2020/01/22(水) - 21:05
伊豆半島をぐるっと巡ったchapter2オーナーライド。西伊豆のアップダウンに富む海岸線で富士山の眺めを楽しみ、グラベルにもチャレンジした2日間のツーリングは「オールロード」の可能性を探る旅でもあった。
伊豆半島を巡るこのツーリング企画。chapter2オーナーライドとしては昨年に続く開催で、今回はルートを変更し、さらにグラベルを盛り込んだ。1月11日、JR三島駅前に集合。chapter2を愛車とするオーナー、または興味がある人たち10人のグループが全国各地から集まった。輪行組は手早くバイクを組み立て、皆で軽く自己紹介を済ませて早速ライドへ。向かうは伊豆の西海岸の街、松崎だ。
三島から狩野川沿いにサイクリングロードを走り、大瀬崎のある海岸線へと向かう。市街を抜けるやいなや川沿いの小道を見つけると、いきなり自転車を担いで階段を降り、少しでもクルマの少ない道を選んで走るのはマイキー流。いい道を目ざとく見つけるとすぐにそちらへ。だらだらと不快な主要道を走ったりはしないのだ。
少し肌寒いなか走り出したが、11時をすぎると晴れ間が広がり、気温もぐっと上昇。日が照ると15℃ほどの暖かさとなり、とても1月とは思えない春のような日和だ。年末年始から続く暖冬の好天は、第2週になっても続く。
明日の2日目の天気が雨予報になっていたため、初日のうちにパノラマビューの効く西海岸沿いのアップダウンを走っておこうと急遽変更されたルート。西伊豆からは晴れれば富士山の姿を臨むことができるのだが、その向きは常に進行方向の逆側ということで、富士山を見るには振り返る必要がある(笑)。伊豆を走りなれたマイキーも、この反時計回りのコースどりは初めてとのこと。やはり伊豆を走る際の富士山の眺め方はプライオリティーが高いのだ。
たっぷりと雪を蓄えた白い富士山が、抜けるような碧い空とのコントラストをなして見事な風景。眺めるたびに歓声をあげてしまい、思わず休憩スポットごとに皆で富士山と一緒の記念撮影を撮ることに。天気は時間とともにますます良くなり、その後は何度も記念撮影で停まることに。
お昼はもちろん海の幸。昨年も立ち寄った戸田港にある食堂で海鮮料理を食べることに。戸田名物のタカアシガニと深海魚、刺し身など、なんでも美味しいこのお店。皆が大満足だ。この日の海岸線では新結成したばかりのレバンテFUJI静岡や地元のクラブチームなど、多くのサイクリストとすれ違った。恰好の練習コースのようだ。
海岸線はアップダウンが多いことが通例だけど、西伊豆の海岸線はご多分にもその例にもれない。クルマは少なくて走りやすいが、いやというほど登りと下りが繰り返す。今回、実走取材参加の私・綾野が乗るのはChapter2の新モデル、AO(アオ)。マイキーも乗るAOはグラベルロードだが、あえてオールロードツーリング的に乗ってみようと考えたのだ。タイヤはパナレーサーのグラベルキング26Cが装着されていたが、オンロードでロードバイクと比べてもそれほど遜色なく走れることに驚く。細かいブロックパターンのタイヤだが、それほど抵抗もなく、ロードに乗る皆と同じスピードで舗装路を走れた。
海岸線を南下し、断崖絶壁の名勝・城ヶ崎に着く頃には日暮れ時に。海に点在する小島の景観から「伊豆の松島」と讃えられるこの一帯。強風吹きすさぶ中、切り立った断崖に打ち付ける波しぶきのなか美しいサンセットを眺める。
この日一行が泊まるのは、松崎いちの名所、時計塔の向かいの、ときわ大橋のたもとの築130年という木造の日本家屋。昨年も泊まらせていただいたこの古民家は、マイキーの出演するNHKの番組「サイクルアラウンドジャパン」のプロデューサーである内田さんが手入れしながら管理している家。内田さんはこの松崎が生まれ故郷で、お父様の代から親しんでいた古民家を買い取り、管理しているのだ。
懐かしくも美しい松崎の街の風景を作り出している古民家に泊まり、木造の日本家屋の温かみを感じながら、楽しく語らいあううちに夜はふける。内田さんはこの古い家を修復しながら大切にしている。持参した寝袋が今夜のベッドだが、これ以上ない贅沢な体験だ。
2日目
翌朝は雨予報だったが、なんとか持ちこたえそうな曇り空。肌寒いなかを走り出す。7人は舗装のローカル道で中伊豆へ向かうが、AOに乗るマイキーと私と吉村さんの3人は本隊から離れてグラベルへ。グラベルロードに乗った3人が向かうのは名もない未舗装の林道で、その先の河津七滝でお昼に本体隊と合流しようというわけだ。
ローカル林道を経由して、主要地図には載らないグラベルへと進む3人。中伊豆独特の照葉樹が繁る鬱蒼とした森のなか、所々に現れる滝を眺めながら、神秘的な雰囲気を味わうヒルクライムだ。標高996mの長九郎山をかすめて通るその小道は、今も林業などで使用されている生きた道のようで、走るのにそれほど苦労しない荒れ具合と勾配のグラベル。そして下りは思わず歓声を上げてしまいたくなる最高のダウンヒルだった。
「この道は大正解だったね!」と喜ぶ3人。グラベルを探すのが得意なマイキーの目に狂いはなかった。この楽しさは舗装路を走る感覚とは別物。乾いた砂利、積もった松葉、コンクリートで固めた簡易舗装と、いろいろな路面がミックスする。ダウンヒルでは空気圧を変化させながら、乗り心地良いバイクのセッティングを出しながら下る。ちなみにマイキーはグラベルを探す際にはスマホのGoogleMapでルート機能を活用して、「徒歩」でルート検索してアタリをつけているとか。
下りきった先が河津七滝で、昨年も立ち寄った食堂で先着していた本隊と落ち合う。気温は冬にしては高めだけれど、長い下りをこなすと体は冷え切ってしまった。名物のそばとわさび丼をいただき、ほっこりと温まる。
昼食後、再スタートを切る一行に雨粒が降りかかる。1月の雨だ。幸い、気温は10度ほどあるのでレインギアをしっかり着込めば走るのに苦労はしない。そこからはダイナミックな走りが楽しめる河津七滝のループ橋を上り、そしてマイキーと私は再びグラベルへ。次に目指すは旧天城峠のトンネル、そこに通じる旧道だ。
現・天城街道(国道414号)に並行するように途中で分岐するこの旧道は、普段は車でも向かうことができるが、台風19号によって荒れており、路肩が崩れているため車での通行は禁止。自転車なら問題なく向かうことができるが、ずっとグラベルだ。
川端康成の小説「伊豆の踊子」の舞台となっている天城峠は、昔のままの佇まいだった。しかし道の荒れ具合に似つかわしくなく、トンネル内壁とその路面はキレイに修復されていたのがエキセントリックな感じ。以前はおばけが出てきそうな寂れた雰囲気だったのに...。歩いて訪問するトレッカーの方々が数人。
国道414号に戻り、ふたりが浄蓮の滝で本隊と再合流すると、雨が本格的に降り出してきた。まぁまぁの雨足で、ここからの写真は無し。あとはスタートした三島まで天城街道を一路北上し、戻ることに。小雨がずっと降り続いたが、ずぶ濡れになることはなく、まして昨年のように雪になることもなく、三島駅前に到着。これにてライドはお開き。2日間のライドで仲良くなった新しい友人たちとは、また会う機会があるだろう。
グラベルバイクで旅した2日間。舗装路メイン、グラベルを盛り込むという行程はちょっと実験的でもあったけど、オールロード的なグラベルバイクの登場で、それが十分に可能だと実証できた気がする。
CHAPTER2のモットーに「EXPLORE THE ROAD LESS TRAVELED」(=まだ旅されていない道を探して走れ)というフレーズがあるけれど、まさにそれを可能にしてくれるオールロードバイクがそのライドの楽しみを広げてくれる。そう考えると、ツーリングの楽しみは道の選択肢だけ広がっていくのだ。
photo&text:Makoto.AYANO
伊豆半島を巡るこのツーリング企画。chapter2オーナーライドとしては昨年に続く開催で、今回はルートを変更し、さらにグラベルを盛り込んだ。1月11日、JR三島駅前に集合。chapter2を愛車とするオーナー、または興味がある人たち10人のグループが全国各地から集まった。輪行組は手早くバイクを組み立て、皆で軽く自己紹介を済ませて早速ライドへ。向かうは伊豆の西海岸の街、松崎だ。
三島から狩野川沿いにサイクリングロードを走り、大瀬崎のある海岸線へと向かう。市街を抜けるやいなや川沿いの小道を見つけると、いきなり自転車を担いで階段を降り、少しでもクルマの少ない道を選んで走るのはマイキー流。いい道を目ざとく見つけるとすぐにそちらへ。だらだらと不快な主要道を走ったりはしないのだ。
少し肌寒いなか走り出したが、11時をすぎると晴れ間が広がり、気温もぐっと上昇。日が照ると15℃ほどの暖かさとなり、とても1月とは思えない春のような日和だ。年末年始から続く暖冬の好天は、第2週になっても続く。
明日の2日目の天気が雨予報になっていたため、初日のうちにパノラマビューの効く西海岸沿いのアップダウンを走っておこうと急遽変更されたルート。西伊豆からは晴れれば富士山の姿を臨むことができるのだが、その向きは常に進行方向の逆側ということで、富士山を見るには振り返る必要がある(笑)。伊豆を走りなれたマイキーも、この反時計回りのコースどりは初めてとのこと。やはり伊豆を走る際の富士山の眺め方はプライオリティーが高いのだ。
たっぷりと雪を蓄えた白い富士山が、抜けるような碧い空とのコントラストをなして見事な風景。眺めるたびに歓声をあげてしまい、思わず休憩スポットごとに皆で富士山と一緒の記念撮影を撮ることに。天気は時間とともにますます良くなり、その後は何度も記念撮影で停まることに。
お昼はもちろん海の幸。昨年も立ち寄った戸田港にある食堂で海鮮料理を食べることに。戸田名物のタカアシガニと深海魚、刺し身など、なんでも美味しいこのお店。皆が大満足だ。この日の海岸線では新結成したばかりのレバンテFUJI静岡や地元のクラブチームなど、多くのサイクリストとすれ違った。恰好の練習コースのようだ。
海岸線はアップダウンが多いことが通例だけど、西伊豆の海岸線はご多分にもその例にもれない。クルマは少なくて走りやすいが、いやというほど登りと下りが繰り返す。今回、実走取材参加の私・綾野が乗るのはChapter2の新モデル、AO(アオ)。マイキーも乗るAOはグラベルロードだが、あえてオールロードツーリング的に乗ってみようと考えたのだ。タイヤはパナレーサーのグラベルキング26Cが装着されていたが、オンロードでロードバイクと比べてもそれほど遜色なく走れることに驚く。細かいブロックパターンのタイヤだが、それほど抵抗もなく、ロードに乗る皆と同じスピードで舗装路を走れた。
海岸線を南下し、断崖絶壁の名勝・城ヶ崎に着く頃には日暮れ時に。海に点在する小島の景観から「伊豆の松島」と讃えられるこの一帯。強風吹きすさぶ中、切り立った断崖に打ち付ける波しぶきのなか美しいサンセットを眺める。
この日一行が泊まるのは、松崎いちの名所、時計塔の向かいの、ときわ大橋のたもとの築130年という木造の日本家屋。昨年も泊まらせていただいたこの古民家は、マイキーの出演するNHKの番組「サイクルアラウンドジャパン」のプロデューサーである内田さんが手入れしながら管理している家。内田さんはこの松崎が生まれ故郷で、お父様の代から親しんでいた古民家を買い取り、管理しているのだ。
懐かしくも美しい松崎の街の風景を作り出している古民家に泊まり、木造の日本家屋の温かみを感じながら、楽しく語らいあううちに夜はふける。内田さんはこの古い家を修復しながら大切にしている。持参した寝袋が今夜のベッドだが、これ以上ない贅沢な体験だ。
2日目
翌朝は雨予報だったが、なんとか持ちこたえそうな曇り空。肌寒いなかを走り出す。7人は舗装のローカル道で中伊豆へ向かうが、AOに乗るマイキーと私と吉村さんの3人は本隊から離れてグラベルへ。グラベルロードに乗った3人が向かうのは名もない未舗装の林道で、その先の河津七滝でお昼に本体隊と合流しようというわけだ。
ローカル林道を経由して、主要地図には載らないグラベルへと進む3人。中伊豆独特の照葉樹が繁る鬱蒼とした森のなか、所々に現れる滝を眺めながら、神秘的な雰囲気を味わうヒルクライムだ。標高996mの長九郎山をかすめて通るその小道は、今も林業などで使用されている生きた道のようで、走るのにそれほど苦労しない荒れ具合と勾配のグラベル。そして下りは思わず歓声を上げてしまいたくなる最高のダウンヒルだった。
「この道は大正解だったね!」と喜ぶ3人。グラベルを探すのが得意なマイキーの目に狂いはなかった。この楽しさは舗装路を走る感覚とは別物。乾いた砂利、積もった松葉、コンクリートで固めた簡易舗装と、いろいろな路面がミックスする。ダウンヒルでは空気圧を変化させながら、乗り心地良いバイクのセッティングを出しながら下る。ちなみにマイキーはグラベルを探す際にはスマホのGoogleMapでルート機能を活用して、「徒歩」でルート検索してアタリをつけているとか。
下りきった先が河津七滝で、昨年も立ち寄った食堂で先着していた本隊と落ち合う。気温は冬にしては高めだけれど、長い下りをこなすと体は冷え切ってしまった。名物のそばとわさび丼をいただき、ほっこりと温まる。
昼食後、再スタートを切る一行に雨粒が降りかかる。1月の雨だ。幸い、気温は10度ほどあるのでレインギアをしっかり着込めば走るのに苦労はしない。そこからはダイナミックな走りが楽しめる河津七滝のループ橋を上り、そしてマイキーと私は再びグラベルへ。次に目指すは旧天城峠のトンネル、そこに通じる旧道だ。
現・天城街道(国道414号)に並行するように途中で分岐するこの旧道は、普段は車でも向かうことができるが、台風19号によって荒れており、路肩が崩れているため車での通行は禁止。自転車なら問題なく向かうことができるが、ずっとグラベルだ。
川端康成の小説「伊豆の踊子」の舞台となっている天城峠は、昔のままの佇まいだった。しかし道の荒れ具合に似つかわしくなく、トンネル内壁とその路面はキレイに修復されていたのがエキセントリックな感じ。以前はおばけが出てきそうな寂れた雰囲気だったのに...。歩いて訪問するトレッカーの方々が数人。
国道414号に戻り、ふたりが浄蓮の滝で本隊と再合流すると、雨が本格的に降り出してきた。まぁまぁの雨足で、ここからの写真は無し。あとはスタートした三島まで天城街道を一路北上し、戻ることに。小雨がずっと降り続いたが、ずぶ濡れになることはなく、まして昨年のように雪になることもなく、三島駅前に到着。これにてライドはお開き。2日間のライドで仲良くなった新しい友人たちとは、また会う機会があるだろう。
グラベルバイクで旅した2日間。舗装路メイン、グラベルを盛り込むという行程はちょっと実験的でもあったけど、オールロード的なグラベルバイクの登場で、それが十分に可能だと実証できた気がする。
CHAPTER2のモットーに「EXPLORE THE ROAD LESS TRAVELED」(=まだ旅されていない道を探して走れ)というフレーズがあるけれど、まさにそれを可能にしてくれるオールロードバイクがそのライドの楽しみを広げてくれる。そう考えると、ツーリングの楽しみは道の選択肢だけ広がっていくのだ。
photo&text:Makoto.AYANO
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