2017/11/03(金) - 08:48
Eバイクシステムの世界的なリーディングカンパニーであるドイツの「ボッシュ」が、正式に国内展開を開始する。それに先立ち行われた記者発表会の様子をレポート。本国GMへのインタビューも通して、まだ国内では馴染みの薄いEバイクの現状を掘り下げてお伝えしよう。
ドイツに本社を置くITソリューション企業「ボッシュ」。自動車やモーターサイクル、通信テクノロジー、エネルギー産業など多岐に渡る業界に精通する企業であるが、その事業の1つとして展開するのが自転車のEバイクシステムである。ヨーロッパにおいて爆発的に拡がりを見せるEバイク市場だが、そのバイクに用いられるシステムとしてヨーロッパでは随一のシェアを誇る。
ボッシュの日本市場参入は今夏に既にアナウンス済みではあるが、今回はその正式な記者発表の場としてボッシュ・ジャパンのオフィス1階「cafe 1886 at Bosch」にてプレゼン発表と体験試乗会が行われた。ボッシュ・ジャパン代表取締役社長のクラウス・メーダー氏と、Eバイクシステムのアジア太平洋地域GMのフアド・ベニーニ氏も来日。それぞれボッシュ社についての説明と同社Eバイクシステムの解説を行ってくれた。
1886年に創業を開始し130年以上の歴史を持つボッシュは、約60カ国に渡って現地法人を設置し、世界120カ国に拠点を持つグローバル企業。2009年より開始された同社Eバイクシステムは、ヨーロッパを始めアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドとマーケットを拡大しており、今回アジア市場拡大に向けて日本への参入を開始する。
「年配者向けのアシスト機能として見られていた従来とは異なり、若者がより気軽にスポーティーに自転車を楽しむきっかけに、よりライフスタイルを充実させるツールとして活用してほしい」というボッシュ。自転車という大きなくくりで見ても世界的な販売台数は横ばいとなっている現状で、毎年成長を続けているのがこのEバイクのジャンルになる。
ヨーロッパでは用途に応じて大きく4つのEバイクシステムを展開するボッシュだが、今回はその中でも日本の法規制に則したチューニングを施し、かつ日本人好みの漕ぎ味へカスタムされたシティ・アーバン向けの「Active Line Plus」というシステムが導入されることとなった。
モーター、バッテリー、ディスプレイ、チャージャーの4つがセットとなったこのシステム。日本の規制に合わせ24km/hで電動アシストが0になるようセッティングされており、独自のクラッチ機構やセンサー機構によりアシストがないときのペダリング時も抵抗も抑えたものとなっている。
Intuvia(イントゥーヴィア)と名付けられたディスプレイは上部にスピードが、下部に走行距離や走行時間といったインフォメーションを表示させることができるもの。手元にアシストパワーの上下を調整できるリモコンを配置した操作性の高いものとなっている。縦長の大容量バッテリーは最大2.5時間でマックスまで、残り50%からであれば1時間でフル充電が可能だという。
日本初参入ということで製品の細かい仕様を見ていけばキリがなさそうだが、ボッシュ・ジャパンのテクニカルマネージャー高橋さんはプレゼンで「詳しいことは説明しません。とにかく乗って体感して欲しい!本当に自信作です」と力強く言う。今後国内の幅広いサイクルショップに試乗車を設置する予定とのことで、その性能を試せる日はそう遠くないだろう。
ボッシュのシステムを採用したEバイクはトレック、ビアンキ、コラテック、ターン、以上の4ブランドより来年から国内販売されることが決まっている。トレックはシティコミューターの「VERVE+(バーブ)」(詳細記事はこちら)、ビアンキとターンはミニベロタイプの「Lucca-E(ルッカ)」「VEKTRON(ヴェクトロン)」をそれぞれリリース。コラテックは街乗りMTBタイプ、シティコミュータータイプ、ミニベロタイプの3車種をラインアップするという。
いずれのメーカーにも各モデルの説明時間が設けられたが、各社が重視するのは街乗りでの快適性や使い勝手という印象だ。アシストのパワーを活かせることで、太めのタイヤやキャリアの装備などバイクの重量増をそこまで気にしないアセンブルがされており、軽量化が重視されるスポーツバイクとは全く異なる性質の乗り物なのだと気付かされた。
実際に試乗にてボッシュのEバイクシステムを体感してみると、漕ぎ出しのひと踏みふた踏み目のアシストが強烈に効く印象だ。ギュンッギュンッと背中を押されているかのような加速があり、乗ってすぐに一定のスピードまで自然と到達するため、ペダリングに力を入れることなく楽に走ることができる。踏み込んだ時のアシストの反応性も非常に速いためストレスも感じない。特に小回りの効くミニベロはアシストの推進力が加わることでより幅広い行動範囲へ誘ってくれそうだと、相性の良さを感じることができた。
最後にEバイクシステムGMのベニーニ氏へ行ったインタビューをお届けしよう。
― ボッシュとして日本への初参入となる訳ですが、日本の市場をどう捉えていますか
既にEバイクが広く浸透してきたヨーロッパ以外で考えれば非常に重要なマーケットです。まだ規模は小さく成長中の市場ですがそれだけに伸びしろがあります。Eバイク市場は毎年5%の成長率を見せていますし、日本でも将来的には50万台以上のEバイク市場が見込めるのではと思っています。
日本の市場では、まだいわゆる電動アシストのママチャリや20インチバイクを重視している部分がありますね。しかし、ボッシュとしては従来とは異なるデザインやモデルによってその幅を広げたいと考えているんです。また今回の”ニューシステム”を通して、サイクリングのフィーリングにも新しい経験を感じて欲しい。新しいマーケット、新しいターゲットを相手とするためこれからどんどん広がっていくと期待しています。
― 日本のマーケットへ参入するに当たって苦労した点は何ですか
まず、どういったシステム、どういったセットアップが日本に適しているか調整を重ね製品化へとこぎつけたこと。二つ目は販売を開始するためのサービスパートナーを見つけなければならなかった点。最後にボッシュとしてのカスタマー(システムを採用してくれるバイクメーカー)を見つけることですね。一番難しかったのは日本の法規制に適したソフトウェアのセットアップです。エンジニアとして乗ったときのフィーリングを重視しつつも、その点をクリアするのに苦労しました。
― 日本ではシマノやヤマハ等も同様のシステムを売り出していますが、他メーカーとの関わりはありますか
シマノとはEシフトのオートマチックギアという部分で既に協力体制を築いています。パートナーではありますが、Eバイクシステム市場においてはライバル。ただ、今のところシマノは日本の市場に注力している訳ではありませんね。パナソニックやヤマハは日本の電動アシスト自転車においてはリーダー的存在といえますが、ターゲットとするユーザー層が異なると考えます。直接的なライバルとはならないでしょう。
― 国内初参入の製品として安全性は重視されると思いますがその点はいかがでしょう
長年ヨーロッパにて製品展開を続けていますが、市場が大きくなってきている中でも目立ったトラブルは報告されていません。メカニカルな点で言えば当初Eバイクシステムに適合したチェーンやギアがなかったという問題はありましたが、今はより最適化した部品が出ています。大手メーカーであればEバイク専用のチェーンを作っている会社もあるほどです。フレームメーカーとも協力して開発していますが、そこでも大きなトラブル見つかっていません。そういったトラブルが少なかったことも、市場を拡大させている要因の1つだと捉えています。
― シティタイプに限らずロードバイクやMTBといったカテゴリーのEバイクの動向はいかがですか
今年のユーロバイク等を通して感じたのは、各メーカーがこのEシステムにおいてより多様な動きを模索しているということですね。ただ、まだ徐々に大きくなってきている市場なので、いずれのジャンルもこれから伸びていく段階だと考えます。国によっても各バイクの使われ方はそれぞれ異なるので、そういった文化の違いも市場へ大きく影響してくると思います。
― 今年は”Eバイク元年”とも言えるほど市場が大きく飛躍した年だと思いますが、ボッシュとして今後の展望をお聞かせください
国によってマーケットの動向が大きく異なるので、それらの動きに左右されることは間違いないでしょう。2010年にこの事業が始まった当初は、そもそも電動アシスト自転車がショップに置いてあるべきなのか否か、そこから協議されるほどのレベルでした。今ではヨーロッパに関して言えば、Eバイクが置いてあるショップは置いていないショップに比べ大きく売上を伸ばすほど重要なプロダクトとなっているんです。以前はEバイクを扱うかどうかで悩んでいた部分が、今ではあるのは当たり前で、どのブランドのEバイクを置くかどうかが話に上がるところです。
ドイツではここ数年ほどで150万台以上のEバイクが走るほどになりました。近い将来購入される自転車の3台に1台はEバイクとなる時代が来るでしょう。もちろん日本でも広く受け入れられることと思いますが、まだまだ始まったばかりで浸透するには時間がかかると思います。
日本はハイテクの国なので、国民的にもそういったハイテク製品が好きですよね。Eバイクもそういった類の製品ですので必ずや気に入ってもらえると思います。問題は法規制がこれからどれだけ柔軟になってくれるかという点ですね。ヨーロッパと同じような基準となれば、より多くのラインアップを展開できるようになりますからね。
text&photo:Yuto.Murata
ドイツに本社を置くITソリューション企業「ボッシュ」。自動車やモーターサイクル、通信テクノロジー、エネルギー産業など多岐に渡る業界に精通する企業であるが、その事業の1つとして展開するのが自転車のEバイクシステムである。ヨーロッパにおいて爆発的に拡がりを見せるEバイク市場だが、そのバイクに用いられるシステムとしてヨーロッパでは随一のシェアを誇る。
ボッシュの日本市場参入は今夏に既にアナウンス済みではあるが、今回はその正式な記者発表の場としてボッシュ・ジャパンのオフィス1階「cafe 1886 at Bosch」にてプレゼン発表と体験試乗会が行われた。ボッシュ・ジャパン代表取締役社長のクラウス・メーダー氏と、Eバイクシステムのアジア太平洋地域GMのフアド・ベニーニ氏も来日。それぞれボッシュ社についての説明と同社Eバイクシステムの解説を行ってくれた。
1886年に創業を開始し130年以上の歴史を持つボッシュは、約60カ国に渡って現地法人を設置し、世界120カ国に拠点を持つグローバル企業。2009年より開始された同社Eバイクシステムは、ヨーロッパを始めアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドとマーケットを拡大しており、今回アジア市場拡大に向けて日本への参入を開始する。
「年配者向けのアシスト機能として見られていた従来とは異なり、若者がより気軽にスポーティーに自転車を楽しむきっかけに、よりライフスタイルを充実させるツールとして活用してほしい」というボッシュ。自転車という大きなくくりで見ても世界的な販売台数は横ばいとなっている現状で、毎年成長を続けているのがこのEバイクのジャンルになる。
ヨーロッパでは用途に応じて大きく4つのEバイクシステムを展開するボッシュだが、今回はその中でも日本の法規制に則したチューニングを施し、かつ日本人好みの漕ぎ味へカスタムされたシティ・アーバン向けの「Active Line Plus」というシステムが導入されることとなった。
モーター、バッテリー、ディスプレイ、チャージャーの4つがセットとなったこのシステム。日本の規制に合わせ24km/hで電動アシストが0になるようセッティングされており、独自のクラッチ機構やセンサー機構によりアシストがないときのペダリング時も抵抗も抑えたものとなっている。
Intuvia(イントゥーヴィア)と名付けられたディスプレイは上部にスピードが、下部に走行距離や走行時間といったインフォメーションを表示させることができるもの。手元にアシストパワーの上下を調整できるリモコンを配置した操作性の高いものとなっている。縦長の大容量バッテリーは最大2.5時間でマックスまで、残り50%からであれば1時間でフル充電が可能だという。
日本初参入ということで製品の細かい仕様を見ていけばキリがなさそうだが、ボッシュ・ジャパンのテクニカルマネージャー高橋さんはプレゼンで「詳しいことは説明しません。とにかく乗って体感して欲しい!本当に自信作です」と力強く言う。今後国内の幅広いサイクルショップに試乗車を設置する予定とのことで、その性能を試せる日はそう遠くないだろう。
ボッシュのシステムを採用したEバイクはトレック、ビアンキ、コラテック、ターン、以上の4ブランドより来年から国内販売されることが決まっている。トレックはシティコミューターの「VERVE+(バーブ)」(詳細記事はこちら)、ビアンキとターンはミニベロタイプの「Lucca-E(ルッカ)」「VEKTRON(ヴェクトロン)」をそれぞれリリース。コラテックは街乗りMTBタイプ、シティコミュータータイプ、ミニベロタイプの3車種をラインアップするという。
いずれのメーカーにも各モデルの説明時間が設けられたが、各社が重視するのは街乗りでの快適性や使い勝手という印象だ。アシストのパワーを活かせることで、太めのタイヤやキャリアの装備などバイクの重量増をそこまで気にしないアセンブルがされており、軽量化が重視されるスポーツバイクとは全く異なる性質の乗り物なのだと気付かされた。
実際に試乗にてボッシュのEバイクシステムを体感してみると、漕ぎ出しのひと踏みふた踏み目のアシストが強烈に効く印象だ。ギュンッギュンッと背中を押されているかのような加速があり、乗ってすぐに一定のスピードまで自然と到達するため、ペダリングに力を入れることなく楽に走ることができる。踏み込んだ時のアシストの反応性も非常に速いためストレスも感じない。特に小回りの効くミニベロはアシストの推進力が加わることでより幅広い行動範囲へ誘ってくれそうだと、相性の良さを感じることができた。
最後にEバイクシステムGMのベニーニ氏へ行ったインタビューをお届けしよう。
― ボッシュとして日本への初参入となる訳ですが、日本の市場をどう捉えていますか
既にEバイクが広く浸透してきたヨーロッパ以外で考えれば非常に重要なマーケットです。まだ規模は小さく成長中の市場ですがそれだけに伸びしろがあります。Eバイク市場は毎年5%の成長率を見せていますし、日本でも将来的には50万台以上のEバイク市場が見込めるのではと思っています。
日本の市場では、まだいわゆる電動アシストのママチャリや20インチバイクを重視している部分がありますね。しかし、ボッシュとしては従来とは異なるデザインやモデルによってその幅を広げたいと考えているんです。また今回の”ニューシステム”を通して、サイクリングのフィーリングにも新しい経験を感じて欲しい。新しいマーケット、新しいターゲットを相手とするためこれからどんどん広がっていくと期待しています。
― 日本のマーケットへ参入するに当たって苦労した点は何ですか
まず、どういったシステム、どういったセットアップが日本に適しているか調整を重ね製品化へとこぎつけたこと。二つ目は販売を開始するためのサービスパートナーを見つけなければならなかった点。最後にボッシュとしてのカスタマー(システムを採用してくれるバイクメーカー)を見つけることですね。一番難しかったのは日本の法規制に適したソフトウェアのセットアップです。エンジニアとして乗ったときのフィーリングを重視しつつも、その点をクリアするのに苦労しました。
― 日本ではシマノやヤマハ等も同様のシステムを売り出していますが、他メーカーとの関わりはありますか
シマノとはEシフトのオートマチックギアという部分で既に協力体制を築いています。パートナーではありますが、Eバイクシステム市場においてはライバル。ただ、今のところシマノは日本の市場に注力している訳ではありませんね。パナソニックやヤマハは日本の電動アシスト自転車においてはリーダー的存在といえますが、ターゲットとするユーザー層が異なると考えます。直接的なライバルとはならないでしょう。
― 国内初参入の製品として安全性は重視されると思いますがその点はいかがでしょう
長年ヨーロッパにて製品展開を続けていますが、市場が大きくなってきている中でも目立ったトラブルは報告されていません。メカニカルな点で言えば当初Eバイクシステムに適合したチェーンやギアがなかったという問題はありましたが、今はより最適化した部品が出ています。大手メーカーであればEバイク専用のチェーンを作っている会社もあるほどです。フレームメーカーとも協力して開発していますが、そこでも大きなトラブル見つかっていません。そういったトラブルが少なかったことも、市場を拡大させている要因の1つだと捉えています。
― シティタイプに限らずロードバイクやMTBといったカテゴリーのEバイクの動向はいかがですか
今年のユーロバイク等を通して感じたのは、各メーカーがこのEシステムにおいてより多様な動きを模索しているということですね。ただ、まだ徐々に大きくなってきている市場なので、いずれのジャンルもこれから伸びていく段階だと考えます。国によっても各バイクの使われ方はそれぞれ異なるので、そういった文化の違いも市場へ大きく影響してくると思います。
― 今年は”Eバイク元年”とも言えるほど市場が大きく飛躍した年だと思いますが、ボッシュとして今後の展望をお聞かせください
国によってマーケットの動向が大きく異なるので、それらの動きに左右されることは間違いないでしょう。2010年にこの事業が始まった当初は、そもそも電動アシスト自転車がショップに置いてあるべきなのか否か、そこから協議されるほどのレベルでした。今ではヨーロッパに関して言えば、Eバイクが置いてあるショップは置いていないショップに比べ大きく売上を伸ばすほど重要なプロダクトとなっているんです。以前はEバイクを扱うかどうかで悩んでいた部分が、今ではあるのは当たり前で、どのブランドのEバイクを置くかどうかが話に上がるところです。
ドイツではここ数年ほどで150万台以上のEバイクが走るほどになりました。近い将来購入される自転車の3台に1台はEバイクとなる時代が来るでしょう。もちろん日本でも広く受け入れられることと思いますが、まだまだ始まったばかりで浸透するには時間がかかると思います。
日本はハイテクの国なので、国民的にもそういったハイテク製品が好きですよね。Eバイクもそういった類の製品ですので必ずや気に入ってもらえると思います。問題は法規制がこれからどれだけ柔軟になってくれるかという点ですね。ヨーロッパと同じような基準となれば、より多くのラインアップを展開できるようになりますからね。
text&photo:Yuto.Murata
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