2020/11/26(木) - 13:12
横浜市にある「トレイルアドベンチャーよこはま」にて、数多くのE-MTBが集まった試乗会"E-MTB World"が開催された。トレックやスペシャライズド、コラテックなど日本でE-MTBを展開する主要なブランドがほぼ一堂に会した2日間となった。
各社が毎年新たなモデルをリリースし、関西にはMTBゲレンデに専用コースがオープンするなど、ここ最近更に熱い注目を浴びているのが電動アシストMTB、通称"E-MTB"と呼ばれるカテゴリー。
日本よりも一足先にE-BIKEの普及が進む欧米諸国では、E-MTBこそがスポーツバイクの本命として各ブランドが力を入れており、それぞれが特色のあるモデルをラインアップしている。法規の関係上日本にはそのまま輸入できないため、日本ではロードバイクのレーシングブランドとして認知されているメーカーが、実は本国ではE-MTBがラインアップの中心となっているなんてこともままあるほど。
そんな中、この1~2年で日本の法規にアジャストした本格的なE-MTBが大手ブランドのラインアップに揃い始めてきた。通常のMTB同様、フレーム設計による乗り味の違いに加え、アシストユニットやバッテリーの特性、配置方法などE-MTBならではの性能差もあるため、どの車種を選ぶべきかという問題はノーマルバイクよりも更に複雑になってくる。
つまり、実際にフィールドで乗って試すことがこれまで以上に重要になってくるのがE-MTBといえるだろう。そんなニーズに応えるべく開催されたのが"e-MTB WORLD 2020"。日本で手に入る、ほぼ全てのブランドが勢ぞろいし本格的なコースでその性能を試すことが出来る試乗会に多くの人が集まった。
会場となったのは今年の2月末にオープンしたばかりの「トレイルアドベンチャーよこはま」。よこはま動物園ズーラシアに隣接するフォレストアドベンチャーよこはまの敷地内に造成されたコースで、自走で漕ぎ上がるスタイルのコンパクトなフロートレイルが整備されている。
ライダーのレベルに応じて難易度の低い順に、「グリーン」、「ブルー」、「レッド」と分けられた3本のコースが用意されており、初心者から中上級者まで楽しめるパークだ。普段からE-MTBのレンタルも用意されているためか、登りセクションにもバームが盛られているなど、E-MTBの性能を試すのにもってこいのロケーション。
今回、"e-MTB WORLD 2020"に集まったのはスペシャライズド、ネスト、トレック、コラテック、メリダ、パナソニック、ベスビー、ヤマハの8ブランド。トレイルアドベンチャーよこはまでレンタルできるジャイアントも含めれば、国内で入手することのできるほぼ全てのE-MTBブランドが一堂に会した。
新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、サイクルモードを始めとしたコンシューマー向けの展示試乗会が軒並み中止となる中、E-MTBオンリーとはいえ大規模な試乗会が開催できたことは素直に喜ばしい。e-MTB WORLDも当初3月開催の予定がこの時期に延期したとのことだが、新モデルのデリバリーが始まるタイミングでもありむしろ良かった、という声も聞かれた。
もちろん、感染対策もしっかり行われており入場時には手指の消毒を行うほか出展スペースではマスク類の着用が求められていた。各ブースのスタッフももちろんマスク着用、さらに試乗車が返却されるたび、グリップやレバー類、サドルなどをアルコール消毒し、感染防止に余念が無い。貴重な機会を大切にする、みなさんの思いが伝わってくる。
さて、そんなわけで私たちもいくつか試乗車に跨ってコースイン。多くの来場者から注目を集めていたのはトレックとスペシャライズドの2大アメリカンブランド。オリジナルのSLユニットを積むスペシャライズドのLevo SLシリーズは軽量でノーマルバイクに迫る取り回し。ボッシュ Perfomance Line CXを搭載したトレック Railは、21モデルで最大トルクが75Nmから85Nmへ増し、よりパワフルに。登りでの鋭い加速と、下りの楽しさを両立させたバランスが魅力的だった。
一方、シマノ STEPSを採用するのがメリダやネスト、ベスビーといったブランド。中でもメリダのeONE-SIXTY 10Kは前後異径のマレット仕様というユニークなスペック。29インチの走破性と27.5インチの回頭性を兼ねそなえつつ、弱点となる登りをアシストで補う隙の無い乗り味。セッティングが固めだったか、よりハードなコースが向いてそうなハイエンドバイクだった。
ベスビーからはバッテリー内装フルサスE-MTBながら44万円というリーズナブルなプライスのTRS-2 AMが注目作。STEPS E8080にオリジナルのバッテリーを搭載しつつ、パーツのグレードを抑えることでE-MTBの魅力を手の届きやすい価格として一台は、カスタムベースとしても人気なのだとか。実際に乗ってみてもソツのない素直な性格で、サスやタイヤをアップデートし自分好みにカスタムするのが楽しそうなバイクだ。
多くのブースの中でもひときわ盛り上がっていたのがヤマハ。新作にしてヤマハ初となるフルサスE-MTB"YPJ-MTpro"の試乗車が並び、人気を博していた。昨年のサイクルモードでお披露目されたYPJ-MTproは、オートバイメーカーらしさが匂い立つ双胴ダウンチューブにバッテリーを収めることでルックスと性能を両立。同様に双胴とされたトップチューブにはショックユニットがマウントされている。
強度と軽量性を両立するため、中空パイプと鍛造パーツを使い分けているというところからも、ヤマハのホンキが窺える。あえてリアセンターを伸ばしたジオメトリによって、初心者でも安心できる穏やかな乗り味が特徴的だった。
ノーマルバイクと同じく、あるいはそれ以上に各ブランドの持ち味が色濃く出てくるE-MTB。既にMTBを楽しんでいる人はもちろん、新たにMTBに興味がある人にとっても大きなメリットがある乗り物だ。今回のe-MTB WORLD 2020にも、2日間で250人と多くの人が集まったが、きっとそのポテンシャルと楽しさは大いに伝わったハズ。
「出展社からも来場者からも、こういった試乗会があるのが嬉しいという声を頂きました」と語ってくれたのは、主催者であるe-mobility協会の今中大介理事。「元プロ選手の僕がE-BIKEに関わるのを不思議に思うかもしれないですが、個人的にはとても注目しているんです。女性や年配の方など、体力差のある方が一緒に走れるのは素晴らしい。今回のコースも2周くらいすれば体力面で限界だったかもしれない初心者の方が、E-MTBなら5周、6周と走れるし、何なら1日通して遊べますよね。普通のバイクに比べて服装がラフでも楽しめるし、もっと多くの人に気軽に自由に乗ってほしいですね」とコメントを頂いた。
また、今後のE-BIKEの展望についても、「メーカーさんからも販売自体は予想以上に好調だと聞いています。でも、まだまだ欧米に比べれば小規模ですからもっと大きな伸びしろがあると思っています。MaaSの波も来ている中で、E-BIKEは今後より存在感を増していくと信じています」と語ってくれた。
e-mobility協会としては、今後もこういった機会を設けていきたいとのことだ。今回参加できなかった人も、次回が開催された際にはぜひ足を運んでみてほしい。
text&photo:Naoki Yasuoka
photo:Gakuto Fujiwara
各社が毎年新たなモデルをリリースし、関西にはMTBゲレンデに専用コースがオープンするなど、ここ最近更に熱い注目を浴びているのが電動アシストMTB、通称"E-MTB"と呼ばれるカテゴリー。
日本よりも一足先にE-BIKEの普及が進む欧米諸国では、E-MTBこそがスポーツバイクの本命として各ブランドが力を入れており、それぞれが特色のあるモデルをラインアップしている。法規の関係上日本にはそのまま輸入できないため、日本ではロードバイクのレーシングブランドとして認知されているメーカーが、実は本国ではE-MTBがラインアップの中心となっているなんてこともままあるほど。
そんな中、この1~2年で日本の法規にアジャストした本格的なE-MTBが大手ブランドのラインアップに揃い始めてきた。通常のMTB同様、フレーム設計による乗り味の違いに加え、アシストユニットやバッテリーの特性、配置方法などE-MTBならではの性能差もあるため、どの車種を選ぶべきかという問題はノーマルバイクよりも更に複雑になってくる。
つまり、実際にフィールドで乗って試すことがこれまで以上に重要になってくるのがE-MTBといえるだろう。そんなニーズに応えるべく開催されたのが"e-MTB WORLD 2020"。日本で手に入る、ほぼ全てのブランドが勢ぞろいし本格的なコースでその性能を試すことが出来る試乗会に多くの人が集まった。
会場となったのは今年の2月末にオープンしたばかりの「トレイルアドベンチャーよこはま」。よこはま動物園ズーラシアに隣接するフォレストアドベンチャーよこはまの敷地内に造成されたコースで、自走で漕ぎ上がるスタイルのコンパクトなフロートレイルが整備されている。
ライダーのレベルに応じて難易度の低い順に、「グリーン」、「ブルー」、「レッド」と分けられた3本のコースが用意されており、初心者から中上級者まで楽しめるパークだ。普段からE-MTBのレンタルも用意されているためか、登りセクションにもバームが盛られているなど、E-MTBの性能を試すのにもってこいのロケーション。
今回、"e-MTB WORLD 2020"に集まったのはスペシャライズド、ネスト、トレック、コラテック、メリダ、パナソニック、ベスビー、ヤマハの8ブランド。トレイルアドベンチャーよこはまでレンタルできるジャイアントも含めれば、国内で入手することのできるほぼ全てのE-MTBブランドが一堂に会した。
新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、サイクルモードを始めとしたコンシューマー向けの展示試乗会が軒並み中止となる中、E-MTBオンリーとはいえ大規模な試乗会が開催できたことは素直に喜ばしい。e-MTB WORLDも当初3月開催の予定がこの時期に延期したとのことだが、新モデルのデリバリーが始まるタイミングでもありむしろ良かった、という声も聞かれた。
もちろん、感染対策もしっかり行われており入場時には手指の消毒を行うほか出展スペースではマスク類の着用が求められていた。各ブースのスタッフももちろんマスク着用、さらに試乗車が返却されるたび、グリップやレバー類、サドルなどをアルコール消毒し、感染防止に余念が無い。貴重な機会を大切にする、みなさんの思いが伝わってくる。
さて、そんなわけで私たちもいくつか試乗車に跨ってコースイン。多くの来場者から注目を集めていたのはトレックとスペシャライズドの2大アメリカンブランド。オリジナルのSLユニットを積むスペシャライズドのLevo SLシリーズは軽量でノーマルバイクに迫る取り回し。ボッシュ Perfomance Line CXを搭載したトレック Railは、21モデルで最大トルクが75Nmから85Nmへ増し、よりパワフルに。登りでの鋭い加速と、下りの楽しさを両立させたバランスが魅力的だった。
一方、シマノ STEPSを採用するのがメリダやネスト、ベスビーといったブランド。中でもメリダのeONE-SIXTY 10Kは前後異径のマレット仕様というユニークなスペック。29インチの走破性と27.5インチの回頭性を兼ねそなえつつ、弱点となる登りをアシストで補う隙の無い乗り味。セッティングが固めだったか、よりハードなコースが向いてそうなハイエンドバイクだった。
ベスビーからはバッテリー内装フルサスE-MTBながら44万円というリーズナブルなプライスのTRS-2 AMが注目作。STEPS E8080にオリジナルのバッテリーを搭載しつつ、パーツのグレードを抑えることでE-MTBの魅力を手の届きやすい価格として一台は、カスタムベースとしても人気なのだとか。実際に乗ってみてもソツのない素直な性格で、サスやタイヤをアップデートし自分好みにカスタムするのが楽しそうなバイクだ。
多くのブースの中でもひときわ盛り上がっていたのがヤマハ。新作にしてヤマハ初となるフルサスE-MTB"YPJ-MTpro"の試乗車が並び、人気を博していた。昨年のサイクルモードでお披露目されたYPJ-MTproは、オートバイメーカーらしさが匂い立つ双胴ダウンチューブにバッテリーを収めることでルックスと性能を両立。同様に双胴とされたトップチューブにはショックユニットがマウントされている。
強度と軽量性を両立するため、中空パイプと鍛造パーツを使い分けているというところからも、ヤマハのホンキが窺える。あえてリアセンターを伸ばしたジオメトリによって、初心者でも安心できる穏やかな乗り味が特徴的だった。
ノーマルバイクと同じく、あるいはそれ以上に各ブランドの持ち味が色濃く出てくるE-MTB。既にMTBを楽しんでいる人はもちろん、新たにMTBに興味がある人にとっても大きなメリットがある乗り物だ。今回のe-MTB WORLD 2020にも、2日間で250人と多くの人が集まったが、きっとそのポテンシャルと楽しさは大いに伝わったハズ。
「出展社からも来場者からも、こういった試乗会があるのが嬉しいという声を頂きました」と語ってくれたのは、主催者であるe-mobility協会の今中大介理事。「元プロ選手の僕がE-BIKEに関わるのを不思議に思うかもしれないですが、個人的にはとても注目しているんです。女性や年配の方など、体力差のある方が一緒に走れるのは素晴らしい。今回のコースも2周くらいすれば体力面で限界だったかもしれない初心者の方が、E-MTBなら5周、6周と走れるし、何なら1日通して遊べますよね。普通のバイクに比べて服装がラフでも楽しめるし、もっと多くの人に気軽に自由に乗ってほしいですね」とコメントを頂いた。
また、今後のE-BIKEの展望についても、「メーカーさんからも販売自体は予想以上に好調だと聞いています。でも、まだまだ欧米に比べれば小規模ですからもっと大きな伸びしろがあると思っています。MaaSの波も来ている中で、E-BIKEは今後より存在感を増していくと信じています」と語ってくれた。
e-mobility協会としては、今後もこういった機会を設けていきたいとのことだ。今回参加できなかった人も、次回が開催された際にはぜひ足を運んでみてほしい。
text&photo:Naoki Yasuoka
photo:Gakuto Fujiwara
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