2019/05/07(火) - 09:11
本格的なサイクリングシーズンの訪れを感じさせる4月に開催された桜のアルプスあづみのセンチュリーライド。満開の桜と美味しいグルメを楽しんだ前編に引き続き、後編のレポートをお届けしよう。
長野オリンピックの舞台にもなった白馬村。その地名の通り、村の周りには白馬のような冠雪した北アルプスの秀峰達がこちらを見下ろしており、その光景といったら圧巻の一言。眼前に迫る山々はその場にいる人しか分からない迫力を持っているのだ。写真で表現できないのが悔しいほどに。
折り返し地点となる白馬岩岳エイドを出発し、安積野方面へ南下していく。北風に乗りながらペースを上げていくが、途中で左に逸れ、山道を登っていく。本イベント唯一の登りらしい登りがこの峠道。といっても1kmほどの距離なので、ゆっくりマイペースに登ればいつの間にか登りきっている。
そのまま走ってきた仁科三湖の湖畔を戻る。木崎湖は東岸を通っていくと、JR大糸線と並走するような形で進んでいく。長野県の松本駅から新潟県の糸魚川駅まで至るJR大糸線は、1915年に開業したという歴史のある路線。全線に渡り単線となっており、走行する車両も2両編成というこじんまりとした電車が走る。途中の駅も風情溢れる姿で、簗場駅や稲尾駅はそれだけでフォトスポットになる。
再びの大町木崎湖エイドに到着。帰りのメニューは野沢菜のおやきと行者にんにくの豚汁。醤油で味付けされた野沢菜をくるんだおやきは長野県の定番郷土料理。惣菜パンのような感覚でペロリと頂ける。刻んだ行者にんにくが乗った豚汁も疲れた身体に染み渡る。行者にんにくは繊維の少なく旨味が強いニラのような感じで、ぴりりとした味のアクセントになってくれる。スタミナもつきそう。
安曇野市に至るルートを快調なペースで飛ばしていく。基本的に白馬に向かい標高が上がる地形となっているため、この辺りは下り基調のレイアウトとなっており、ペースがぐんぐん上がる。加えて風もだいたい北から吹くことが多いため、追い風となり、更にスピードが上がっていく。
山麓線を走り抜け、高瀬川の沿岸の小路をこなしていけば安曇野エイドに到着。ここではキンキンに冷やした100%りんごジュースとごまをまぶしたおはぎが登場。程よい甘さのおはぎがエネルギーとなってくれる。フレッシュなりんごジュースも頂いて回復すればフィニッシュまではもうすぐ。
山麓道に戻り、梓水苑を目指す。ここで100kmと80kmクラスはルートを逸れ、国営アルプスあづみの公園に向かい、フィニッシュ。初めてロングライドイベントに参加したという方も多い80kmと100kmのクラスは、完走を喜ぶ声が目立った。
150kmクラスの行程はまだ続く。この日は昼前から曇りになってしまい、青空と残雪の山々の鮮やかなコントラストが望めなかったのは残念だったが、後半にかけて徐々に日が差すようになった。気温もあがり、ようやくウィンドブレイカーを脱ぐことができた人も。
安曇野ののどかな田園地帯を走り抜け、あづみ野やまびこ自転車道路を通り、道祖神の見守るなか一路梓水苑を目指す。ライドの最後の最後の数キロ、梓川の支流を渡る橋から、土手の桜並木が見渡せるスポットが待っている。満開で最高の状態の桜並木の見事さに、最後の最後でまた感動。このスポットは、大会側が実地調査してわざわざここを通れるように設定された「桜ポイント」だという。ここを仲間どうしの再集合ポイントにして、ここからフィニッシュまで一緒に走るというグループも。
梓水苑でのフィニッシュは、MCアケさんが元気いっぱいなアナウンスで迎えてくれる。完走証を手にして、「おめでタイ焼き」をいただき、ステージパネルの前で皆で記念撮影。思い思いに今日一日を振り返る。帰路の時間に追われない人なら梓水苑のお風呂で入浴し、汗を流してから帰路につけるのが嬉しい。
大会実行委員長兼プロデューサーの鈴木雷太さんインタビュー
桜のアルプスあづみのセンチュリーライドはどうでしたか?
鈴木:曇りが早めに広がってしまったのは残念でしたが、桜も最高の状態でばっちりと咲きましたし、アルプスの山並みを見えたので良かったと思います。今回は参加者の顔ぶれも若い方が増えてきた印象でした。「100km以上走ったこと無いのに完走できて嬉しいです。」などの声も聞こえてきて、自転車のステップアップとしてチャレンジしてもらえるような位置づけの大会になれたことは非常に良いことだと思う。
一方で、運営のなかで掲げている「100%安全」の部分にはまだまだギャップを感じる部分もあり、より一層、啓蒙していかなければいけないと改めて思いました。地元の方々の理解あってのイベントであり、自転車文化だと思うので、引き続き「100%の安全」を呼びかけていきたいと思います。
100%の安全について感じた参加者と主催者の意識のギャップとは何ですか?
鈴木:初めてAACRに参加するような人が増えて、イベント自体が新陳代謝をしているため、「100%の安全」の呼びかけもゼロからスタートしていかなければいけない参加者の方々が増えている印象です。自転車だとおろそかにしがちな一時停止も、しっかり停まって安全確認をするなど、そういった基本的なことから改めて呼びかけていかなければいけないと思いました。
今回初めて医療ボランティアを新設した理由は?
鈴木:実は昨年の大会開催中に急に具合が悪くなった方を救急搬送する事態がありました。その際は様々な偶然が重なって大事には至らなかったのですが、場合によっては最悪の状態になる可能性も十分あると思います。また、一見軽微な落車でも大怪我になっている場合もあります。そういった判断は素人では無理ですし、プロの医療従事者の手を借りる必要があると思い、医療ボランティアを新設しました。
CW編集部より
11年目を迎えたアルプスあづみのセンチュリーライド。ロングライドイベントの草分け的存在である大会だが、常に新しいことに挑戦し、改善が行われている。そんな模範的な姿であるにもかかわらず、大会中に沿道の地域の方より「参加者のマナーが悪い」との苦情が入ったという。そのため大会HPでは後日、地域の皆さまへのお詫びと近隣の皆様からのご指摘の2つのお知らせ文を掲載した。
鈴木雷太プロデューサーが話してくれたとおり、大会は毎年新たな参加者を迎えており、安全に対しての注意喚起が十分に行き届かない面もあるようだ。他のロングライド大会に先駆けて交差点での一時停止の徹底などを呼びかけている同大会だが、参加者がその意識を持たずに走り、誰も見ていないからと一時停止をしなかったり、走行中も並走してしまったり、クルマなどの交通の妨げになったりする光景は見受けられた。
昨今の自転車を取り巻く事情はサイクリストが決して安堵して良い状況ではなく、何か事が起こればその立場を大きく低下させる事態も十分に考えられる。5月の緑のAACRに参加する方も、そんなことも心に留めながら、今一度「100%の安全」を意識して走ってほしい。
text&photo:Makoto.AYANO,Kosuke.Kamata
長野オリンピックの舞台にもなった白馬村。その地名の通り、村の周りには白馬のような冠雪した北アルプスの秀峰達がこちらを見下ろしており、その光景といったら圧巻の一言。眼前に迫る山々はその場にいる人しか分からない迫力を持っているのだ。写真で表現できないのが悔しいほどに。
折り返し地点となる白馬岩岳エイドを出発し、安積野方面へ南下していく。北風に乗りながらペースを上げていくが、途中で左に逸れ、山道を登っていく。本イベント唯一の登りらしい登りがこの峠道。といっても1kmほどの距離なので、ゆっくりマイペースに登ればいつの間にか登りきっている。
そのまま走ってきた仁科三湖の湖畔を戻る。木崎湖は東岸を通っていくと、JR大糸線と並走するような形で進んでいく。長野県の松本駅から新潟県の糸魚川駅まで至るJR大糸線は、1915年に開業したという歴史のある路線。全線に渡り単線となっており、走行する車両も2両編成というこじんまりとした電車が走る。途中の駅も風情溢れる姿で、簗場駅や稲尾駅はそれだけでフォトスポットになる。
再びの大町木崎湖エイドに到着。帰りのメニューは野沢菜のおやきと行者にんにくの豚汁。醤油で味付けされた野沢菜をくるんだおやきは長野県の定番郷土料理。惣菜パンのような感覚でペロリと頂ける。刻んだ行者にんにくが乗った豚汁も疲れた身体に染み渡る。行者にんにくは繊維の少なく旨味が強いニラのような感じで、ぴりりとした味のアクセントになってくれる。スタミナもつきそう。
安曇野市に至るルートを快調なペースで飛ばしていく。基本的に白馬に向かい標高が上がる地形となっているため、この辺りは下り基調のレイアウトとなっており、ペースがぐんぐん上がる。加えて風もだいたい北から吹くことが多いため、追い風となり、更にスピードが上がっていく。
山麓線を走り抜け、高瀬川の沿岸の小路をこなしていけば安曇野エイドに到着。ここではキンキンに冷やした100%りんごジュースとごまをまぶしたおはぎが登場。程よい甘さのおはぎがエネルギーとなってくれる。フレッシュなりんごジュースも頂いて回復すればフィニッシュまではもうすぐ。
山麓道に戻り、梓水苑を目指す。ここで100kmと80kmクラスはルートを逸れ、国営アルプスあづみの公園に向かい、フィニッシュ。初めてロングライドイベントに参加したという方も多い80kmと100kmのクラスは、完走を喜ぶ声が目立った。
150kmクラスの行程はまだ続く。この日は昼前から曇りになってしまい、青空と残雪の山々の鮮やかなコントラストが望めなかったのは残念だったが、後半にかけて徐々に日が差すようになった。気温もあがり、ようやくウィンドブレイカーを脱ぐことができた人も。
安曇野ののどかな田園地帯を走り抜け、あづみ野やまびこ自転車道路を通り、道祖神の見守るなか一路梓水苑を目指す。ライドの最後の最後の数キロ、梓川の支流を渡る橋から、土手の桜並木が見渡せるスポットが待っている。満開で最高の状態の桜並木の見事さに、最後の最後でまた感動。このスポットは、大会側が実地調査してわざわざここを通れるように設定された「桜ポイント」だという。ここを仲間どうしの再集合ポイントにして、ここからフィニッシュまで一緒に走るというグループも。
梓水苑でのフィニッシュは、MCアケさんが元気いっぱいなアナウンスで迎えてくれる。完走証を手にして、「おめでタイ焼き」をいただき、ステージパネルの前で皆で記念撮影。思い思いに今日一日を振り返る。帰路の時間に追われない人なら梓水苑のお風呂で入浴し、汗を流してから帰路につけるのが嬉しい。
大会実行委員長兼プロデューサーの鈴木雷太さんインタビュー
桜のアルプスあづみのセンチュリーライドはどうでしたか?
鈴木:曇りが早めに広がってしまったのは残念でしたが、桜も最高の状態でばっちりと咲きましたし、アルプスの山並みを見えたので良かったと思います。今回は参加者の顔ぶれも若い方が増えてきた印象でした。「100km以上走ったこと無いのに完走できて嬉しいです。」などの声も聞こえてきて、自転車のステップアップとしてチャレンジしてもらえるような位置づけの大会になれたことは非常に良いことだと思う。
一方で、運営のなかで掲げている「100%安全」の部分にはまだまだギャップを感じる部分もあり、より一層、啓蒙していかなければいけないと改めて思いました。地元の方々の理解あってのイベントであり、自転車文化だと思うので、引き続き「100%の安全」を呼びかけていきたいと思います。
100%の安全について感じた参加者と主催者の意識のギャップとは何ですか?
鈴木:初めてAACRに参加するような人が増えて、イベント自体が新陳代謝をしているため、「100%の安全」の呼びかけもゼロからスタートしていかなければいけない参加者の方々が増えている印象です。自転車だとおろそかにしがちな一時停止も、しっかり停まって安全確認をするなど、そういった基本的なことから改めて呼びかけていかなければいけないと思いました。
今回初めて医療ボランティアを新設した理由は?
鈴木:実は昨年の大会開催中に急に具合が悪くなった方を救急搬送する事態がありました。その際は様々な偶然が重なって大事には至らなかったのですが、場合によっては最悪の状態になる可能性も十分あると思います。また、一見軽微な落車でも大怪我になっている場合もあります。そういった判断は素人では無理ですし、プロの医療従事者の手を借りる必要があると思い、医療ボランティアを新設しました。
CW編集部より
11年目を迎えたアルプスあづみのセンチュリーライド。ロングライドイベントの草分け的存在である大会だが、常に新しいことに挑戦し、改善が行われている。そんな模範的な姿であるにもかかわらず、大会中に沿道の地域の方より「参加者のマナーが悪い」との苦情が入ったという。そのため大会HPでは後日、地域の皆さまへのお詫びと近隣の皆様からのご指摘の2つのお知らせ文を掲載した。
鈴木雷太プロデューサーが話してくれたとおり、大会は毎年新たな参加者を迎えており、安全に対しての注意喚起が十分に行き届かない面もあるようだ。他のロングライド大会に先駆けて交差点での一時停止の徹底などを呼びかけている同大会だが、参加者がその意識を持たずに走り、誰も見ていないからと一時停止をしなかったり、走行中も並走してしまったり、クルマなどの交通の妨げになったりする光景は見受けられた。
昨今の自転車を取り巻く事情はサイクリストが決して安堵して良い状況ではなく、何か事が起こればその立場を大きく低下させる事態も十分に考えられる。5月の緑のAACRに参加する方も、そんなことも心に留めながら、今一度「100%の安全」を意識して走ってほしい。
text&photo:Makoto.AYANO,Kosuke.Kamata
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