2018/10/05(金) - 12:16
9月24日に、「自転車&船 ぐるっと“ぬまいち” クロスバイク体験サイクリング」というライドイベントが行われた。これは、レンタルクロスバイクと船とを使って、静岡県沼津市の沼津湾をぐるりと一周するというもの。機材を持たない方がサイクリングを楽しめるというこのイベントに、ロードTT、トラック種目数種の全日本チャンピオンである窪木一茂選手(チームブリヂストンサイクリング)がゲストライダーとして参加した。その模様をお伝えしよう。
沼津市が主催し2016年から毎年行われているこのイベント、「自転車&船 ぐるっと“ぬまいち” クロスバイク体験サイクリング」。初級者でも走りやすい、高低差が少なく距離を進むと劇的に変わる景色のコースを走り、船を使って海を渡って沼津市を一周するという非日常的なアイディアで毎回、好評だそう。
スポーツ自転車を持っていない初級者こそ参加しやすいというこのコンセプトは、機材の購入に躊躇する、特に行動的な女性に人気のようで、今回も日常的にアクティブに体を動かしている女性参加者が半数ほど。女性の好奇心と行動力は、機会と機材さえ用意すればしっかりと発揮されるのだ。
コースのガイドとオーガナイズを務めるのは、楽しい自転車ガイドツアーで有名な”リンケージサイクリング”、そして地元であるスルガ銀行の自転車好きな職員がサポートスタッフとして参加。元オリンピアンである田代恭崇さんがリーダーとなり、経験豊富なガイドが参加者を助けリードしていく。それに加え今回は、隣町である三島市に拠点持つ自転車レーシングチーム、チームブリヂストンサイクリングから窪木一茂選手がゲストライダーとして参加した。
もともと人懐っこい性格で楽しい会話が得意な窪木選手。昨年まで2年間イタリアのチームに所属し生活してきたためか、そのコミュニケーション力にはさらに磨きがかかっているとの評判だ。今年は全日本チャンピオンのタイトルを5種目で獲得し、Jプロツアーの総合リーダーの座を確定させながらも、その威風を感じさせることなく、触れ合う参加者たちを笑わせながらのライドとなった。
なお窪木選手は2018年10月6~7日、伊豆ベロドロームで行われる「全日本オムニアム選手権」では、五輪種目であるトラック競技・オムニアムにて今年6つ目の全日本チャンピオンを狙う。この年間タイトル獲得数すら記録となりそうなこの全日本選手権、ぜひ当日、現場にてご声援を。
ぐるっとぬまいちの起点となり終点となるのは沼津の「NUMAZUサイクルステーション静浦東」。20名の参加者は、朝8時半に集合し、用意されているクロスバイクのレンタサイクル、レンタルヘルメットと、結果お土産となったウォーターボトルを受け取った。初めてクロスバイクに乗る方は、簡単ではあるが確かな安全を確保する講習を受け、その後にコースの全容を田代さんが説明してのスタートとなった。
スタート後は、周囲の名産であるイチゴの農園を抜け、狩野川の土手の上に入って走っていく。澄んだ水質と景観が美しい狩野川を見ながら、そして雲に隠れてはいるものの、たまに富士山が見え隠れする。
道幅はそんなに広いわけではないが、サイクリングにはうってつけのルート。朝夕になると、伊豆ベロドロームへ練習に通うブリヂストンサイクリングの選手に会えることもあるそう。ただ、この土手上の道は一本ずっとつながっているわけではなく、右岸と左岸とをうまく乗り継ぐ必要がある。これをガイド、スタッフが巧みに先導し、気分よく走れるところだけをつないでくれた。
狩野川から沼津港までは、途中休憩を入れて1時間半ほど。風もほとんどなく、日差しは強いとはいえ秋の空気の中、とても快適だ。土手上の道路を降りてほどなく、沼津港に到着。到着時刻は10時半過ぎと想定以上の速いペース。休日は観光客で賑わう沼津港なので、早めのランチに舌鼓を打つ。海鮮丼に代表される丼ものについ目が行くが、今や地元ライダーである窪木選手のおすすめは、価格も手頃なアジの開きだそう。やっぱり脂が乗っていて美味しいのだ。
じっくりと時間をかけて、沼津港でのランチを終えた参加者は、ここから船に乗って沼津湾の対岸、大瀬崎へと渡る。なお船は夏場だけの運行となるため(運行時期でも自転車搬送には予め窓口での相談が必要)、自転車と船で沼津を一周できるのは、このイベントは特別な気持ちよさを提供してくれる。
船で快調に水上を走るなか、船と同じ速度で飛ぶかもめがかもめが人気者だった。かもめは時に、参加者が食べていたおやつなどを奪っていった(狙いは正確なのだ)。30分ほどのクルーズを終えて対面の大瀬崎へと渡る。
この大瀬崎はダイビングで有名なスポットだ。狩野川と同じように海水は美しく澄み、秋となった今も訪れる人は多く、ウェットスーツの人々の間をぬって、パワースポットとしても知られているという「引手力命神社」に向かった。
この神社に祀られているのは天狗。その本殿の上部に掘られた天狗の細工は精密で、息を呑むほど素晴らしい。この祀られる天狗を見て、なぜか驚いたような顔をした窪木選手が参加者たちへ、取り憑かれたように饒舌に話を始める。
「僕、最近天狗のことがずっと気になっていたんですよ。下駄を履いて、ジャンプしながら飛び回るという。下半身と体幹がしっかりとしていないと、そんな動きはできないんです。 たとえば源平時代の源義経、つまり牛若丸も、下駄を履いて自由に飛び回っていたという。 彼の正体も天狗だったのではと。そもそも天狗って何者だったんだろう、と。僕がいま目指しているのは、天狗の動きなんです。なんだか、導かれてここに来たようにも思えます!」
チャンピオンの考えることは、常人を遥かに超越している。
本殿を尋ねたあとに向かったのは「伊豆の七不思議」の一つとして知られる「神池」だ。 なぜ七不思議のひとつなのか。ここは周りを海に囲まれているのに淡水なのである。池の中には淡水魚である鯉が、言葉通りにウヨウヨといる。ガイドさんが持ってきてくれていた餌を投げると大変な騒ぎになる。
こんなに海のそばなのに淡水である理由は、今もってわからないそうだ。というのも、この池の調査をしようとすると、そのたびになにかしら悪いことが起こるのだという。「悪戯をするものを天狗が懲らしめているんだと言われています」(企画者である市職員の横山憲利さん)。まるでピラミッドの呪いのようだが、だからこそ伊豆の七不思議なのである。ここでいたずらをしてはいけない。
大瀬崎から、唯一の坂ともいえる数百メートルの激坂をなんとか登りきって、海岸沿いを走っていく。「沼津は市町村の中でも海岸線の長さで日本トップクラスだと言われています」(地域おこし協力隊の下條健児さん)。その長い海岸線沿いは、海の美しい景色、ヨットの並ぶリゾートのような景色から、漁港のような佇まいへと、ペダルを踏むごとにその光景を変えていく。
心地よい秋の空気の中、高低差の少ないサイクル初級者にも走りやすいコース。窪木選手は、3つの班をそれぞれ行き来しながら、ロードレースのこと、自転車の漕ぎ方やレースでの勝ち方(?!)などを、参加者に楽しげに伝え、最後まで元気に走ってもらうためのサポートを行っていた。
沼津湾の南側となる内浦地域は、アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の舞台。いわゆる『聖地巡礼』に訪れる方も多く、所々にそのスタンプラリー用のスタンプが置いてある。今回の参加者の中にも、そのラリーも目的とした方もいて、前日から周囲を巡っていたという。沼津はそういう楽しみ方もできるのだ。
そしてこの沼津湾南側の地域は、みかんの名産地でもある。西浦みかん、内浦みかんとして売られるみかん群がそれだ。途中立ち寄ったお店では、みかんを袋詰で販売していて「買ってもいいですよ」と田代さん。どうやって持っていくの? 「もちろんサポートカーに積んでいきますよ」とのこと、心置きなくお土産に、そして自分用にみなさん購入していた。なお、沼津市の方に勧められた品種は「寿太郎みかん」。これの生ジュースがあって、田代さんも「このジュースが、実は一番のおすすめなんです」とのこと。写真に撮り忘れたのが残念である。
ゴール地点であるNUMAZUサイクルステーション静浦東の到着は4時過ぎ。ゴール後は窪木選手が一人ひとりをハグし、今日の無事とこれからのサイクルライフを祝福する。参加者はおみやげを貰って、それぞれに解散していった。参加者のなかには、サイクリングセンターのすぐそばにある、沼津の自転車文化発信カフェとも言える「チェレステカフェ」にて軽食を食べ、今日の一日を振り返る人も。
今回も盛況に終わったぐるっとぬまいち。また来年の開催を心待ちにしたい。沼津市のサイクリングイベントに関するさまざまな告知は、下記ホームページから確認して欲しい。
ぬまづサイクリング :https://www.city.numazu.shizuoka.jp/cycling/
スルガ銀行ロードバイクプロジェクト Facebook :https://www.facebook.com/surugaroad/
photo & text: 中村浩一郎
沼津市が主催し2016年から毎年行われているこのイベント、「自転車&船 ぐるっと“ぬまいち” クロスバイク体験サイクリング」。初級者でも走りやすい、高低差が少なく距離を進むと劇的に変わる景色のコースを走り、船を使って海を渡って沼津市を一周するという非日常的なアイディアで毎回、好評だそう。
スポーツ自転車を持っていない初級者こそ参加しやすいというこのコンセプトは、機材の購入に躊躇する、特に行動的な女性に人気のようで、今回も日常的にアクティブに体を動かしている女性参加者が半数ほど。女性の好奇心と行動力は、機会と機材さえ用意すればしっかりと発揮されるのだ。
コースのガイドとオーガナイズを務めるのは、楽しい自転車ガイドツアーで有名な”リンケージサイクリング”、そして地元であるスルガ銀行の自転車好きな職員がサポートスタッフとして参加。元オリンピアンである田代恭崇さんがリーダーとなり、経験豊富なガイドが参加者を助けリードしていく。それに加え今回は、隣町である三島市に拠点持つ自転車レーシングチーム、チームブリヂストンサイクリングから窪木一茂選手がゲストライダーとして参加した。
もともと人懐っこい性格で楽しい会話が得意な窪木選手。昨年まで2年間イタリアのチームに所属し生活してきたためか、そのコミュニケーション力にはさらに磨きがかかっているとの評判だ。今年は全日本チャンピオンのタイトルを5種目で獲得し、Jプロツアーの総合リーダーの座を確定させながらも、その威風を感じさせることなく、触れ合う参加者たちを笑わせながらのライドとなった。
なお窪木選手は2018年10月6~7日、伊豆ベロドロームで行われる「全日本オムニアム選手権」では、五輪種目であるトラック競技・オムニアムにて今年6つ目の全日本チャンピオンを狙う。この年間タイトル獲得数すら記録となりそうなこの全日本選手権、ぜひ当日、現場にてご声援を。
ぐるっとぬまいちの起点となり終点となるのは沼津の「NUMAZUサイクルステーション静浦東」。20名の参加者は、朝8時半に集合し、用意されているクロスバイクのレンタサイクル、レンタルヘルメットと、結果お土産となったウォーターボトルを受け取った。初めてクロスバイクに乗る方は、簡単ではあるが確かな安全を確保する講習を受け、その後にコースの全容を田代さんが説明してのスタートとなった。
スタート後は、周囲の名産であるイチゴの農園を抜け、狩野川の土手の上に入って走っていく。澄んだ水質と景観が美しい狩野川を見ながら、そして雲に隠れてはいるものの、たまに富士山が見え隠れする。
道幅はそんなに広いわけではないが、サイクリングにはうってつけのルート。朝夕になると、伊豆ベロドロームへ練習に通うブリヂストンサイクリングの選手に会えることもあるそう。ただ、この土手上の道は一本ずっとつながっているわけではなく、右岸と左岸とをうまく乗り継ぐ必要がある。これをガイド、スタッフが巧みに先導し、気分よく走れるところだけをつないでくれた。
狩野川から沼津港までは、途中休憩を入れて1時間半ほど。風もほとんどなく、日差しは強いとはいえ秋の空気の中、とても快適だ。土手上の道路を降りてほどなく、沼津港に到着。到着時刻は10時半過ぎと想定以上の速いペース。休日は観光客で賑わう沼津港なので、早めのランチに舌鼓を打つ。海鮮丼に代表される丼ものについ目が行くが、今や地元ライダーである窪木選手のおすすめは、価格も手頃なアジの開きだそう。やっぱり脂が乗っていて美味しいのだ。
じっくりと時間をかけて、沼津港でのランチを終えた参加者は、ここから船に乗って沼津湾の対岸、大瀬崎へと渡る。なお船は夏場だけの運行となるため(運行時期でも自転車搬送には予め窓口での相談が必要)、自転車と船で沼津を一周できるのは、このイベントは特別な気持ちよさを提供してくれる。
船で快調に水上を走るなか、船と同じ速度で飛ぶかもめがかもめが人気者だった。かもめは時に、参加者が食べていたおやつなどを奪っていった(狙いは正確なのだ)。30分ほどのクルーズを終えて対面の大瀬崎へと渡る。
この大瀬崎はダイビングで有名なスポットだ。狩野川と同じように海水は美しく澄み、秋となった今も訪れる人は多く、ウェットスーツの人々の間をぬって、パワースポットとしても知られているという「引手力命神社」に向かった。
この神社に祀られているのは天狗。その本殿の上部に掘られた天狗の細工は精密で、息を呑むほど素晴らしい。この祀られる天狗を見て、なぜか驚いたような顔をした窪木選手が参加者たちへ、取り憑かれたように饒舌に話を始める。
「僕、最近天狗のことがずっと気になっていたんですよ。下駄を履いて、ジャンプしながら飛び回るという。下半身と体幹がしっかりとしていないと、そんな動きはできないんです。 たとえば源平時代の源義経、つまり牛若丸も、下駄を履いて自由に飛び回っていたという。 彼の正体も天狗だったのではと。そもそも天狗って何者だったんだろう、と。僕がいま目指しているのは、天狗の動きなんです。なんだか、導かれてここに来たようにも思えます!」
チャンピオンの考えることは、常人を遥かに超越している。
本殿を尋ねたあとに向かったのは「伊豆の七不思議」の一つとして知られる「神池」だ。 なぜ七不思議のひとつなのか。ここは周りを海に囲まれているのに淡水なのである。池の中には淡水魚である鯉が、言葉通りにウヨウヨといる。ガイドさんが持ってきてくれていた餌を投げると大変な騒ぎになる。
こんなに海のそばなのに淡水である理由は、今もってわからないそうだ。というのも、この池の調査をしようとすると、そのたびになにかしら悪いことが起こるのだという。「悪戯をするものを天狗が懲らしめているんだと言われています」(企画者である市職員の横山憲利さん)。まるでピラミッドの呪いのようだが、だからこそ伊豆の七不思議なのである。ここでいたずらをしてはいけない。
大瀬崎から、唯一の坂ともいえる数百メートルの激坂をなんとか登りきって、海岸沿いを走っていく。「沼津は市町村の中でも海岸線の長さで日本トップクラスだと言われています」(地域おこし協力隊の下條健児さん)。その長い海岸線沿いは、海の美しい景色、ヨットの並ぶリゾートのような景色から、漁港のような佇まいへと、ペダルを踏むごとにその光景を変えていく。
心地よい秋の空気の中、高低差の少ないサイクル初級者にも走りやすいコース。窪木選手は、3つの班をそれぞれ行き来しながら、ロードレースのこと、自転車の漕ぎ方やレースでの勝ち方(?!)などを、参加者に楽しげに伝え、最後まで元気に走ってもらうためのサポートを行っていた。
沼津湾の南側となる内浦地域は、アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の舞台。いわゆる『聖地巡礼』に訪れる方も多く、所々にそのスタンプラリー用のスタンプが置いてある。今回の参加者の中にも、そのラリーも目的とした方もいて、前日から周囲を巡っていたという。沼津はそういう楽しみ方もできるのだ。
そしてこの沼津湾南側の地域は、みかんの名産地でもある。西浦みかん、内浦みかんとして売られるみかん群がそれだ。途中立ち寄ったお店では、みかんを袋詰で販売していて「買ってもいいですよ」と田代さん。どうやって持っていくの? 「もちろんサポートカーに積んでいきますよ」とのこと、心置きなくお土産に、そして自分用にみなさん購入していた。なお、沼津市の方に勧められた品種は「寿太郎みかん」。これの生ジュースがあって、田代さんも「このジュースが、実は一番のおすすめなんです」とのこと。写真に撮り忘れたのが残念である。
ゴール地点であるNUMAZUサイクルステーション静浦東の到着は4時過ぎ。ゴール後は窪木選手が一人ひとりをハグし、今日の無事とこれからのサイクルライフを祝福する。参加者はおみやげを貰って、それぞれに解散していった。参加者のなかには、サイクリングセンターのすぐそばにある、沼津の自転車文化発信カフェとも言える「チェレステカフェ」にて軽食を食べ、今日の一日を振り返る人も。
今回も盛況に終わったぐるっとぬまいち。また来年の開催を心待ちにしたい。沼津市のサイクリングイベントに関するさまざまな告知は、下記ホームページから確認して欲しい。
ぬまづサイクリング :https://www.city.numazu.shizuoka.jp/cycling/
スルガ銀行ロードバイクプロジェクト Facebook :https://www.facebook.com/surugaroad/
photo & text: 中村浩一郎
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