2020/10/15(木) - 13:09
長野をぐるりと一周する800km。サイクリストなら誰もが夢見るビッグライドを体験できる全2回のモニターツアーの第一回が開催された。長野駅を発着し、北側をぐるりと巡る山岳ライドの様子をレポート。
日本全国津々浦々で、「○○イチ」を冠するサイクリングルートが提唱される今日この頃。とはいえ、大体が湖を一周したり島を一周したりというコースで、健脚派サイクリストならば1日あれば走破可能なルートが大半。
そんな○○イチの中で、ひときわ異彩を放つのが「ナガイチ」こと長野一周サイクリング。日本の中でも4番目に大きな長野県を一周するという壮大なコース取りで、総延長はなんと800㎞にも達するスーパービッグライドである。もちろん、1日で走り切れるはずもなく、相当の健脚でもおそらく3~4日はかかるだろう。普通のサイクリストであれば最低でも1週間は欲しいところ。
それはもちろん発起人である「ジャパンアルプスサイクルプロジェクト」も当然承知していることで、むしろ1度に走り切るよりも幾度かに分けて走ることをオススメしている。確かに長期休暇のある学生ならともかく、休みの少ない勤め人にとってはそちらの方が現実的でもある。
さて、今回のモニターツアーは長野一周サイクリングコースを2回に分けて走り切るスタイルを提案するもの。1回目で飯山や白馬といった県北側を、2回目では伊那や諏訪といった県南側を巡る3泊4日×2回のツアーだ。今回はその1回目、県北部を巡るライドへ参加した。
↓今回の県北を周るルート。これを4日間で走ります。
1日目:長野駅~野沢温泉~斑尾高原 距離:98km
しとしと雨降るシルバーウィーク初日、Gotoキャンペーンの影響もあってか、朝も早いながらなかなかの人出となった長野駅善光寺口にサイクリストたちが集まった。そう、長野県一周サイクリングのモニターツアーへの参加者たちだ。
コロナ対策も徹底しており、参加にあたり皆さんまずは検温を実施し、問診票へ記入。皆さん無事平熱だったようで、無事に開催の運びとなった。さて、とはいえ皆さん初対面の方も多いのでまずはごあいさつから。
ジャパンアルプスサイクルプロジェクト代表の鈴木雷太さんと同副代表の小口さんらから、今回のツアーの概要や取り組みの内容、走行時のルールなどについて一通りレクチャーを受けたのち、一人一人が自己紹介タイムへ。
NHKの「チャリダー」で皆さんご存知の筧五郎さんやAACRのMCでおなじみ「チームリアル」の相原希実さん、そして今回は一般参加の方も2名。これから4日間、共に走る仲間たちと顔合わせを済ませ、ライドの準備も万端だ。
まず出発の写真を撮りましょう、ということでそれぞれの自転車を手に集まったところ、なんと全参加者7名中3名がE-BIKE。事前に山がちなルートという事は把握していたので、E-BIKEにするかどうか悩んだ末とりあえずノーマルバイクを持ってきたのだが、半数がE-BIKEだと登りで置いて行かれる可能性が大。ちゃんと取材できるのだろうか、と嫌な予感を覚えつつスタートしたのであった。
さて、出発するとすぐに善光寺通りへ。「一生に一度は善光寺参り」「牛に引かれて善光寺参り」なんてフレーズで知られる日本屈指の名刹だ。早朝という事もあり、参道のお店もシャッターを下ろしているが、お寺が門を閉ざすようなことはなく遠くに重厚な山門を望むことができた。
長野市内の市街地は朝の通勤ラッシュ時間帯ということもあってか少し混雑気味。こういう時間帯はドライバーもフラストレーションが溜まるのか、都内だとスレスレを抜かれたりと危ない思いをすることもあるけれど、長野ではヒヤリとするようなドライバーは稀なようで、追い抜き時もしっかり側方間隔を開けてくれる車が多い。そういえば信号の無い横断歩道で停車するドライバーが全国一多いのも長野県だという。
10㎞ほど走ると市街地を抜け、千曲川沿いのサイクリングロードを経由して飯山方面へ。ところ変われば品変わり、東京の河川敷と言えば野球場やゴルフ場があるけれど、このあたりではリンゴ畑となっていた。ちょうど良い季節のようで、大きな林檎が枝に鈴なりになっている横を駆け抜ける。
ちょっとした丘の上にある「北信濃ふるさとの森公園」にて一旦休憩を挟みつつ更に北上。一面に広がる田んぼもちょうど収獲の時期を迎えているようで、金色の海の中を自転車で走っていくような。
朝方に降っていた雨も、このあたり一帯は周囲の山々に雲が引っかかっているようで、今のところ本格的に降ってくる様子は無い。遠くの山がけぶる様子はむしろ幻想的で、そんな雰囲気も楽しみつつも、雨が降らないうちに出来るだけ距離を稼いでおこうとばかりにずんずん北へ、北へ。
高井富士と呼ばれる高井山が後ろに見えるころ、約40㎞地点に待ちに待った2つ目の休憩スポットとなる「道の駅 FARMUS 木島平」が登場。木島平といえば、国内ホビーレーサーには馴染みのある「2DAYS in 木島平」の開催地でもある。道の駅併設のカフェで一息ついて、次に目指すは野沢菜で知られる「野沢温泉」だ。
日本屈指のスキー場としても知られる野沢温泉は、やはりというか登りの先にある。中間地点となる北竜湖へ登っていると、ついにパラパラと雨が落ちてくるけれど、登りで火照った体にはちょうどいいくらい。しかも北竜湖の前には、なんと飯山市の観光課の皆さんがエイドを設置、大粒のシャインマスカットを一人一皿用意してくれていた。プチっとした皮が弾けると甘い果汁が口いっぱいに。疲れ始めてきた身体には最高の補給でした。
野沢温泉のメインストリートを抜けると、今日のランチスポットとなる「道の駅野沢温泉」へ。長野一周サイクリングルートの中でも最北に位置するスポットで、長野駅からはおよそ65㎞ほど。大きな道祖神がランドマークのこちらの道の駅ではいただいたのは「子宝丼」。焼いた鳥と温泉卵、青菜に赤菜、そしてもちろん野沢菜も。お腹がすいていたこともあってペロリ平らげる。野沢菜は御替わり自由とのことで、漬物好きにはたまらない一品。
腹ごしらえを済ませた後は、一旦飯山方面へと戻り、こちらも名高いスキー場の一つである斑尾高原へ。高原というだけあり、1日目のラストにして距離10㎞、平均斜度5%ほどの本格的なヒルクライムだ。普段なら「最後に登りか……」とゲンナリするところだけれども、雨が降っていることもあり、身体が温まる登りはありがたい。
しかし、朝に抱いた懸念がついにここで現実のものに。そう、E-BIKEが速いのである。筧さんのペースメイクに必死で着いていく私の前を、お喋りしながらラクラク走る鈴木さんと相原さん。段々とペースが維持できなくなった私は、哀れ千切れるのであった……。それほど登らぬ初日でこれである、長野一周に挑戦される人はE-BIKEという選択肢も考慮に入れてもいいだろう(笑)
そんなこんなで斑尾高原ホテルへどうにか到着。なんと部屋に自転車を持ち込めるサイクリストフレンドリーなお宿なのだ。しかもドロドロになったバイクを外の水道で洗えると、至れり尽くせり。
自転車をピカピカにしたあとは、ホテル自慢の温泉で身体もつるっつるに。そしてシェフが腕によりをかけた豪勢な食事に舌鼓を打って一日目の疲れを癒すのだった。そう、先は長いのでしっかり補給し、回復するのも長野一周サイクリングを完遂するためのコツ。そのためにはこういったサイクリストフレンドリーな宿は心強い味方である。
Day1 ライドログ
2日目 斑尾高原~戸隠高原~白馬~松本 距離:123km
明くる朝、なんとかベッドからはいずり出し、一縷の期待を込めてカーテンを開けてみるが昨日と変わらぬ曇り空。とはいえ、2日目となる今日は4日間で最長距離となる1日。朝ごはんを頂き、準備を済ませれば、あとはそそくさと走りだす。
とりあえずホテル周辺は降ってはいないので、ウインドブレーカー替わりにレインウェアを着込み、野尻湖へ向かってダウンヒル。だが、少し標高を下げるとバラバラと雨粒が。スキー場となるほどの降雪地帯なので路肩は荒れ気味、そろりそろりと下っていくとタングラム斑尾を通り過ぎる。飯山側が斑尾高原、野尻湖側がタングラム斑尾なのだと初めて知った。冬にはスキーに出かけることもあるけれど、バスを使うと位置関係が分からないもの。そういう意味でやっぱり自転車はその地域を理解するのに最高の手段だと思う。
さて、下りきると目の前に大きな湖が見えてくる。そう、ナウマンゾウが発掘されたことで有名な野尻湖だ。「野尻湖ってエヴァの第三新東京市があるとこだよね?」と筧さん。残念、それは芦ノ湖なんです。曇り空の早朝であるが、湖上には釣り船も既にちらほら。野尻湖といえば、スモールマウスバスのフィールドとして、アングラーの間では有名なスポットでもある。ちなみに長野県北ではスモールマウスバスが釣れる湖が多く、今日通る予定の木崎湖なども良く知られたフィールドだ。
ナウマンゾウ像と仲良く(?)写真を撮影したら、今日のメインディッシュとなる山岳地帯へ。出発した斑尾高原と並び、信越五高原に数えられる黒姫高原、戸隠高原を次々に登っていく。既に登り始めの標高が高いこともあってか、意外に登りやすい峠道という印象。数字にすると距離13㎞、獲得標高750mといったところ。
戸隠高原のピークにあるキャンプ場には連休初日とあって、雨天ながらもお客さんは満員御礼だ。そのまま少し下った先にあるカフェ「小鳥の森」でいったん休憩。暖かいコーヒーと五穀大福が振る舞われ、雨のダウンヒルで冷えた身体に染み渡る。
工事中の戸隠神社を横目に下り、少し登り返すと「大望峠」に到着。その名の通り、晴れていれば絶景が広がっているらしいのだけど、生憎の天気で見ることは叶わず。更に下って鬼無里(きなさ)まで。
しばらく走っていると路面が乾いてきた!すれ違ったサイクリストによるとこの先は晴れているのだとか。それならば!と希望を持って白河洞門へ登り始める。コンスタントに5%くらいの坂が続く峠で、リズムもとって登りやすい。頂上のトンネル「白河洞門」を抜けると絶景が広がっているというご褒美を前に、ペダルを踏む力もこもろうというもの。
黙々と登り切り、トンネルを抜けると青空が広がって……はいなかったものの、路面は完全にドライコンディション。白河洞門からの眺望も最高とはいかないまでも、ダイナミックな景色の片鱗は見えた。ここからは一路白馬へダウンヒル。途中で狭い複合コーナーもあるので注意しながら下り切り、白馬市街を通り抜けて「道の駅白馬」にてランチタイム。今日のお昼は「はくば豚カレー」、豚肉の脂の甘味がカレーに溶け込み、ヒルクライムをこなしてきた身体へ染み渡る。
さて、この白馬から先はAACRなどで勝手知ったる道だ。青木湖、中網湖、木崎湖と仁科三湖を通りすぎ、大町から安曇野へ、追い風基調の快速ライドだ。途中、北アルプス牧場に立ち寄って、牛乳ソフトをゲット!
なんと、副代表の小口さんも実は初めて食べるのだとか。鈴木さんに美味しいといわれ続けつつ、なぜかいつもスルーされてきたという念願のソフトクリームなんだとか。そんな幻(?)のソフトクリームですが、ふわっふわであっというまに解けていく口当たりの良さが素晴らしい逸品で、小口さんも大満足のよう。
「道の駅安曇野ほりがねの里」からは川沿いに設置された自転車道へイン。車を気にせず快適なサイクリングロードで一気に松本へとワープする。あっというまに鈴木雷太さんが経営する「バイクランチ」へ到着。
梓川の支流である田川のほとりにあるバイクランチは、自転車店と思えないお洒落な外観で、一見さんでも入りやすいフレンドリーなショップ。2日間のライドで消耗したパーツなどを補給したり、メカトラで壊れたものを直したりとそれぞれ後半戦に向けて準備を整える。信頼できる自転車ショップがコースの途中にあるのは心強い。
そして2日目は松本市街へ投宿。鈴木さんオススメの中華料理屋「丸幸」へ。長野っぽくなくてごめんね!なんて言われたけれど、どのメニューも素晴らしく美味しい!ぜひ松本へ訪れた際は脚を運んでみてほしい名店でございました。
さあ、明日からはいよいよ後半戦。そして3日目にして最多獲得標高日となるヴィーナスラインへ登る日だ。なかでも三城牧場への登りは、筧さんが現役時代に「絶対登りたくなかった」というハードなコースなのだとか……。
Day2 ライドログ
後編へ続く。
text:Naoki Yasuoka
日本全国津々浦々で、「○○イチ」を冠するサイクリングルートが提唱される今日この頃。とはいえ、大体が湖を一周したり島を一周したりというコースで、健脚派サイクリストならば1日あれば走破可能なルートが大半。
そんな○○イチの中で、ひときわ異彩を放つのが「ナガイチ」こと長野一周サイクリング。日本の中でも4番目に大きな長野県を一周するという壮大なコース取りで、総延長はなんと800㎞にも達するスーパービッグライドである。もちろん、1日で走り切れるはずもなく、相当の健脚でもおそらく3~4日はかかるだろう。普通のサイクリストであれば最低でも1週間は欲しいところ。
それはもちろん発起人である「ジャパンアルプスサイクルプロジェクト」も当然承知していることで、むしろ1度に走り切るよりも幾度かに分けて走ることをオススメしている。確かに長期休暇のある学生ならともかく、休みの少ない勤め人にとってはそちらの方が現実的でもある。
さて、今回のモニターツアーは長野一周サイクリングコースを2回に分けて走り切るスタイルを提案するもの。1回目で飯山や白馬といった県北側を、2回目では伊那や諏訪といった県南側を巡る3泊4日×2回のツアーだ。今回はその1回目、県北部を巡るライドへ参加した。
↓今回の県北を周るルート。これを4日間で走ります。
1日目:長野駅~野沢温泉~斑尾高原 距離:98km
しとしと雨降るシルバーウィーク初日、Gotoキャンペーンの影響もあってか、朝も早いながらなかなかの人出となった長野駅善光寺口にサイクリストたちが集まった。そう、長野県一周サイクリングのモニターツアーへの参加者たちだ。
コロナ対策も徹底しており、参加にあたり皆さんまずは検温を実施し、問診票へ記入。皆さん無事平熱だったようで、無事に開催の運びとなった。さて、とはいえ皆さん初対面の方も多いのでまずはごあいさつから。
ジャパンアルプスサイクルプロジェクト代表の鈴木雷太さんと同副代表の小口さんらから、今回のツアーの概要や取り組みの内容、走行時のルールなどについて一通りレクチャーを受けたのち、一人一人が自己紹介タイムへ。
NHKの「チャリダー」で皆さんご存知の筧五郎さんやAACRのMCでおなじみ「チームリアル」の相原希実さん、そして今回は一般参加の方も2名。これから4日間、共に走る仲間たちと顔合わせを済ませ、ライドの準備も万端だ。
まず出発の写真を撮りましょう、ということでそれぞれの自転車を手に集まったところ、なんと全参加者7名中3名がE-BIKE。事前に山がちなルートという事は把握していたので、E-BIKEにするかどうか悩んだ末とりあえずノーマルバイクを持ってきたのだが、半数がE-BIKEだと登りで置いて行かれる可能性が大。ちゃんと取材できるのだろうか、と嫌な予感を覚えつつスタートしたのであった。
さて、出発するとすぐに善光寺通りへ。「一生に一度は善光寺参り」「牛に引かれて善光寺参り」なんてフレーズで知られる日本屈指の名刹だ。早朝という事もあり、参道のお店もシャッターを下ろしているが、お寺が門を閉ざすようなことはなく遠くに重厚な山門を望むことができた。
長野市内の市街地は朝の通勤ラッシュ時間帯ということもあってか少し混雑気味。こういう時間帯はドライバーもフラストレーションが溜まるのか、都内だとスレスレを抜かれたりと危ない思いをすることもあるけれど、長野ではヒヤリとするようなドライバーは稀なようで、追い抜き時もしっかり側方間隔を開けてくれる車が多い。そういえば信号の無い横断歩道で停車するドライバーが全国一多いのも長野県だという。
10㎞ほど走ると市街地を抜け、千曲川沿いのサイクリングロードを経由して飯山方面へ。ところ変われば品変わり、東京の河川敷と言えば野球場やゴルフ場があるけれど、このあたりではリンゴ畑となっていた。ちょうど良い季節のようで、大きな林檎が枝に鈴なりになっている横を駆け抜ける。
ちょっとした丘の上にある「北信濃ふるさとの森公園」にて一旦休憩を挟みつつ更に北上。一面に広がる田んぼもちょうど収獲の時期を迎えているようで、金色の海の中を自転車で走っていくような。
朝方に降っていた雨も、このあたり一帯は周囲の山々に雲が引っかかっているようで、今のところ本格的に降ってくる様子は無い。遠くの山がけぶる様子はむしろ幻想的で、そんな雰囲気も楽しみつつも、雨が降らないうちに出来るだけ距離を稼いでおこうとばかりにずんずん北へ、北へ。
高井富士と呼ばれる高井山が後ろに見えるころ、約40㎞地点に待ちに待った2つ目の休憩スポットとなる「道の駅 FARMUS 木島平」が登場。木島平といえば、国内ホビーレーサーには馴染みのある「2DAYS in 木島平」の開催地でもある。道の駅併設のカフェで一息ついて、次に目指すは野沢菜で知られる「野沢温泉」だ。
日本屈指のスキー場としても知られる野沢温泉は、やはりというか登りの先にある。中間地点となる北竜湖へ登っていると、ついにパラパラと雨が落ちてくるけれど、登りで火照った体にはちょうどいいくらい。しかも北竜湖の前には、なんと飯山市の観光課の皆さんがエイドを設置、大粒のシャインマスカットを一人一皿用意してくれていた。プチっとした皮が弾けると甘い果汁が口いっぱいに。疲れ始めてきた身体には最高の補給でした。
野沢温泉のメインストリートを抜けると、今日のランチスポットとなる「道の駅野沢温泉」へ。長野一周サイクリングルートの中でも最北に位置するスポットで、長野駅からはおよそ65㎞ほど。大きな道祖神がランドマークのこちらの道の駅ではいただいたのは「子宝丼」。焼いた鳥と温泉卵、青菜に赤菜、そしてもちろん野沢菜も。お腹がすいていたこともあってペロリ平らげる。野沢菜は御替わり自由とのことで、漬物好きにはたまらない一品。
腹ごしらえを済ませた後は、一旦飯山方面へと戻り、こちらも名高いスキー場の一つである斑尾高原へ。高原というだけあり、1日目のラストにして距離10㎞、平均斜度5%ほどの本格的なヒルクライムだ。普段なら「最後に登りか……」とゲンナリするところだけれども、雨が降っていることもあり、身体が温まる登りはありがたい。
しかし、朝に抱いた懸念がついにここで現実のものに。そう、E-BIKEが速いのである。筧さんのペースメイクに必死で着いていく私の前を、お喋りしながらラクラク走る鈴木さんと相原さん。段々とペースが維持できなくなった私は、哀れ千切れるのであった……。それほど登らぬ初日でこれである、長野一周に挑戦される人はE-BIKEという選択肢も考慮に入れてもいいだろう(笑)
そんなこんなで斑尾高原ホテルへどうにか到着。なんと部屋に自転車を持ち込めるサイクリストフレンドリーなお宿なのだ。しかもドロドロになったバイクを外の水道で洗えると、至れり尽くせり。
自転車をピカピカにしたあとは、ホテル自慢の温泉で身体もつるっつるに。そしてシェフが腕によりをかけた豪勢な食事に舌鼓を打って一日目の疲れを癒すのだった。そう、先は長いのでしっかり補給し、回復するのも長野一周サイクリングを完遂するためのコツ。そのためにはこういったサイクリストフレンドリーな宿は心強い味方である。
Day1 ライドログ
2日目 斑尾高原~戸隠高原~白馬~松本 距離:123km
明くる朝、なんとかベッドからはいずり出し、一縷の期待を込めてカーテンを開けてみるが昨日と変わらぬ曇り空。とはいえ、2日目となる今日は4日間で最長距離となる1日。朝ごはんを頂き、準備を済ませれば、あとはそそくさと走りだす。
とりあえずホテル周辺は降ってはいないので、ウインドブレーカー替わりにレインウェアを着込み、野尻湖へ向かってダウンヒル。だが、少し標高を下げるとバラバラと雨粒が。スキー場となるほどの降雪地帯なので路肩は荒れ気味、そろりそろりと下っていくとタングラム斑尾を通り過ぎる。飯山側が斑尾高原、野尻湖側がタングラム斑尾なのだと初めて知った。冬にはスキーに出かけることもあるけれど、バスを使うと位置関係が分からないもの。そういう意味でやっぱり自転車はその地域を理解するのに最高の手段だと思う。
さて、下りきると目の前に大きな湖が見えてくる。そう、ナウマンゾウが発掘されたことで有名な野尻湖だ。「野尻湖ってエヴァの第三新東京市があるとこだよね?」と筧さん。残念、それは芦ノ湖なんです。曇り空の早朝であるが、湖上には釣り船も既にちらほら。野尻湖といえば、スモールマウスバスのフィールドとして、アングラーの間では有名なスポットでもある。ちなみに長野県北ではスモールマウスバスが釣れる湖が多く、今日通る予定の木崎湖なども良く知られたフィールドだ。
ナウマンゾウ像と仲良く(?)写真を撮影したら、今日のメインディッシュとなる山岳地帯へ。出発した斑尾高原と並び、信越五高原に数えられる黒姫高原、戸隠高原を次々に登っていく。既に登り始めの標高が高いこともあってか、意外に登りやすい峠道という印象。数字にすると距離13㎞、獲得標高750mといったところ。
戸隠高原のピークにあるキャンプ場には連休初日とあって、雨天ながらもお客さんは満員御礼だ。そのまま少し下った先にあるカフェ「小鳥の森」でいったん休憩。暖かいコーヒーと五穀大福が振る舞われ、雨のダウンヒルで冷えた身体に染み渡る。
工事中の戸隠神社を横目に下り、少し登り返すと「大望峠」に到着。その名の通り、晴れていれば絶景が広がっているらしいのだけど、生憎の天気で見ることは叶わず。更に下って鬼無里(きなさ)まで。
しばらく走っていると路面が乾いてきた!すれ違ったサイクリストによるとこの先は晴れているのだとか。それならば!と希望を持って白河洞門へ登り始める。コンスタントに5%くらいの坂が続く峠で、リズムもとって登りやすい。頂上のトンネル「白河洞門」を抜けると絶景が広がっているというご褒美を前に、ペダルを踏む力もこもろうというもの。
黙々と登り切り、トンネルを抜けると青空が広がって……はいなかったものの、路面は完全にドライコンディション。白河洞門からの眺望も最高とはいかないまでも、ダイナミックな景色の片鱗は見えた。ここからは一路白馬へダウンヒル。途中で狭い複合コーナーもあるので注意しながら下り切り、白馬市街を通り抜けて「道の駅白馬」にてランチタイム。今日のお昼は「はくば豚カレー」、豚肉の脂の甘味がカレーに溶け込み、ヒルクライムをこなしてきた身体へ染み渡る。
さて、この白馬から先はAACRなどで勝手知ったる道だ。青木湖、中網湖、木崎湖と仁科三湖を通りすぎ、大町から安曇野へ、追い風基調の快速ライドだ。途中、北アルプス牧場に立ち寄って、牛乳ソフトをゲット!
なんと、副代表の小口さんも実は初めて食べるのだとか。鈴木さんに美味しいといわれ続けつつ、なぜかいつもスルーされてきたという念願のソフトクリームなんだとか。そんな幻(?)のソフトクリームですが、ふわっふわであっというまに解けていく口当たりの良さが素晴らしい逸品で、小口さんも大満足のよう。
「道の駅安曇野ほりがねの里」からは川沿いに設置された自転車道へイン。車を気にせず快適なサイクリングロードで一気に松本へとワープする。あっというまに鈴木雷太さんが経営する「バイクランチ」へ到着。
梓川の支流である田川のほとりにあるバイクランチは、自転車店と思えないお洒落な外観で、一見さんでも入りやすいフレンドリーなショップ。2日間のライドで消耗したパーツなどを補給したり、メカトラで壊れたものを直したりとそれぞれ後半戦に向けて準備を整える。信頼できる自転車ショップがコースの途中にあるのは心強い。
そして2日目は松本市街へ投宿。鈴木さんオススメの中華料理屋「丸幸」へ。長野っぽくなくてごめんね!なんて言われたけれど、どのメニューも素晴らしく美味しい!ぜひ松本へ訪れた際は脚を運んでみてほしい名店でございました。
さあ、明日からはいよいよ後半戦。そして3日目にして最多獲得標高日となるヴィーナスラインへ登る日だ。なかでも三城牧場への登りは、筧さんが現役時代に「絶対登りたくなかった」というハードなコースなのだとか……。
Day2 ライドログ
後編へ続く。
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