2021/07/05(月) - 18:03
今年、初開催となったグラベルイベント"MADURO(マッデューロ)"。コロナ禍で延期となったGRINDUROの理念を絶やさないためのイベントとして、斑尾エリアの魅力を集めた70kmに約90名のオフローダーが集まった。
斑尾の変化に富んだ道を行くMADURO
2019年に日本では初めて開催されたGRINDURO(グラインデューロ)。国内初の本格的なグラベルイベントであり、世界的な人気を誇るイベントが日本にやってくるとあって、大きな注目を集めたが、大会当日に超大型の台風が襲来。なんとか中止とはならなかったものの、コースは大幅にショートカットされることに。
主催者、参加者ともにリベンジを期した昨年の第2回大会だったが、コロナ禍により開催中止。今春の開催となる予定だったが、再びの感染拡大により今度は秋へと延期されることとなった。2年連続で外部環境に振り回されてしまったGRINDUROだが、そのコースとコンセプトを体感できるイベントとして、この6月に開催されたのがMADUROである。
2019のGRINDURO、台風の影響で午後ループはカットとなってしまった。 (c)grinduro
感染症対策として参加人数は100名以下とかなりこじんまりとした規模感となったこともあるが、幻となった初回GRINDUROのフルコースを走れるという注目度の高さを示すように、エントリー開始後あっという間に満員御礼に。
ちなみにMADUROという名前は、斑尾(Madarao)から取られたもので、決して泥のマッドとか、狂気を示すマッドとか、そういう意味合いは無いのだという。斑尾高原をグラベルの聖地として日本、そして世界に発信していくことが、イベントの大きな目標だとも。
前夜は雨だったがテント泊した方もたくさん。当日晴れたのでテントも乾いたことでしょう
さて、そんな経緯もあって初開催の運びとなったMADUROだが、何の因果か週末に台風発生の一報が。一昨年の悪天候の再来かと危ぶまれたものの、実際には大した影響もなく消滅してくれたのは、大会に関係するみなさんの熱意のおかげかもしれない。
それでも大会前夜はしとしとと雨が降っており、テント泊の参加者は少な目。かくいう私も直前までテント泊にするか悩んだのだけれど、そもそも取材なのだから色々と電子機器の充電なども万全の状態にせねばいかん、ということで急遽ホテルを手配。決してテントを乾かすのが面倒だったとか、そういうわけではない(笑)。
メイン会場となるチロルの前に参加者たちが集まってきた
大会当日、朝6時頃にはメイン会場となるチロルに多くのグラベルライダーたちが集っている。駐車場につけられた車もロード系のサイクリングイベントとは一味違う、スタイルあるクルマの割合が多いのが、いかにも、といったところ。
スタート自体は8時で、その間何をするのかと言えば、なんと朝食が用意されているというのだから驚きだ。斑尾の食材を活かしたサンドイッチとスープ、そしてコーヒーが振舞われ、朝から幸せな気分に。胃も動きだし、シャキッとしてきたところでスタートだ。
まずQRコードを読み取って受付を開始します
まずは朝食を頂きます。地元食材を使ったサンドイッチとスープでお腹を満たします
晴れに恵まれたMADURO、スタートです
簡単にコースを説明すると、前半と後半それぞれ35kmほどのループに分かれそれぞれ飯山市街方面、野尻湖方面へ下ったのち斑尾高原へと戻ってくる8の字のようなコースになっている。前半後半それぞれにタイム計測区間となるSSが一つずつ設定されており、合計獲得ポイントによって順位がつけられることになる。
最初は気持ちいい下りですよ!とはコースを設定したダイアテックの増田さん。その言葉を信じ、スタート写真を撮り終えて最後尾から走り出した私の目の前に見えたのは、ゲレンデの登りでバイクを押し歩く皆さんの姿。この瞬間、悟ったのだ。(あ、これ、めっちゃハードなやつだ……)
まずはゲレンデを登っていきます
ゲレンデの登坂、早速皆さん押し歩き中
しかし、幸い(?)なことに、今回の私のバイクはXC用の最新フルサスバイク。ほとんどの方がチョイスしたグラベルバイクに比べれば、トラクションのかけやすさもギア比の低さも圧倒的に有利。まだサラ脚ということもあって、押し歩く皆さんをフィルムに収めながらひたすらローギアでクルクル回して丘を越えていく。
短いながらも激坂を登り切ると、やっとダウンヒル区間へ。グラベルイベントということで、ダブトラ林道の下りを勢いよく下っていくのだろうと思いきや、スタッフの誘導先に登場したのはなんとシングルトラック。切通しのようになっていて左右に振りながら気持ちよく下れるような楽しいトレイルで、それこそMTB参加の私としては、かなり楽しい区間。
しばらくはスキー場の敷地を走っていきます
ルーズな路面の急こう配区間、押し歩いてもこけてしまう人も
グラベルライドで避けられないパンク修理中
いきなりシングルトラック区間へ
裏を返せば、グラベルバイクで楽しく下るにはテクニックが必要であるともいえる。前日の雨のせいでハーフウェットな路面にはところどころ木の根も顔を出し、ラインによっては滑ってしまうところも。中団より後ろでは渋滞してしまうシーンもあったけれど、安全第一である。
もっとも、途中にはもはや自転車から降りて下るのも一苦労といったヌッタヌタの急こう配区間も登場し、グラベルバイクもMTBも等しくすってんころりん悪戦苦闘しながら下ることになるのだけれども。え、もちろん私もこけましたよ?
飯山のスキージャンプ場の横をダウンヒル
飯山市街を見下ろしながら下っていきます
飯山の市街地を望む絶景に思わず写真を撮る方も
SS1、飯山城址の城門をスタートしていきます
計測区間ですが、石段も登場。攻城戦の大変さを体感できます
本丸のあった場所に設けられた神社の鳥居をくぐってフィニッシュ
エイドステーションでは笹寿司が
信越ペダルのプレートが取り付けられたスタンドが用意されていた
そんな楽しい区間を走りきって飯山の市街地に降り立つと、一つ目のタイム計測区間となる飯山城址はもう目と鼻の先だ。城門をスタートゲートとし、昔の城跡をくねくねと迂回させられながら本丸跡に建立された神社を目指すのがSS1。そう、勘の良い方はお気づきだろうが、城攻めする兵士の気分を味わえるのである。
複雑なクランクが連続したり、180度ターンした先に階段があったりと随所に速度を殺す工夫がされており、城へと攻めいる側がいかに不利であるかを人力の鉄馬(カーボンなので炭馬かもしれない)に乗った騎馬武者たちが体感する。全力を出した後は、エイドステーションで補給タイムだ。ここから斑尾高原へと登り返さないといけないのだ。
千曲川を渡っていきます
千曲川沿いのグラベル区間を走っていきます
強い陽射しの中、ダートの登りを走っていく
初夏の陽気の中、いかにもグラベルといった道を走っていく
飯山の中心部を貫く日本最長河川である千曲川沿いの河川敷を走り、一路斑尾高原へ。下りとは違って登りはいわゆるダート林道で、ここはグラベルバイクの本領発揮といったところ。この頃には太陽も中天に差し掛かり、陽射しを受けつつひーこら登っていく。
1ループ35kmということで、補給もそこまで入念に用意する必要が無いように感じるかもしれないが、初夏の日差しのなか未舗装路を登っていくとあっという間にオーバーヒート寸前だ。出来ればリュックなどは背負わず、必要な補給食やウエア、リペアキットの類は自転車に装着し、冷却効率を高めつつボトルは2本ほど差せるようにした方が良いだろう。
久しぶりに脚を攣りつつ、何とか斑尾高原へ戻ってくるとお待ちかねのランチタイムだ。信州産のお米を使ったおにぎりとシナノユキマスの唐揚げ、そしてたけのこ味噌汁という和な組み合わせにほっと一息ついた私に、無情なアナウンスが響き渡る。
「午後ループを完走したい人は11時までにスタートしてくださーい」
Q:え、今何時?
A:11時25分
……後編へ続きます。
text&photo:Naoki Yasuoka

2019年に日本では初めて開催されたGRINDURO(グラインデューロ)。国内初の本格的なグラベルイベントであり、世界的な人気を誇るイベントが日本にやってくるとあって、大きな注目を集めたが、大会当日に超大型の台風が襲来。なんとか中止とはならなかったものの、コースは大幅にショートカットされることに。
主催者、参加者ともにリベンジを期した昨年の第2回大会だったが、コロナ禍により開催中止。今春の開催となる予定だったが、再びの感染拡大により今度は秋へと延期されることとなった。2年連続で外部環境に振り回されてしまったGRINDUROだが、そのコースとコンセプトを体感できるイベントとして、この6月に開催されたのがMADUROである。

感染症対策として参加人数は100名以下とかなりこじんまりとした規模感となったこともあるが、幻となった初回GRINDUROのフルコースを走れるという注目度の高さを示すように、エントリー開始後あっという間に満員御礼に。
ちなみにMADUROという名前は、斑尾(Madarao)から取られたもので、決して泥のマッドとか、狂気を示すマッドとか、そういう意味合いは無いのだという。斑尾高原をグラベルの聖地として日本、そして世界に発信していくことが、イベントの大きな目標だとも。

さて、そんな経緯もあって初開催の運びとなったMADUROだが、何の因果か週末に台風発生の一報が。一昨年の悪天候の再来かと危ぶまれたものの、実際には大した影響もなく消滅してくれたのは、大会に関係するみなさんの熱意のおかげかもしれない。
それでも大会前夜はしとしとと雨が降っており、テント泊の参加者は少な目。かくいう私も直前までテント泊にするか悩んだのだけれど、そもそも取材なのだから色々と電子機器の充電なども万全の状態にせねばいかん、ということで急遽ホテルを手配。決してテントを乾かすのが面倒だったとか、そういうわけではない(笑)。

大会当日、朝6時頃にはメイン会場となるチロルに多くのグラベルライダーたちが集っている。駐車場につけられた車もロード系のサイクリングイベントとは一味違う、スタイルあるクルマの割合が多いのが、いかにも、といったところ。
スタート自体は8時で、その間何をするのかと言えば、なんと朝食が用意されているというのだから驚きだ。斑尾の食材を活かしたサンドイッチとスープ、そしてコーヒーが振舞われ、朝から幸せな気分に。胃も動きだし、シャキッとしてきたところでスタートだ。



簡単にコースを説明すると、前半と後半それぞれ35kmほどのループに分かれそれぞれ飯山市街方面、野尻湖方面へ下ったのち斑尾高原へと戻ってくる8の字のようなコースになっている。前半後半それぞれにタイム計測区間となるSSが一つずつ設定されており、合計獲得ポイントによって順位がつけられることになる。
最初は気持ちいい下りですよ!とはコースを設定したダイアテックの増田さん。その言葉を信じ、スタート写真を撮り終えて最後尾から走り出した私の目の前に見えたのは、ゲレンデの登りでバイクを押し歩く皆さんの姿。この瞬間、悟ったのだ。(あ、これ、めっちゃハードなやつだ……)


しかし、幸い(?)なことに、今回の私のバイクはXC用の最新フルサスバイク。ほとんどの方がチョイスしたグラベルバイクに比べれば、トラクションのかけやすさもギア比の低さも圧倒的に有利。まだサラ脚ということもあって、押し歩く皆さんをフィルムに収めながらひたすらローギアでクルクル回して丘を越えていく。
短いながらも激坂を登り切ると、やっとダウンヒル区間へ。グラベルイベントということで、ダブトラ林道の下りを勢いよく下っていくのだろうと思いきや、スタッフの誘導先に登場したのはなんとシングルトラック。切通しのようになっていて左右に振りながら気持ちよく下れるような楽しいトレイルで、それこそMTB参加の私としては、かなり楽しい区間。




裏を返せば、グラベルバイクで楽しく下るにはテクニックが必要であるともいえる。前日の雨のせいでハーフウェットな路面にはところどころ木の根も顔を出し、ラインによっては滑ってしまうところも。中団より後ろでは渋滞してしまうシーンもあったけれど、安全第一である。
もっとも、途中にはもはや自転車から降りて下るのも一苦労といったヌッタヌタの急こう配区間も登場し、グラベルバイクもMTBも等しくすってんころりん悪戦苦闘しながら下ることになるのだけれども。え、もちろん私もこけましたよ?








そんな楽しい区間を走りきって飯山の市街地に降り立つと、一つ目のタイム計測区間となる飯山城址はもう目と鼻の先だ。城門をスタートゲートとし、昔の城跡をくねくねと迂回させられながら本丸跡に建立された神社を目指すのがSS1。そう、勘の良い方はお気づきだろうが、城攻めする兵士の気分を味わえるのである。
複雑なクランクが連続したり、180度ターンした先に階段があったりと随所に速度を殺す工夫がされており、城へと攻めいる側がいかに不利であるかを人力の鉄馬(カーボンなので炭馬かもしれない)に乗った騎馬武者たちが体感する。全力を出した後は、エイドステーションで補給タイムだ。ここから斑尾高原へと登り返さないといけないのだ。




飯山の中心部を貫く日本最長河川である千曲川沿いの河川敷を走り、一路斑尾高原へ。下りとは違って登りはいわゆるダート林道で、ここはグラベルバイクの本領発揮といったところ。この頃には太陽も中天に差し掛かり、陽射しを受けつつひーこら登っていく。
1ループ35kmということで、補給もそこまで入念に用意する必要が無いように感じるかもしれないが、初夏の日差しのなか未舗装路を登っていくとあっという間にオーバーヒート寸前だ。出来ればリュックなどは背負わず、必要な補給食やウエア、リペアキットの類は自転車に装着し、冷却効率を高めつつボトルは2本ほど差せるようにした方が良いだろう。
久しぶりに脚を攣りつつ、何とか斑尾高原へ戻ってくるとお待ちかねのランチタイムだ。信州産のお米を使ったおにぎりとシナノユキマスの唐揚げ、そしてたけのこ味噌汁という和な組み合わせにほっと一息ついた私に、無情なアナウンスが響き渡る。
「午後ループを完走したい人は11時までにスタートしてくださーい」
Q:え、今何時?
A:11時25分
……後編へ続きます。
text&photo:Naoki Yasuoka
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