2010/06/07(月) - 13:35
前回の編集会議を、メタボ会長の要求レベルを把握することに徹しようという事で終了させた私達であったが、その後も各自なりにドリームバイク実現に向けて、資料を見直したり、有識者の助言を仰いだりというたゆまぬ努力は継続していた。
そんな模索を繰り返す中で、バイシクル・トレーナーズ代表の大河原正晴さんからありがたい言葉を頂いた。
「メタボ会長が体を壊したと聞いては、ボディケアを専門とする私としても黙っていられない気持ちです。」
「初中級者に安心・安全・快適を提供できるロードバイク探しなら是非手伝いたいです。僕も熟年ライダーさんや女性ライダーさんを大切にするという課題には業界を挙げて取り組むべき事だと感じていましたから。」
「僕でよければ、会長から直接ヒアリングして、ドリームバイクのヒントを見つける手助けをしたい。」
ん? そんな崇高な案件ではないんですが・・・(汗)
メタボ会長のワガママな案件が、大河原氏に対してかなり曲がった伝達をなされた感はあるものの、編集部としては「渡りに船」。
真相を隠蔽したまま、氏の申し出に甘える事は当然の成り行きである。(大河原さんゴメンナサイ)
こうして、大河原氏がメタボ会長の要求を見抜くべく、直接、試走に参加してくれる事になったのだ。編集部にとっては想定外のありがたい申し出に、意気揚々と試乗に臨める状況ができあがった。
いよいよ迎えた、聞き取り調査を兼ねた試乗当日。
大河原氏がわざわざ私物のシクロクロスバイク"BMC クロスマシンCX02”を持参してくれた。合流と同時にメタボ会長に合わせてポジションを氏自らが手際良く調整してくれたりと、我々編集部としては、ただただ恐縮しながら見守る事しかできない状況が展開されてゆく。
「じゃ、ちょっくら行ってみるかい?」
マイペース丸出しなメタボ会長の掛け声で試走がはじまる。シクロクロスバイクを転がすメタボ会長に、ぴったりと張り付くように並走しながら、つぶさに観察を続ける氏と共に、車列は多摩湖畔を走りつづける。
途中、何度かシクロワイアード号とシクロクロスバイクを入れ替えながら、メタボ会長のワガママに耳を傾け続けてくれる大河原氏。並走しながらも、メタボ会長相手に常に質問を続けてくれているその姿を見ると、これは 「晩飯おごりますよ」程度では済まないかな?(笑)というほど、密度の濃い伴走となっている。
例の舗装が悪い登り坂にさしかかると、「このデコボコのせいでバイクが勝手に失速しちゃうんだよな。」などと愚痴を言うメタボ会長を相手に、聞き取りだけでなく、ペダリングのイメージや引き腕の使い方などを助言までしてくれている。
不思議なモノで、普段我々の言う事になど一切耳を傾ける事の無いメタボ会長が、大河原さんの助言に限っては素直に聞き入れて実践しようとしているではないか。案外可愛い所もあるじゃないの、と感じながら、微笑ましい気分になってくる。やっぱり、自転車っていいもんである。
こうして、多摩湖サイクリングロードを2周し、無事に試走は終了。その後も、メタボ会長相手に今日試したシクロクロスバイクの印象などを真剣に聞き取りしてくれる。
「このバイクは合格だよ。何たってカッコイイからね。」 開口一番、嬉しそうに答えるメタボ会長。
おいおい、オッサン!乗り味を聞かれてんだから真面目に答えろよ!
「う~ん。乗り心地は満点だけど、俺のエヴァディオ・ヴィ-ナスよりはだいぶ鈍いし、ブレーキの効きが悪い。だけどカッコイイからこれがいいな!」
どうしてもこのオッサンはモノの価値を見た目だけで判断してしまう癖があるようだ。
一通りのヒアリングが終わった所で、自分勝手な一言を残し走り去るメタボ会長。
「大河原君、今日はサンキュー!じゃ、会社に戻るから後はヨロシク!」
普段、我々編集部には「人には礼を尽くして接しなさい。」などと謳っているのに、無礼の極みを尽くしたその態度には、もはや開いた口が塞がらない私達である。
メタボ会長の非礼を詫びる私達に、大河原氏から意外な意見を頂く、
「一緒に走ってみて思ったんですが、会長の基礎体力が相当高い上に、脚力自体も相当のモノに見えます。おそらく背筋がかなり強いと考えられます。だからこそ初心者なのに剛性の高いエヴァディオ・ヴィーナスですら苦にせず楽しめるんだと思われます。」
氏からの助言は続く、
「一通りは把握できたと思いますので、メタボ会長の希望を整理しましょう。まず、会長が理想とする巡航速度は30km/h以上で、40km/hまでは必要なさそうです。このレンジで無理なく走れて疲れにくい車体を希望されていますね。特に、疲れずに無理なく勝手に高い速度が出ちゃう事が重要だそうです。」
そう言いながらも彼の表情はすでに苦笑いに変わっている。
「ただ、振動の問題を除けば、今のエヴァディオ・ヴィーナスが無理してないのに勝手にハイスピードで走れちゃう最高の自転車だそうなので、安心はしました。最初の話だけだと、残される選択肢は”電動アシスト付きの自転車”以外無くなってしまうかもと、かなり不安を覚えていたくらいなので、決して無理難題ではないということがわかっただけでも、今日来た甲斐がありましたよ。」
大河原氏のポジティブな考え方には、我々一同、思わず尊敬の念を抱いてしまうほどである。我々としてもこの姿勢を見習わなければならないと思いながらも、過去にことごとく裏切られ続けたメタボ会長の顔を見ると、疑念が生じてしまうのも悲しい事実なのだ。
「それでもかなりの無茶な要求という事になりますが、これでロードバイク以外の選択肢は、まず外して構わないでしょう。次に振動吸収性ですが、当初、僕が想像していたレベルよりはだいぶ硬めでも大丈夫そうです。今日のシクロクロスバイクの感想が、『乗り心地は快適なんだけど、フニャフニャ感が強すぎてスピードが乗っていかない』との事でしたから。」
あらら、せっかく持ってきて下さったバイクを随分と酷評してくれたもんである。大河原さんが気分を害してなければ良いがと、こちらが不安になってしまう。
「もともとの愛車であるエヴァディオ・ヴィーナスがかなりカッチリした部類の乗り味を持つバイクですから、ロードインフォメーションを忠実にライダーに伝える特性が乗り心地の面で災いしているだけだと思います。」 彼の前向きな考え方には心底感心させられる。
「僕が感じたリクエストの答えは、各ハイエンドモデルの中で振動吸収性がかなり高いバイクです。ただし気をつけないと、会長は外見と違ってなかなか鋭い感性をお持ちのようですから、中途半端な誤魔化しは通用しないと思いますよ。」
いやいや、鋭い感性じゃなく強い猜疑心の間違いですよ! 「大河原さん、あなたは確実に騙されていますよ。」
やっとの思いで、この言葉を呑み込みのが精一杯の私であった。
どんなに完璧なバイクを与えた所で、重箱の隅を突っつき何かと欠点や不満をぶつけてくるのがメタボ会長の常套手段なのだ。
これほどタチの悪い生き物にはなかなかお目に掛れないと感じさせるのがこのオヤジの実力なのだ。
とはいえ、解決への糸口が確実に見つかったぞという感触が、我々に勇気とヤル気を与えてくれたのは間違いない。前日まで途方に暮れていた私達とは、明らかに立場が変わってきている。
大河原さんには、いくら感謝しても足りない事は明らかである。
「あっ、そうだ!フルカーボンと、かっこいいビジュアルは譲れないそうです。」
最後の最後にハードルを上げて、大河原さんは帰路についた。今日は本当にありがとうございました。
こうして、貴重な一日を過ごした我々は、かなり具体的に見えてきたドリームバイクに向けて、更なる調査とヒアリングを行うべく編集部をめざし自転車を走らせるのだった。
次回ですか?
とにかくドリームバイクを探しますよ。
大河原 正晴 プロフィール
BICYCLE TRAINERS JAPAN 代表。
JCAサイクリングインストラクターを始め、上級救命技能、高齢者体力づくり支援士などの資格を有し、バドミントンと自転車を武器に日本各地、世界各国を駆け巡り、ウェルネスライフを実践するPERSONAL TRAINER。
都内フィットネスクラブ・自宅・出張にてパーソナルトレーニング指導したり、都内を拠点にパーソナルライド、パーソナルランニングセッションも実施する。
クライアントは運動未経験の女性からトップアスリートまで、年齢も子供から高齢者に至るまで、多岐に渡る。自身の身体能力を引き出すためのトレーニング、コンディショニングアドバイスを中心に、将来長く健康を維持するための生活習慣の見直しや提案、生涯スポーツへの挑戦もサポートもしてくれる。
メタボ会長連載のバックナンバーは こちら です
そんな模索を繰り返す中で、バイシクル・トレーナーズ代表の大河原正晴さんからありがたい言葉を頂いた。
「メタボ会長が体を壊したと聞いては、ボディケアを専門とする私としても黙っていられない気持ちです。」
「初中級者に安心・安全・快適を提供できるロードバイク探しなら是非手伝いたいです。僕も熟年ライダーさんや女性ライダーさんを大切にするという課題には業界を挙げて取り組むべき事だと感じていましたから。」
「僕でよければ、会長から直接ヒアリングして、ドリームバイクのヒントを見つける手助けをしたい。」
ん? そんな崇高な案件ではないんですが・・・(汗)
メタボ会長のワガママな案件が、大河原氏に対してかなり曲がった伝達をなされた感はあるものの、編集部としては「渡りに船」。
真相を隠蔽したまま、氏の申し出に甘える事は当然の成り行きである。(大河原さんゴメンナサイ)
こうして、大河原氏がメタボ会長の要求を見抜くべく、直接、試走に参加してくれる事になったのだ。編集部にとっては想定外のありがたい申し出に、意気揚々と試乗に臨める状況ができあがった。
いよいよ迎えた、聞き取り調査を兼ねた試乗当日。
大河原氏がわざわざ私物のシクロクロスバイク"BMC クロスマシンCX02”を持参してくれた。合流と同時にメタボ会長に合わせてポジションを氏自らが手際良く調整してくれたりと、我々編集部としては、ただただ恐縮しながら見守る事しかできない状況が展開されてゆく。
「じゃ、ちょっくら行ってみるかい?」
マイペース丸出しなメタボ会長の掛け声で試走がはじまる。シクロクロスバイクを転がすメタボ会長に、ぴったりと張り付くように並走しながら、つぶさに観察を続ける氏と共に、車列は多摩湖畔を走りつづける。
途中、何度かシクロワイアード号とシクロクロスバイクを入れ替えながら、メタボ会長のワガママに耳を傾け続けてくれる大河原氏。並走しながらも、メタボ会長相手に常に質問を続けてくれているその姿を見ると、これは 「晩飯おごりますよ」程度では済まないかな?(笑)というほど、密度の濃い伴走となっている。
例の舗装が悪い登り坂にさしかかると、「このデコボコのせいでバイクが勝手に失速しちゃうんだよな。」などと愚痴を言うメタボ会長を相手に、聞き取りだけでなく、ペダリングのイメージや引き腕の使い方などを助言までしてくれている。
不思議なモノで、普段我々の言う事になど一切耳を傾ける事の無いメタボ会長が、大河原さんの助言に限っては素直に聞き入れて実践しようとしているではないか。案外可愛い所もあるじゃないの、と感じながら、微笑ましい気分になってくる。やっぱり、自転車っていいもんである。
こうして、多摩湖サイクリングロードを2周し、無事に試走は終了。その後も、メタボ会長相手に今日試したシクロクロスバイクの印象などを真剣に聞き取りしてくれる。
「このバイクは合格だよ。何たってカッコイイからね。」 開口一番、嬉しそうに答えるメタボ会長。
おいおい、オッサン!乗り味を聞かれてんだから真面目に答えろよ!
「う~ん。乗り心地は満点だけど、俺のエヴァディオ・ヴィ-ナスよりはだいぶ鈍いし、ブレーキの効きが悪い。だけどカッコイイからこれがいいな!」
どうしてもこのオッサンはモノの価値を見た目だけで判断してしまう癖があるようだ。
一通りのヒアリングが終わった所で、自分勝手な一言を残し走り去るメタボ会長。
「大河原君、今日はサンキュー!じゃ、会社に戻るから後はヨロシク!」
普段、我々編集部には「人には礼を尽くして接しなさい。」などと謳っているのに、無礼の極みを尽くしたその態度には、もはや開いた口が塞がらない私達である。
メタボ会長の非礼を詫びる私達に、大河原氏から意外な意見を頂く、
「一緒に走ってみて思ったんですが、会長の基礎体力が相当高い上に、脚力自体も相当のモノに見えます。おそらく背筋がかなり強いと考えられます。だからこそ初心者なのに剛性の高いエヴァディオ・ヴィーナスですら苦にせず楽しめるんだと思われます。」
氏からの助言は続く、
「一通りは把握できたと思いますので、メタボ会長の希望を整理しましょう。まず、会長が理想とする巡航速度は30km/h以上で、40km/hまでは必要なさそうです。このレンジで無理なく走れて疲れにくい車体を希望されていますね。特に、疲れずに無理なく勝手に高い速度が出ちゃう事が重要だそうです。」
そう言いながらも彼の表情はすでに苦笑いに変わっている。
「ただ、振動の問題を除けば、今のエヴァディオ・ヴィーナスが無理してないのに勝手にハイスピードで走れちゃう最高の自転車だそうなので、安心はしました。最初の話だけだと、残される選択肢は”電動アシスト付きの自転車”以外無くなってしまうかもと、かなり不安を覚えていたくらいなので、決して無理難題ではないということがわかっただけでも、今日来た甲斐がありましたよ。」
大河原氏のポジティブな考え方には、我々一同、思わず尊敬の念を抱いてしまうほどである。我々としてもこの姿勢を見習わなければならないと思いながらも、過去にことごとく裏切られ続けたメタボ会長の顔を見ると、疑念が生じてしまうのも悲しい事実なのだ。
「それでもかなりの無茶な要求という事になりますが、これでロードバイク以外の選択肢は、まず外して構わないでしょう。次に振動吸収性ですが、当初、僕が想像していたレベルよりはだいぶ硬めでも大丈夫そうです。今日のシクロクロスバイクの感想が、『乗り心地は快適なんだけど、フニャフニャ感が強すぎてスピードが乗っていかない』との事でしたから。」
あらら、せっかく持ってきて下さったバイクを随分と酷評してくれたもんである。大河原さんが気分を害してなければ良いがと、こちらが不安になってしまう。
「もともとの愛車であるエヴァディオ・ヴィーナスがかなりカッチリした部類の乗り味を持つバイクですから、ロードインフォメーションを忠実にライダーに伝える特性が乗り心地の面で災いしているだけだと思います。」 彼の前向きな考え方には心底感心させられる。
「僕が感じたリクエストの答えは、各ハイエンドモデルの中で振動吸収性がかなり高いバイクです。ただし気をつけないと、会長は外見と違ってなかなか鋭い感性をお持ちのようですから、中途半端な誤魔化しは通用しないと思いますよ。」
いやいや、鋭い感性じゃなく強い猜疑心の間違いですよ! 「大河原さん、あなたは確実に騙されていますよ。」
やっとの思いで、この言葉を呑み込みのが精一杯の私であった。
どんなに完璧なバイクを与えた所で、重箱の隅を突っつき何かと欠点や不満をぶつけてくるのがメタボ会長の常套手段なのだ。
これほどタチの悪い生き物にはなかなかお目に掛れないと感じさせるのがこのオヤジの実力なのだ。
とはいえ、解決への糸口が確実に見つかったぞという感触が、我々に勇気とヤル気を与えてくれたのは間違いない。前日まで途方に暮れていた私達とは、明らかに立場が変わってきている。
大河原さんには、いくら感謝しても足りない事は明らかである。
「あっ、そうだ!フルカーボンと、かっこいいビジュアルは譲れないそうです。」
最後の最後にハードルを上げて、大河原さんは帰路についた。今日は本当にありがとうございました。
こうして、貴重な一日を過ごした我々は、かなり具体的に見えてきたドリームバイクに向けて、更なる調査とヒアリングを行うべく編集部をめざし自転車を走らせるのだった。
次回ですか?
とにかくドリームバイクを探しますよ。
大河原 正晴 プロフィール
BICYCLE TRAINERS JAPAN 代表。
JCAサイクリングインストラクターを始め、上級救命技能、高齢者体力づくり支援士などの資格を有し、バドミントンと自転車を武器に日本各地、世界各国を駆け巡り、ウェルネスライフを実践するPERSONAL TRAINER。
都内フィットネスクラブ・自宅・出張にてパーソナルトレーニング指導したり、都内を拠点にパーソナルライド、パーソナルランニングセッションも実施する。
クライアントは運動未経験の女性からトップアスリートまで、年齢も子供から高齢者に至るまで、多岐に渡る。自身の身体能力を引き出すためのトレーニング、コンディショニングアドバイスを中心に、将来長く健康を維持するための生活習慣の見直しや提案、生涯スポーツへの挑戦もサポートもしてくれる。
メタボ会長連載のバックナンバーは こちら です
メタボ会長
身長 : 172cm
体重 : 87kg→79kg→85kg
自転車歴 : 12ヶ月目
当サイト運営法人の代表取締役。
高校3年まで野球に明け暮れ、大学時代にオートバイのロードレースに夢中になり、卒業後メーカー系チームに所属し全日本選手権に3年間出場。鳴かず飛ばずで所属チームを解雇された後、平成元年に現法人を設立、平成17年に社長を引退。平成20年よりメディア事業部にて当サイトの運営責任者兼務となるが、その勤務実態や社内での立場は謎に包まれている。ゴルフと暴飲暴食をこよなく愛し、タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。
身長 : 172cm
体重 : 87kg→79kg→85kg
自転車歴 : 12ヶ月目
当サイト運営法人の代表取締役。
高校3年まで野球に明け暮れ、大学時代にオートバイのロードレースに夢中になり、卒業後メーカー系チームに所属し全日本選手権に3年間出場。鳴かず飛ばずで所属チームを解雇された後、平成元年に現法人を設立、平成17年に社長を引退。平成20年よりメディア事業部にて当サイトの運営責任者兼務となるが、その勤務実態や社内での立場は謎に包まれている。ゴルフと暴飲暴食をこよなく愛し、タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。