5月20日より実施された、東海道・山陽・九州新幹線における"特大荷物"持ち込みに関するルールの変更。これまで新幹線を利用して輪行してきたサイクリストにとっては、どういった影響があるのでしょうか。JR東海に取材してみました。



自転車遊びに欠かせない移動手段、輪行。自転車遊びに欠かせない移動手段、輪行。
住み慣れた地域から遠く離れた場所を自分の足で実感する。そんな魅力的な自転車旅を支えてくれているのが輪行だ。シクロワイアードにおいても、バイクプラスの河井店長による輪行サイクリング記事を筆頭に、その魅力をお伝えしてきた。

なかでも超長距離を移動するのに欠かせないのが、日本が世界に誇る高速列車である新幹線。500kmほどの距離であれば最も早く効率的な移動手段であり、また飛行機などと違って荷物を他人の手に委ねることもなく破損やトラブルの心配も少ないため、遠征手段の一つとして新幹線を選ぶ人は多いはず。

おなじみ、輪行サイクリストのおなじみ、輪行サイクリストの"テツ店長"こと河井さんも新幹線輪行ユーザーだ  photo:Kousuke.Kawai
さて、電車輪行で問題になるのが自転車の置き場所だ。在来線であれば、先頭もしくは最後尾車両の運転席近くに立てかけておければ他の乗客の迷惑になることも少ない。一方新幹線をはじめとしたボックスシートの車両であれば、最後尾座席と壁の隙間というのが定番だ。最後尾座席を予約できれば良し、予約できなくとも座っている人に一言断って置かせてもらったという経験をした方も多いだろう。

そんな中、昨夏に発表されたのが東海道・山陽・九州新幹線において特大荷物の持ち込みが予約制になるというニュース。最後尾座席を後ろのスペースを含む「特大荷物スペースつき座席」として予約制とし、3辺の合計が160cm超250cm以内の荷物を持ち込む際には予約必須とするアナウンスがされた。

東京オリンピックの開催に伴うインバウンド需要の増加を見据えての対策として設けられることとなったこの「特大荷物スペースつき座席」の事前予約制だが、制度がアナウンスされた当初、サイクリストの間からは「新幹線輪行終了のお知らせ」「予約が出来なかったら輪行できないのか」「むしろ確実に載せられて安心できる」など、賛否両論様々な感想が聞かれた。

制度の運用が始まったばかりだが、実際のところ新幹線での輪行は以前と比べて難しくなったのか、それともラクになったのか。JR東海の特設ページを見つつ、実際に運用されるルールについておさらいしてみよう。



自転車を含むスポーツ用品、楽器、娯楽用品、車いす、ベビーカーは事前予約不要

特大荷物スペースつき座席に指定されるのは最後尾座席となる特大荷物スペースつき座席に指定されるのは最後尾座席となる (c)JR東海
結論から言えば、新幹線輪行に際して「特大荷物スペースつき座席」の予約は必須ではない。新たなルールでは3辺合計160cm超250cm以内の荷物が「特大荷物」とされ、「特大荷物スペースつき座席」の事前予約が必須とされているが、"自転車を含むスポーツ用品、楽器、娯楽用品、車いす、ベビーカー"は例外とされ、3辺合計160cm超のものでも予約不要で車内に持ち込むことが出来る。

「特大荷物」に当たる荷物を「特大荷物スペースつき座席」を予約せず新幹線車内に持ち込んだ場合は、手数料として1,000円を車掌さんに払い、指定された場所へと置くというルールもあるが、前述の例外品目についてはそういった追加料金も不要だ。

「特大荷物スペース」の利用には事前予約が必要

だが、「特大荷物スペース」へ自転車を置きたい場合は「特大荷物スペースつき座席」の予約が必要となる。予約なしに「特大荷物スペース」へ輪行した自転車を置いていた場合は場所の移動をお願いされることになるだろう。



特大荷物スペースの実際のイメージ 左が普通車、右がグリーン車特大荷物スペースの実際のイメージ 左が普通車、右がグリーン車 (c)JR東海
簡単にまとめると、「特大荷物スペースつき座席」を予約すれば、これまで通り最後尾座席後ろのスペースに自転車を置くことは可能。一方で、満席などの理由で「特大荷物スペースつき座席」を予約できずとも、輪行自体は可能ということだ。とはいえ、いくつか疑問が残ることも事実なので、JR東海にお話を伺った。

CW編集部:5月20日から行われる「特大荷物スペースつき座席」について、自転車は予約せずとも車内に持ち込むことが出来るとのことですが、その場合どういった場所に置いておくことになるのでしょうか。

JR東海:折りたたむか解体して、専用の袋に収納した状態の自転車に関しては5月20日以降も車内へ持ち込んでいただくことは可能です。「特大荷物スペースつき座席」の事前予約が無い場合は、自転車のサイズによっては網棚に乗せていただいたり、自由席の最後尾座席後方などへ置いていただくことになります。場合によっては、車掌より場所の移動をお願いすることがありますが、その際はご協力をお願いします。

CW編集部:「特大荷物スペースつき座席」を予約した場合、大体の自転車は自席の後方だけでは収まらない大きさになってしまいますが、座席の後ろのスペースに置いても大丈夫でしょうか。大きな荷物が集中してしまった場合はどうすれば?

JR東海:特大荷物スペースは5席5名様での共用スペースとなっているので、自席後方のみに収まらなくとも荷物を置いていただくことは問題ございません。余裕を持ってスペースを確保しておりますが、混み合った際にはゆずり合っての収納をお願いします。

CW編集部:自由席をはじめ、「特大荷物スペースつき座席」が設定されていない車両について、最後尾席後ろのスペースはどういった扱いになりますか?

JR東海:今後、「特大荷物スペースつき座席」が設定されていない車両につきましては最後部座席を利用する方に優先してご使用いただくスペースとして案内してまいります。



ルール改正で新幹線輪行は更に便利に
JRの特設ページおよび電話での回答を総合すれば、これまでの新幹線輪行から使い勝手が落ちるという事は無さそうだ。

予約が出来なかった、あるいは忘れていたとしても輪行自体は可能であること。さらに事前予約を行えば、確実に「特大荷物スペース」を利用できることを考えれば、むしろ利便性は向上したとも言えるだろう。

新型コロナウィルスの影響もあり、今は新幹線輪行を計画する人も少ないだろうが状況が落ち着いて来ればまた利用する機会も多いはず。便利になった新幹線輪行でサイクリングに出かけられる日が今から待ち遠しい。

text:Naoki.Yasuoka