2018/07/27(金) - 12:01
ノヴェ・コッリの前日イベント、スタート前の大混雑、レーススピードの速さ、途切れない集団に圧倒されたCWの藤原。まだ1つ目の峠の頂上にいるが、先はまだ長いので、急いでダウンヒルすることに。果たして完走することができたのか、挑戦を終えたとき何を感じたのか。
とにかく周りのライダー達のスピードが速く、私もそれなりに良い速度で下っていたにもかかわらず、一瞬で視界から消えていってしまう。しかし、コーナー途中の無理な追い越しはなく、ストレートで抜いていってくれるため、安心して走ることができている。が、下りの最終盤に差し掛かったところで、何故かコース脇の茂みからサイクリストが顔を出しており、不意の出来事にギョッとしてしまった。
下りで脇見運転できるほどスキルフルではないため、彼が一体何をしていたのかその場で判断することはできなかったが、その理由はすぐにわかることに。なぜなら同じように茂みに入っていたライダーが沢山いて、一様にホイール作業を行っていたから。彼らはパンクに見舞われた模様。茂みに隠れていた人たちは高速でやってくる後続集団と事故を起こさないために退避していてくれたのだ。
中には、シューズを脱ぎ、少し先に構えられたメカニックブースを目指してトボトボ歩いている人も。高速で下っていたためイメージの話でしかないが、第1峠のダウンヒルは非常にパンクトラブルが多かった。路面状況が悪かった訳では無いのだが、何故だろうか。自分にも起こりうることではあるが、パンク修理が非常にめんどくさいので、路面状況を把握してパンクしないようにと心に強く思ったのだった。
ノヴェ・コッリのいやらしいところだが、下りか登り基調のどちらかしか道がない。ペダリングしないとスピードが出ない区間もあり、もう少し頑張れば前に追いつきそうという距離でも中々追いつくことができなく、無駄足を使ってしまうこともしばしば。そういえば、頑張ってペダリングするのは自分だけは?と疑問に思いはじめたのはここの頃から。
ペースの速い集団には既に置いていかれてしまっているため、周りにいるのは比較的落ち着いた速度で走行する人ばかり。小集団でゆるい登り坂を登っていき、本格的なヒルクライムになるとバラバラになる。後ろからものすごい勢いで追い抜いていくフレッシュな人も偶にいて、抜かれるたびに速度差に驚かされるのだ。
ヒルクライム区間に入ると現地の人たちは、フロントギアをあっという間にインナーに落とすことに気がついた。軽いギアでクルクル回すことは体力温存に繋がることは知っているが、私はどうしても速く走りたくなりアウターギアで引っ張りがちなので、意識が徹底しているなと感心。
2つ目の峠は既に市街から離れており、風景は田舎に変わっている。前編でも記したかもしれないが、ノヴェ・コッリは一つ一つの登坂距離は長くなく、標高もそれほど高くならない。しかし、少し登るだけで視界が開け、遠景まで目に入れることが出来るので、気分的に満足感が非常に高い。
深い緑に覆われた森林だけではなく、若草の草原のような色合いとのコントラストが美しい。加えて、2つ目の峠には白い岩壁も露出しており、自然の素晴らしさを否が応でも感じざるを得ない。地形もうねるように大地が盛り上がり、海原のよう。やはり首都圏にいるだけでは見渡すことができない光景だ。なんと貴重な体験をしているのだろうか。
第2峠をクリアするとこの日初めてのエイドステーションが現れる。この先にも峠ごとにエイドが現れるが内容はほぼ同じ。サイクリストの味方コカコーラとスポーツドリンク、バナナとオレンジ、選り取り見取りの菓子パンが振舞われる。グルメが充実している訳ではないが、カロリーをしっかり補給できる定番のものが用意されているため、安心して利用できるのは嬉しい。ひとかけの黒糖などよりはマシだ。
このあたりから路面の状況が悪化してくる。下り勾配18%にも関わらず、割れている路面は恐ろしすぎる。普段使用している25cに慣れすぎたため、ノヴェ・コッリのために用意してもらったバイクに装着されていた20cのタイヤの細さと路面の悪さでは及び腰になってしまうのは仕方がない。そこをかっ飛ばしていくイタリアンサイクリストたち。
しかし、実際に20cという細さのタイヤで状況の悪い路面を走ってみると、この状況ではワイドタイヤが必要であることは如実に感じる。タイヤのグリップとクッションにここまで頼っていたのかとも実感した瞬間でもあった。
3つ目の登りでは私設エイドが大活躍。可愛らしい女の子が「アクアー!アクアー!」と叫び、ボトルに水を補給してくれたり、オッチャンがランニングしながら補給食を手渡ししてくれたりと、非常に充実していた。ヘアピンカーブの外側で色々なものを配布していたため、内側を走行していた私は何も受け取ることができず、残念。
3つ目をクリアすると久々に街「メルカート・サラチェーノ」を通過してから「バルボット」へ向かう4つ目の山に入っていく。ここは最大斜度18%が待ち受けながら、タイム計測区間という意地悪な設定がされている。私も気合を入れてペダルを踏み込んだら、チェーンがスプロケットとスポークの間に落ちてしまった。
「こんなことある〜?」と思いながらガシャガシャとメカをいじっていると、通りがかりのお姉さんが汚れた手のために、ウェットティッシュを分け与えてくれた。グラッツェ〜と言ってジェントルマン風に装ってみたけれど、内心それどころではない。チェーンはビクともせず、異国の地でトラブルで動揺。
数十メートル前にメカニックサービスがあったことを思い出し、トボトボと歩いて向かうことに。非常に寂しい。ブースに詰めていたメカニックたちは忙しなく働いていたのでゴム手袋を貰い、ガシャガシャとチェーンと再び格闘。そうこうしていると、手が空いたメカニックのお姉さんが私のバイクを引ったくり、物凄い力でチェーンを救出してくれた。安堵に包まれた顔でグラッツェと言ってみたけれど、屈強なお姉さんには無視される。辛い。ともあれ、再スタートできることに感謝だ。
第4の峠はというと距離は約4kmと長くないものの、斜度は平均8%、最大は18%ということもあり、私はハエが止まるほどの速度しか出せない。90km程度走ってくると流石にフレッシュな状態とは言えなくなっており、ピークを表すゲートが目に飛び込んできたときの安堵は忘れられない。頂上には大勢のギャラリーと、爆音の音楽とMCの声が響いていたからかもしれないが。とりあえず約半分の行程は完了した。
ノヴェ・コッリの特徴的なポイントのひとつとしてあげられるのが、205kmコースと131kmコースを走っている最中に決められること。第4峠後のダウンヒルを終えたところで分岐点が現れ、その場で決断する。131kmコースに向かう方も多く、見栄をはる必要は無さそう。それでも私は見栄のために205kmを完走する選択をした。
残る峠は5つ、距離は102km。ここまでの所要時間はほぼ5時間。時刻は11時を回り、気温も徐々に上がってきており、アームウォーマーが邪魔に感ずる場面も。しかし、下りではまだまだ必要なのでポケットに入れてしまう決断はまだ早い。登りの際は手首までまくり、下りはしっかりと風を防ごうという作戦とすることに。
ヒルクライムを4回も続けて入れば、それなりに飽きはじめの時間が訪れてしまい、私は気がついてしまった。登った先に見える景色は波打つ大地がほぼ全てであることに。同じ光景では?なんて贅沢な疑問を持ってしまうなんて恐ろしいことではあるが、実際同じように“美しい”景色なのだから仕方ない。この境地に至ったのだから走りに集中できるはず。そもそもノヴェ・コッリはレースであり、己との競争なのだから、景色なんてなりふり構わず走るべきなのである。
6つ目の峠を登り終えたところにあるエイドステーションでは、作りたてのラビオリが振舞われている。口に入れたパスタは非常に美味で、ボ〜ノ〜とほっぺを指先でグリグリする典型的なポーズをとってしまった。周りは誰もそんなことしていないので、だいぶ恥ずかしさはあるが、後悔はない。このエイドのコカコーラは0キロカロリーだったことを、恨みをこめて記しておこう。
最も登坂距離が長い7つ目の峠をこなした後のダウンヒルでちょっとした問題が発生。悪い路面の下りにも関わらず、スピードが乗るレイアウトだったため、ブレーキを握る手が痺れだしてしまったのだ。恐らく体が強張り、ハンドルとブレーキを強く握ってしまったためだろう。
ダウンヒルの終盤は、ワイドタイヤとディスクブレーキ搭載バイクを選び機材面で安全性を確保することは、気持ちを落ち着かせるためにも有効かも…なんて思い始めていた。そんなこともあり、帰国後はメーカーカタログとお財布の中身を確認する作業が続いている。
8つ目の峠は距離4km、平均斜度4.1%と、この日現れるヒルクライムの中では緩やかなプロフィール。ここまで150km走り続けてきたにも関わらず、意外と踏めるもので最も気持ちよくヒルクライムできたというイメージはある。実際のデータをみるとタレているので、アドレナリンの力は強いと感じざるを得ない。
しかし、アドレナリンの力をもってしても9つ目の峠は辛いものだった。距離は約7km、平均斜度は3.9%なのだが、ごく僅かな平坦と下り区間のせいで、8〜12%の斜度が隠されてしまっている。私を含め周りのライダーはただ前を進むだけの生物のようで、足を止めそうになりながらピークへと転がりこむ。しかし、最後の峠をクリアした周りのライダーたちは喜びに満ちていた。
ラスト20kmの下り基調の平坦路は、メンバーが多いチームのトレインにお邪魔させて貰い、快速楽々ペースでチェゼナーティコまでワープ。海岸脇に設置されたフィニッシュゲートが現れたときの安堵感と達成感はこの上ない経験で、私の記憶に深く刻まれた。
渾身のガッツポーズでフィニッシュした後は、美女にメダルを掛けて貰えるなんて天国かここは。加えてパスタパーティーというアフターエイドが用意されており、大盛りパスタとパニーニ、アイス、ビール、ワインを頂くことができるのだ。至れり尽くせりとはこのことだ……。フィニッシュした幸せを感じるイベントはそう無い。
ちなみに走行時間は、自前のサイコン読みで10時間57分。なんじゃこりゃというタイムだが、伸び代はたっぷりあるということにしておこう。ノヴェ・コッリはあくまでレースであり、タイムを競うもの。身近な例で例えるとフルマラソンだろうか。完走することもまず目標となるし、タイムを縮めることももちろんそう。強くなればトップ集団で争ってもいいだろう。どのレベルの人でも己との闘いに挑めるチャレンジングな大会だ。
そして、今回走ってタイムアップできる要素はいくつか見つけた。コースが毎年同じであること、経験を積むことでタイムアップしやすいはずだ。そして、エイドステーションでダラダラ過ごさない。この経験を持って再び挑みたい。
さて、レース翌日はチェゼナーティコの観光は必須だ。なんていってもここはマルコ・パンターニが生まれた地であるため、聖地巡礼は欠かせない行事といっても良いだろう。ノヴェ・コッリのフィニッシュ地点レヴァンテ公園近くにマルコ・パンターニ像が天に向かってペダリングしているため、是非見に行こう。サイクリストが記念撮影をしているため、すぐに見つけられるはずだ。
パンターニとの記念撮影を終えたら、チェゼナーティコ駅付近にあるパンターニ博物館に行ってみるのも良いかもしれない。5ユーロでチケットとポストカードが貰えるのでお得だ。幼少期に使用していた自転車やジャージ、全盛期の機材、パンターニを描いた絵画など沢山展示されており、パンターニファン垂涎の空間となっている。ノヴェ・コッリに参戦した場合は是非訪れてほしい。
前編はこちら→リンク
Text & photo : Gakuto Fujiwara
Special Thanks : Selle Italia , Nichinao Shokai
とにかく周りのライダー達のスピードが速く、私もそれなりに良い速度で下っていたにもかかわらず、一瞬で視界から消えていってしまう。しかし、コーナー途中の無理な追い越しはなく、ストレートで抜いていってくれるため、安心して走ることができている。が、下りの最終盤に差し掛かったところで、何故かコース脇の茂みからサイクリストが顔を出しており、不意の出来事にギョッとしてしまった。
下りで脇見運転できるほどスキルフルではないため、彼が一体何をしていたのかその場で判断することはできなかったが、その理由はすぐにわかることに。なぜなら同じように茂みに入っていたライダーが沢山いて、一様にホイール作業を行っていたから。彼らはパンクに見舞われた模様。茂みに隠れていた人たちは高速でやってくる後続集団と事故を起こさないために退避していてくれたのだ。
中には、シューズを脱ぎ、少し先に構えられたメカニックブースを目指してトボトボ歩いている人も。高速で下っていたためイメージの話でしかないが、第1峠のダウンヒルは非常にパンクトラブルが多かった。路面状況が悪かった訳では無いのだが、何故だろうか。自分にも起こりうることではあるが、パンク修理が非常にめんどくさいので、路面状況を把握してパンクしないようにと心に強く思ったのだった。
ノヴェ・コッリのいやらしいところだが、下りか登り基調のどちらかしか道がない。ペダリングしないとスピードが出ない区間もあり、もう少し頑張れば前に追いつきそうという距離でも中々追いつくことができなく、無駄足を使ってしまうこともしばしば。そういえば、頑張ってペダリングするのは自分だけは?と疑問に思いはじめたのはここの頃から。
ペースの速い集団には既に置いていかれてしまっているため、周りにいるのは比較的落ち着いた速度で走行する人ばかり。小集団でゆるい登り坂を登っていき、本格的なヒルクライムになるとバラバラになる。後ろからものすごい勢いで追い抜いていくフレッシュな人も偶にいて、抜かれるたびに速度差に驚かされるのだ。
ヒルクライム区間に入ると現地の人たちは、フロントギアをあっという間にインナーに落とすことに気がついた。軽いギアでクルクル回すことは体力温存に繋がることは知っているが、私はどうしても速く走りたくなりアウターギアで引っ張りがちなので、意識が徹底しているなと感心。
2つ目の峠は既に市街から離れており、風景は田舎に変わっている。前編でも記したかもしれないが、ノヴェ・コッリは一つ一つの登坂距離は長くなく、標高もそれほど高くならない。しかし、少し登るだけで視界が開け、遠景まで目に入れることが出来るので、気分的に満足感が非常に高い。
深い緑に覆われた森林だけではなく、若草の草原のような色合いとのコントラストが美しい。加えて、2つ目の峠には白い岩壁も露出しており、自然の素晴らしさを否が応でも感じざるを得ない。地形もうねるように大地が盛り上がり、海原のよう。やはり首都圏にいるだけでは見渡すことができない光景だ。なんと貴重な体験をしているのだろうか。
第2峠をクリアするとこの日初めてのエイドステーションが現れる。この先にも峠ごとにエイドが現れるが内容はほぼ同じ。サイクリストの味方コカコーラとスポーツドリンク、バナナとオレンジ、選り取り見取りの菓子パンが振舞われる。グルメが充実している訳ではないが、カロリーをしっかり補給できる定番のものが用意されているため、安心して利用できるのは嬉しい。ひとかけの黒糖などよりはマシだ。
このあたりから路面の状況が悪化してくる。下り勾配18%にも関わらず、割れている路面は恐ろしすぎる。普段使用している25cに慣れすぎたため、ノヴェ・コッリのために用意してもらったバイクに装着されていた20cのタイヤの細さと路面の悪さでは及び腰になってしまうのは仕方がない。そこをかっ飛ばしていくイタリアンサイクリストたち。
しかし、実際に20cという細さのタイヤで状況の悪い路面を走ってみると、この状況ではワイドタイヤが必要であることは如実に感じる。タイヤのグリップとクッションにここまで頼っていたのかとも実感した瞬間でもあった。
3つ目の登りでは私設エイドが大活躍。可愛らしい女の子が「アクアー!アクアー!」と叫び、ボトルに水を補給してくれたり、オッチャンがランニングしながら補給食を手渡ししてくれたりと、非常に充実していた。ヘアピンカーブの外側で色々なものを配布していたため、内側を走行していた私は何も受け取ることができず、残念。
3つ目をクリアすると久々に街「メルカート・サラチェーノ」を通過してから「バルボット」へ向かう4つ目の山に入っていく。ここは最大斜度18%が待ち受けながら、タイム計測区間という意地悪な設定がされている。私も気合を入れてペダルを踏み込んだら、チェーンがスプロケットとスポークの間に落ちてしまった。
「こんなことある〜?」と思いながらガシャガシャとメカをいじっていると、通りがかりのお姉さんが汚れた手のために、ウェットティッシュを分け与えてくれた。グラッツェ〜と言ってジェントルマン風に装ってみたけれど、内心それどころではない。チェーンはビクともせず、異国の地でトラブルで動揺。
数十メートル前にメカニックサービスがあったことを思い出し、トボトボと歩いて向かうことに。非常に寂しい。ブースに詰めていたメカニックたちは忙しなく働いていたのでゴム手袋を貰い、ガシャガシャとチェーンと再び格闘。そうこうしていると、手が空いたメカニックのお姉さんが私のバイクを引ったくり、物凄い力でチェーンを救出してくれた。安堵に包まれた顔でグラッツェと言ってみたけれど、屈強なお姉さんには無視される。辛い。ともあれ、再スタートできることに感謝だ。
第4の峠はというと距離は約4kmと長くないものの、斜度は平均8%、最大は18%ということもあり、私はハエが止まるほどの速度しか出せない。90km程度走ってくると流石にフレッシュな状態とは言えなくなっており、ピークを表すゲートが目に飛び込んできたときの安堵は忘れられない。頂上には大勢のギャラリーと、爆音の音楽とMCの声が響いていたからかもしれないが。とりあえず約半分の行程は完了した。
ノヴェ・コッリの特徴的なポイントのひとつとしてあげられるのが、205kmコースと131kmコースを走っている最中に決められること。第4峠後のダウンヒルを終えたところで分岐点が現れ、その場で決断する。131kmコースに向かう方も多く、見栄をはる必要は無さそう。それでも私は見栄のために205kmを完走する選択をした。
残る峠は5つ、距離は102km。ここまでの所要時間はほぼ5時間。時刻は11時を回り、気温も徐々に上がってきており、アームウォーマーが邪魔に感ずる場面も。しかし、下りではまだまだ必要なのでポケットに入れてしまう決断はまだ早い。登りの際は手首までまくり、下りはしっかりと風を防ごうという作戦とすることに。
ヒルクライムを4回も続けて入れば、それなりに飽きはじめの時間が訪れてしまい、私は気がついてしまった。登った先に見える景色は波打つ大地がほぼ全てであることに。同じ光景では?なんて贅沢な疑問を持ってしまうなんて恐ろしいことではあるが、実際同じように“美しい”景色なのだから仕方ない。この境地に至ったのだから走りに集中できるはず。そもそもノヴェ・コッリはレースであり、己との競争なのだから、景色なんてなりふり構わず走るべきなのである。
6つ目の峠を登り終えたところにあるエイドステーションでは、作りたてのラビオリが振舞われている。口に入れたパスタは非常に美味で、ボ〜ノ〜とほっぺを指先でグリグリする典型的なポーズをとってしまった。周りは誰もそんなことしていないので、だいぶ恥ずかしさはあるが、後悔はない。このエイドのコカコーラは0キロカロリーだったことを、恨みをこめて記しておこう。
最も登坂距離が長い7つ目の峠をこなした後のダウンヒルでちょっとした問題が発生。悪い路面の下りにも関わらず、スピードが乗るレイアウトだったため、ブレーキを握る手が痺れだしてしまったのだ。恐らく体が強張り、ハンドルとブレーキを強く握ってしまったためだろう。
ダウンヒルの終盤は、ワイドタイヤとディスクブレーキ搭載バイクを選び機材面で安全性を確保することは、気持ちを落ち着かせるためにも有効かも…なんて思い始めていた。そんなこともあり、帰国後はメーカーカタログとお財布の中身を確認する作業が続いている。
8つ目の峠は距離4km、平均斜度4.1%と、この日現れるヒルクライムの中では緩やかなプロフィール。ここまで150km走り続けてきたにも関わらず、意外と踏めるもので最も気持ちよくヒルクライムできたというイメージはある。実際のデータをみるとタレているので、アドレナリンの力は強いと感じざるを得ない。
しかし、アドレナリンの力をもってしても9つ目の峠は辛いものだった。距離は約7km、平均斜度は3.9%なのだが、ごく僅かな平坦と下り区間のせいで、8〜12%の斜度が隠されてしまっている。私を含め周りのライダーはただ前を進むだけの生物のようで、足を止めそうになりながらピークへと転がりこむ。しかし、最後の峠をクリアした周りのライダーたちは喜びに満ちていた。
ラスト20kmの下り基調の平坦路は、メンバーが多いチームのトレインにお邪魔させて貰い、快速楽々ペースでチェゼナーティコまでワープ。海岸脇に設置されたフィニッシュゲートが現れたときの安堵感と達成感はこの上ない経験で、私の記憶に深く刻まれた。
渾身のガッツポーズでフィニッシュした後は、美女にメダルを掛けて貰えるなんて天国かここは。加えてパスタパーティーというアフターエイドが用意されており、大盛りパスタとパニーニ、アイス、ビール、ワインを頂くことができるのだ。至れり尽くせりとはこのことだ……。フィニッシュした幸せを感じるイベントはそう無い。
ちなみに走行時間は、自前のサイコン読みで10時間57分。なんじゃこりゃというタイムだが、伸び代はたっぷりあるということにしておこう。ノヴェ・コッリはあくまでレースであり、タイムを競うもの。身近な例で例えるとフルマラソンだろうか。完走することもまず目標となるし、タイムを縮めることももちろんそう。強くなればトップ集団で争ってもいいだろう。どのレベルの人でも己との闘いに挑めるチャレンジングな大会だ。
そして、今回走ってタイムアップできる要素はいくつか見つけた。コースが毎年同じであること、経験を積むことでタイムアップしやすいはずだ。そして、エイドステーションでダラダラ過ごさない。この経験を持って再び挑みたい。
さて、レース翌日はチェゼナーティコの観光は必須だ。なんていってもここはマルコ・パンターニが生まれた地であるため、聖地巡礼は欠かせない行事といっても良いだろう。ノヴェ・コッリのフィニッシュ地点レヴァンテ公園近くにマルコ・パンターニ像が天に向かってペダリングしているため、是非見に行こう。サイクリストが記念撮影をしているため、すぐに見つけられるはずだ。
パンターニとの記念撮影を終えたら、チェゼナーティコ駅付近にあるパンターニ博物館に行ってみるのも良いかもしれない。5ユーロでチケットとポストカードが貰えるのでお得だ。幼少期に使用していた自転車やジャージ、全盛期の機材、パンターニを描いた絵画など沢山展示されており、パンターニファン垂涎の空間となっている。ノヴェ・コッリに参戦した場合は是非訪れてほしい。
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Text & photo : Gakuto Fujiwara
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