2018/05/05(土) - 08:54
ピンクに色づく山梨の春を自転車で楽しむ「桃と桜のサイクリング」。女性比率も際立って高い、華やかな大会は、豪華BBQランチが振舞われたりバンクデビュー出来たりと盛りだくさんな後半へ。
さて、第1エイドとなった八代ふれあいの花公園で甲府盆地の絶景と、ふわふわマフィンを堪能した私たち一行が次に目指すのは花鳥山展望台。もう、名前からして絶対いい景色でしょ!という期待のハードルを押し上げてくるスポットを目指し、ふたたびみやさか道のアップダウンをこなしていく。
エイドを出た下りの先には、リニアの実験線が。2027年にはリニア新幹線で品川からわずか25分で新山梨駅に着くことができるようになるというのだから、夢のような話だ。この谷を越えた先にあるのが、フォトスポットとして名高い花鳥山展望台である。
リニアライドの副題の通りリニアモーターカーの実験線を取り囲むように桃の花が植えられている。巨大な人工物と、美しい植物の対比がドラマチックで、人気が出るのも納得の景色だ。桃の花のシーズンということもあり、この日も多くの観光客が詰めかけていた。
展望台周辺は散策できるコースが整備されており、ウォーキングを楽しむ人もたくさん。いや、たくさんどころか、花鳥山展望台へ至る車道は一車線分まるで歩行者天国の様相に。なのでこの区間はそろそろと歩行者に気をつけつつ徐行で通過。折角の下り坂だけど、安全第一だ。それに、ゆっくり下れば周りの景色も見えるのだ。一面に広がる桃の花を堪能しながらゆるゆると下っていくのであった。
もう一つ二つ丘を越えて、御坂みちへ。途中には菜の花畑の中に桃が植えられ、黄色の絨毯の中にピンクのアクセントが加わる、まさに桃源郷のような風景が広がるスポットなどもあり、所々で写真を撮ろうと足を止めている参加者の方も。もちろん取材のために写真を撮る私たちもついつい停車の頻度が多くなり、必然ゆったりしたライドに。
こうして美しい景色を楽しんだ後はお待ちかねのランチタイム。多くの観光農園が両脇に立ち並ぶ御坂みちを下り、たどり着いた御坂農園グレープハウス。グレープハウスという名前だけれど、ブドウだけに限らず桃の栽培も行っており、時間無制限の食べ放題のフルーツ狩りが楽しめる。
このエイドでは、6人一組で建物の中へとご案内。どうしてなのかと思いつつ、中へと進んでいく。手前の建物には農園でとれた果物や山梨名物の様々な食材を生かしたお土産がずらり。その奥に進むと、フルーツ畑につながる道があり、さらに奥にはBBQ場が。
ずらりとテーブルが並べられた空間には、すでに到着されていた参加者の皆さんが肉を焼くジュージュー音が響き、食欲をそそる香りが充満している。1卓につき、6つ用意された席にそれぞれがつけば、目の前にはどっさり用意された食材が。一人当たり200gはあるお肉に、たっぷり用意された焼き野菜、そして地産のキノコが山盛りになっている。
コンロに火をつけてもらい、さっそくBBQ開始。この日初めて顔を合わせる人たちと、食卓を囲むことになるけれども、そこは同じコースを一緒に走ってきた仲間。最初はぎこちなかったとしても、食材に火が通るほどに、会話にも熱がこもっていく。共同作業となるBBQというのもまた、打ちとけるにはピッタリだ。
ふと見渡せば、どのテーブルも同じように盛り上がっている。豪華な内容の食事にも驚いたけれど、こんなに仲間の輪が広がるランチタイムというのも、ほかの大会ではお目にかかったことは無い。人と人の輪が繋がっていく景色もまた、咲き乱れる花と同じくらい美しいもの。
新しい仲間を得て、お腹をいっぱいに膨らませたら後半戦へと突入だ。東西に延びるコースの東端に位置するのが、このランチエイドなので、ここからは一路西へと向かうことに。走り出した目の前に現れたのは、10%の勾配表示看板。距離は短いので、ペースで登ればそんなに大変でもないはずなのだけれど、たらふく食べた後だとちょっとキツイ……。
そんなことを思っていると、道のわきに”エスコート”と書かれたバンが止まっている。どういうことなのか聞いてみると、「坂がつらい人のために、登り区間だけ乗ってもらうための車なんですよ」とのこと。なんというサポート体制なのだろうか、取材のためと偽って乗せてもらうことを一瞬考えてしまったが、本当に必要な人がいたら申し訳ない。ということで、かろうじて残った理性を振り絞り、先へ。
しばらく走ってたどり着いたのは「境川自転車競技場」。中央道を東京から走ってくると、境川PA付近でいつも目に付くあの場所である。2009年の全日本選手権の会場ともなった歴史ある屋外バンクの一角で、エイドステーションが設けられた。
ここでは、甲府に本社を置くシャトレーゼの「揚げ餅」、そして地元のスーパーイッツモア玉穂店の目利きが光るイチゴ、そして甲州小梅から作られたお酢と、地元の特色を生かした振る舞いがずらり。さらにこのエイドでも、またまたユニークな体験ができる。
それは、普段はロードバイクで走ることができないバンク走行の体験会。希望すれば、この日はだれでも本物のバンクを走行することが出来たのだ。ブレーキをかけてはいけないことなど、基本的な注意点をレクチャーされたら、いざ競技場内へ。実は筆者自身もバンクは初体験なので少しドキドキしつつ、ゲストライダーの今中さんと佐藤さんとともに挑戦!
いざバンクを下から見てみるとその斜度に驚いた、という感想をよく聞いていたけれど、それも納得。驚きました。壁じゃん。でも、下の方をゆるっと1周してみたらそんな不安も吹き飛ぶ楽しさ。ちょっと上行ってみようかな、と冒険心がムクムクと頭をもたげる。というのも、路面のグリップ感がかなり強いので見た目よりは全然安心感があるのです。
もう少し速度に乗せて、一つ上のラインへ、次の周はもう少し上へ。こ、これは楽しいかも……。華麗に走る今中さんについて行ってみたりして。一方、佐藤さんも「こわーーーーい!」と叫びつつも、果敢にチャレンジ。最終的には青のスプリンターラインまで到達できたようでなによりです。
さて、ちょっとエキサイティングな第3エイドを堪能し、再び出発。ここから第4エイドまではほぼほぼ平坦な快走区間。車が少なく見通しの良い農道を繋ぎ、到着したのは「道の駅とよとみ」だ。全国直売所甲子園初代グランドチャンピオンに輝いたこの道の駅、その栄冠に恥じない充実した施設が魅力。そんなスポットに設定されたエイドステーションでは、道の駅名物の「シルクソフト」が振舞われた。
古くより養蚕が盛んだったという豊冨地域。シルクの里とも呼ばれるこの一帯らしく、食用のシルクパウダーを使用したスペシャルなソフトクリームなのだ。太陽も中天に差し掛かり、かなりあったかくなってきたところにひんやりしたソフトが染み入るよう。そしてなにより、濃厚な味わいにここまで走ってきた疲れも吹き飛ばされる。
あまーいソフトクリームを堪能したら、あとはフィニッシュ地点へ戻るだけ。ここからはほど近いはずなので、あっという間に到着のはず。と思っていたら、これが意外に長かった。まっすぐの道ではなく、いったん高台へと登りまわり込むようにゴールを目指していくのだ。途中には、南アルプスロングライドで見覚えのあるみたまの湯へつながるルートなども登場。最後に少しパンチのあるアップダウンを走り切って、ほど良い疲労感とともにフィニッシュ地点へと戻ってきたのだった。
フィニッシュエイドとして、地元の主婦の方々が丹精込めて作ってくれたトロトロのカボチャほうとうや、草餅が振舞われ、最後まで大満足。写真撮影コーナーでは、完走記念のグッズを作ってくれるサービスも。さらに、会場の奥には足湯までも出現し、ビンディングシューズの硬いソールで疲れた足をリフレッシュすることも。
50kmちょっとと、距離だけで見ればそんなに長くはないコースだったけれど、実際に走ってみると適度なアップダウンで、走りなれたサイクリストもかなり満足できる一日に。一方で、ビギナーにとっては足をつかないといけないような箇所も少なく、走り切った達成感を味わえたのではないだろうか。それに、女性専用グループやエスコートカーなど、至れり尽くせりのサポート体制も安心できる取り組みだ。
そして、何よりも魅力的なのがずっと続く美しい景色と充実したエイドステーション。たっぷりと地元の名産品を並べただけのありきたりなものではなく、バンク走行やBBQエイドでの参加者同士の交流など、一歩進んだ体験ができるのは、この桃と桜のサイクリングが持つ大きな価値。
初回大会にして、大きな成功を収めた桃と桜のサイクリング。惜しむらくは、今年は桜の開花時期が早く、あまり桜が咲いている景色を見ることが出来なかったことぐらいだろうか。このイベントに咲き誇る桜が加わったらどうなることか、来年が今から楽しみになってしまう。
text&photo:Naoki.Yasuoka
さて、第1エイドとなった八代ふれあいの花公園で甲府盆地の絶景と、ふわふわマフィンを堪能した私たち一行が次に目指すのは花鳥山展望台。もう、名前からして絶対いい景色でしょ!という期待のハードルを押し上げてくるスポットを目指し、ふたたびみやさか道のアップダウンをこなしていく。
エイドを出た下りの先には、リニアの実験線が。2027年にはリニア新幹線で品川からわずか25分で新山梨駅に着くことができるようになるというのだから、夢のような話だ。この谷を越えた先にあるのが、フォトスポットとして名高い花鳥山展望台である。
リニアライドの副題の通りリニアモーターカーの実験線を取り囲むように桃の花が植えられている。巨大な人工物と、美しい植物の対比がドラマチックで、人気が出るのも納得の景色だ。桃の花のシーズンということもあり、この日も多くの観光客が詰めかけていた。
展望台周辺は散策できるコースが整備されており、ウォーキングを楽しむ人もたくさん。いや、たくさんどころか、花鳥山展望台へ至る車道は一車線分まるで歩行者天国の様相に。なのでこの区間はそろそろと歩行者に気をつけつつ徐行で通過。折角の下り坂だけど、安全第一だ。それに、ゆっくり下れば周りの景色も見えるのだ。一面に広がる桃の花を堪能しながらゆるゆると下っていくのであった。
もう一つ二つ丘を越えて、御坂みちへ。途中には菜の花畑の中に桃が植えられ、黄色の絨毯の中にピンクのアクセントが加わる、まさに桃源郷のような風景が広がるスポットなどもあり、所々で写真を撮ろうと足を止めている参加者の方も。もちろん取材のために写真を撮る私たちもついつい停車の頻度が多くなり、必然ゆったりしたライドに。
こうして美しい景色を楽しんだ後はお待ちかねのランチタイム。多くの観光農園が両脇に立ち並ぶ御坂みちを下り、たどり着いた御坂農園グレープハウス。グレープハウスという名前だけれど、ブドウだけに限らず桃の栽培も行っており、時間無制限の食べ放題のフルーツ狩りが楽しめる。
このエイドでは、6人一組で建物の中へとご案内。どうしてなのかと思いつつ、中へと進んでいく。手前の建物には農園でとれた果物や山梨名物の様々な食材を生かしたお土産がずらり。その奥に進むと、フルーツ畑につながる道があり、さらに奥にはBBQ場が。
ずらりとテーブルが並べられた空間には、すでに到着されていた参加者の皆さんが肉を焼くジュージュー音が響き、食欲をそそる香りが充満している。1卓につき、6つ用意された席にそれぞれがつけば、目の前にはどっさり用意された食材が。一人当たり200gはあるお肉に、たっぷり用意された焼き野菜、そして地産のキノコが山盛りになっている。
コンロに火をつけてもらい、さっそくBBQ開始。この日初めて顔を合わせる人たちと、食卓を囲むことになるけれども、そこは同じコースを一緒に走ってきた仲間。最初はぎこちなかったとしても、食材に火が通るほどに、会話にも熱がこもっていく。共同作業となるBBQというのもまた、打ちとけるにはピッタリだ。
ふと見渡せば、どのテーブルも同じように盛り上がっている。豪華な内容の食事にも驚いたけれど、こんなに仲間の輪が広がるランチタイムというのも、ほかの大会ではお目にかかったことは無い。人と人の輪が繋がっていく景色もまた、咲き乱れる花と同じくらい美しいもの。
新しい仲間を得て、お腹をいっぱいに膨らませたら後半戦へと突入だ。東西に延びるコースの東端に位置するのが、このランチエイドなので、ここからは一路西へと向かうことに。走り出した目の前に現れたのは、10%の勾配表示看板。距離は短いので、ペースで登ればそんなに大変でもないはずなのだけれど、たらふく食べた後だとちょっとキツイ……。
そんなことを思っていると、道のわきに”エスコート”と書かれたバンが止まっている。どういうことなのか聞いてみると、「坂がつらい人のために、登り区間だけ乗ってもらうための車なんですよ」とのこと。なんというサポート体制なのだろうか、取材のためと偽って乗せてもらうことを一瞬考えてしまったが、本当に必要な人がいたら申し訳ない。ということで、かろうじて残った理性を振り絞り、先へ。
しばらく走ってたどり着いたのは「境川自転車競技場」。中央道を東京から走ってくると、境川PA付近でいつも目に付くあの場所である。2009年の全日本選手権の会場ともなった歴史ある屋外バンクの一角で、エイドステーションが設けられた。
ここでは、甲府に本社を置くシャトレーゼの「揚げ餅」、そして地元のスーパーイッツモア玉穂店の目利きが光るイチゴ、そして甲州小梅から作られたお酢と、地元の特色を生かした振る舞いがずらり。さらにこのエイドでも、またまたユニークな体験ができる。
それは、普段はロードバイクで走ることができないバンク走行の体験会。希望すれば、この日はだれでも本物のバンクを走行することが出来たのだ。ブレーキをかけてはいけないことなど、基本的な注意点をレクチャーされたら、いざ競技場内へ。実は筆者自身もバンクは初体験なので少しドキドキしつつ、ゲストライダーの今中さんと佐藤さんとともに挑戦!
いざバンクを下から見てみるとその斜度に驚いた、という感想をよく聞いていたけれど、それも納得。驚きました。壁じゃん。でも、下の方をゆるっと1周してみたらそんな不安も吹き飛ぶ楽しさ。ちょっと上行ってみようかな、と冒険心がムクムクと頭をもたげる。というのも、路面のグリップ感がかなり強いので見た目よりは全然安心感があるのです。
もう少し速度に乗せて、一つ上のラインへ、次の周はもう少し上へ。こ、これは楽しいかも……。華麗に走る今中さんについて行ってみたりして。一方、佐藤さんも「こわーーーーい!」と叫びつつも、果敢にチャレンジ。最終的には青のスプリンターラインまで到達できたようでなによりです。
さて、ちょっとエキサイティングな第3エイドを堪能し、再び出発。ここから第4エイドまではほぼほぼ平坦な快走区間。車が少なく見通しの良い農道を繋ぎ、到着したのは「道の駅とよとみ」だ。全国直売所甲子園初代グランドチャンピオンに輝いたこの道の駅、その栄冠に恥じない充実した施設が魅力。そんなスポットに設定されたエイドステーションでは、道の駅名物の「シルクソフト」が振舞われた。
古くより養蚕が盛んだったという豊冨地域。シルクの里とも呼ばれるこの一帯らしく、食用のシルクパウダーを使用したスペシャルなソフトクリームなのだ。太陽も中天に差し掛かり、かなりあったかくなってきたところにひんやりしたソフトが染み入るよう。そしてなにより、濃厚な味わいにここまで走ってきた疲れも吹き飛ばされる。
あまーいソフトクリームを堪能したら、あとはフィニッシュ地点へ戻るだけ。ここからはほど近いはずなので、あっという間に到着のはず。と思っていたら、これが意外に長かった。まっすぐの道ではなく、いったん高台へと登りまわり込むようにゴールを目指していくのだ。途中には、南アルプスロングライドで見覚えのあるみたまの湯へつながるルートなども登場。最後に少しパンチのあるアップダウンを走り切って、ほど良い疲労感とともにフィニッシュ地点へと戻ってきたのだった。
フィニッシュエイドとして、地元の主婦の方々が丹精込めて作ってくれたトロトロのカボチャほうとうや、草餅が振舞われ、最後まで大満足。写真撮影コーナーでは、完走記念のグッズを作ってくれるサービスも。さらに、会場の奥には足湯までも出現し、ビンディングシューズの硬いソールで疲れた足をリフレッシュすることも。
50kmちょっとと、距離だけで見ればそんなに長くはないコースだったけれど、実際に走ってみると適度なアップダウンで、走りなれたサイクリストもかなり満足できる一日に。一方で、ビギナーにとっては足をつかないといけないような箇所も少なく、走り切った達成感を味わえたのではないだろうか。それに、女性専用グループやエスコートカーなど、至れり尽くせりのサポート体制も安心できる取り組みだ。
そして、何よりも魅力的なのがずっと続く美しい景色と充実したエイドステーション。たっぷりと地元の名産品を並べただけのありきたりなものではなく、バンク走行やBBQエイドでの参加者同士の交流など、一歩進んだ体験ができるのは、この桃と桜のサイクリングが持つ大きな価値。
初回大会にして、大きな成功を収めた桃と桜のサイクリング。惜しむらくは、今年は桜の開花時期が早く、あまり桜が咲いている景色を見ることが出来なかったことぐらいだろうか。このイベントに咲き誇る桜が加わったらどうなることか、来年が今から楽しみになってしまう。
text&photo:Naoki.Yasuoka
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