で先に進もうとしている。心配する私に「彼女なら大丈夫ですから行きましょう!」そう促され複雑な思いで先に進むのだった。残した山本さんのことが、かなり心配なまま先に進んでいると、「お待たせぇ〜」20分も経過しないうちに山本さん早くも合流。一同「ほらね!」。聞けば、かなり手際良く素早く修理してくれたそうだが、いくらなんでも早くない?
しばらくは順調に進んで行くものの、85マイルを過ぎたあたりで、レンタルバイクの木村さんのペースがガックリと落ちる。頑張れ!もう目の前に朝の最初のエイドステーション、サンデー・ビーチパークが迫っている!そう言い聞かせながら進んだものの、実際には帰りのエイドステーションはそこではなく、さらに先に進んだ地点だった。私の間違った情報で変な期待をさせてしまった木村さんのペースは益々落ちることに。そのため日陰を見つけてとりあえず小休止。まだカバンに残っていた補給食で腹ごしらえを終えると、なんとかペースも戻ってきた。
最後のエイドステーションは、90マイル地点のクアパ・プリ・スクール。ここの終了時刻は16:00だから、もし終了まで休んでいても、残りの10マイル(約16km)に1時間使える計算となる。何事もなければ、完走出来る時間だ。そう何事もなければ・・・
ゴールまで残り僅かで、再びアクシデント!
その何事かが起きてしまった。帰りのハイウェイに出たところで、山本さんのリアタイヤが再びパンク。
時間的にこれ以上トラブルを繰り返すと間に合わない。そのため、みつ田さんと木村さんの2人には先にゴールに向かってもらい、私は残って彼女のパンク修理を行う。
その間に最後尾の鉄壁のアシストコンビがこちらを心配しながらも、参加者とともに通り過ぎていく。ということは、ほぼビリ。しかも山本さんを時間内にゴールさせるサポートは私のみということに。
修理が終わったところで山本さんから「どうしても3人揃ってゴールしたいんです。だから2人を追いかけます!」「承知しました。そういうことなら、お手伝いします。先頭交代しながら追いましょう!」と答える私。ここで再び私のスイッチが入った!彼女と2人で先頭交代しながら、先行した2人を追ってハイウェイを疾走することを決意!
ところが最初に前を引いた山本さん、私の予想以上にメチャクチャ速いのである。こちらは離されないように着いて行くだけで必死。メーターを見ると時速45km/hで巡航中!前になんて到底出れないし、先頭交代どころではない。ようやく信号で停まったところで、今度は私が先頭を引く。
ここからは自分の渾身の力を込めて前を引いた。彼女が2人に追いつければ、私はここで終わってもいい。まるで気分はエースのシュレックを引く、アシストのカンチェラーラ。
でも振り返ると笑顔で涼しく着いてくる。しかも追っても追っても先行する2人の姿は現れず。そのうちハイウェイも終わって住宅街に差しかかった。
信号の変わり目で、山本さんがもう一度前へ出た。そして彼女は先行する友人を追って、さらに軽快に加速していく。先ほどまでの引きですっかり力尽きた私は、あろうことか彼女に完全に千切られた。なす術もなく彼女の後ろ姿を見送ることに。しかし彼女はXCレースに出ているとは言っていたけれど、何者なんだ?
なんとか無事にゴールを迎える!
その後、山本さんも無事に友人2人に合流。私も追いつき残り数キロを、顔見知りになった皆さんと噛み締めながら確実にゴールに向かう。そしてスタート地点のカピオラニ公園に戻って、長い1日が終了となる。
最後までハラハラした、山本さん含む3人組はゴール閉鎖の9分前に到着、木村さんはとうとう重いレンタルバイクで見事100マイルを走破!
そしてもう一組レンタルバイクで100マイルにチャレンジしていた、新婚旅行カップルの伊藤さんご夫婦は、鉄壁のアシストにしっかりサポートされ、なんとゴール閉鎖の2分前に到着!というきわどさ。
長い1日を終えたゴール付近には、みなさんの充実した笑顔が絶えず続いていた。そんなゴール後の笑顔は、フォトギャラリーでご覧下さい。
山本さんは、実はとんでもない人だった!
さて最後に猛烈な追い上げを見せたBMCジャージの山本さんですが、翌日にある事実が判明。じつは彼女、女子MTBクロカンのエリート選手で、今シーズンBMC のサポートを受けて走る山本佳苗さんその人でした。
しかもホノルルセンチュリーライドの直前に行なわれた、王滝120kmの女子の部で優勝も飾っているすごい人だったのです!
こりゃ、相手が悪かったということで。
とういことで、初挑戦のホノルルセンチュリーライドも、なんとか無事に終了。
皆様、長い一日お疲れさまでした。
photo:Makoto.AYANO Takashi.KAYABA
text&edit :Takashi.KAYABA
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